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第9話 一緒にいる理由
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「シェリール?妾たちはどこに向かっておるのじゃ?」
昨日の雨が嘘のように、雲ひとつない澄み切った空。
シェリールに手を引かれながら、トコトコと歩くディセルネ。
その後ろをヤーナが短い足で追いかけて来るが、途中の花や小さな虫に気を取られ、寄り道を繰り返してばかり。
「この湖の先に小さな町があるんだ。そこでディーちゃんの服とか、日用品を買い足そうかなって思って」
「このままじゃ、ダメなのかぇ?」
シェリールを見上げたディセルネを、彼はスッと抱き上げた。
「ダメじゃないけど、不便だよ。昨日みたいに突然雨が降ったり、転んだりしたら服が汚れるでしょ?
すぐに洗濯できない時もあるから、予備はあった方がいいんだよ」
「そんなもんかのう?」
首を傾げたディセルネに、シェリールは明るく言う。
「ディーちゃん、もしかしてお金の心配してる?
大丈夫だよ。僕はずっと旅を続けてるけど、ちゃんと仕事してるからお金はあるよ」
「はて?お金……とは、なんぞよ?」
「あぁ、ごめんね。まだ物を買う仕組みとか、お金が何かなんてわからないよね」
キョトンとした顔のディセルネに、シェリールは視線を上げて考え始めた。
『ディセルネ、お金ってこの人間界で人々が、物を売ったり買ったりする時に使う物だ。その品物と同等の価値を保証したツールだよ』
道草を繰り返していたヤーナが、駆け寄ってきて念話を飛ばしてきた。
『なるほどのう……、そのお金とやらが無ければ、物は買えんのじゃな?』
『そう言うことだな』
『じゃから、シェリールは仕事をしてお金を得ているのじゃな?』
『そう、正解。えらいぞ、ディセルネ。ちゃんとこの世界の仕組みを理解しようとして』
ふと立ち止まったシェリールが、ディセルネを地面にゆっくりと下ろすと、道端の黄色い野花を指差した。
「ディーちゃんに、お金の説明しようかな。
ほら、ここに花があるでしょう?もしこの花を僕が育てて売っているとしよう……」
「シェリールよ、妾はお金の仕組みがわかったぞよ。
品物を買う時に、それと同等の価値を保証したものじゃ」
胸を張って、自慢げに答えたディセルネ。
「えぇ、すごいよディーちゃん!
こんなに幼いのに……、驚きだよ」
目を丸くして彼女の頭を撫で回しはじめたシェリールに、口を尖らせた女神。
「シェリール、何度も言うとるがのう、妾は幼子ではないぞよ。むしろ其方より、長う生きとる……。
それにお金の仕組みは、ヤーナから今聞いたのじゃよ」
「ヤーナくんから?」
不思議そうにヤーナを見つめるシェリール。
「わん!」
ちょこんとお座りして、ふわふわのしっぽを揺らすヤーナ。
『どうだ!神獣様は賢いだろ』
『ヤーナ、其方の念話はシェリールには聞こえとらん。
仔犬が、褒められるのを待っとるようにしか見えんぞよ』
「ヤーナくんも、ディーちゃんも、すごいんだね」
感心しきった様子で何度も頷く彼に、ヤーナが大きなため息を吐いた。
『はぁ……。
この兄ちゃん大丈夫か?むしろこの兄ちゃんの方が凄いよ。この状況を、まるっと受け入れたよ。何の疑問も持たずに……』
『そうじゃな。よくここまで、真っ直ぐに育ったものじゃ……』
見つめ合う幼子と仔犬に笑いかけたシェリールは、「それじゃあ、行こうか」と再びディセルネの手を引き歩き出す。
――――シェリールが仕事をして稼いだお金を、妾が使ってもよいのか?
今の妾は神じゃないのじゃから、貢物はないはずじゃが……。
そうか、妾も仕事をすれば良いのじゃな。
「シェリール、妾も仕事をするぞよ。そしたら、お金で品物が買える」
ディセルネの言葉に、シェリールは目を細めた。
「その心意気は、いいことだよ。でも……、ディーちゃんみたいにまだ幼い子は、大人に頼っていいんだよ」
「妾は見た目ほど幼くはない。それに、其方に甘える理由がわからんぞよ」
ハッと息を呑んだシェリールの目尻が、悲しそうに下がり始めた。
「ディーちゃん……、僕は……君の保護者になりたいんだ。だから、ちゃんと甘えていいんだよ。僕じゃ、頼りないかな?」
「い、いや……、なぜ其方はそんなに寂しそうな顔をしとるんじゃ?」
シェリールの言葉と表情に慌てふためく女神、ディセルネ。
「ディーちゃんとヤーナくんは、僕にとってもう家族みたいな感じなんだ」
「妾に家族はいたことないゆえ、よくわからんが……。
じゃがな、シェリールと一緒に居ると、ここがポカポカするんじゃよ」
ディセルネは自身の胸に手を当てて、必死に説明した。
その様子を見て、ホッとしたように緩んだ彼の口元。
「嬉しいよ」
『一件落着かぁ?』
横からヤーナの念話が飛んできた。
「ところで、シェリール、其方はどんな仕事をしておるのじゃ?」
彼の手をクイクイっと引っ張って尋ねるディセルネに、「気になる?」と勿体ぶったように答えるシェリール。
「僕は旅をしながら、森や村に現れる魔獣の討伐をしているんだよ」
――――魔獣⁉︎
はて?妾はそんな厄介な生き物は、この世界に作っとらん。
なぜ、そのような存在が居る……?
「魔獣はね、人々の欲望や負の念が形になって、命を得たモノなんだよ」
シェリールの言葉が、静かに風に流れていった。
昨日の雨が嘘のように、雲ひとつない澄み切った空。
シェリールに手を引かれながら、トコトコと歩くディセルネ。
その後ろをヤーナが短い足で追いかけて来るが、途中の花や小さな虫に気を取られ、寄り道を繰り返してばかり。
「この湖の先に小さな町があるんだ。そこでディーちゃんの服とか、日用品を買い足そうかなって思って」
「このままじゃ、ダメなのかぇ?」
シェリールを見上げたディセルネを、彼はスッと抱き上げた。
「ダメじゃないけど、不便だよ。昨日みたいに突然雨が降ったり、転んだりしたら服が汚れるでしょ?
すぐに洗濯できない時もあるから、予備はあった方がいいんだよ」
「そんなもんかのう?」
首を傾げたディセルネに、シェリールは明るく言う。
「ディーちゃん、もしかしてお金の心配してる?
大丈夫だよ。僕はずっと旅を続けてるけど、ちゃんと仕事してるからお金はあるよ」
「はて?お金……とは、なんぞよ?」
「あぁ、ごめんね。まだ物を買う仕組みとか、お金が何かなんてわからないよね」
キョトンとした顔のディセルネに、シェリールは視線を上げて考え始めた。
『ディセルネ、お金ってこの人間界で人々が、物を売ったり買ったりする時に使う物だ。その品物と同等の価値を保証したツールだよ』
道草を繰り返していたヤーナが、駆け寄ってきて念話を飛ばしてきた。
『なるほどのう……、そのお金とやらが無ければ、物は買えんのじゃな?』
『そう言うことだな』
『じゃから、シェリールは仕事をしてお金を得ているのじゃな?』
『そう、正解。えらいぞ、ディセルネ。ちゃんとこの世界の仕組みを理解しようとして』
ふと立ち止まったシェリールが、ディセルネを地面にゆっくりと下ろすと、道端の黄色い野花を指差した。
「ディーちゃんに、お金の説明しようかな。
ほら、ここに花があるでしょう?もしこの花を僕が育てて売っているとしよう……」
「シェリールよ、妾はお金の仕組みがわかったぞよ。
品物を買う時に、それと同等の価値を保証したものじゃ」
胸を張って、自慢げに答えたディセルネ。
「えぇ、すごいよディーちゃん!
こんなに幼いのに……、驚きだよ」
目を丸くして彼女の頭を撫で回しはじめたシェリールに、口を尖らせた女神。
「シェリール、何度も言うとるがのう、妾は幼子ではないぞよ。むしろ其方より、長う生きとる……。
それにお金の仕組みは、ヤーナから今聞いたのじゃよ」
「ヤーナくんから?」
不思議そうにヤーナを見つめるシェリール。
「わん!」
ちょこんとお座りして、ふわふわのしっぽを揺らすヤーナ。
『どうだ!神獣様は賢いだろ』
『ヤーナ、其方の念話はシェリールには聞こえとらん。
仔犬が、褒められるのを待っとるようにしか見えんぞよ』
「ヤーナくんも、ディーちゃんも、すごいんだね」
感心しきった様子で何度も頷く彼に、ヤーナが大きなため息を吐いた。
『はぁ……。
この兄ちゃん大丈夫か?むしろこの兄ちゃんの方が凄いよ。この状況を、まるっと受け入れたよ。何の疑問も持たずに……』
『そうじゃな。よくここまで、真っ直ぐに育ったものじゃ……』
見つめ合う幼子と仔犬に笑いかけたシェリールは、「それじゃあ、行こうか」と再びディセルネの手を引き歩き出す。
――――シェリールが仕事をして稼いだお金を、妾が使ってもよいのか?
今の妾は神じゃないのじゃから、貢物はないはずじゃが……。
そうか、妾も仕事をすれば良いのじゃな。
「シェリール、妾も仕事をするぞよ。そしたら、お金で品物が買える」
ディセルネの言葉に、シェリールは目を細めた。
「その心意気は、いいことだよ。でも……、ディーちゃんみたいにまだ幼い子は、大人に頼っていいんだよ」
「妾は見た目ほど幼くはない。それに、其方に甘える理由がわからんぞよ」
ハッと息を呑んだシェリールの目尻が、悲しそうに下がり始めた。
「ディーちゃん……、僕は……君の保護者になりたいんだ。だから、ちゃんと甘えていいんだよ。僕じゃ、頼りないかな?」
「い、いや……、なぜ其方はそんなに寂しそうな顔をしとるんじゃ?」
シェリールの言葉と表情に慌てふためく女神、ディセルネ。
「ディーちゃんとヤーナくんは、僕にとってもう家族みたいな感じなんだ」
「妾に家族はいたことないゆえ、よくわからんが……。
じゃがな、シェリールと一緒に居ると、ここがポカポカするんじゃよ」
ディセルネは自身の胸に手を当てて、必死に説明した。
その様子を見て、ホッとしたように緩んだ彼の口元。
「嬉しいよ」
『一件落着かぁ?』
横からヤーナの念話が飛んできた。
「ところで、シェリール、其方はどんな仕事をしておるのじゃ?」
彼の手をクイクイっと引っ張って尋ねるディセルネに、「気になる?」と勿体ぶったように答えるシェリール。
「僕は旅をしながら、森や村に現れる魔獣の討伐をしているんだよ」
――――魔獣⁉︎
はて?妾はそんな厄介な生き物は、この世界に作っとらん。
なぜ、そのような存在が居る……?
「魔獣はね、人々の欲望や負の念が形になって、命を得たモノなんだよ」
シェリールの言葉が、静かに風に流れていった。
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