1 / 8
1話目
しおりを挟む
わたくしは子爵家の長女として生まれました。上にはお兄様が二人おりますが、下にはおりません。お母様は一番上のお兄様とわたくしを産み、わたくしが五歳のときにみまかりました。
その後、お母様を愛していたお父様は渋々ながらも後妻を娶りましたが、その方には連れ子がおりました。その連れ子が二番目のお兄様になります。わたくしは二番目のお兄様が大嫌いですが。
そんなわたくしの家庭の事情はともかく、わたくしが十歳になった数日後、婚約者ができましたの。婚約者のお名前は、ヴィンフリート・シュタルク様とおっしゃいます。
金色の髪に碧の目、とても整った面立ちで、三つ年上の侯爵家の方でした。笑みを浮かべたお顔はとても素敵で、なぜかお会いしたことがあるように感じたのが不思議でございます。
「はじめまして。ヴィンフリート・シュタルクです」
「はじめまして。ジークリット・ヴァルターと申します。よろしくお願いいたします」
「ヴィン、ジークリット嬢を庭に案内してさしあげなさい」
「はい、父上。我が家の庭にご案内いたします、ジークリット嬢」
「ありがとうございます」
微笑みと共に差し出された腕に掴まり、ヴィンフリート様のエスコートで侯爵家の庭を案内してくださったのです。そのとき、とても懐かしいといいましょうか……なにやら不思議な感覚がしたのです。
――小路になっている先は、確か赤やピンクのバラが植わっていたはず。
なぜかそう思ったのですが、そんなはずはないと考えていると、ヴィンフリート様が案内してくださった場所には、なんと赤とピンクのバラがありました。そのことに驚き、混乱してしまったのです。
初めて侯爵家にまいりましたのに、どうしてわたくしは、そんなことを知っているのかと。
そしてとても懐かしく感じる、ヴィンフリート様のことも。
ですが、今はそんなことを考えている場合ではございませんので、しっかりとお庭を堪能させていただきました。
案内された先は東屋で、そこには侯爵家の執事とメイドがおります。テーブルの上にはお茶とお菓子が用意されておりました。
お相手は格上の侯爵家の方ですから、お話するにもとても緊張いたしましたが、ヴィンフリート様が気を遣ってくださり、徐々に打ち解けることができました。とてもお話が上手な方で、その声や仕草に、なぜか懐かしさを感じたのです。
「ヴィンフリート様、」
「婚約者となったのだから、ヴィンと呼んでください」
「わかりました、ヴィン様。では、わたくしのことはジルとお呼びください」
「ジル……と呼び捨てでも構いませんか?」
「はい」
婚約者となったのですから、愛称で呼ぶように提案してくださったヴィン様。そしてわたくしのこともジルと呼んでくださって、とても嬉しかったのです。
そこからいろいろなお話をいたしました。好きな食べ物、色、動物。とにかく、本当にいろいろなことを話しました。
好きなものが似通っていてお互いに微笑んだのは言うまでもなく、さらに仲良くなったような気がいたします。
それから、この国のしきたりに従い、婚約者となった侯爵家に住むことになるお話もしてくださいました。
本来ならば、婚姻する一月前から婚家に入るのですが、ヴァルター家は後妻とその連れ子である二番目のお兄様がとても問題でした。二人は勝手に散財するばかりで家のことなどなにひとつせず、二番目のお兄様に至っては、わたくしに暴力を振るおうとなさったこともしばしばです。
それを止めてくださったのが、血の繋がったお兄様やお父様でした。ですから、わたくしは二番目のお兄様が大嫌いなのです。貴族として育ったとは思えないほど、とても粗暴な方ですから。
お父様も一番上のお兄様も継母や二番目のお兄様のそんな態度と行動を問題視しており、短期間に問題を起こしすぎて問題視どころではなくなりました。
結局、継母と二番目のお兄様はお父様の逆鱗に触れてしまい、現在領地に幽閉されております。そしてお父様が後妻の話を持ってきた方にもお話をしたところ、そんな性格や態度をすると知らなかったと話し、驚くと共にとても後悔なさっていたそうです。
今は継母との離縁に向けて頑張っている最中なのです。
まあ、結局はこの一月後に離縁することができたのですが。
そういった問題があって、学園に関することが疎かになってしまいそうだということでお父様から侯爵様にお話があり、わたくしの年齢的にはとても早いですが、特別措置として侯爵家に入ることとなりました。
ヴィン様はその説明を、幼いわたくしにもわかるように、噛み砕いてお話してくださったのです。
「わたくしでいいのでしょうか……」
「もちろん。いろいろと学ぶことも多いからね。きっと役にたつよ。学園にも一緒に行こう」
「はいっ!」
この国の貴族は、十歳から十八歳まで学園に通うことになります。わたくしも四の月から学園に通うことになっております。ヴィン様とは三歳違いますから、一緒に通えるのはヴィン様が卒業なさるまでです。
ですが、これから通うことになる学園には飛び級できる制度がございますから、わたくしが頑張れば、ヴィン様と一緒に卒業できる可能性もありますの。
まあ、ヴィン様はとても優秀だと聞き及んでおりますので、きっと飛び級をしてわたくしよりも先に卒業なさるのでしょう。
そう思っていたのですが。
「ジルが頑張って僕と一緒に卒業したいというなら、僕はそれに合わせるよ」
「よろしいのですか?」
「ああ。僕の卒業まで、まだ五年あります。せめて、最後の一年は同じ学年で一緒に過ごせるよう、頑張ろうね」
「はいっ! あの……わからないお勉強は、教えてくださいますか?」
「もちろん。一緒に頑張ろう」
一緒に頑張ろうと仰ってくださったヴィン様に、とても感謝いたしました。
侯爵家に行くにあたり、家からいろいろと持ち出さないといけないものがあることから、一旦帰宅いたしました。侯爵家に入るのは、侯爵家側の準備もあることから、一月後となったのです。
さらにその一月後に学園の入学式があります。それまでにきちんとお勉強ができるといいなあ……と考えておりました。
馬車に揺られ、お父様と一緒に家に帰ったその日の夜。
「お嬢様、なんだかお顔が赤いようですわ」
「え……?」
「失礼いたしますね」
自室でドレスを脱がせてくれていたメイドが、とても不思議そうな顔をしてわたくしを見ました。そして額に手が当てられるとすぐに驚いた顔をして、ドレスではなく夜着に着替えさせたのです。
なにかあったのでしょうか。
「誰か、旦那様にご連絡を。お嬢様が熱を出されております!」
「かしこまりました!」
「お食事は軽いものを、と料理長に伝えてください」
「かしこまりました」
「熱……? ああ、だから馬車の中にいたときから体が火照っていたのですね……」
「もう、お嬢様! そういうのはもっと早く仰ってくださいまし!」
ボーっとした頭で呟くと、小さなころからわたくしの担当をしてくださっているエルサに叱られてしまいました。そして熱があると自覚したからなのか、急に体が熱くなり、あちこちが痛くなってきてしまったのです。
熱がすっかり下がったときは二日たっていて、目を開けるとお父様と一番上のお兄様、そしてヴィン様がいらっしゃいました。彼らはとてもホッとした顔をしております。
そんな顔を見たわたくしは、やっぱり……と内心混乱しておりました。
その後、お母様を愛していたお父様は渋々ながらも後妻を娶りましたが、その方には連れ子がおりました。その連れ子が二番目のお兄様になります。わたくしは二番目のお兄様が大嫌いですが。
そんなわたくしの家庭の事情はともかく、わたくしが十歳になった数日後、婚約者ができましたの。婚約者のお名前は、ヴィンフリート・シュタルク様とおっしゃいます。
金色の髪に碧の目、とても整った面立ちで、三つ年上の侯爵家の方でした。笑みを浮かべたお顔はとても素敵で、なぜかお会いしたことがあるように感じたのが不思議でございます。
「はじめまして。ヴィンフリート・シュタルクです」
「はじめまして。ジークリット・ヴァルターと申します。よろしくお願いいたします」
「ヴィン、ジークリット嬢を庭に案内してさしあげなさい」
「はい、父上。我が家の庭にご案内いたします、ジークリット嬢」
「ありがとうございます」
微笑みと共に差し出された腕に掴まり、ヴィンフリート様のエスコートで侯爵家の庭を案内してくださったのです。そのとき、とても懐かしいといいましょうか……なにやら不思議な感覚がしたのです。
――小路になっている先は、確か赤やピンクのバラが植わっていたはず。
なぜかそう思ったのですが、そんなはずはないと考えていると、ヴィンフリート様が案内してくださった場所には、なんと赤とピンクのバラがありました。そのことに驚き、混乱してしまったのです。
初めて侯爵家にまいりましたのに、どうしてわたくしは、そんなことを知っているのかと。
そしてとても懐かしく感じる、ヴィンフリート様のことも。
ですが、今はそんなことを考えている場合ではございませんので、しっかりとお庭を堪能させていただきました。
案内された先は東屋で、そこには侯爵家の執事とメイドがおります。テーブルの上にはお茶とお菓子が用意されておりました。
お相手は格上の侯爵家の方ですから、お話するにもとても緊張いたしましたが、ヴィンフリート様が気を遣ってくださり、徐々に打ち解けることができました。とてもお話が上手な方で、その声や仕草に、なぜか懐かしさを感じたのです。
「ヴィンフリート様、」
「婚約者となったのだから、ヴィンと呼んでください」
「わかりました、ヴィン様。では、わたくしのことはジルとお呼びください」
「ジル……と呼び捨てでも構いませんか?」
「はい」
婚約者となったのですから、愛称で呼ぶように提案してくださったヴィン様。そしてわたくしのこともジルと呼んでくださって、とても嬉しかったのです。
そこからいろいろなお話をいたしました。好きな食べ物、色、動物。とにかく、本当にいろいろなことを話しました。
好きなものが似通っていてお互いに微笑んだのは言うまでもなく、さらに仲良くなったような気がいたします。
それから、この国のしきたりに従い、婚約者となった侯爵家に住むことになるお話もしてくださいました。
本来ならば、婚姻する一月前から婚家に入るのですが、ヴァルター家は後妻とその連れ子である二番目のお兄様がとても問題でした。二人は勝手に散財するばかりで家のことなどなにひとつせず、二番目のお兄様に至っては、わたくしに暴力を振るおうとなさったこともしばしばです。
それを止めてくださったのが、血の繋がったお兄様やお父様でした。ですから、わたくしは二番目のお兄様が大嫌いなのです。貴族として育ったとは思えないほど、とても粗暴な方ですから。
お父様も一番上のお兄様も継母や二番目のお兄様のそんな態度と行動を問題視しており、短期間に問題を起こしすぎて問題視どころではなくなりました。
結局、継母と二番目のお兄様はお父様の逆鱗に触れてしまい、現在領地に幽閉されております。そしてお父様が後妻の話を持ってきた方にもお話をしたところ、そんな性格や態度をすると知らなかったと話し、驚くと共にとても後悔なさっていたそうです。
今は継母との離縁に向けて頑張っている最中なのです。
まあ、結局はこの一月後に離縁することができたのですが。
そういった問題があって、学園に関することが疎かになってしまいそうだということでお父様から侯爵様にお話があり、わたくしの年齢的にはとても早いですが、特別措置として侯爵家に入ることとなりました。
ヴィン様はその説明を、幼いわたくしにもわかるように、噛み砕いてお話してくださったのです。
「わたくしでいいのでしょうか……」
「もちろん。いろいろと学ぶことも多いからね。きっと役にたつよ。学園にも一緒に行こう」
「はいっ!」
この国の貴族は、十歳から十八歳まで学園に通うことになります。わたくしも四の月から学園に通うことになっております。ヴィン様とは三歳違いますから、一緒に通えるのはヴィン様が卒業なさるまでです。
ですが、これから通うことになる学園には飛び級できる制度がございますから、わたくしが頑張れば、ヴィン様と一緒に卒業できる可能性もありますの。
まあ、ヴィン様はとても優秀だと聞き及んでおりますので、きっと飛び級をしてわたくしよりも先に卒業なさるのでしょう。
そう思っていたのですが。
「ジルが頑張って僕と一緒に卒業したいというなら、僕はそれに合わせるよ」
「よろしいのですか?」
「ああ。僕の卒業まで、まだ五年あります。せめて、最後の一年は同じ学年で一緒に過ごせるよう、頑張ろうね」
「はいっ! あの……わからないお勉強は、教えてくださいますか?」
「もちろん。一緒に頑張ろう」
一緒に頑張ろうと仰ってくださったヴィン様に、とても感謝いたしました。
侯爵家に行くにあたり、家からいろいろと持ち出さないといけないものがあることから、一旦帰宅いたしました。侯爵家に入るのは、侯爵家側の準備もあることから、一月後となったのです。
さらにその一月後に学園の入学式があります。それまでにきちんとお勉強ができるといいなあ……と考えておりました。
馬車に揺られ、お父様と一緒に家に帰ったその日の夜。
「お嬢様、なんだかお顔が赤いようですわ」
「え……?」
「失礼いたしますね」
自室でドレスを脱がせてくれていたメイドが、とても不思議そうな顔をしてわたくしを見ました。そして額に手が当てられるとすぐに驚いた顔をして、ドレスではなく夜着に着替えさせたのです。
なにかあったのでしょうか。
「誰か、旦那様にご連絡を。お嬢様が熱を出されております!」
「かしこまりました!」
「お食事は軽いものを、と料理長に伝えてください」
「かしこまりました」
「熱……? ああ、だから馬車の中にいたときから体が火照っていたのですね……」
「もう、お嬢様! そういうのはもっと早く仰ってくださいまし!」
ボーっとした頭で呟くと、小さなころからわたくしの担当をしてくださっているエルサに叱られてしまいました。そして熱があると自覚したからなのか、急に体が熱くなり、あちこちが痛くなってきてしまったのです。
熱がすっかり下がったときは二日たっていて、目を開けるとお父様と一番上のお兄様、そしてヴィン様がいらっしゃいました。彼らはとてもホッとした顔をしております。
そんな顔を見たわたくしは、やっぱり……と内心混乱しておりました。
68
あなたにおすすめの小説
【完結】手の届かない桃色の果実と言われた少女は、廃れた場所を住処とさせられました。
まりぃべる
恋愛
アンネッタは、この国では珍しい桃色の髪をしている。
幼い頃母親に待っててねと言われたがいつまでたっても姿を現さず、泣いているところを拾われ、町の食堂につれていかれる。そして、その食堂を営む大将と女将と生活する事になり、そこの常連客達にもよくしてもらい、町の皆にアンネッタは育てられたようなものだった。
境遇も相まってか、幼い頃より周りの人達にとても可愛がられていた。
少し成長すると、偶然にも貴族の目に留まり養子に入る事となった。
平民だった時からは考えられないほどの裕福な生活を送る事で、アンネッタはだんだんと贅沢を覚えていく。
しかしあるとき、問題に巻き込まれてしまう。
責任を取らされる事となったアンネッタは、追放という形で国の端にある、廃れた場所でその後の生涯を送る事となる。
そんなお話。
☆『王道』ではなく、まりぃべるの世界観です。それを楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界と似ている名前、地名、などがありますが、関係ありません。
また、現実世界と似たような単語や言葉があっても、若干言い回しや意味が違う場合があります。
完結 裏切りは復讐劇の始まり
音爽(ネソウ)
恋愛
良くある政略結婚、不本意なのはお互い様。
しかし、夫はそうではなく妻に対して憎悪の気持ちを抱いていた。
「お前さえいなければ!俺はもっと幸せになれるのだ」
殿下、毒殺はお断りいたします
石里 唯
恋愛
公爵令嬢エリザベスは、王太子エドワードから幼いころから熱烈に求婚され続けているが、頑なに断り続けている。
彼女には、前世、心から愛した相手と結ばれ、毒殺された記憶があり、今生の目標は、ただ穏やかな結婚と人生を全うすることなのだ。
容姿端麗、文武両道、加えて王太子という立場で国中の令嬢たちの憧れであるエドワードと結婚するなどとんでもない選択なのだ。
彼女の拒絶を全く意に介しない王太子、彼女を溺愛し生涯手元に置くと公言する兄を振り切って彼女は人生の目標を達成できるのだろうか。
「小説家になろう」サイトで完結済みです。大まかな流れに変更はありません。
「小説家になろう」サイトで番外編を投稿しています。
緑の輪っかの魔法
荒瀬ヤヒロ
恋愛
ある国に双子の姉妹がおりました。
姉のシエラは王子様の婚約者、妹のサリーはそんな姉にいつだって辛く当たる意地悪な妹です。
十六の誕生日に指輪を贈られ求婚されるのがこの国の習わしです。
王子様が婚約者のシエラに指輪を捧げるその日が、刻一刻と迫っていきーー
【完結】鮮血の妖精姫は、幼馴染の恋情に気がつかない ~魔法特待の貧乏娘、公爵家嫡男に求婚されつつ、学園生活を謳歌します~
はづも
恋愛
過去、魔物の大量発生から領地と領民を守るために奮闘したマニフィカ伯爵家は、借金まみれになっていた。
そんな家の娘であるマリアベルは、決めた。自分が魔物をぶっ倒しまくると。
身なりなんて二の次で魔法の特訓と魔物退治に明け暮れる彼女は、いつしか「鮮血のマリアベル」と呼ばれるようになっていた。
幼馴染で公爵家嫡男のアーロン・アークライトは、そんな彼女に長年の片思い中。
学園に入学し、パーティーで着飾ったマリアベルは、「あんなにきれいだったのか」と男たちの注目の的となる。
焦ったアーロンは、他の男にとられる前にと急いで彼女にプロポーズしてしまう。
しかし想いは届かないうえ、不安は的中し、マリアベルは学園で人気者になっていく!
男女問わず無自覚に攻略するマリアベルと、恋敵が増えて胃痛がするアーロン。
アーロンの気持ちは、マリアベルに届くのか!?
ずっと片思いしてたのに上手く思いが伝わらない不憫ヒーローと、「魔力の高い子供が欲しいってこと!?」と勘違いするヒロインの平和なすれ違い&ヒロイン愛されものです。
このお話は、小説家になろう、アルファポリス、ツギクル、エブリスタ、ベリーズカフェに掲載されています。
安らかにお眠りください
くびのほきょう
恋愛
父母兄を馬車の事故で亡くし6歳で天涯孤独になった侯爵令嬢と、その婚約者で、母を愛しているために側室を娶らない自分の父に憧れて自分も父王のように誠実に生きたいと思っていた王子の話。
※突然残酷な描写が入ります。
※視点がコロコロ変わり分かりづらい構成です。
※小説家になろう様へも投稿しています。
婚約破棄は踊り続ける
お好み焼き
恋愛
聖女が現れたことによりルベデルカ公爵令嬢はルーベルバッハ王太子殿下との婚約を白紙にされた。だがその半年後、ルーベルバッハが訪れてきてこう言った。
「聖女は王太子妃じゃなく神の花嫁となる道を選んだよ。頼むから結婚しておくれよ」
可愛らしい人
はるきりょう
恋愛
「でも、ライアン様には、エレナ様がいらっしゃるのでは?」
「ああ、エレナね。よく勘違いされるんだけど、エレナとは婚約者でも何でもないんだ。ただの幼馴染み」
「それにあいつはひとりで生きていけるから」
女性ながらに剣術を学ぶエレナは可愛げがないという理由で、ほとんど婚約者同然の幼馴染から捨てられる。
けれど、
「エレナ嬢」
「なんでしょうか?」
「今日の夜会のパートナーはお決まりですか?」
その言葉でパートナー同伴の夜会に招待されていたことを思い出した。いつものとおりライアンと一緒に行くと思っていたので参加の返事を出していたのだ。
「……いいえ」
当日の欠席は著しく評価を下げる。今後、家庭教師として仕事をしていきたいと考えるのであれば、父親か兄に頼んででも行った方がいいだろう。
「よければ僕と一緒に行きませんか?」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる