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【三】
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「ま、待たれよ。私はそのようなつもりで参ったのでは……」
「ええい、問答無用! 竹刀を取らぬと言うならそれでもよい。行くぞ!」
正座したままの征之進に向かって雪之丞が打ち込んできた。征之進は素早く立ち上がり、雪之丞の竹刀を躱して壁まで走った。とにかく手を伸ばして触れた竹刀を掴み取り、振り返りざま雪之丞の振り下ろした竹刀を受ける。
「あ、危ないではありませんか。いきなり打ちかかってくるなど」
征之進は雪之丞の竹刀を振り払っておいて、竹刀を正眼に構えた。
「やっとやる気になったな」
「いえ、やる気になどなっておりません」
「まだそのようなことを!」
また雪之丞が打ち込んできた。征之進は仕方なくそれを振り払い、返しで雪之丞の胴を打ちに行った。すんでの差で雪之丞が下がり、竹刀は空を切った。
「なかなかの腕とお見受けした」
正眼に構え直した雪之丞が言った。
「いえ、つまらぬ技です」
「謙遜など要らぬ。全ては竹刀が語っておる」
言い終わらぬうちに雪之丞が真っ直ぐ飛び込んできた。征之進はその場で半身を返して躱すと、素早くまた正眼に構え直して雪之丞に相対した。躱された雪之丞もすぐに体勢を立て直して征之進に向かい合った。
「あ、あの、兄上殿……」
「まだ縁談が決まった訳でもないのに、兄上呼ばわりされる謂れはない!」
「これは失礼しました、雪之丞殿。あの……落ち着いて私の話を聞いていただけませんでしょうか」
「まだ言うか! 御託は要らん。竹刀で語られよ!」
「分からない人ですね……では行きますよ」
征之進は床を蹴って飛び出すと同時に竹刀を脇に構え直した。それに対して上段に振りかぶって迎え撃つ雪之丞の懐に飛び込み、その脚を薙ぎ払った。雪之丞は飛び上がってそれを避けたが、着地したときに体勢を崩した。征之進はその機を逃さず上から打ち込んだ。雪之丞はかろうじて竹刀で受け止めたが、とても反撃できる状態ではなかった。征之進は容赦なくそこに打ち込んだ。とにかく雪之丞に体勢を立て直す暇を与えず続けざまに竹刀を叩いた。遂に雪之丞の手から竹刀が落ちた。
「参った!」
雪之丞が両手を床に着いた。征之進も振り上げた竹刀をゆっくり下げた。
「其許の腕が確かなのはよく判り申した。妹には伝えておく」
「あ、いや、そのことなのですが……」
「なにか?」
「実は私、縁談をお断りに参ったのです」
「断りに?」
「はい。この度のお話しは無かったことにして頂きたいのです」
「それはまた……」
そう言う雪之丞の顔は、何故かほっとしているようにも見える。
「これは家の恥にもなりますので、くれぐれも内密にして頂きたいのですが……」
「ええい、問答無用! 竹刀を取らぬと言うならそれでもよい。行くぞ!」
正座したままの征之進に向かって雪之丞が打ち込んできた。征之進は素早く立ち上がり、雪之丞の竹刀を躱して壁まで走った。とにかく手を伸ばして触れた竹刀を掴み取り、振り返りざま雪之丞の振り下ろした竹刀を受ける。
「あ、危ないではありませんか。いきなり打ちかかってくるなど」
征之進は雪之丞の竹刀を振り払っておいて、竹刀を正眼に構えた。
「やっとやる気になったな」
「いえ、やる気になどなっておりません」
「まだそのようなことを!」
また雪之丞が打ち込んできた。征之進は仕方なくそれを振り払い、返しで雪之丞の胴を打ちに行った。すんでの差で雪之丞が下がり、竹刀は空を切った。
「なかなかの腕とお見受けした」
正眼に構え直した雪之丞が言った。
「いえ、つまらぬ技です」
「謙遜など要らぬ。全ては竹刀が語っておる」
言い終わらぬうちに雪之丞が真っ直ぐ飛び込んできた。征之進はその場で半身を返して躱すと、素早くまた正眼に構え直して雪之丞に相対した。躱された雪之丞もすぐに体勢を立て直して征之進に向かい合った。
「あ、あの、兄上殿……」
「まだ縁談が決まった訳でもないのに、兄上呼ばわりされる謂れはない!」
「これは失礼しました、雪之丞殿。あの……落ち着いて私の話を聞いていただけませんでしょうか」
「まだ言うか! 御託は要らん。竹刀で語られよ!」
「分からない人ですね……では行きますよ」
征之進は床を蹴って飛び出すと同時に竹刀を脇に構え直した。それに対して上段に振りかぶって迎え撃つ雪之丞の懐に飛び込み、その脚を薙ぎ払った。雪之丞は飛び上がってそれを避けたが、着地したときに体勢を崩した。征之進はその機を逃さず上から打ち込んだ。雪之丞はかろうじて竹刀で受け止めたが、とても反撃できる状態ではなかった。征之進は容赦なくそこに打ち込んだ。とにかく雪之丞に体勢を立て直す暇を与えず続けざまに竹刀を叩いた。遂に雪之丞の手から竹刀が落ちた。
「参った!」
雪之丞が両手を床に着いた。征之進も振り上げた竹刀をゆっくり下げた。
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「あ、いや、そのことなのですが……」
「なにか?」
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「断りに?」
「はい。この度のお話しは無かったことにして頂きたいのです」
「それはまた……」
そう言う雪之丞の顔は、何故かほっとしているようにも見える。
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