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6 結婚式無し、初夜無しの花嫁
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「おい、お茶も出ないのか、醜女は気も利かないな。
面が悪いのなら、頭と気だけでも使えよ」
「えーっ、お茶なんか要らないよ?
毒でも入れられたら、どーするの?」
だから、わたしの悪口なら部屋の外で言い合え。
犯人だと直ぐに分かるこの部屋で、誰が毒など盛るものか。
そう言いたいのは我慢して、取り敢えず聞いてみた。
「クラシオン殿下、何用でいらっしゃったのですか?」
「へぇ、一応アストリッツァ語は学んできたのか。
ならば通訳が要らず、予算も減らせる。
では、教えてやろう。
1ヶ月後に予定していた、お前との婚姻式は中止だ。
その夜の閨も無い……いや、一生お前との閨は無いと心得よ。
これは全部、そちらの、カリスレキアの国王のせいだからな!」
話す言語が異なるカリスレキアから来たお飾り妃が、自分が話していた内容を理解していたと知り。
高慢なクラシオンは特に何とも無いようであったが、マリツァは己の口元を押さえていた。
厚顔無恥な夫とは違い、側妃の方は少しは恥を知っているのだろう。
あの少し足りない物言いは擬態なのかも知れない、とガートルードは用心することにしたが、そんな隣の最愛の様子に気付かないクラシオンは、とうとうと理由を続ける。
「持参金もケチり、お前に渡す今までの王族慰労年金もまとめてではなく、20年の年払いとはな。
お前の父親は醜いお前の事などどうでもいいのだ、と分かるというものだ。
娘に持たせる金が少ないから、婚姻式もあげられないのだぞ?
では、お前の私有財産はと言うと、10年間凍結された、だと?
ふざけるにも程がある」
カリスレキアには王族慰労年金などの制度は無い。
毎年各人に予算が組まれて、その範囲内で過ごしていたのだ。
アストリッツァはガートルードの私有財産狙いだと分かっているので、一旦それを凍結し。
新たに決まった第2王女のみに適応される王族慰労年金を、これから彼女の年齢と同じ20年間毎年誕生日に支払う、と国王と宰相は議題に上げて、貴族議会も満場一致でそれを可決した。
つまり、政略妻の年金を横取りしたいのなら。
20年間は暗殺などもっての他で、その命を保証しなくてはならない。
ガートルードの健康な姿を、毎年誕生日にカリスレキア大使が確認してから、その年度の年金を送金する運びだ。
せめて、それぐらいは国として、第2王女の献身に応えたい。
姫様の私有財産には、絶対に手をつけさせない。
母国侵攻回避のために嫁入りを決めたガートルードの為に。
これだけは譲れない条件として、アストリッツァへの返答に追記したのだ。
そしてその条件を飲んだからこその婚姻なのに。
妃の到着初日に、政略婚の夫自ら文句を言いに来るとは。
この国の程度が知れると言うものだ。
「綺麗なドレスを着て、豪華な式を挙げたいのなら、明日にでもカリスレキアに使者を立て、金を送ってくれと泣きつけ。
父上が持たせる金が少ないから、わたしは妃としての立場がない、とな?」
おかしな話を真面目に言う男の頭のなかが信じられない。
お前の父親のせいでなどと言うが、国王の一存だけでは今時国を動かせない。
それに、嫁入りの話は半年以上前に決定していて、本当に挙式するつもりであったなら、各国にも知らせはしていただろう。
たかが王太子の成人の宴ごときに、近隣諸国を招いた国が。
その王太子の婚姻式に他国を招かない訳がなく……
1ヶ月前に中止になど出来るわけがない。
この時点で式を中止にするのであれば、それは元々あげる気が無く、何の用意もしていない、と証明したようなもの。
それでも、金を引っ張りたくて。
婚姻式の準備のため1ヶ月前には入国を、と図々しく申し入れてきたアストリッツァだ。
ここで金を送られてもそれは何処かへ消えてしまい、難癖付けて、必ず婚姻式は中止となる。
「左様でございますか。
それでは、明日と言わず今夜にでも、使者を立ててください。
婚姻式は中止となりました故、カリスレキア国王王妃両陛下におかれましては、遠きアストリッツァまでご足労の必要無し、と」
そうだ、婚姻式などの茶番は必要無し。
それよりもっと、閨など必要無し。
下手にクラシオンとの間に子供が出来れば、この国ならば。
カリスレキアの継承権を言い出しかねない。
他国に嫁に行った姫には、母国の継承権を与えないのが普通だが、その普通に横車を押し入れてくるのがこの国だ。
こちらから言い出さなくても、馬鹿からの宣言に。
喜んで乗らせて貰うお飾り妃だった。
面が悪いのなら、頭と気だけでも使えよ」
「えーっ、お茶なんか要らないよ?
毒でも入れられたら、どーするの?」
だから、わたしの悪口なら部屋の外で言い合え。
犯人だと直ぐに分かるこの部屋で、誰が毒など盛るものか。
そう言いたいのは我慢して、取り敢えず聞いてみた。
「クラシオン殿下、何用でいらっしゃったのですか?」
「へぇ、一応アストリッツァ語は学んできたのか。
ならば通訳が要らず、予算も減らせる。
では、教えてやろう。
1ヶ月後に予定していた、お前との婚姻式は中止だ。
その夜の閨も無い……いや、一生お前との閨は無いと心得よ。
これは全部、そちらの、カリスレキアの国王のせいだからな!」
話す言語が異なるカリスレキアから来たお飾り妃が、自分が話していた内容を理解していたと知り。
高慢なクラシオンは特に何とも無いようであったが、マリツァは己の口元を押さえていた。
厚顔無恥な夫とは違い、側妃の方は少しは恥を知っているのだろう。
あの少し足りない物言いは擬態なのかも知れない、とガートルードは用心することにしたが、そんな隣の最愛の様子に気付かないクラシオンは、とうとうと理由を続ける。
「持参金もケチり、お前に渡す今までの王族慰労年金もまとめてではなく、20年の年払いとはな。
お前の父親は醜いお前の事などどうでもいいのだ、と分かるというものだ。
娘に持たせる金が少ないから、婚姻式もあげられないのだぞ?
では、お前の私有財産はと言うと、10年間凍結された、だと?
ふざけるにも程がある」
カリスレキアには王族慰労年金などの制度は無い。
毎年各人に予算が組まれて、その範囲内で過ごしていたのだ。
アストリッツァはガートルードの私有財産狙いだと分かっているので、一旦それを凍結し。
新たに決まった第2王女のみに適応される王族慰労年金を、これから彼女の年齢と同じ20年間毎年誕生日に支払う、と国王と宰相は議題に上げて、貴族議会も満場一致でそれを可決した。
つまり、政略妻の年金を横取りしたいのなら。
20年間は暗殺などもっての他で、その命を保証しなくてはならない。
ガートルードの健康な姿を、毎年誕生日にカリスレキア大使が確認してから、その年度の年金を送金する運びだ。
せめて、それぐらいは国として、第2王女の献身に応えたい。
姫様の私有財産には、絶対に手をつけさせない。
母国侵攻回避のために嫁入りを決めたガートルードの為に。
これだけは譲れない条件として、アストリッツァへの返答に追記したのだ。
そしてその条件を飲んだからこその婚姻なのに。
妃の到着初日に、政略婚の夫自ら文句を言いに来るとは。
この国の程度が知れると言うものだ。
「綺麗なドレスを着て、豪華な式を挙げたいのなら、明日にでもカリスレキアに使者を立て、金を送ってくれと泣きつけ。
父上が持たせる金が少ないから、わたしは妃としての立場がない、とな?」
おかしな話を真面目に言う男の頭のなかが信じられない。
お前の父親のせいでなどと言うが、国王の一存だけでは今時国を動かせない。
それに、嫁入りの話は半年以上前に決定していて、本当に挙式するつもりであったなら、各国にも知らせはしていただろう。
たかが王太子の成人の宴ごときに、近隣諸国を招いた国が。
その王太子の婚姻式に他国を招かない訳がなく……
1ヶ月前に中止になど出来るわけがない。
この時点で式を中止にするのであれば、それは元々あげる気が無く、何の用意もしていない、と証明したようなもの。
それでも、金を引っ張りたくて。
婚姻式の準備のため1ヶ月前には入国を、と図々しく申し入れてきたアストリッツァだ。
ここで金を送られてもそれは何処かへ消えてしまい、難癖付けて、必ず婚姻式は中止となる。
「左様でございますか。
それでは、明日と言わず今夜にでも、使者を立ててください。
婚姻式は中止となりました故、カリスレキア国王王妃両陛下におかれましては、遠きアストリッツァまでご足労の必要無し、と」
そうだ、婚姻式などの茶番は必要無し。
それよりもっと、閨など必要無し。
下手にクラシオンとの間に子供が出来れば、この国ならば。
カリスレキアの継承権を言い出しかねない。
他国に嫁に行った姫には、母国の継承権を与えないのが普通だが、その普通に横車を押し入れてくるのがこの国だ。
こちらから言い出さなくても、馬鹿からの宣言に。
喜んで乗らせて貰うお飾り妃だった。
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