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敵のアジト
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パティはジッと馬車の中で待っていた。誘拐犯たちのアジトに到着する事を。セーラとジェシカは、緊張疲れからかうとうとと船をこいでいる。
パティは彼女たちが倒れてしまわないように、しっかりと肩を抱いていた。
セーラとジェシカは早く城下町にかえしてあげたいが、誘拐犯たちを不審がらせてはいけない。
マイラから受け取ったトグサの指示の中に、誘拐犯の《リプレイス》は長距離の移動魔法だから、確実にその場で捕えないと逃げられてしまうという。
罪のない少女たちを誘拐して売りさばくなど、決して許すわけにはいかない。
ガタリと馬車がとまった。どうやらアジトとおぼしき場所に到着したようだ。パティはセーラとジェシカをゆり起こす。
「セーラ、ジェシカ起きて?」
「うぅん。ムニャムニャもう食べられない」
「セーラ、寝ぼけてないで起きて」
ジェシカはすばやく覚醒して、不安そうにパティに身をすり寄せた。
「大丈夫よジェシカ。じきに私の仲間が来るわ」
ジェシカは青ざめた顔でうなずいた。パティも彼女を安心させるためほほえんでうなずいた。
誘拐犯が馬車の中に入って来て、パティたちに降りろと指示した。パティたちは言われるままに、廃屋のような小屋に押し込まれた。
小屋の一室に連れていかれると、そこにはパティと同い年くらいの五人の少女たちがいた。皆焦燥しきっている。
誘拐犯は満足そうに囚われた娘たちを見て言った。
「お前たちは翌朝金持ちのところに売りに行く。それまで仲良くするんだな」
誘拐犯は笑って小屋にカギをしめて行ってしまった。パティは近くでうずくまっている少女に声をかけた。
「私はパティ、貴女は?」
「・・・。サラ」
「よろしく、サラ。他の皆も紹介してくれる?」
サラは輝きを失った瞳で、ぼんやりとパティを見てから、機械的にうなずいた。
残りの四人の少女たちは、チコ、エミリー、クララ、レオナと名乗った。皆一点を見つめたままみじろぎもしない。
きっとこれからの運命に絶望し、あきらめているのだろう。パティはジェシカの手を握って提案した。
「ねぇ、ジェシカ。サラたちに歌を歌ってあげてくれない?」
「えっ?でも、私の今の気持ちは不安でいっぱいなの。そんな気持ちで歌なんか歌ったら、サラたちも引き込まれてしまうわ」
「大丈夫よ。最初の歌い始めはそんな気持ちでも。だけどね、ジェシカの歌は聞いているうちに元気が出てくるの。だってジェシカは歌う事が大好きなんだもの。きっと楽しい気持ちになるわ?」
ジェシカは真剣な表でうなずいてから、スクッと立ち上がった。
ジェシカは《ナイチンゲール》の歌を歌い出した。ジェシカの声は透き通るように美しく、パティたちの心に染み渡っていった。
最初は物悲しく、だんだんと明るく、それは生きている喜び。
それまで無表情だったサラたちに変化が起きた。サラたちが目元に涙のつぶを浮かべた。
涙の粒はやがて頬からしたたり落ち、少女たちの頬を濡らした。パティはセーラに耳打ちした。《ドレスメーカー》で彼女たちに似合うドレスにしてくれと。
セーラはこころえたようにうなずいて、サラの側によると、彼女の手を優しく握った。
途端にサラの着ていた濃い紺色のワンピースは、さめるようなエメラルドグリーンのドレスになった。
サラは驚いたようにセーラを見つめた。もう涙はとまっていた。
セーラはサラに微笑みかけてから、チコのドレスを華やかなイエローに、エミリーのドレスを可愛らしいピンクに、クララのドレスを純白のホワイトに、レオナのドレスを鮮やかなレッドのドレスに変えた。
粗末な小屋の一室に花が咲いたようだった。
パティは彼女たちが倒れてしまわないように、しっかりと肩を抱いていた。
セーラとジェシカは早く城下町にかえしてあげたいが、誘拐犯たちを不審がらせてはいけない。
マイラから受け取ったトグサの指示の中に、誘拐犯の《リプレイス》は長距離の移動魔法だから、確実にその場で捕えないと逃げられてしまうという。
罪のない少女たちを誘拐して売りさばくなど、決して許すわけにはいかない。
ガタリと馬車がとまった。どうやらアジトとおぼしき場所に到着したようだ。パティはセーラとジェシカをゆり起こす。
「セーラ、ジェシカ起きて?」
「うぅん。ムニャムニャもう食べられない」
「セーラ、寝ぼけてないで起きて」
ジェシカはすばやく覚醒して、不安そうにパティに身をすり寄せた。
「大丈夫よジェシカ。じきに私の仲間が来るわ」
ジェシカは青ざめた顔でうなずいた。パティも彼女を安心させるためほほえんでうなずいた。
誘拐犯が馬車の中に入って来て、パティたちに降りろと指示した。パティたちは言われるままに、廃屋のような小屋に押し込まれた。
小屋の一室に連れていかれると、そこにはパティと同い年くらいの五人の少女たちがいた。皆焦燥しきっている。
誘拐犯は満足そうに囚われた娘たちを見て言った。
「お前たちは翌朝金持ちのところに売りに行く。それまで仲良くするんだな」
誘拐犯は笑って小屋にカギをしめて行ってしまった。パティは近くでうずくまっている少女に声をかけた。
「私はパティ、貴女は?」
「・・・。サラ」
「よろしく、サラ。他の皆も紹介してくれる?」
サラは輝きを失った瞳で、ぼんやりとパティを見てから、機械的にうなずいた。
残りの四人の少女たちは、チコ、エミリー、クララ、レオナと名乗った。皆一点を見つめたままみじろぎもしない。
きっとこれからの運命に絶望し、あきらめているのだろう。パティはジェシカの手を握って提案した。
「ねぇ、ジェシカ。サラたちに歌を歌ってあげてくれない?」
「えっ?でも、私の今の気持ちは不安でいっぱいなの。そんな気持ちで歌なんか歌ったら、サラたちも引き込まれてしまうわ」
「大丈夫よ。最初の歌い始めはそんな気持ちでも。だけどね、ジェシカの歌は聞いているうちに元気が出てくるの。だってジェシカは歌う事が大好きなんだもの。きっと楽しい気持ちになるわ?」
ジェシカは真剣な表でうなずいてから、スクッと立ち上がった。
ジェシカは《ナイチンゲール》の歌を歌い出した。ジェシカの声は透き通るように美しく、パティたちの心に染み渡っていった。
最初は物悲しく、だんだんと明るく、それは生きている喜び。
それまで無表情だったサラたちに変化が起きた。サラたちが目元に涙のつぶを浮かべた。
涙の粒はやがて頬からしたたり落ち、少女たちの頬を濡らした。パティはセーラに耳打ちした。《ドレスメーカー》で彼女たちに似合うドレスにしてくれと。
セーラはこころえたようにうなずいて、サラの側によると、彼女の手を優しく握った。
途端にサラの着ていた濃い紺色のワンピースは、さめるようなエメラルドグリーンのドレスになった。
サラは驚いたようにセーラを見つめた。もう涙はとまっていた。
セーラはサラに微笑みかけてから、チコのドレスを華やかなイエローに、エミリーのドレスを可愛らしいピンクに、クララのドレスを純白のホワイトに、レオナのドレスを鮮やかなレッドのドレスに変えた。
粗末な小屋の一室に花が咲いたようだった。
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