究極妹属性のぼっち少女が神さまから授かった胸キュンアニマルズが最強だった

ロレーナのひとり言8

　マイラの仕事が終わった後、ロレーナとエラルドは夕食をごちそうになった。もちろんパティも一緒に。

　この店はビーフシチューが名物のようで、とても美味しかった。なごやかな食事が落ち着くと、パティがこんな事を言った。

「ねぇマイラ。私とマイラは姉妹でしょ？」
「ええ、そうよ」

　パティの無邪気な発言に、マイラは美しく微笑んだ。パティは甘えるように笑ってから言った。

「あのね、マイラ。ロレーナとエラルドも私の兄妹になったのよ？だからマイラもロレーナたちの兄妹になってくれる？」
「あら、ロレーナも私の妹になるの？嬉しいわ。エラルド、ロレーナよろしくね？」

　ロレーナとエラルドはうなずいた。ロレーナとしてはパティを実の姉にしたかったのだが、パティの姉であるマイラと仲良くなるのも大切だ。

　ロレーナはマイラと姉妹になれる事を喜んで伝えた。そして兄をギロリにらんだ。

　ロレーナの視線にエラルドはギクリと身体をふるわせてから口をを開いた。

「マイラ、これからよろしくたのむ。マイラはこれから俺の姉だな。俺よりだいぶ年上のようだが一体いくつなんだ？」

　その場の雰囲気が一瞬でこおりつく。マイラはとても美人だ。だがロレーナかから見ても年齢はだいぶ上に見えた。二十代なかば、いや後半かもしれない。

　エラルドの失礼な質問にきっとマイラは気分を害しただろう。ロレーナは助けを求め、すがるような気持ちでパティを見た。

　パティはロレーナよりひどかった。顔を真っ青にして、歯をガチガチといわせている。

　鈍感なエラルドはなぜマイラが質問にも答えず動かない事を疑問に思っているようだった。

　この場にいる者たちは誰も動かない。沈黙をやぶったのはマイラだった。マイラはいつもの軽やかで美しい声からは想像もつかないような低い声で言った。

「エラルド。貴方と兄弟になった最初に、大切な助言をしてあげるわ。女性に年齢を聞いてはいけない」
「？。なぜだ？」

　マイラの異変にちっとも気づかないエラルドがのんきに聞いた。マイラはそれまでの美しいから想像もできないようや怖い顔で答えた。

「それはね、年齢を聞かれて気分を害する女の人がいるからよ」
「なに！？マイラは年齢を聞かれただけで気分を害したのか？！それはすまなかった。だがなぜ気分を害したのだ？パティは俺が年齢を聞いた時にとくに怒る事もなく答えてくれたぞ？」
「・・・。それはね、パティがまだ若いからよ」
「そうか、マイラはもう若くないから年齢を聞かれて怒ったのだな」
「お、お兄ちゃん？！私、ちょっと疲れちゃった！もう宿に戻らない？！」

　兄の暴走に耐えられなくなったロレーナは、悲鳴のような声をあげた。エラルドはロレーナを見て、そうかと答えた。

　パティも涙声になりながら口を開いた。

「そ、そうね、ロレーナはもう疲れただろうから、今日はもう宿に帰ったほうがいいわね」

　ロレーナは夕食をごちそうしてくれたマイラにお礼を言ってから兄の手を引っ張って店の外に出た。

「お兄ちゃん！マイラに何て事言うのよ？！マイラ怒っちゃたじゃない！」
「？。ロレーナ、なぜ怒ってるんだ？」
「何でですって？！お兄ちゃんこそ何でわからないのよ？！マイラは縁もゆかりもない私たちに親切にしてくれたのよ！」
「ああ、マイラはとても立派な人間だ。それはマイラが長い時間をかけて人のために行動した結果なのだろう。マイラは自分の重ねた人徳を誇るべきだ」
「・・・。お兄ちゃん、マイラの事を尊敬しているのね？」
「ああ、そうだ。ロレーナ、お前もマイラのような強くて大きな心の人間になれ」

　エラルドの言動はマイラの気分を害してしまったが、どうやらエラルドはマイラを認め一目置いているようだ。

　ロレーナがコクリとうなずくと、エラルドは笑ってしゃがんだ。ロレーナは兄の広い背中に飛びついた。

　ロレーナをおんぶしたエラルドは宿に向かって歩きだした。エラルドの背中は温かく、ロレーナはウトウトしだした。

　マイラには明日きちんと謝ろう。何せロレーナの二人目の姉になってくれた人なのだから。