異世界転移した私と極光竜(オーロラドラゴン)の秘宝

饕餮

文字の大きさ
32 / 62
婚約編

裁縫三昧のようです★

しおりを挟む
 ジークハルト様が帰られたあと、枕カバーの刺繍をしていたら父と兄が帰宅した。バルドさんから連絡はもらっていたけれどジークハルト様がすぐに帰るとは思っていなかったようで、一時間ほどで帰ったことを驚いていた。

「昨日のお礼を直接言いたいからと仰っていました。そのあとは雑談をして、草蜘蛛グラス・スパイダーのことを教えていただきました」
「そうか。殿下お一人だったか?」
「はい」

 夕食時にそんな会話をして明日の予定を聞くと明日は二人とも家にいるというので、午前中一杯は向こうの部屋でミシンを使いたいと話すと許可が下りた。そのあと、執務室で文字の勉強を見てもらいOKが出たのでこちらの部屋に戻ると、お風呂に入ってから少しだけ刺繍をして眠りについた。
 次の日、朝食後は向こうの部屋へ行って迷彩服の型紙を探し、それを見ながら父用と兄用の型紙を起こした。布地は明後日買いに行くのでここまでにして、残りは前回の続きと仕上げをし、残っていたクッションや枕本体もミシンで縫ってしまった。そしてナミルさんにヒト型になってもらい、採寸したのだけれど……。

「……胸がとても大きいのですね」
<そう? ボクの種族はみんなこんな感じだよー>
「そ、そうですか……」

 ナミルさんは私よりも少しだけ身長が高くて細身、胸は爆乳と呼べるほど大きなもので、Gカップはありそうだった。しかも肩のあたりで切り揃えられた緑の黒髪と呼べる髪はサラサラ艶々、アーモンド型の目と金色の瞳をした可愛い系の美人。チャームポイントは八重歯だろうか。
 ……アレイさんといいシェーデルさんといい、美形率が高いですね、この世界の魔物は。
 ちなみに私はDカップなので、大きいというほどではない。

 内心苦笑しながら、どのような服にしようかと頭を悩ませる。まあ、ラフな格好と言っていたので、この世界でも違和感のない服を作ろうと決め、まずは首に巻くリボンを作った。体色が黒いので淡い色がいいだろうと、ピンクかベージュの色にする。ただ、問題が一つ。

「ナミルさん、首につけるリボンですけれど、本来の姿と仔虎姿では、どちらで作ったらいいでしょうか? それともどちらも作ったほうがいいですか?」
<本来の姿で作ってー。そうすれば仔虎になった時、勝手に小さくなるからー>
「そうなのですね。では、今度はサーベルタイガーの姿になっていただけますか? 服は布地がないですし時間がかかりますから、先にリボンを作りましょうか」
<わーい! ありがとう、ミカお姉ちゃん!>

 ヒト型からすぐに本来の大きさのサーベルタイガーになったナミルさん。嬉しそうに喉をゴロゴロと鳴らし、尻尾も揺れていた。立ったままだと届かないので伏せてもらう。

<牙に気をつけてねー>
「はい」

 注意喚起されたのでその通りにし、首の周囲を測る。ぴったりだと苦しいし動きも制限されてしまうので、緩みも持たせた。そしてこちらの世界の布地はちょうどいい布地がなかったので、日本産(?)の布地を十メートル単位で買った布や端切れを引っ張りだしたら、ナミルさんが<これがいい!>ととある布地に前足を置いた。
 それは、黒にいろいろな仕草を象った猫模様の端切れだった。ところどころに金魚や鞠、毛糸などで戯れる猫が描かれている。

「布地は黒いし模様は猫だけれど、いいのですか?」
<うん! だって可愛いもん!>
「確かに可愛いですよね。では、これを繋げてリボンにしましょう。そこにタグをぶら提げますか?」
<わーい! ありがとー! うん、そうしてー>

 首を伸ばして私に頭を寄せたナミルさんは、器用にも牙を当てないようにスリスリと頬ずりをしてくる。擽ったかったけれど、しばらくさせたいようにした。……うん、もふもふは正義です!

 そして長さが足りるよう端切れを切ったり縫い合わせたりしてリボン状にする。タグを一度預かると鎖を抜き、組み紐を穴に通すとリボンに括りくけた。その状態でリボンと組み紐に【状態維持】の魔法をかけ、その首の巻いた。木に引っ掛けても首が絞まらないよう、ズルをして向こうの世界で買ったマグネット式のホックボタンにした。念のために手を入れて引っ張るとすぐに外れてくれたので、これなら大丈夫と内心で頷く。

「はい、できましたよ」
<わー!>
『あら、可愛いじゃない! 似合ってるわよ~、ナミル』
《おお、いい感じじゃぞ、ナミル》
<シェーデルオネェもアレイ爺もありがとー>

 ミカお姉ちゃんもありがとー、と言ったナミルさんに笑顔を向ける。そこで時間になったようで、「お昼だよ」と父が迎えに来たので、全ての布や端切れをインベントリにしまうと、父と一緒に部屋を出た。
 お昼を食べたあとはこちらの部屋で刺繍の続きをし、出来上がったころに父と兄が顔をだしたので、二人に枕だけを渡した。枕の刺繍は安直にもヒツジである。

「いいのかい?」
「はい。使っていただけると嬉しいです」
「ああ、そうしよう」

 ほくほく顔の二人はお茶を飲んでまた執務に戻って行ったので、夕食までは端切れを組み合わせ、巾着を作っていた。茶器を片付けるためなのかアイニさんがやって来て巾着を不思議そうに見ていたので、片付けたタイミングで巾着を渡したのだけれど。

「お嬢様、これはどのようなものでしょうか」
「布の切れ端で作った巾着というものなのです。小物入れにしたり、ちょっとしたお出かけに持っていけるような袋やバッグといえばいいのかしら。用途はさまざまなのです」
「そうなのですね。とても便利そうです。それに、布の切れ端で作るという発想もありませんでした」
「こちらではこういったものはないのですか?」
「はい。ですから、いつも困るのです。スパイダーシルクですと捨てるには勿体無いですし、何かを作るにしても少々布が足りませんし……」

 アイニさんをはじめとした侍女たちは本当に困っているのか、小さく溜息をついた。作り方を教えたほうがいいのかと思い、聞いてみた。

「アイニさん、その作り方を知りたいですか?」
「はい、知りたいです。できれば他に何が作れるのかも知りたいのですが……」
「ふふ、いいですよ。切れ端のことを端切れと言っているのですけれど、これを組み合わせて模様にし、クッションカバーや枕カバーも作れますよ」
「ほ、本当にいいのですか?!」
「だって、端切れを捨てられなくて困っているのでしょう? 有効利用ができるのならば、捨てるより何か作ったほうがいいではありませんか」

 作り方を教えると言ったら驚かれたけれど、裁縫さえできれば作れると思う。凝ったものになると端切れの色を利用して図案化し、それで各種カバーや巾着が作れるのだから、それを教えても問題ないと思うのだ。

「確かにそうでございます。ああ……ありがとうございます! 他の侍女たちもよろしいですか?」
「いいですよ。ただ、今日いきなりというのはやめましょう。教わるにしても端切れや裁縫道具が必要ですし、アイニさんたちのお仕事に支障が出てしまったら、アイニさんたちが父に怒られてしまいますから。それは私の本意ではないので」
「わかっております。まずは作ってみたい者を募り、何を作りたいか聞いてから、でしょうか」
「そうですね、そのほうがいいわ。その巾着は見本として持って行ってください」
「ありがとうございます、お嬢様。では少々お借りいたしますね」

 アイニさんはインベントリに巾着をしまうと、嬉しそうな顔をして茶器を片付けていった。後日、先にアイニさんを含めた侍女三人にクッションカバーのパッチワークの作り方を教えたのだけれど、それがいつの間にかモーントシュタイン家の侍女だけではなく領の庶民の間にまで広がっていて、領地の特産物として国や世界に広がるだなんて、この時の私は知りもしなかった。

 そして翌日、お城でこの国の王と謁見した。ご兄弟だけあってとてもよく似ていらっしゃったけれどジークハルト様とは違う威厳があって、こういったことに慣れていない私は内心震えてしまった。そして、陛下のお言葉はジークハルト様を慮った言葉ばかりで、とても愛情に溢れていた。

「王家に嫁ぐとなれば想像もつかないほど大変なこともあるだろうと思う。だが、グラナートはとても愛情深い弟だ。モーントシュタイン侯爵令嬢、どうか今まで苦労してきたグラナートを幸せにしてやっておくれ」
「勿体無いお言葉でございます。はい、必ず」

 話す許可をいただけたので、そう返事をする。父曰く、陛下は私の事情を知っているという。それでもそう仰ると言うことは、弟であるジークハルト様を本当に心配し、愛しているのだろうということが垣間見えた。だからこそ、せいいっぱい、陛下や王太后様に認めてもらえる努力をしようと思った。
 そのあと、突然その場に現れた王太后様を紹介していただいたばかりではなく、手紙とお菓子のお礼まで言われて恐縮してしまったけれど、厳しくも愛情深い方だと感じることができたのはよかったと思う。そして王太后様に習うのが楽しみでもあった。

 謁見が終わったあとは父の職場に行く。そこで内緒で作ったクッションを二人に渡すと、とても喜んでくれた。もちろん、枕と違ってお城では何があるか私にはわからないから、クッションには魔法を施してある。そしてクッションを椅子に乗せた父や兄と一緒に仕事をし、帰宅。
 次の日は商会に連れて行ってもらい、ダークグリーンのスパイダーシルクと、ナミルさんの服用にベージュと黒のスパイダーシルクを購入し、帰って来た。そして父に向こうの部屋で二人の服を作るからと一日中篭り、二人の服とナミルさんの服を完成させて魔法を施した。
 それを夕食後のお茶を飲んでいる時に二人に渡したのだけれど、「こんなに早くできるなんて……」と絶句したあと、二人が抱きしめてくれた。

 それがとても嬉しくて、私も二人を抱きしめ返したのだった。






もしも実花の独白をグラナートが聞いていたら絶対にこんな反応をするよ~と思い、作者は爆笑しておりました(笑)
二人っきりだとけっこうバカップルになりそうな二人(笑)

実花「Dカップなので、それほど大きいわけではないのですけれど……」
グラ「なにっ?!(婚姻したら、夜にミカを溺愛する楽しみが増えた)」
実花「じじじ、ジークハルトさま?!」

みたいな(笑)


しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

眺めるだけならよいでしょうか?〜美醜逆転世界に飛ばされた私〜

蝋梅
恋愛
美醜逆転の世界に飛ばされた。普通ならウハウハである。だけど。 ✻読んで下さり、ありがとうございました。✻

冷酷騎士団長に『出来損ない』と捨てられましたが、どうやら私の力が覚醒したらしく、ヤンデレ化した彼に執着されています

放浪人
恋愛
平凡な毎日を送っていたはずの私、橘 莉奈(たちばな りな)は、突然、眩い光に包まれ異世界『エルドラ』に召喚されてしまう。 伝説の『聖女』として迎えられたのも束の間、魔力測定で「魔力ゼロ」と判定され、『出来損ない』の烙印を押されてしまった。 希望を失った私を引き取ったのは、氷のように冷たい瞳を持つ、この国の騎士団長カイン・アシュフォード。 「お前はここで、俺の命令だけを聞いていればいい」 物置のような部屋に押し込められ、彼から向けられるのは侮蔑の視線と冷たい言葉だけ。 元の世界に帰ることもできず、絶望的な日々が続くと思っていた。 ──しかし、ある出来事をきっかけに、私の中に眠っていた〝本当の力〟が目覚め始める。 その瞬間から、私を見るカインの目が変わり始めた。 「リリア、お前は俺だけのものだ」 「どこへも行かせない。永遠に、俺のそばにいろ」 かつての冷酷さはどこへやら、彼は私に異常なまでの執着を見せ、甘く、そして狂気的な愛情で私を束縛しようとしてくる。 これは本当に愛情なの? それともただの執着? 優しい第二王子エリアスは私に手を差し伸べてくれるけれど、カインの嫉妬の炎は燃え盛るばかり。 逃げ場のない城の中、歪んだ愛の檻に、私は囚われていく──。

召喚先は、誰も居ない森でした

みん
恋愛
事故に巻き込まれて行方不明になった母を探す茉白。そんな茉白を側で支えてくれていた留学生のフィンもまた、居なくなってしまい、寂しいながらも毎日を過ごしていた。そんなある日、バイト帰りに名前を呼ばれたかと思った次の瞬間、眩しい程の光に包まれて── 次に目を開けた時、茉白は森の中に居た。そして、そこには誰も居らず── その先で、茉白が見たモノは── 最初はシリアス展開が続きます。 ❋他視点のお話もあります ❋独自設定有り ❋気を付けてはいますが、誤字脱字があると思います。気付いた時に訂正していきます。

【完結】恋につける薬は、なし

ちよのまつこ
恋愛
異世界の田舎の村に転移して五年、十八歳のエマは王都へ行くことに。 着いた王都は春の大祭前、庶民も参加できる城の催しでの出来事がきっかけで出会った青年貴族にエマはいきなり嫌悪を向けられ…

おばさんは、ひっそり暮らしたい

蝋梅
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

理想の男性(ヒト)は、お祖父さま

たつみ
恋愛
月代結奈は、ある日突然、見知らぬ場所に立っていた。 そこで行われていたのは「正妃選びの儀」正妃に側室? 王太子はまったく好みじゃない。 彼女は「これは夢だ」と思い、とっとと「正妃」を辞退してその場から去る。 彼女が思いこんだ「夢設定」の流れの中、帰った屋敷は超アウェイ。 そんな中、現れたまさしく「理想の男性」なんと、それは彼女のお祖父さまだった! 彼女を正妃にするのを諦めない王太子と側近魔術師サイラスの企み。 そんな2人から彼女守ろうとする理想の男性、お祖父さま。 恋愛よりも家族愛を優先する彼女の日常に否応なく訪れる試練。 この世界で彼女がくだす決断と、肝心な恋愛の結末は?  ◇◇◇◇◇設定はあくまでも「貴族風」なので、現実の貴族社会などとは異なります。 本物の貴族社会ではこんなこと通用しない、ということも多々あります。 R-Kingdom_1 他サイトでも掲載しています。

【完結】聖女召喚の聖女じゃない方~無魔力な私が溺愛されるってどういう事?!

未知香
恋愛
※エールや応援ありがとうございます! 会社帰りに聖女召喚に巻き込まれてしまった、アラサーの会社員ツムギ。 一緒に召喚された女子高生のミズキは聖女として歓迎されるが、 ツムギは魔力がゼロだった為、偽物だと認定された。 このまま何も説明されずに捨てられてしまうのでは…? 人が去った召喚場でひとり絶望していたツムギだったが、 魔法師団長は無魔力に興味があるといい、彼に雇われることとなった。 聖女として王太子にも愛されるようになったミズキからは蔑視されるが、 魔法師団長は無魔力のツムギをモルモットだと離そうとしない。 魔法師団長は少し猟奇的な言動もあるものの、 冷たく整った顔とわかりにくい態度の中にある優しさに、徐々にツムギは惹かれていく… 聖女召喚から始まるハッピーエンドの話です! 完結まで書き終わってます。 ※他のサイトにも連載してます

【完結】聖女召喚に巻き込まれたバリキャリですが、追い出されそうになったのでお金と魔獣をもらって出て行きます!

チャらら森山
恋愛
二十七歳バリバリキャリアウーマンの鎌本博美(かまもとひろみ)が、交差点で後ろから背中を押された。死んだと思った博美だが、突如、異世界へ召喚される。召喚された博美が発した言葉を誤解したハロルド王子の前に、もうひとりの女性が現れた。博美の方が、聖女召喚に巻き込まれた一般人だと決めつけ、追い出されそうになる。しかし、バリキャリの博美は、そのまま追い出されることを拒否し、彼らに慰謝料を要求する。 お金を受け取るまで、博美は屋敷で暮らすことになり、数々の騒動に巻き込まれながら地下で暮らす魔獣と交流を深めていく。

処理中です...