異世界転移した私と極光竜(オーロラドラゴン)の秘宝

饕餮

文字の大きさ
52 / 62
結婚編

デートしました 後編

しおりを挟む
 その後、ジークハルト様とナミルさん、騎士たちの護衛のもと、また湖の岸辺を歩く。アレイさんとシェーデルさんはその先を歩き、凶暴な魔獣がいるかどうかを確かめていた。
 その都度ホワイトベアを狩ったり、トナカイに似た魔獣――ブラウンディアを狩ったりして内心顔を引きつらせていたけれど、どの魔獣にも何かしらの用途があり、それらは冒険者や市民の役に立つということだったので何も言わなかった。ディア種は角や骨、内臓の一部が装飾品や薬の材料になり、お肉も食べられるし、毛皮も鞄や鎧の材料になるのだそうだ。
 今回はホワイトベアが二匹ぶん、綺麗な状態の毛皮が手に入ったので、これで私とジークハルト様とお揃いのコートを作れるとジークハルト様がはしゃいでいた。本来は冒険者ギルドに持って行くそうなのだけれど、もしベア種が狩れたら内臓がほしいと王宮にいる薬師にお願いされたそうなので、今回は全て王宮に持って帰るそうだ。

「ジークハルト様、湖に浮かんでいる水鳥はなんというのですか?」
「あれは鴨の一種でアナトラという。こちらから襲ったりしなければ何もしないが、ひとたび襲えば怪我をするほど凶暴な魔獣だ」
「魔獣なのですか? とても綺麗なのに」
「見た目が綺麗だからといって、おとなしい動物とは限らない。だからこそ、常に警戒が必要なのだ」

 日本とは違い、綺麗だからといって動物とは限らないからこそ、騎士や冒険者といった戦える人たちがいるということなのだろう。いつまでも日本にいた時の感覚でいたら駄目だと思った瞬間だった。
 今度は湖に背を向け、浅い場所の林の中に入る。この辺りは薬草などが生えていると、アレイさんが教えてくれた。

「どのような薬草があるのですか?」
《主に傷を治す薬草じゃな。これらは儂ら魔獣や魔物、動物も食べたりするから、むやみやたらに採るでないぞ?》
「わかりました」

 種類がわからないし、採取する道具を持っていないので私は採ることはしなかったけれど、ジークハルト様たち騎士にとっては有用な薬草だったのだろう。ほんの少し――全体の六分の一程度の葉っぱ部分だけをナイフで切り取り、インベントリにしまっていた。

「薬草はあのまま使うのですか?」
「いや。乾燥させて使うとしか聞いていない。作り方などは薬師や医師の仕事だから、俺たちはわからないんだ」
「そうなのですね」

 私が【裁縫師】なのと同様に、きちんとお薬を作る【薬師】や【錬金術師】といった職業に就いている人がいるという。薬草などは彼らが必要としているもので、王宮の薬師に見つけたら持って来てほしいと頼まれていたそうだ。
 だから、必要なぶんだけを切り取って残し(それも葉っぱのみ)、根っこや下のほうにある葉っぱをそのままにしておくと、また新たに葉っぱが出てくるのだそうだ。だから冒険者たちも依頼で薬草を採る場合は、必要な枚数しか採らないという。

 そんな話をしながら林を散策する。ワラビやこごみといった山菜に似た植物を見つけた。

「アレイさん、この、先っぽがくるっと丸まっているものはなんですか?」
《青いて丸まっているのがコゴミで、枝分かれしている先端が茶色いのがワラビだな。どちらも苦くて食べられぬぞ?》

 まさかの、そのまんまの名前でした!

 重曹はないようだけれど、薪を燃やすから灰ならある。それを使って茹でれば、あく抜きができる。
 そんなことを考え、久しぶりにわらびやこごみの天ぷらや煮物が食べたいし、父も食べたいだろうとそれを採ることにした。

『ミカ様、そんなの採ってどうするのよ?』
「もちろん、食べるんです」
《苦くて食べられんと言ったばかりじゃろうが》
「ふふ……。私が元いた国ではこれを食べていたのですよ? もちろん食べ方を知っています」
「ほう……? それは美味しいのか? ミカ」
「人それぞれだと思いますよ?」

 私が少しだけ採ると、『手が汚れるでしょ!』と言ってシェーデルさんがナイフで採ってくれた。他にもふきのとうやたらの芽があったのでそれも採取してもらった。

 今日の夕飯は天ぷらかな?

 そんなことを考えながらインベントリにしまい、またジークハルト様たちと歩く。
 ヒヨドリに似た青い鳥、鳩に似た茶色い鳥。鷹や鷲といった猛禽類のような鳥がいたり、様々な植物や昆虫たちもいて、豊かな森であることがわかる。それらを説明してくれるジークハルト様。ジークハルト様が知らないものは、アレイさんやシェーデルさん、ナミルさんが教えてくれた。
 そろそろ戻ったほうがいいだろうとジークハルト様に言われたので、湖があるほうへと歩く。国立庭園にあった花もあったし、ない花もあった。
 それぞれ小規模だけれど群生していて、整えられたのとは違う美しさと華やかさがあって、とても素敵だった。エプレンジュは通年を通して花が咲き、実をつける果物だそうで、その取れ高から安く買えるからこそ、市井でもよく食べられている果物だと教えてくれた。
 国内の特産物などを質問したりしているうちに湖に戻ってきた。一旦休憩し、また籠に乗って準備をすると、ドラゴンになったジークハルト様に持ち上げられ、空へと飛び立つ。
 傾き始めた太陽の光も綺麗で、日本にいたころとはまた違った趣があるし、あちらよりも空気がいいのか、遠くまで見通せる。

 聳え立つような高い山々と、山頂にかかる雪の白さ。万年雪になっているそうで、山頂は年中白く染まっているのだとか。
 そんな話をしているうちに王宮に着き、籠から外へと出る。コートはプレゼントだというので、恐縮しながらそれをインベントリへとしまい、ジークハルト様のエスコートで王宮の中へと入った。
 父や兄はまだ仕事している時間だけれど、ジークハルト様は父の執務室に連れていってくれた。

「ミカ、楽しかった」
「はい。私もとても楽しかったです」
「また別の場所に行こう。または、国立庭園に出向いてもいいしな」
「楽しみにしていますね」

 父の執務室で少しだけ雑談したジークハルト様は、唇にキスを落とすと部屋を出ていった。仕事を手伝ってほしいと父に言われたので手伝い、そのまま一緒にモーントシュタイン家へと帰った。

しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

眺めるだけならよいでしょうか?〜美醜逆転世界に飛ばされた私〜

蝋梅
恋愛
美醜逆転の世界に飛ばされた。普通ならウハウハである。だけど。 ✻読んで下さり、ありがとうございました。✻

冷酷騎士団長に『出来損ない』と捨てられましたが、どうやら私の力が覚醒したらしく、ヤンデレ化した彼に執着されています

放浪人
恋愛
平凡な毎日を送っていたはずの私、橘 莉奈(たちばな りな)は、突然、眩い光に包まれ異世界『エルドラ』に召喚されてしまう。 伝説の『聖女』として迎えられたのも束の間、魔力測定で「魔力ゼロ」と判定され、『出来損ない』の烙印を押されてしまった。 希望を失った私を引き取ったのは、氷のように冷たい瞳を持つ、この国の騎士団長カイン・アシュフォード。 「お前はここで、俺の命令だけを聞いていればいい」 物置のような部屋に押し込められ、彼から向けられるのは侮蔑の視線と冷たい言葉だけ。 元の世界に帰ることもできず、絶望的な日々が続くと思っていた。 ──しかし、ある出来事をきっかけに、私の中に眠っていた〝本当の力〟が目覚め始める。 その瞬間から、私を見るカインの目が変わり始めた。 「リリア、お前は俺だけのものだ」 「どこへも行かせない。永遠に、俺のそばにいろ」 かつての冷酷さはどこへやら、彼は私に異常なまでの執着を見せ、甘く、そして狂気的な愛情で私を束縛しようとしてくる。 これは本当に愛情なの? それともただの執着? 優しい第二王子エリアスは私に手を差し伸べてくれるけれど、カインの嫉妬の炎は燃え盛るばかり。 逃げ場のない城の中、歪んだ愛の檻に、私は囚われていく──。

召喚先は、誰も居ない森でした

みん
恋愛
事故に巻き込まれて行方不明になった母を探す茉白。そんな茉白を側で支えてくれていた留学生のフィンもまた、居なくなってしまい、寂しいながらも毎日を過ごしていた。そんなある日、バイト帰りに名前を呼ばれたかと思った次の瞬間、眩しい程の光に包まれて── 次に目を開けた時、茉白は森の中に居た。そして、そこには誰も居らず── その先で、茉白が見たモノは── 最初はシリアス展開が続きます。 ❋他視点のお話もあります ❋独自設定有り ❋気を付けてはいますが、誤字脱字があると思います。気付いた時に訂正していきます。

【完結】恋につける薬は、なし

ちよのまつこ
恋愛
異世界の田舎の村に転移して五年、十八歳のエマは王都へ行くことに。 着いた王都は春の大祭前、庶民も参加できる城の催しでの出来事がきっかけで出会った青年貴族にエマはいきなり嫌悪を向けられ…

おばさんは、ひっそり暮らしたい

蝋梅
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

理想の男性(ヒト)は、お祖父さま

たつみ
恋愛
月代結奈は、ある日突然、見知らぬ場所に立っていた。 そこで行われていたのは「正妃選びの儀」正妃に側室? 王太子はまったく好みじゃない。 彼女は「これは夢だ」と思い、とっとと「正妃」を辞退してその場から去る。 彼女が思いこんだ「夢設定」の流れの中、帰った屋敷は超アウェイ。 そんな中、現れたまさしく「理想の男性」なんと、それは彼女のお祖父さまだった! 彼女を正妃にするのを諦めない王太子と側近魔術師サイラスの企み。 そんな2人から彼女守ろうとする理想の男性、お祖父さま。 恋愛よりも家族愛を優先する彼女の日常に否応なく訪れる試練。 この世界で彼女がくだす決断と、肝心な恋愛の結末は?  ◇◇◇◇◇設定はあくまでも「貴族風」なので、現実の貴族社会などとは異なります。 本物の貴族社会ではこんなこと通用しない、ということも多々あります。 R-Kingdom_1 他サイトでも掲載しています。

【完結】聖女召喚の聖女じゃない方~無魔力な私が溺愛されるってどういう事?!

未知香
恋愛
※エールや応援ありがとうございます! 会社帰りに聖女召喚に巻き込まれてしまった、アラサーの会社員ツムギ。 一緒に召喚された女子高生のミズキは聖女として歓迎されるが、 ツムギは魔力がゼロだった為、偽物だと認定された。 このまま何も説明されずに捨てられてしまうのでは…? 人が去った召喚場でひとり絶望していたツムギだったが、 魔法師団長は無魔力に興味があるといい、彼に雇われることとなった。 聖女として王太子にも愛されるようになったミズキからは蔑視されるが、 魔法師団長は無魔力のツムギをモルモットだと離そうとしない。 魔法師団長は少し猟奇的な言動もあるものの、 冷たく整った顔とわかりにくい態度の中にある優しさに、徐々にツムギは惹かれていく… 聖女召喚から始まるハッピーエンドの話です! 完結まで書き終わってます。 ※他のサイトにも連載してます

【完結】聖女召喚に巻き込まれたバリキャリですが、追い出されそうになったのでお金と魔獣をもらって出て行きます!

チャらら森山
恋愛
二十七歳バリバリキャリアウーマンの鎌本博美(かまもとひろみ)が、交差点で後ろから背中を押された。死んだと思った博美だが、突如、異世界へ召喚される。召喚された博美が発した言葉を誤解したハロルド王子の前に、もうひとりの女性が現れた。博美の方が、聖女召喚に巻き込まれた一般人だと決めつけ、追い出されそうになる。しかし、バリキャリの博美は、そのまま追い出されることを拒否し、彼らに慰謝料を要求する。 お金を受け取るまで、博美は屋敷で暮らすことになり、数々の騒動に巻き込まれながら地下で暮らす魔獣と交流を深めていく。

処理中です...