異世界転移した私と極光竜(オーロラドラゴン)の秘宝

饕餮

文字の大きさ
50 / 62
結婚編

デートしました 前編

しおりを挟む
 念のため自分のタグを作ったり、クッションを作ったり、登城してジークハルト様のお手伝いをしたりしているうちに、あっという間にデートする日になった。早すぎるでしょう?!

 なんて言っていても仕方がない。デートに行くまでの間に、友人になってくださったラファエラ様たちに王都に越してきたことを手紙で教えると、社交シーズンに入る前に一度皆さんと会う約束をした。それはそれで楽しみではある。
 まだジークハルト様にには伝えていないけれど父には話してあるし、父も何も言わないことから、彼女たちと交流するのは大丈夫なのだろう。駄目なら紹介すらしない人ですし、父は。

 それはともかく、朝から調理場でミゲルさんと一緒にお弁当作り。今日は簡単にリージェのおにぎりとハンバーグ、玉子焼き、トマト、アスパラベーコンと野菜ベーコンなど、彩りや食感のいいものを用意してみた。
 それらを重箱に詰め、おにぎりだけ持っていって足りないと困るのでパンも何種類か用意し、緑茶と一緒に籠に入れるとインベントリにしまう。そして父や兄と一緒に城へと向かった。

「おはよう、ミカ」
「おはようございます、ジークハルト様」

 周囲に人がいるというのに唇にキスをされて、顔を赤くしながらも睨むとまたキスをされてしまった。うう……恥ずかしい。
 父や兄とはそこで別れ、ジークハルト様のエスコートで別の場所に向かう。

「ジークハルト様、どこに向かっているのですか?」
「竜体の発着場とでもいうのかな。城から飛び立つ時、そこから行くんだ」
「それはジークハルト様だけですか?」
「いや、城に勤めている者全てだ。登城するのに、中には竜体で飛来して来る者もいるからな」
「そうなのですね」

 兄曰く、竜体は小型旅客機並みに大きいと言っていたので、そのぶん広い場所になるのだろう。そして歩くこと十五分、門をくぐると突然目の前が開けた。

「ミカたちはあれに乗ってもらう」
「……はい」

 ジークハルト様が差し示したのは、本当に籠の形をしていた。といっても網目があるとかではなく、木の箱といったほうが近いかも知れない。
 そこまで案内されてジークハルト様が扉を開くと、中にはたくさんのクッションやブランケットなど、温かそうなものがたくさんあった。広さはだいたい二メメトルくらいの円形で、左右と上はガラス張りになっている。

「ミカ、上空は寒い。俺は平気だが、人型だと寒さを感じる。だから、今は暑いだろうが、中に入ったらこれを着てくれ」
「これは……毛皮のコートでしょうか?」
「ある意味そうだが、実際は違う。毛皮は裏に使っているが、表は俺の抜けた羽で作っているんだ」
「え……」

 王族の翼は、鳥の羽根と同じ形だという。羽ばたく時にそれが抜け落ちたりするのだけれど、それを糸状に加工したりそのまま使うことによって、とても高い防寒具になるのだとか。もちろん、防具としても優秀らしい。
 但しそれを使うことができるのは本人かその伴侶、子どもだけらしい。今回は私が使うということを理由に、婚約者だし婚姻するまであと半年もないことから、陛下から使用許可がおりたそうだ。
 ずいぶん効果の高い、高価なダウンコートということなのだろう。買うとなると、値段が恐ろしくて買えそうにないけれど。

 そんなことを考えながら恐る恐るコートを受け取る。その色は羽と同じ白。
 けれど、重いかと思ったコートは文字通り羽根のようにとても軽かった。

「……とても軽くて、温かそうです」
「ああ、とても温かいぞ。ではミカ、少し待っていろ。俺は竜体となるから」
「はい」

 ジークハルト様が籠から離れると、その体を光らせて行く。その光りがどんどん大きくなり、眩しさのあまり目を閉じた。
 それが収まったようでそっと目を開けると、目の前に以前見た緑色のものと、視線を上に上げれば、牙が見えた。

「素敵……綺麗……」

 竜体となったジークハルト様の体は、太陽の光を浴びてキラキラと輝いている。その輝く姿は、写真や動画で見たオーロラのように移ろい、ゆらゆらと揺蕩っているように見えた。
 体は小説の挿絵でよくみる、ずんぐりとしたもので足も手も太くしっかりしている。そして特徴的だったのは、父や兄に聞いていた通り、皮膜ではなく翼だった。それも、真っ白い翼だ。まるで、天使がつけているような、大きな翼が一対
 顔は凛々しくて面長で、頭からは長い角があった。

「ジークハルト様、とてもカッコよくて、素敵です!」
『そ、そうか?』
「はい! お顔を触ってもいいでしょうか?」
『あ、ああ。構わぬ』

 下げてくれた顔というか鼻っ面にそっと手を伸ばす。すべすべとしているし鱗も綺麗だ。
 リアルでドラゴンに触れるなんて! とテンションがあがり、そのまま鼻に抱きつくと、『ミカ、そのままだと出かけられなくなるぞ』とジークハルト様に言われてしまい、仕方なくもう一度撫でてから離れ、おとなしく籠の中へと入った。
 ちなみに魔物たちは、私が家にいる時の定位置――アレイさんは頭の上、小さくなったナミルさんが左肩にぶら下がり、右肩に小さくなったシェーデルさんが乗っている。それを見た護衛の騎士たちが唖然とした顔をしていたけれど、いつものことだからと放置した。
 籠に入るとカチリと音がして鍵が閉まる。どうやら外からギルさんが、扉が開かないようにしてくれたようだ。魔物たちは小さいサイズのまま、ブランケットをかけた私の膝の上に鎮座している。

『ミカ、ちゃんとコートを着たか?』
「はい、着ました。座ってブランケットもかけましたよ」
『わかった。では出発する』

 ジークハルト様の声で、騎士たちも竜体へと変化していく。その姿は茶色や黒い体で翼は皮膜の、挿絵でよくみたドラゴンの姿だ。
 その姿やジークハルト様を見ていると、ジークハルト様の腕が伸びてきて、籠をしっかりと持ち上げる。もっと衝撃があるのかと思いきやそんなことはなく、ふわりと軽く浮き上がったのだから驚いた。
 これから竜体で一時間かかる場所に行く。私も竜体になれれば一緒に空を飛ぶことができたのだろうけれど、人間である以上そんなことはできない。……寂しいことではあるが。

 いつか一緒に飛びたいと敵わない願いを抱きつつ、今はこれで十分だと内心で溜息をつき、滅多に見られない上空からの景色を楽しむことにした。

しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

眺めるだけならよいでしょうか?〜美醜逆転世界に飛ばされた私〜

蝋梅
恋愛
美醜逆転の世界に飛ばされた。普通ならウハウハである。だけど。 ✻読んで下さり、ありがとうございました。✻

冷酷騎士団長に『出来損ない』と捨てられましたが、どうやら私の力が覚醒したらしく、ヤンデレ化した彼に執着されています

放浪人
恋愛
平凡な毎日を送っていたはずの私、橘 莉奈(たちばな りな)は、突然、眩い光に包まれ異世界『エルドラ』に召喚されてしまう。 伝説の『聖女』として迎えられたのも束の間、魔力測定で「魔力ゼロ」と判定され、『出来損ない』の烙印を押されてしまった。 希望を失った私を引き取ったのは、氷のように冷たい瞳を持つ、この国の騎士団長カイン・アシュフォード。 「お前はここで、俺の命令だけを聞いていればいい」 物置のような部屋に押し込められ、彼から向けられるのは侮蔑の視線と冷たい言葉だけ。 元の世界に帰ることもできず、絶望的な日々が続くと思っていた。 ──しかし、ある出来事をきっかけに、私の中に眠っていた〝本当の力〟が目覚め始める。 その瞬間から、私を見るカインの目が変わり始めた。 「リリア、お前は俺だけのものだ」 「どこへも行かせない。永遠に、俺のそばにいろ」 かつての冷酷さはどこへやら、彼は私に異常なまでの執着を見せ、甘く、そして狂気的な愛情で私を束縛しようとしてくる。 これは本当に愛情なの? それともただの執着? 優しい第二王子エリアスは私に手を差し伸べてくれるけれど、カインの嫉妬の炎は燃え盛るばかり。 逃げ場のない城の中、歪んだ愛の檻に、私は囚われていく──。

召喚先は、誰も居ない森でした

みん
恋愛
事故に巻き込まれて行方不明になった母を探す茉白。そんな茉白を側で支えてくれていた留学生のフィンもまた、居なくなってしまい、寂しいながらも毎日を過ごしていた。そんなある日、バイト帰りに名前を呼ばれたかと思った次の瞬間、眩しい程の光に包まれて── 次に目を開けた時、茉白は森の中に居た。そして、そこには誰も居らず── その先で、茉白が見たモノは── 最初はシリアス展開が続きます。 ❋他視点のお話もあります ❋独自設定有り ❋気を付けてはいますが、誤字脱字があると思います。気付いた時に訂正していきます。

【完結】恋につける薬は、なし

ちよのまつこ
恋愛
異世界の田舎の村に転移して五年、十八歳のエマは王都へ行くことに。 着いた王都は春の大祭前、庶民も参加できる城の催しでの出来事がきっかけで出会った青年貴族にエマはいきなり嫌悪を向けられ…

おばさんは、ひっそり暮らしたい

蝋梅
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

理想の男性(ヒト)は、お祖父さま

たつみ
恋愛
月代結奈は、ある日突然、見知らぬ場所に立っていた。 そこで行われていたのは「正妃選びの儀」正妃に側室? 王太子はまったく好みじゃない。 彼女は「これは夢だ」と思い、とっとと「正妃」を辞退してその場から去る。 彼女が思いこんだ「夢設定」の流れの中、帰った屋敷は超アウェイ。 そんな中、現れたまさしく「理想の男性」なんと、それは彼女のお祖父さまだった! 彼女を正妃にするのを諦めない王太子と側近魔術師サイラスの企み。 そんな2人から彼女守ろうとする理想の男性、お祖父さま。 恋愛よりも家族愛を優先する彼女の日常に否応なく訪れる試練。 この世界で彼女がくだす決断と、肝心な恋愛の結末は?  ◇◇◇◇◇設定はあくまでも「貴族風」なので、現実の貴族社会などとは異なります。 本物の貴族社会ではこんなこと通用しない、ということも多々あります。 R-Kingdom_1 他サイトでも掲載しています。

【完結】聖女召喚の聖女じゃない方~無魔力な私が溺愛されるってどういう事?!

未知香
恋愛
※エールや応援ありがとうございます! 会社帰りに聖女召喚に巻き込まれてしまった、アラサーの会社員ツムギ。 一緒に召喚された女子高生のミズキは聖女として歓迎されるが、 ツムギは魔力がゼロだった為、偽物だと認定された。 このまま何も説明されずに捨てられてしまうのでは…? 人が去った召喚場でひとり絶望していたツムギだったが、 魔法師団長は無魔力に興味があるといい、彼に雇われることとなった。 聖女として王太子にも愛されるようになったミズキからは蔑視されるが、 魔法師団長は無魔力のツムギをモルモットだと離そうとしない。 魔法師団長は少し猟奇的な言動もあるものの、 冷たく整った顔とわかりにくい態度の中にある優しさに、徐々にツムギは惹かれていく… 聖女召喚から始まるハッピーエンドの話です! 完結まで書き終わってます。 ※他のサイトにも連載してます

【完結】聖女召喚に巻き込まれたバリキャリですが、追い出されそうになったのでお金と魔獣をもらって出て行きます!

チャらら森山
恋愛
二十七歳バリバリキャリアウーマンの鎌本博美(かまもとひろみ)が、交差点で後ろから背中を押された。死んだと思った博美だが、突如、異世界へ召喚される。召喚された博美が発した言葉を誤解したハロルド王子の前に、もうひとりの女性が現れた。博美の方が、聖女召喚に巻き込まれた一般人だと決めつけ、追い出されそうになる。しかし、バリキャリの博美は、そのまま追い出されることを拒否し、彼らに慰謝料を要求する。 お金を受け取るまで、博美は屋敷で暮らすことになり、数々の騒動に巻き込まれながら地下で暮らす魔獣と交流を深めていく。

処理中です...