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エラルドたちの初仕事
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パティは姉のマイラと共に朝早く冒険者協会に向かった。マイラは受付の仕事があり、パティはエラルドとロレーナの初仕事の依頼を探すのに同行するためだ。
冒険者協会に行くとすでにエラルドとロレーナが待っていた。エラルドたちはマイラに昨夜の夕食の礼を言っていた。
エラルドは少しズレたところのある青年だが、基本的に真面目なのだ。マイラは多少頬を引きつらせながら応対している。
昨夜エラルドがマイラの年齢に対する暴言を吐いた。エラルドには悪意はまったくなかったのだろうが、年齢を気にするマイラは憤慨した。
パティはマイラと一緒にマイラの家に帰ってから、ひたすらマイラの美しさをほめた。
これはお世辞ではない。マイラはとても美しい女性なのだ。マイラは外見だけではなく心も強くて美しいのだ。パティの自慢の姉なのだ。
パティの賛辞の言葉にマイラの気分は少し持ち直したようだ。マイラは本日最初の仕事として、新人冒険者のエラルドとロレーナに初仕事を探してやるのだ。
マイラはエラルドとロレーナに、丁寧に依頼の探し方、報酬の受け取り方を説明した。エラルドはマイラの言葉一つ一つにうなずいていた。マイラは説明を終えるとエラルドに質問した。
「これで依頼の説明は以上よ?エラルド、わからないところはある?」
「いいや、よくわかった。あの棚にある依頼書の依頼を受付に出せばいいのだな?」
エラルドの視線は大きな棚のファイルに注がれている。そのにはたくさんのファイルが並んでいた。そのすべてか冒険者に助けを求める人々の依頼なのだ。
エラルドは新人冒険者で冒険者レベル1だ。そのため冒険者の依頼はレベル一から十までの依頼しか受けられない。
マイラは一つうなずいてから言った。
「ねぇ、パティ。貴女エラルドたちの最初の依頼、一緒についていってあげなさいよ」
「えっ?!私がエラルドたちの付き添い?」
パティが新人冒険者の頃、マイラのすすめで、トグサたちを紹介してもらった。パティはトグサたちからたくさんの事を教わった。
当然エラルドたちもトグサのパーティに面倒見てもらうのだろうと思っていた。なぜならパティも経験の少ない冒険者には変わりがなかったからだ。
「パティが一緒に依頼に行ってくれるのか。心強いな」
「うん。パティと一緒になんて私嬉しい!」
エラルドとロレーナがパティに笑いかける。パティはギクリと身体を震わせてからうめくような声で言った。
「だ、大丈夫よ。エラルド、ロレーナ。私が付き添うから、泥舟に乗った気持ちでいてね、」
「あらあらパティ。泥舟に乗ったらすぐに沈んでしまうわ。それを言うなら大船に乗ったでしょ?緊張しないで気楽にしなさいよ」
パティはハッとした。どうやら緊張しすぎて訳のわからない事を言ってしまったようだ。
「ご、ごめんなさい。私、人に期待された事が初めてだから、緊張しちゃって、」
エラルドは慌てるパティをジッと見つめた。
「パティ、俺とロレーナはパティに期待なんかしていない」
エラルドの言葉にパティはギクリとした。エラルドの言葉は当然だ。パティはエラルドよりも少し前に冒険者になったのだ。まだまだ未熟者だ。エラルドたちが安心できるわけないのだ。
パティがガクリと肩を落としていると、エラルドは言葉を続けた。
「俺たちはパティに期待しているんじゃない。パティを信頼しているんだ」
「信頼?」
「ああ。パティと一緒に依頼に行って、俺たちが危険な目にあうのは冒険者になった俺たちの責任だ。パティが気にやむ事は一つもない。ただ俺たちは信頼するパティと一緒に依頼に行けたらとても心強いんだ」
エラルドの言葉に、パティはホッと息をはいた。
冒険者協会に行くとすでにエラルドとロレーナが待っていた。エラルドたちはマイラに昨夜の夕食の礼を言っていた。
エラルドは少しズレたところのある青年だが、基本的に真面目なのだ。マイラは多少頬を引きつらせながら応対している。
昨夜エラルドがマイラの年齢に対する暴言を吐いた。エラルドには悪意はまったくなかったのだろうが、年齢を気にするマイラは憤慨した。
パティはマイラと一緒にマイラの家に帰ってから、ひたすらマイラの美しさをほめた。
これはお世辞ではない。マイラはとても美しい女性なのだ。マイラは外見だけではなく心も強くて美しいのだ。パティの自慢の姉なのだ。
パティの賛辞の言葉にマイラの気分は少し持ち直したようだ。マイラは本日最初の仕事として、新人冒険者のエラルドとロレーナに初仕事を探してやるのだ。
マイラはエラルドとロレーナに、丁寧に依頼の探し方、報酬の受け取り方を説明した。エラルドはマイラの言葉一つ一つにうなずいていた。マイラは説明を終えるとエラルドに質問した。
「これで依頼の説明は以上よ?エラルド、わからないところはある?」
「いいや、よくわかった。あの棚にある依頼書の依頼を受付に出せばいいのだな?」
エラルドの視線は大きな棚のファイルに注がれている。そのにはたくさんのファイルが並んでいた。そのすべてか冒険者に助けを求める人々の依頼なのだ。
エラルドは新人冒険者で冒険者レベル1だ。そのため冒険者の依頼はレベル一から十までの依頼しか受けられない。
マイラは一つうなずいてから言った。
「ねぇ、パティ。貴女エラルドたちの最初の依頼、一緒についていってあげなさいよ」
「えっ?!私がエラルドたちの付き添い?」
パティが新人冒険者の頃、マイラのすすめで、トグサたちを紹介してもらった。パティはトグサたちからたくさんの事を教わった。
当然エラルドたちもトグサのパーティに面倒見てもらうのだろうと思っていた。なぜならパティも経験の少ない冒険者には変わりがなかったからだ。
「パティが一緒に依頼に行ってくれるのか。心強いな」
「うん。パティと一緒になんて私嬉しい!」
エラルドとロレーナがパティに笑いかける。パティはギクリと身体を震わせてからうめくような声で言った。
「だ、大丈夫よ。エラルド、ロレーナ。私が付き添うから、泥舟に乗った気持ちでいてね、」
「あらあらパティ。泥舟に乗ったらすぐに沈んでしまうわ。それを言うなら大船に乗ったでしょ?緊張しないで気楽にしなさいよ」
パティはハッとした。どうやら緊張しすぎて訳のわからない事を言ってしまったようだ。
「ご、ごめんなさい。私、人に期待された事が初めてだから、緊張しちゃって、」
エラルドは慌てるパティをジッと見つめた。
「パティ、俺とロレーナはパティに期待なんかしていない」
エラルドの言葉にパティはギクリとした。エラルドの言葉は当然だ。パティはエラルドよりも少し前に冒険者になったのだ。まだまだ未熟者だ。エラルドたちが安心できるわけないのだ。
パティがガクリと肩を落としていると、エラルドは言葉を続けた。
「俺たちはパティに期待しているんじゃない。パティを信頼しているんだ」
「信頼?」
「ああ。パティと一緒に依頼に行って、俺たちが危険な目にあうのは冒険者になった俺たちの責任だ。パティが気にやむ事は一つもない。ただ俺たちは信頼するパティと一緒に依頼に行けたらとても心強いんだ」
エラルドの言葉に、パティはホッと息をはいた。
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