10 / 13
ナイトプールでナンパしてきた男と恋人になったら体の相性が良すぎて日常生活に支障をきたして困っている話
5話
しおりを挟む
『今夜はレポートを自分のアパートでやるから、そっちには行かないけど心配しないで』
最後の講義を受けた終えた後の大教室でメッセージを打った後スマホの電源を落とした。
不便ではあるが、こうでもしないと強い意志で自分のアパートに帰ることもできないので情けないが仕方ない。
スマホをポケットに落とすと、海斗は溜息を吐いて自分のアパートに向かうべく教室を後にした。
「川嶋くん!」
名字で呼ばれて振り返ると、お世話になっているゼミの先輩がいた。
「麻生先輩!」
「今から帰り?」
「はい。帰ってレポートやらなきゃいけなくて」
「レポート多くて大変だよね。あ、『電子回路理論発展』ここのところ珍しく欠席続いたけれど大丈夫? レジュメのデータ持ってるから良かったらメールで送ろうか?」
先輩は院生なので海斗が受講している『電子回路理論発展』には受講生としてではなく、教授の手伝いで参加しているのだ。
「いいんですか?! 助かります!」
食い気味に海斗は返事をした。
「ゼミの他の子には内緒にしてね。川嶋くんはいつも面倒なゼミの手伝いも嫌な顔せずにやってくれるから特別」
麻生先輩は唇の前で人差し指をそっと立てていたずらっぽく笑った。
「ありがとうございます……!」
海斗は深々とお辞儀すると、先輩は小首を傾げた。
「でも珍しいよね。体調不良?」
あぁ、日々真面目に大学で研究や教授の手伝いをしている先輩には海斗の様子が最近おかしかったのはバレバレなのだ。
「……体調不良……ではないです……単なる寝坊、と言うか……」
心底心配してくれているだろう先輩に嘘は吐けなかった。
「答えたくなかったら答えないで全然構わないんだけど、もしかして恋人出来た?」
先輩に図星を突かれて、思わずばっと顔を上げる。
「な……なんで……」
「やっぱりそう? 何か最近雰囲気変わったなぁと思って」
「雰囲気……? もしかして、雰囲気ド派手になってます、俺……?」
思わず口から出てしまった海斗の質問に先輩はふははっと笑った。
「なってない、なってない。川嶋くんはいつもどおり慎ましやかな雰囲気でド派手じゃないよ。そっか。恋人がド派手なんだね」
「あ……、いや……その……」
「なるほど、ド派手な恋人のせいで川嶋くんは押し負けて一限間に合わなくなっちゃう、と」
穏やかな口調だけど、正解をずばりと言われてしまう。
二歳ほどしか離れていなかったと思うが、雰囲気も言動もものすごく大人な麻生先輩に指摘されて海斗は俯いてしまう。
「ごめん、ごめん。俺が虐めたみたいだね。川嶋くん、可愛くてつい。恋人との付き合い方と勉強の間で悩んでる?」
優しく子供を諭すような声に、俯いていた海斗は思わず顔を上げる。
「川嶋くんの雰囲気はとってもいい方向に変わったよ。柔らかくなったし、少し自分のことも肯定的に見られるようになったでしょ。だから、いい人と付き合ってるんだな、って俺は思ってたけど」
「でも……っ俺付き合い出してから一限の授業休んだり、レポートも取り敢えず出せばいいや、みたいな出来だったり、バイトもドタキャンしちゃったり……堕落しきってるんです……っ」
思わず言い募った海斗に先輩は穏やかな微笑みを向けてくれた。
「堕落って……ほんと川嶋くんは真面目だなぁ。それがいいところなんだけど、まだ若いんだしたまには恋人に夢中になっちゃって、一限遅れちゃうこともあったっていいと思うよ。あんまりやらない方がいいことだって川嶋くんはちゃんと分かっているし、このままずるずる堕落するとは俺には思えないよ」
「そうでしょうか……俺は麻生先輩にそんな風に言ってもらえるような人間じゃないんです」
海斗は呟くように言った。
「ちゃんと恋人とは話してみた?」
先輩は首を傾げて海斗に尋ねた。
「一限に出たいと言うことや、きちんとしたレポートを提出したいという話はしました。間に合うようにマネージャ……いえ。車を手配してくれたり、レポートのためにパソコンを出すと少しは待ってくれたりするんですけど……」
「ちゃんとした話はしていない。そういうことだよね」
「はい」
「どうして君が一限の授業をちゃんと受けたいのか、きちんとしたレポートを提出したいのか理由はあるよね。核心に迫った話をしないとだめだよ。それで……」
ゼミでしか付き合いはないけれど、先輩は優しいが厳しいところもある人だと言うことはよく分かっている。
だから海斗は先輩の言葉の続きを待った。
「もし君の話を聞いてくれないような恋人なら、そんな男は君に相応しくないから別れた方がいい」
先輩は論文の計画を綿密に立てない後輩を叱るときのような優しくも厳しい声だった。
「俺の恋人はとっても魅力的な人で……っ俺に相応しくないっていうより、俺が相応しくないってっていうか……」
海斗が言うと、先輩は少し表情を和らげた。
「そうかな? 君はとっても魅力的な人だなって俺は思っているし、最近益々魅力的になったように見える。話を聞いていると彼が夢中で仕方ないように思えるけれど」
尊敬する先輩にお世辞でもそんなことを言ってもらえて海斗はありがとうございますと言った。
「お世辞じゃないんだけどなぁ。ま、いいや。ちゃんと話すって大事なことだから向き合ってみてね」
「はい。頑張ってみます」
海斗が返事をすると、先輩は頭をくしゃりと撫でてくれた。
「ん。いい子だね。じゃあ後でレジュメはメールで送っておくから」
先輩はふわりと微笑んで行ってしまった。
「そうだよな……ちゃんと話さないと。でも話すためにはまずは締め切りが迫っているレポート終わらせなきゃ」
先輩と話したことで少し落ち着いた海斗は、少しでも早くレポートを終わらせるべく走って駅に向かった。
最後の講義を受けた終えた後の大教室でメッセージを打った後スマホの電源を落とした。
不便ではあるが、こうでもしないと強い意志で自分のアパートに帰ることもできないので情けないが仕方ない。
スマホをポケットに落とすと、海斗は溜息を吐いて自分のアパートに向かうべく教室を後にした。
「川嶋くん!」
名字で呼ばれて振り返ると、お世話になっているゼミの先輩がいた。
「麻生先輩!」
「今から帰り?」
「はい。帰ってレポートやらなきゃいけなくて」
「レポート多くて大変だよね。あ、『電子回路理論発展』ここのところ珍しく欠席続いたけれど大丈夫? レジュメのデータ持ってるから良かったらメールで送ろうか?」
先輩は院生なので海斗が受講している『電子回路理論発展』には受講生としてではなく、教授の手伝いで参加しているのだ。
「いいんですか?! 助かります!」
食い気味に海斗は返事をした。
「ゼミの他の子には内緒にしてね。川嶋くんはいつも面倒なゼミの手伝いも嫌な顔せずにやってくれるから特別」
麻生先輩は唇の前で人差し指をそっと立てていたずらっぽく笑った。
「ありがとうございます……!」
海斗は深々とお辞儀すると、先輩は小首を傾げた。
「でも珍しいよね。体調不良?」
あぁ、日々真面目に大学で研究や教授の手伝いをしている先輩には海斗の様子が最近おかしかったのはバレバレなのだ。
「……体調不良……ではないです……単なる寝坊、と言うか……」
心底心配してくれているだろう先輩に嘘は吐けなかった。
「答えたくなかったら答えないで全然構わないんだけど、もしかして恋人出来た?」
先輩に図星を突かれて、思わずばっと顔を上げる。
「な……なんで……」
「やっぱりそう? 何か最近雰囲気変わったなぁと思って」
「雰囲気……? もしかして、雰囲気ド派手になってます、俺……?」
思わず口から出てしまった海斗の質問に先輩はふははっと笑った。
「なってない、なってない。川嶋くんはいつもどおり慎ましやかな雰囲気でド派手じゃないよ。そっか。恋人がド派手なんだね」
「あ……、いや……その……」
「なるほど、ド派手な恋人のせいで川嶋くんは押し負けて一限間に合わなくなっちゃう、と」
穏やかな口調だけど、正解をずばりと言われてしまう。
二歳ほどしか離れていなかったと思うが、雰囲気も言動もものすごく大人な麻生先輩に指摘されて海斗は俯いてしまう。
「ごめん、ごめん。俺が虐めたみたいだね。川嶋くん、可愛くてつい。恋人との付き合い方と勉強の間で悩んでる?」
優しく子供を諭すような声に、俯いていた海斗は思わず顔を上げる。
「川嶋くんの雰囲気はとってもいい方向に変わったよ。柔らかくなったし、少し自分のことも肯定的に見られるようになったでしょ。だから、いい人と付き合ってるんだな、って俺は思ってたけど」
「でも……っ俺付き合い出してから一限の授業休んだり、レポートも取り敢えず出せばいいや、みたいな出来だったり、バイトもドタキャンしちゃったり……堕落しきってるんです……っ」
思わず言い募った海斗に先輩は穏やかな微笑みを向けてくれた。
「堕落って……ほんと川嶋くんは真面目だなぁ。それがいいところなんだけど、まだ若いんだしたまには恋人に夢中になっちゃって、一限遅れちゃうこともあったっていいと思うよ。あんまりやらない方がいいことだって川嶋くんはちゃんと分かっているし、このままずるずる堕落するとは俺には思えないよ」
「そうでしょうか……俺は麻生先輩にそんな風に言ってもらえるような人間じゃないんです」
海斗は呟くように言った。
「ちゃんと恋人とは話してみた?」
先輩は首を傾げて海斗に尋ねた。
「一限に出たいと言うことや、きちんとしたレポートを提出したいという話はしました。間に合うようにマネージャ……いえ。車を手配してくれたり、レポートのためにパソコンを出すと少しは待ってくれたりするんですけど……」
「ちゃんとした話はしていない。そういうことだよね」
「はい」
「どうして君が一限の授業をちゃんと受けたいのか、きちんとしたレポートを提出したいのか理由はあるよね。核心に迫った話をしないとだめだよ。それで……」
ゼミでしか付き合いはないけれど、先輩は優しいが厳しいところもある人だと言うことはよく分かっている。
だから海斗は先輩の言葉の続きを待った。
「もし君の話を聞いてくれないような恋人なら、そんな男は君に相応しくないから別れた方がいい」
先輩は論文の計画を綿密に立てない後輩を叱るときのような優しくも厳しい声だった。
「俺の恋人はとっても魅力的な人で……っ俺に相応しくないっていうより、俺が相応しくないってっていうか……」
海斗が言うと、先輩は少し表情を和らげた。
「そうかな? 君はとっても魅力的な人だなって俺は思っているし、最近益々魅力的になったように見える。話を聞いていると彼が夢中で仕方ないように思えるけれど」
尊敬する先輩にお世辞でもそんなことを言ってもらえて海斗はありがとうございますと言った。
「お世辞じゃないんだけどなぁ。ま、いいや。ちゃんと話すって大事なことだから向き合ってみてね」
「はい。頑張ってみます」
海斗が返事をすると、先輩は頭をくしゃりと撫でてくれた。
「ん。いい子だね。じゃあ後でレジュメはメールで送っておくから」
先輩はふわりと微笑んで行ってしまった。
「そうだよな……ちゃんと話さないと。でも話すためにはまずは締め切りが迫っているレポート終わらせなきゃ」
先輩と話したことで少し落ち着いた海斗は、少しでも早くレポートを終わらせるべく走って駅に向かった。
2,093
あなたにおすすめの小説
【完結】国に売られた僕は変態皇帝に育てられ寵妃になった
cyan
BL
陛下が町娘に手を出して生まれたのが僕。後宮で虐げられて生活していた僕は、とうとう他国に売られることになった。
一途なシオンと、皇帝のお話。
※どんどん変態度が増すので苦手な方はお気を付けください。
見ぃつけた。
茉莉花 香乃
BL
小学生の時、意地悪されて転校した。高校一年生の途中までは穏やかな生活だったのに、全寮制の学校に転入しなければならなくなった。そこで、出会ったのは…
他サイトにも公開しています
おすすめのマッサージ屋を紹介したら後輩の様子がおかしい件
ひきこ
BL
名ばかり管理職で疲労困憊の山口は、偶然見つけたマッサージ店で、長年諦めていたどうやっても改善しない体調不良が改善した。
せっかくなので後輩を連れて行ったらどうやら様子がおかしくて、もう行くなって言ってくる。
クールだったはずがいつのまにか世話焼いてしまう年下敬語後輩Dom ×
(自分が世話を焼いてるつもりの)脳筋系天然先輩Sub がわちゃわちゃする話。
『加減を知らない初心者Domがグイグイ懐いてくる』と同じ世界で地続きのお話です。
(全く別の話なのでどちらも単体で読んでいただけます)
https://www.alphapolis.co.jp/novel/21582922/922916390
サブタイトルに◆がついているものは後輩視点です。
同人誌版と同じ表紙に差し替えました。
表紙イラスト:浴槽つぼカルビ様(X@shabuuma11 )ありがとうございます!
またのご利用をお待ちしています。
あらき奏多
BL
職場の同僚にすすめられた、とあるマッサージ店。
緊張しつつもゴッドハンドで全身とろとろに癒され、初めての感覚に下半身が誤作動してしまい……?!
・マッサージ師×客
・年下敬語攻め
・男前土木作業員受け
・ノリ軽め
※年齢順イメージ
九重≒達也>坂田(店長)≫四ノ宮
【登場人物】
▼坂田 祐介(さかた ゆうすけ) 攻
・マッサージ店の店長
・爽やかイケメン
・優しくて低めのセクシーボイス
・良識はある人
▼杉村 達也(すぎむら たつや) 受
・土木作業員
・敏感体質
・快楽に流されやすい。すぐ喘ぐ
・性格も見た目も男前
【登場人物(第二弾の人たち)】
▼四ノ宮 葵(しのみや あおい) 攻
・マッサージ店の施術者のひとり。
・店では年齢は下から二番目。経歴は店長の次に長い。敏腕。
・顔と名前だけ中性的。愛想は人並み。
・自覚済隠れS。仕事とプライベートは区別してる。はずだった。
▼九重 柚葉(ここのえ ゆずは) 受
・愛称『ココ』『ココさん』『ココちゃん』
・名前だけ可愛い。性格は可愛くない。見た目も別に可愛くない。
・理性が強め。隠れコミュ障。
・無自覚ドM。乱れるときは乱れる
作品はすべて個人サイト(http://lyze.jp/nyanko03/)からの転載です。
徐々に移動していきたいと思いますが、作品数は個人サイトが一番多いです。
よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる