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2 デイヴ
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若様がお戻りになる。
その知らせを教えてくれたのは、看護士のエラ・ケールだった。
デイヴ・カーターはイングラム私設騎士団医療部の治療士、エラは看護士なので、年齢は離れているが同僚として、以前からお互いの持つ秘匿を要する以外の情報等を雑談することが多かった。
それ故、エラは教えてくれたのだ。
彼女の情報源は、本邸のメイドだと思われた。
王都で醜聞にまみれ、次期領主の資格を失ったとされる若様……否、ご長男のジェレマイア様の部屋が本邸2階のご領主様の部屋から遠く離れた客室に代わる、という話も付け足して教えられた。
それに加えて、エラは更に声を潜めた。
「明日の夜中に入られる、そうですよ」
「……日中ではなく、夜中に?」
「そんなに皆の目が気になるのでしょうか。
若様だってお若いんですから、つい他の女性にフラフラすることもあると思うんですよね。
隣領との婚約が破棄されたから、って……
後継から外す程の事なんでしょうか……」
「……お決めになられたのは、ご領主様だ」
エラは、若い男が婚約者以外の女に浮気をしても仕方がない、と思っているのか。
彼女と同年代の娘リデルもそうなのだろうか、とデイヴはぼんやりと考えた。
エラ、知っているか。
浮気心を持つ男に年齢は関係ない。
愛する女性を裏切って1度浮気をした男は、これからも機会があれば繰り返す事が多いんだ、と言いたいが、今話題にされているのは、元後継者のジェレマイアだ。
この場でエラに言うことではない。
「若様が次期ご領主様じゃないなら、次は誰になるんですかね?」
その問いに、デイヴは言葉にして答えることなく、掌をエラに向けて「これ以上、この話はするな」と制した。
イングラム伯爵の正妻から生まれた嫡子はジェレマイアだけで、愛人とその娘は別邸に居るが、庶子は爵位を継げない。
つまり血縁のある家からの養子を迎えて継がせるのだろうが、それこそここで話す内容ではない。
デイヴの無言の動作に、エラもこの件に関しては話すことを止めたようだった。
エラはリデルの友人で、デイヴの同僚でもある。
噂話はよく聞かせてくれるが、それは情報に疎いデイヴを気遣ってだろう。
エラ本人はそれ程、噂に夢中になるタイプではないのだ。
それにしても、とデイヴはジェレマイアについて思うところもある。
王子殿下と共に女生徒に誘惑された?
お目通りをした事もない第2王子がどのような人物なのか、デイヴには知るよしもないが、ジェレマイアの事なら知っている。
いや、わかっている。
だから今回の醜聞には、納得出来ていない。
幼い頃から貴族学院入学前の12歳まで、ジェレマイアを見てきた。
騎士団医療部の治療士デイヴはイングラム本邸で毎日勤務しているが、怪我人や病人が出ない限り駆り出されることはなく、その勤務時間の大方は待機状態であった。
それ故5歳を過ぎてから騎士団の基礎訓練に混ざるようになり、毎日小さな身体に小さな傷を負うようになったジェレマイアの治療に当たる事が増え、自然と若様との交流が始まって、その為人も知るようになった。
つまり、婚約者が出来、思春期を迎え、王都邸で生活するようになったジェレマイアとは、彼が帰省する夏と年越しの年に2回顔を合わせるだけとなってしまったが、その時に交わした言葉や様子からは、簡単に誘惑されて乗ってしまうような徴候は見られなかった。
何より、噂によると。
その女生徒にはジェレマイアと第2王子以外にも相手が居て、学院の高位貴族令息達の何人かで共有していた、という。
そんな馬鹿な話があるか、と思う。
婚約者以外に心を奪われたのが、ただひとりの相愛の女性だったなら、渋々受け入れられた話だが。
何人もの男と、身持ちの悪い1人の女を共有?
有り得ない。
どうしてそんな話になる?
デイヴは、他に話題を変えたエラに適当に相槌を打ちながら、思う。
もし、ジェレミー様に婚約していたカートライト伯爵令嬢以外の『ただひとり』が居るのなら。
それは、娘のリデル以外に有り得ないだろうに、と。
その知らせを教えてくれたのは、看護士のエラ・ケールだった。
デイヴ・カーターはイングラム私設騎士団医療部の治療士、エラは看護士なので、年齢は離れているが同僚として、以前からお互いの持つ秘匿を要する以外の情報等を雑談することが多かった。
それ故、エラは教えてくれたのだ。
彼女の情報源は、本邸のメイドだと思われた。
王都で醜聞にまみれ、次期領主の資格を失ったとされる若様……否、ご長男のジェレマイア様の部屋が本邸2階のご領主様の部屋から遠く離れた客室に代わる、という話も付け足して教えられた。
それに加えて、エラは更に声を潜めた。
「明日の夜中に入られる、そうですよ」
「……日中ではなく、夜中に?」
「そんなに皆の目が気になるのでしょうか。
若様だってお若いんですから、つい他の女性にフラフラすることもあると思うんですよね。
隣領との婚約が破棄されたから、って……
後継から外す程の事なんでしょうか……」
「……お決めになられたのは、ご領主様だ」
エラは、若い男が婚約者以外の女に浮気をしても仕方がない、と思っているのか。
彼女と同年代の娘リデルもそうなのだろうか、とデイヴはぼんやりと考えた。
エラ、知っているか。
浮気心を持つ男に年齢は関係ない。
愛する女性を裏切って1度浮気をした男は、これからも機会があれば繰り返す事が多いんだ、と言いたいが、今話題にされているのは、元後継者のジェレマイアだ。
この場でエラに言うことではない。
「若様が次期ご領主様じゃないなら、次は誰になるんですかね?」
その問いに、デイヴは言葉にして答えることなく、掌をエラに向けて「これ以上、この話はするな」と制した。
イングラム伯爵の正妻から生まれた嫡子はジェレマイアだけで、愛人とその娘は別邸に居るが、庶子は爵位を継げない。
つまり血縁のある家からの養子を迎えて継がせるのだろうが、それこそここで話す内容ではない。
デイヴの無言の動作に、エラもこの件に関しては話すことを止めたようだった。
エラはリデルの友人で、デイヴの同僚でもある。
噂話はよく聞かせてくれるが、それは情報に疎いデイヴを気遣ってだろう。
エラ本人はそれ程、噂に夢中になるタイプではないのだ。
それにしても、とデイヴはジェレマイアについて思うところもある。
王子殿下と共に女生徒に誘惑された?
お目通りをした事もない第2王子がどのような人物なのか、デイヴには知るよしもないが、ジェレマイアの事なら知っている。
いや、わかっている。
だから今回の醜聞には、納得出来ていない。
幼い頃から貴族学院入学前の12歳まで、ジェレマイアを見てきた。
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それ故5歳を過ぎてから騎士団の基礎訓練に混ざるようになり、毎日小さな身体に小さな傷を負うようになったジェレマイアの治療に当たる事が増え、自然と若様との交流が始まって、その為人も知るようになった。
つまり、婚約者が出来、思春期を迎え、王都邸で生活するようになったジェレマイアとは、彼が帰省する夏と年越しの年に2回顔を合わせるだけとなってしまったが、その時に交わした言葉や様子からは、簡単に誘惑されて乗ってしまうような徴候は見られなかった。
何より、噂によると。
その女生徒にはジェレマイアと第2王子以外にも相手が居て、学院の高位貴族令息達の何人かで共有していた、という。
そんな馬鹿な話があるか、と思う。
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何人もの男と、身持ちの悪い1人の女を共有?
有り得ない。
どうしてそんな話になる?
デイヴは、他に話題を変えたエラに適当に相槌を打ちながら、思う。
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それは、娘のリデル以外に有り得ないだろうに、と。
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