姉から奪うことしかできない妹は、ザマァされました

饕餮

文字の大きさ
14 / 15

ミランダの末路

しおりを挟む
 特にこれといった変化もなく月日は流れ、わたくしは今日、学園を卒業いたしました。

 ミランダの処遇を聞いた翌月にデビュタントを迎えました。エスコートは父となった伯父様がしてくだり、その後、わたくしのお披露目をカレスティア家で行いました。
 お茶会には母となった伯母や姉となったいとこが連れていってくださり、他にも友人ができましたし、学園生活も私生活も充実した日々でした。
 それから婚約者に関してですが、両親は悩んでおりましたが、わたくしは婚姻しないことを決めました。確固たる理由と呼べるものはないのですが、しいていうのであれば、ミランダと双子だということが原因です。

 ミランダが語った記憶では神を名乗る者から魅了と隷属の魔法を奪ったので使えるようになりましたが、本来は血筋に現れるそうです。ミランダのように、突発的に発生する、というのはほぼないそうです。
 我が国にはそういった血筋の方はおりませんが、別の国にいらっしゃるそうで、そちらはきちんと管理されているのだとか。
 あと、ミランダの魔法ですが、双子の姉であるわたくしも少なからず影響を受けております。それが、魅了と隷属両方の耐性と防ぐことです。
 表面だけみればいいことだとは思います。けれど、もし婚姻して子や子孫に、耐性や防護ではなくミランダと同じ魔法が現れてしまったら? もし、ミランダのように悪意をもって使ってしまったら?
 そう考えたら、子孫を残そうとは思えませんでした。

 元両親どちらの先祖にも……カレスティアの先祖にも、魅了か隷属の魔法を持つ方はいないのです。国外から嫁いでいらした方もいないそうです。
 両家の家系図を、婚姻した家まで遡って見ても、魅了か隷属を持つ方はいないのです。どうしてなのかと思われたのと同時に、ミランダとわたくしは元両親の子ではないのではないかと疑われました。
 けれど、二人とも面立ちは母に似ておりましたし、髪色はミランダが母、わたくしは父と同じで、瞳の色はミランダが父、わたくしは母と同じでしたので、その疑いは早々に消えました。

 とはいえ、ミランダの荒唐無稽な話もあり、今はわたくしに耐性があって防御ができていても、いつかそれが逆転し、子や孫にミランダの性質が現れて生まれないとは限らないのです。なので、わたくしは血を残すことをやめました。
 カレスティアの家族や殿下たち王族にも、ジョンパルト家の領地経営をお願いされたり説得されたりしましたけれど、わたくしは頑として譲りませんでした。混合型の禁忌魔法は、残してはならないと言って。
 それを聞いた家族は、わたくしの決意の固さとその危険性を考慮してくださり、わたくしの説得を諦めました。王族は……わかりません。何か考えているようでした。
 ――のちに、王族を説得できなかったことを後悔することになります。

 あの日、三つ目の魔法を見つけてオビエス様が褒めてくださったこともあり、宮廷魔導師を目指そうと、学園では魔術関連を専門に学びました。特に付与に関する魔法です。
 わたくしに耐性があり、防御できているのであれば、それを魔道具に込めればいいのではないかと考えたからです。
 魔道具ができれば、この先もし同じ出来事があったとしても、防ぐことができるようになりますし、隣国にいるという魅了と隷属を扱う方にその魔道具を渡すことができるかもしれないのです。
 存在がはっきりしているのは隣国だけですが、もしかしたら別の遠い国にも、わたくしたちと同じような理由で苦しんでいる方がいるかもしれません。そういった理由もあって付与ができる宮廷魔導師になろうと考えたのです。
 もちろん、他の魔法も学びましたし、オビエス様が使っていた魔法も習いました。宮廷魔導師となる以上、禁忌以外のありとあらゆる魔法を学ばなければならないのです。
 とはいえ適正もありますから、全ての魔法を扱えるかといえばそうではないのですが、幸いなことにわたくしは全魔法に対して適正があり、中でも防御と付与は突出していたのです。
 だからこそ、付与を中心に、より深く学びました。

 魔導師の試験はとても難しかったですが、無事に合格いたしました。
 翌月からは宮廷魔導師として勤務いたします。
 とはいえ、新人ですので、希望の部署につけるかどうかわかりません。それでもわたくしは、いつかミランダがいる塔に行きたいと考えておりました。

「卒業おめでとう」
「ありがとうございます、お父様」

 卒業式とパーティーが終わり、父と一緒にカレスティア家へと戻ると、家族や使用人たちが待っていました。家族と使用人たちに祝福され、部屋に戻りましたが、いつの間にか寝ておりました。

 翌日、家族と使用人たちの総勢で改めて卒業をお祝いされ、パーティーを開いてくださったのです。思い出に残る、温かなパーティーでした。


*****


 卒業して数年が経ちました。
 現在のわたくしは、宮廷魔導師となって一月後にミランダが塔に配属となり、希望通り魅了と隷属の単独と混合型の防御魔法を付与する仕事をしております。
 そう、ミランダのことは過去形なのです。
 塔に連れて来られたミランダは、魅了と隷属の魔法がどこに宿っているのかと探される、実験動物と同じ扱いをされていたのです。わたくしが塔に来た時のミランダは何かの液体に浸かっていてすでに目はなく、両腕や足、首には何本もの管が繋がれていて、生きているのか死んでいるのかわからない状態でした。
 その管の色は黒かったのですが、きっと血の色がわからないような配慮がなされていたのでしょう。配属されて案内されたそれが最初に見たミランダでした。

 一月後、呼ばれていった先で見たミランダは、同じように液体に浸かっていました。胸からお腹にかけて開かれており、中は空っぽでしたが管はありませんでした。そこにいた魔導師様によると、すでに亡くなっているのだそうです。
 ですが、ミランダの荒唐無稽な話から、魅了と隷属の魔法がどこから発生していたのかわからず、残るは皮膚や頭の中を調べるだけの状態だったのだそうです。

 この時も最初の時もなんとか我慢しましたが、自室に帰ったあと、吐き戻してしまいました。まさか、そんな状態のミランダに会うとは思っていなかったからです。
 けれど、あの状態を見て、子孫を残さないと決めたのは正しいと感じました。それほどに危険な魔法であり、魔法を宿す方が少ないために、研究が進んでいないのです。
 塔に入るにあたり、わたくしに限り一度塔に配属になれば、二度と別の部署にいけないと言われました。
 その時はどうしてそのようなことを聞くのかわかりませんでしたが、ミランダの
姿を見て、耐性と防御があるとはいえ、わたくしがすぐに塔へと配属になった理由を察しました。
 魔道具に魔法を付与するのはもちろんですけれど、もしミランダのように魅了と隷属魔法を発現されても困るから、監視の意味もあるのです。今は大丈夫でも、いつかミランダと同じ魔法が発現したら、ミランダと同じ末路を辿るのでしょう。
 もしかしたら、わたくしが死んだあと、ミランダと同じ扱いをされるのかもしれません。

 そんな可能性もあったのですが、結局は老齢になるまで発現することはなく、死ぬまでずっと魔道具に付与をしてすごすことになります。

しおりを挟む
感想 52

あなたにおすすめの小説

私の、虐げられていた親友の幸せな結婚

オレンジ方解石
ファンタジー
 女学院に通う、女学生のイリス。  彼女は、親友のシュゼットがいつも妹に持ち物や見せ場を奪われることに怒りつつも、何もできずに悔しい思いをしていた。  だがある日、シュゼットは名門公爵令息に見初められ、婚約する。 「もう、シュゼットが妹や両親に利用されることはない」  安堵したイリスだが、親友の言葉に違和感が残り…………。

乙女ゲームの悪役令嬢の兄の婚約者に転生しましたが傷物になったので退場を希望します!

ユウ
恋愛
平凡な伯爵令嬢のリネットは優しい婚約者と妹と穏やかで幸福な日々を送っていた。 相手は公爵家の嫡男であり第一王子殿下の側近で覚えもめでたく社交界の憧れの漆黒の騎士と呼ばれる貴族令息だった。 結婚式前夜、婚約者の妹に会いに学園に向かったが、そこで事件が起きる。 現在学園で騒動を起こしている第二王子とその友人達に勘違いから暴行を受け階段から落ちてしまう… その時に前世の記憶を取り戻すのだった… 「悪役令嬢の兄の婚約者って…」 なんとも微妙なポジション。 しかも結婚前夜で傷物になる失態を犯してしまったリネットは婚約解消を望むのだが、悪役令嬢の義妹が王子に婚約破棄を突きつける事件に発展してしまう。

〈完結〉妹に婚約者を獲られた私は実家に居ても何なので、帝都でドレスを作ります。

江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」テンダー・ウッドマンズ伯爵令嬢は両親から婚約者を妹に渡せ、と言われる。 了承した彼女は帝都でドレスメーカーの独立工房をやっている叔母のもとに行くことにする。 テンダーがあっさりと了承し、家を離れるのには理由があった。 それは三つ下の妹が生まれて以来の両親の扱いの差だった。 やがてテンダーは叔母のもとで服飾を学び、ついには? 100話まではヒロインのテンダー視点、幕間と101話以降は俯瞰視点となります。 200話で完結しました。 今回はあとがきは無しです。

【完結】妹に全部奪われたので、公爵令息は私がもらってもいいですよね。

曽根原ツタ
恋愛
 ルサレテには完璧な妹ペトロニラがいた。彼女は勉強ができて刺繍も上手。美しくて、優しい、皆からの人気者だった。  ある日、ルサレテが公爵令息と話しただけで彼女の嫉妬を買い、階段から突き落とされる。咄嗟にペトロニラの腕を掴んだため、ふたり一緒に転落した。  その後ペトロニラは、階段から突き落とそうとしたのはルサレテだと嘘をつき、婚約者と家族を奪い、意地悪な姉に仕立てた。  ルサレテは、妹に全てを奪われたが、妹が慕う公爵令息を味方にすることを決意して……?  

卒業パーティでようやく分かった? 残念、もう手遅れです。

ファンタジー
貴族の伝統が根づく由緒正しい学園、ヴァルクレスト学院。 そんな中、初の平民かつ特待生の身分で入学したフィナは卒業パーティの片隅で静かにグラスを傾けていた。 すると隣国クロニア帝国の王太子ノアディス・アウレストが会場へとやってきて……。

妹のことが好き過ぎて婚約破棄をしたいそうですが、後悔しても知りませんよ?

カミツドリ
ファンタジー
侯爵令嬢のフリージアは婚約者である第四王子殿下のボルドーに、彼女の妹のことが好きになったという理由で婚約破棄をされてしまう。 フリージアは逆らうことが出来ずに受け入れる以外に、選択肢はなかった。ただし最後に、「後悔しないでくださいね?」という言葉だけを残して去って行く……。

【完結】何でも奪っていく妹が、どこまで奪っていくのか実験してみた

東堂大稀(旧:To-do)
恋愛
 「リシェンヌとの婚約は破棄だ!」  その言葉が響いた瞬間、公爵令嬢リシェンヌと第三王子ヴィクトルとの十年続いた婚約が終わりを告げた。    「新たな婚約者は貴様の妹のロレッタだ!良いな!」  リシェンヌがめまいを覚える中、第三王子はさらに宣言する。  宣言する彼の横には、リシェンヌの二歳下の妹であるロレッタの嬉しそうな姿があった。  「お姉さま。私、ヴィクトル様のことが好きになってしまったの。ごめんなさいね」  まったく悪びれもしないロレッタの声がリシェンヌには呪いのように聞こえた。実の姉の婚約者を奪ったにもかかわらず、歪んだ喜びの表情を隠そうとしない。  その醜い笑みを、リシェンヌは呆然と見つめていた。  まただ……。  リシェンヌは絶望の中で思う。  彼女は妹が生まれた瞬間から、妹に奪われ続けてきたのだった……。 ※全八話 一週間ほどで完結します。

永遠の誓いをあなたに ~何でも欲しがる妹がすべてを失ってからわたしが溺愛されるまで~

畔本グラヤノン
恋愛
両親に愛される妹エイミィと愛されない姉ジェシカ。ジェシカはひょんなことで公爵令息のオーウェンと知り合い、周囲から婚約を噂されるようになる。ある日ジェシカはオーウェンに王族の出席する式典に招待されるが、ジェシカの代わりに式典に出ることを目論んだエイミィは邪魔なジェシカを消そうと考えるのだった。

処理中です...