ナイトプールが出会いの場だと知らずに友達に連れてこられた地味な大学生がド派手な美しい男にナンパされて口説かれる話

ゆなな

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ナイトプールでナンパしてきた男と恋人になったら体の相性が良すぎて日常生活に支障をきたして困っている話

5話

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『今夜はレポートを自分のアパートでやるから、そっちには行かないけど心配しないで』
 最後の講義を受けた終えた後の大教室でメッセージを打った後スマホの電源を落とした。
 不便ではあるが、こうでもしないと強い意志で自分のアパートに帰ることもできないので情けないが仕方ない。
 スマホをポケットに落とすと、海斗は溜息を吐いて自分のアパートに向かうべく教室を後にした。
「川嶋くん!」
 名字で呼ばれて振り返ると、お世話になっているゼミの先輩がいた。
「麻生先輩!」
「今から帰り?」
「はい。帰ってレポートやらなきゃいけなくて」
「レポート多くて大変だよね。あ、『電子回路理論発展』ここのところ珍しく欠席続いたけれど大丈夫? レジュメのデータ持ってるから良かったらメールで送ろうか?」
 先輩は院生なので海斗が受講している『電子回路理論発展』には受講生としてではなく、教授の手伝いで参加しているのだ。
「いいんですか?! 助かります!」
 食い気味に海斗は返事をした。
「ゼミの他の子には内緒にしてね。川嶋くんはいつも面倒なゼミの手伝いも嫌な顔せずにやってくれるから特別」
 麻生先輩は唇の前で人差し指をそっと立てていたずらっぽく笑った。
「ありがとうございます……!」
 海斗は深々とお辞儀すると、先輩は小首を傾げた。
「でも珍しいよね。体調不良?」
 あぁ、日々真面目に大学で研究や教授の手伝いをしている先輩には海斗の様子が最近おかしかったのはバレバレなのだ。
「……体調不良……ではないです……単なる寝坊、と言うか……」
 心底心配してくれているだろう先輩に嘘は吐けなかった。
「答えたくなかったら答えないで全然構わないんだけど、もしかして恋人出来た?」 
 先輩に図星を突かれて、思わずばっと顔を上げる。
「な……なんで……」
「やっぱりそう? 何か最近雰囲気変わったなぁと思って」
「雰囲気……? もしかして、雰囲気ド派手になってます、俺……?」
 思わず口から出てしまった海斗の質問に先輩はふははっと笑った。
「なってない、なってない。川嶋くんはいつもどおり慎ましやかな雰囲気でド派手じゃないよ。そっか。恋人がド派手なんだね」
「あ……、いや……その……」
「なるほど、ド派手な恋人のせいで川嶋くんは押し負けて一限間に合わなくなっちゃう、と」
 穏やかな口調だけど、正解をずばりと言われてしまう。
 二歳ほどしか離れていなかったと思うが、雰囲気も言動もものすごく大人な麻生先輩に指摘されて海斗は俯いてしまう。
「ごめん、ごめん。俺が虐めたみたいだね。川嶋くん、可愛くてつい。恋人との付き合い方と勉強の間で悩んでる?」
 優しく子供を諭すような声に、俯いていた海斗は思わず顔を上げる。
「川嶋くんの雰囲気はとってもいい方向に変わったよ。柔らかくなったし、少し自分のことも肯定的に見られるようになったでしょ。だから、いい人と付き合ってるんだな、って俺は思ってたけど」
「でも……っ俺付き合い出してから一限の授業休んだり、レポートも取り敢えず出せばいいや、みたいな出来だったり、バイトもドタキャンしちゃったり……堕落しきってるんです……っ」
 思わず言い募った海斗に先輩は穏やかな微笑みを向けてくれた。
「堕落って……ほんと川嶋くんは真面目だなぁ。それがいいところなんだけど、まだ若いんだしたまには恋人に夢中になっちゃって、一限遅れちゃうこともあったっていいと思うよ。あんまりやらない方がいいことだって川嶋くんはちゃんと分かっているし、このままずるずる堕落するとは俺には思えないよ」
「そうでしょうか……俺は麻生先輩にそんな風に言ってもらえるような人間じゃないんです」
 海斗は呟くように言った。
「ちゃんと恋人とは話してみた?」
 先輩は首を傾げて海斗に尋ねた。
「一限に出たいと言うことや、きちんとしたレポートを提出したいという話はしました。間に合うようにマネージャ……いえ。車を手配してくれたり、レポートのためにパソコンを出すと少しは待ってくれたりするんですけど……」
「ちゃんとした話はしていない。そういうことだよね」
「はい」
「どうして君が一限の授業をちゃんと受けたいのか、きちんとしたレポートを提出したいのか理由はあるよね。核心に迫った話をしないとだめだよ。それで……」
 ゼミでしか付き合いはないけれど、先輩は優しいが厳しいところもある人だと言うことはよく分かっている。
 だから海斗は先輩の言葉の続きを待った。
「もし君の話を聞いてくれないような恋人なら、そんな男は君に相応しくないから別れた方がいい」
 先輩は論文の計画を綿密に立てない後輩を叱るときのような優しくも厳しい声だった。
「俺の恋人はとっても魅力的な人で……っ俺に相応しくないっていうより、俺が相応しくないってっていうか……」
 海斗が言うと、先輩は少し表情を和らげた。
「そうかな? 君はとっても魅力的な人だなって俺は思っているし、最近益々魅力的になったように見える。話を聞いていると彼が夢中で仕方ないように思えるけれど」
 尊敬する先輩にお世辞でもそんなことを言ってもらえて海斗はありがとうございますと言った。
「お世辞じゃないんだけどなぁ。ま、いいや。ちゃんと話すって大事なことだから向き合ってみてね」
「はい。頑張ってみます」
海斗が返事をすると、先輩は頭をくしゃりと撫でてくれた。
「ん。いい子だね。じゃあ後でレジュメはメールで送っておくから」
 先輩はふわりと微笑んで行ってしまった。

「そうだよな……ちゃんと話さないと。でも話すためにはまずは締め切りが迫っているレポート終わらせなきゃ」
先輩と話したことで少し落ち着いた海斗は、少しでも早くレポートを終わらせるべく走って駅に向かった。
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