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結婚編
デートしました 後編
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その後、ジークハルト様とナミルさん、騎士たちの護衛のもと、また湖の岸辺を歩く。アレイさんとシェーデルさんはその先を歩き、凶暴な魔獣がいるかどうかを確かめていた。
その都度ホワイトベアを狩ったり、トナカイに似た魔獣――ブラウンディアを狩ったりして内心顔を引きつらせていたけれど、どの魔獣にも何かしらの用途があり、それらは冒険者や市民の役に立つということだったので何も言わなかった。ディア種は角や骨、内臓の一部が装飾品や薬の材料になり、お肉も食べられるし、毛皮も鞄や鎧の材料になるのだそうだ。
今回はホワイトベアが二匹ぶん、綺麗な状態の毛皮が手に入ったので、これで私とジークハルト様とお揃いのコートを作れるとジークハルト様がはしゃいでいた。本来は冒険者ギルドに持って行くそうなのだけれど、もしベア種が狩れたら内臓がほしいと王宮にいる薬師にお願いされたそうなので、今回は全て王宮に持って帰るそうだ。
「ジークハルト様、湖に浮かんでいる水鳥はなんというのですか?」
「あれは鴨の一種でアナトラという。こちらから襲ったりしなければ何もしないが、ひとたび襲えば怪我をするほど凶暴な魔獣だ」
「魔獣なのですか? とても綺麗なのに」
「見た目が綺麗だからといって、おとなしい動物とは限らない。だからこそ、常に警戒が必要なのだ」
日本とは違い、綺麗だからといって動物とは限らないからこそ、騎士や冒険者といった戦える人たちがいるということなのだろう。いつまでも日本にいた時の感覚でいたら駄目だと思った瞬間だった。
今度は湖に背を向け、浅い場所の林の中に入る。この辺りは薬草などが生えていると、アレイさんが教えてくれた。
「どのような薬草があるのですか?」
《主に傷を治す薬草じゃな。これらは儂ら魔獣や魔物、動物も食べたりするから、むやみやたらに採るでないぞ?》
「わかりました」
種類がわからないし、採取する道具を持っていないので私は採ることはしなかったけれど、ジークハルト様たち騎士にとっては有用な薬草だったのだろう。ほんの少し――全体の六分の一程度の葉っぱ部分だけをナイフで切り取り、インベントリにしまっていた。
「薬草はあのまま使うのですか?」
「いや。乾燥させて使うとしか聞いていない。作り方などは薬師や医師の仕事だから、俺たちはわからないんだ」
「そうなのですね」
私が【裁縫師】なのと同様に、きちんとお薬を作る【薬師】や【錬金術師】といった職業に就いている人がいるという。薬草などは彼らが必要としているもので、王宮の薬師に見つけたら持って来てほしいと頼まれていたそうだ。
だから、必要なぶんだけを切り取って残し(それも葉っぱのみ)、根っこや下のほうにある葉っぱをそのままにしておくと、また新たに葉っぱが出てくるのだそうだ。だから冒険者たちも依頼で薬草を採る場合は、必要な枚数しか採らないという。
そんな話をしながら林を散策する。ワラビやこごみといった山菜に似た植物を見つけた。
「アレイさん、この、先っぽがくるっと丸まっているものはなんですか?」
《青いて丸まっているのがコゴミで、枝分かれしている先端が茶色いのがワラビだな。どちらも苦くて食べられぬぞ?》
まさかの、そのまんまの名前でした!
重曹はないようだけれど、薪を燃やすから灰ならある。それを使って茹でれば、あく抜きができる。
そんなことを考え、久しぶりにわらびやこごみの天ぷらや煮物が食べたいし、父も食べたいだろうとそれを採ることにした。
『ミカ様、そんなの採ってどうするのよ?』
「もちろん、食べるんです」
《苦くて食べられんと言ったばかりじゃろうが》
「ふふ……。私が元いた国ではこれを食べていたのですよ? もちろん食べ方を知っています」
「ほう……? それは美味しいのか? ミカ」
「人それぞれだと思いますよ?」
私が少しだけ採ると、『手が汚れるでしょ!』と言ってシェーデルさんがナイフで採ってくれた。他にもふきのとうやたらの芽があったのでそれも採取してもらった。
今日の夕飯は天ぷらかな?
そんなことを考えながらインベントリにしまい、またジークハルト様たちと歩く。
ヒヨドリに似た青い鳥、鳩に似た茶色い鳥。鷹や鷲といった猛禽類のような鳥がいたり、様々な植物や昆虫たちもいて、豊かな森であることがわかる。それらを説明してくれるジークハルト様。ジークハルト様が知らないものは、アレイさんやシェーデルさん、ナミルさんが教えてくれた。
そろそろ戻ったほうがいいだろうとジークハルト様に言われたので、湖があるほうへと歩く。国立庭園にあった花もあったし、ない花もあった。
それぞれ小規模だけれど群生していて、整えられたのとは違う美しさと華やかさがあって、とても素敵だった。エプレンジュは通年を通して花が咲き、実をつける果物だそうで、その取れ高から安く買えるからこそ、市井でもよく食べられている果物だと教えてくれた。
国内の特産物などを質問したりしているうちに湖に戻ってきた。一旦休憩し、また籠に乗って準備をすると、ドラゴンになったジークハルト様に持ち上げられ、空へと飛び立つ。
傾き始めた太陽の光も綺麗で、日本にいたころとはまた違った趣があるし、あちらよりも空気がいいのか、遠くまで見通せる。
聳え立つような高い山々と、山頂にかかる雪の白さ。万年雪になっているそうで、山頂は年中白く染まっているのだとか。
そんな話をしているうちに王宮に着き、籠から外へと出る。コートはプレゼントだというので、恐縮しながらそれをインベントリへとしまい、ジークハルト様のエスコートで王宮の中へと入った。
父や兄はまだ仕事している時間だけれど、ジークハルト様は父の執務室に連れていってくれた。
「ミカ、楽しかった」
「はい。私もとても楽しかったです」
「また別の場所に行こう。または、国立庭園に出向いてもいいしな」
「楽しみにしていますね」
父の執務室で少しだけ雑談したジークハルト様は、唇にキスを落とすと部屋を出ていった。仕事を手伝ってほしいと父に言われたので手伝い、そのまま一緒にモーントシュタイン家へと帰った。
その都度ホワイトベアを狩ったり、トナカイに似た魔獣――ブラウンディアを狩ったりして内心顔を引きつらせていたけれど、どの魔獣にも何かしらの用途があり、それらは冒険者や市民の役に立つということだったので何も言わなかった。ディア種は角や骨、内臓の一部が装飾品や薬の材料になり、お肉も食べられるし、毛皮も鞄や鎧の材料になるのだそうだ。
今回はホワイトベアが二匹ぶん、綺麗な状態の毛皮が手に入ったので、これで私とジークハルト様とお揃いのコートを作れるとジークハルト様がはしゃいでいた。本来は冒険者ギルドに持って行くそうなのだけれど、もしベア種が狩れたら内臓がほしいと王宮にいる薬師にお願いされたそうなので、今回は全て王宮に持って帰るそうだ。
「ジークハルト様、湖に浮かんでいる水鳥はなんというのですか?」
「あれは鴨の一種でアナトラという。こちらから襲ったりしなければ何もしないが、ひとたび襲えば怪我をするほど凶暴な魔獣だ」
「魔獣なのですか? とても綺麗なのに」
「見た目が綺麗だからといって、おとなしい動物とは限らない。だからこそ、常に警戒が必要なのだ」
日本とは違い、綺麗だからといって動物とは限らないからこそ、騎士や冒険者といった戦える人たちがいるということなのだろう。いつまでも日本にいた時の感覚でいたら駄目だと思った瞬間だった。
今度は湖に背を向け、浅い場所の林の中に入る。この辺りは薬草などが生えていると、アレイさんが教えてくれた。
「どのような薬草があるのですか?」
《主に傷を治す薬草じゃな。これらは儂ら魔獣や魔物、動物も食べたりするから、むやみやたらに採るでないぞ?》
「わかりました」
種類がわからないし、採取する道具を持っていないので私は採ることはしなかったけれど、ジークハルト様たち騎士にとっては有用な薬草だったのだろう。ほんの少し――全体の六分の一程度の葉っぱ部分だけをナイフで切り取り、インベントリにしまっていた。
「薬草はあのまま使うのですか?」
「いや。乾燥させて使うとしか聞いていない。作り方などは薬師や医師の仕事だから、俺たちはわからないんだ」
「そうなのですね」
私が【裁縫師】なのと同様に、きちんとお薬を作る【薬師】や【錬金術師】といった職業に就いている人がいるという。薬草などは彼らが必要としているもので、王宮の薬師に見つけたら持って来てほしいと頼まれていたそうだ。
だから、必要なぶんだけを切り取って残し(それも葉っぱのみ)、根っこや下のほうにある葉っぱをそのままにしておくと、また新たに葉っぱが出てくるのだそうだ。だから冒険者たちも依頼で薬草を採る場合は、必要な枚数しか採らないという。
そんな話をしながら林を散策する。ワラビやこごみといった山菜に似た植物を見つけた。
「アレイさん、この、先っぽがくるっと丸まっているものはなんですか?」
《青いて丸まっているのがコゴミで、枝分かれしている先端が茶色いのがワラビだな。どちらも苦くて食べられぬぞ?》
まさかの、そのまんまの名前でした!
重曹はないようだけれど、薪を燃やすから灰ならある。それを使って茹でれば、あく抜きができる。
そんなことを考え、久しぶりにわらびやこごみの天ぷらや煮物が食べたいし、父も食べたいだろうとそれを採ることにした。
『ミカ様、そんなの採ってどうするのよ?』
「もちろん、食べるんです」
《苦くて食べられんと言ったばかりじゃろうが》
「ふふ……。私が元いた国ではこれを食べていたのですよ? もちろん食べ方を知っています」
「ほう……? それは美味しいのか? ミカ」
「人それぞれだと思いますよ?」
私が少しだけ採ると、『手が汚れるでしょ!』と言ってシェーデルさんがナイフで採ってくれた。他にもふきのとうやたらの芽があったのでそれも採取してもらった。
今日の夕飯は天ぷらかな?
そんなことを考えながらインベントリにしまい、またジークハルト様たちと歩く。
ヒヨドリに似た青い鳥、鳩に似た茶色い鳥。鷹や鷲といった猛禽類のような鳥がいたり、様々な植物や昆虫たちもいて、豊かな森であることがわかる。それらを説明してくれるジークハルト様。ジークハルト様が知らないものは、アレイさんやシェーデルさん、ナミルさんが教えてくれた。
そろそろ戻ったほうがいいだろうとジークハルト様に言われたので、湖があるほうへと歩く。国立庭園にあった花もあったし、ない花もあった。
それぞれ小規模だけれど群生していて、整えられたのとは違う美しさと華やかさがあって、とても素敵だった。エプレンジュは通年を通して花が咲き、実をつける果物だそうで、その取れ高から安く買えるからこそ、市井でもよく食べられている果物だと教えてくれた。
国内の特産物などを質問したりしているうちに湖に戻ってきた。一旦休憩し、また籠に乗って準備をすると、ドラゴンになったジークハルト様に持ち上げられ、空へと飛び立つ。
傾き始めた太陽の光も綺麗で、日本にいたころとはまた違った趣があるし、あちらよりも空気がいいのか、遠くまで見通せる。
聳え立つような高い山々と、山頂にかかる雪の白さ。万年雪になっているそうで、山頂は年中白く染まっているのだとか。
そんな話をしているうちに王宮に着き、籠から外へと出る。コートはプレゼントだというので、恐縮しながらそれをインベントリへとしまい、ジークハルト様のエスコートで王宮の中へと入った。
父や兄はまだ仕事している時間だけれど、ジークハルト様は父の執務室に連れていってくれた。
「ミカ、楽しかった」
「はい。私もとても楽しかったです」
「また別の場所に行こう。または、国立庭園に出向いてもいいしな」
「楽しみにしていますね」
父の執務室で少しだけ雑談したジークハルト様は、唇にキスを落とすと部屋を出ていった。仕事を手伝ってほしいと父に言われたので手伝い、そのまま一緒にモーントシュタイン家へと帰った。
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