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金属のカップから昇る湯気が焚火の灯りに照らされている。すっかり陽は落ち、引っかき傷のような細い三日月が濃紺の空に浮かんでいた。
湯気に曇った眼鏡をぬぐいながら、パーシーが梟の声に耳を傾けるように顔を上げる。
その向かいには、ユーダレウスが相変わらず不機嫌そうな顔をして火を眺めていた。髪紐を解いた銀髪が、ランプの柔い明かりでキラキラと砂糖をまぶしたようにきらめいている。
ユーダレウスは手元のカップに口を寄せる。食事の礼にと振る舞われた茶は、旅の空の下には珍しい、質の良い茶葉が使われていた。茶にこだわるのがサラの趣味らしく、淹れ方も上手い。その華やかな香りは、森の中にいるというのに、まるで良家の茶会に呼ばれたような気分にさせた。
「……ユーダレウス、っておとぎ話の伝説の魔術師と同じ名ですよね。やはり、あやかるものなんですか?」
何の他意もなく零された疑問に、ユーダレウスはほとんど飲み込みかけていた茶を喉に詰まらせた。むせる師の背をティニの小さな手がさする。
パーシーからしてみれば、ただの世間話のつもりだろうが、その「おとぎ話の伝説の魔術師」本人としては、決まりが悪いことこの上ない。
「……まあ、そんなところだ」
おとぎ話になる程の年月を生きているだなんて、会ったばかりの人間に言ったところで信じてはもらえないだろう。冗談だと思って笑ってくれればいいが、まかり間違えば、おかしな思い込みをしている人間だと思われかねない。
適当に誤魔化したユーダレウスは、素知らぬ顔で口元をぬぐった。
しかし、それを許さない者が一人いた。
その者は、曇天色の髪をひょこんと揺らし、ユーダレウスの肩に手をついて後ろから身を乗り出す。
「ちがいます、師匠はほんとむぐ」
ユーダレウスはティニの口を片手でぱっと塞いだ。
流れるように、腰の鞄から平たい箱を取り出し、蓋を開く。何をするのかと言いたげなその小さな口に、箱から出した砂糖漬けの干したアンズをひとつ放り込んだ。目を輝かせたティニは、もぐもぐと口を動かすのに夢中になり、大人しくなった。
何事もなかったかのように、ユーダレウスはパーシー達にも砂糖漬けのアンズの箱を回す。商人らしく、パーシーがこの辺りでは珍しい品の入手先に興味を持ち、上手い具合に「伝説の魔術師」の話題は流れていった。
ティニの隣に座ったヒューゴが、アンズをつまみながらユーダレウスの袖を引く。
「なあなあ、ユーダレウス、もっかい魔術見たい!」
「こらヒューゴ、わがままを言うんじゃない。もう充分に見せていただいただろう」
顔を顰めて窘めるパーシーに、ヒューゴは唇を尖らせる。
「たしかにすごかったけどさー、もっと派手なのがいい!」
「ヒューゴ!」
気弱な父親の雷など意にも介していない様子で、ヒューゴはひょいとアンズをもう一つつまんで口に入れた。父の威厳を示せなかったとパーシーががっくりと肩を落とす。
「……まあ、そのうちな」
ユーダレウスが苦笑いで肩を竦めたその時。
すぐ側でゲコゲコという鳴き声が聞こえた。
近くにカエルがいるような湿った草むらはない。どこから聞こえるのかと、大人たちがきょろきょろと辺りを探し始める。
しまったという顔をしたヒューゴが、うかつにもティニを見た。その視線の先を追うと、ティニが肩にかけている鞄にたどり着いた。
師の鋭い視線を浴びたティニは、背中に鞄を隠し、顔を逸らす。
――どうりで、鞄をおろそうとしないわけだ。
ユーダレウスは深くため息をつくと、ティニの手を掴んで、自分の前に引き寄せる。俯いた顔を正面から覗き込むと、ティニは後ろに回した鞄を自分の背にぎゅっと押し付けた。
「……ティニ」
「何もいないです。カエルなんか入れてません」
わかりやすくしらばっくれるティニの頬を、ユーダレウスは指先で緩くつまむ。青い瞳は鮮やかさを消し、後ろめたさに濁っていた。視線はうろうろとして、決してこちらの目を見ようとしない。
ユーダレウスはただでさえ鋭い眼差しをさらに鋭くして、改めて弟子を見た。うっかり視線を合わせてしまったティニの細い肩がびくりと跳ねる。
「そのままだと、死ぬぞ。そいつ」
弟子の胸に軽く指を突きつけ、静かに「いいのか?」と問うと、ティニは大きな目を、こぼれんばかりに見開いた。人形じみた顔が、少し、人らしく見えた。
「……だめです」
「じゃあ、わかるだろう」
ティニは前に回した鞄をそっと抱き締めた。どこか、助けを求めるようにも聞こえるゲコゲコという声に、しょんぼりと眉を下げると、近くの湿った草むらに駆けて行った。
おそらく、カエルを鞄に囲う入れ知恵をしたのはヒューゴなのだろう。どこか責任を感じた様子で、ヒューゴはティニに付き添うように後を追った。
草むらの上で逆さになった鞄の中から、毒々しい紫色のカエルが跳び出した。大きな石にちょこんと降り立つと、本当に外かを確かめているように、きょろきょろと辺りを見る。
「……とじこめて、ごめんなさい」
「おれも、捕まえてごめん」
小さな謝罪の声が聞こえたのか、カエルは一度こちらを見上げて「ゲコ」と鳴くと、振り返ることもなく、元気にどこかへ飛び跳ねていった。
後ろから見守っていたユーダレウスは、しょげ切った子供たちの頭にポンと手を乗せた。そのまま、それぞれの髪をかき混ぜるようにわしわしと撫でる。
「……カエルは許してやるとさ。もう行くぞ。ガキは寝る時間だ」
子供たちが余りにも気落ちしているので、思わず出まかせを言ったユーダレウスだが、その効果は絶大だった。
「え、師匠、カエルが何ていったかわかるんですか!?」
「すげぇ! それも魔術?!」
寝るどころか元気になった子供ふたりが、ユーダレウスの袖やら腰やらにまとわりつく。面倒そうに顔をしかめながらも、決して振り払おうとはしないお人よしに、パーシーとサラが苦笑した
湯気に曇った眼鏡をぬぐいながら、パーシーが梟の声に耳を傾けるように顔を上げる。
その向かいには、ユーダレウスが相変わらず不機嫌そうな顔をして火を眺めていた。髪紐を解いた銀髪が、ランプの柔い明かりでキラキラと砂糖をまぶしたようにきらめいている。
ユーダレウスは手元のカップに口を寄せる。食事の礼にと振る舞われた茶は、旅の空の下には珍しい、質の良い茶葉が使われていた。茶にこだわるのがサラの趣味らしく、淹れ方も上手い。その華やかな香りは、森の中にいるというのに、まるで良家の茶会に呼ばれたような気分にさせた。
「……ユーダレウス、っておとぎ話の伝説の魔術師と同じ名ですよね。やはり、あやかるものなんですか?」
何の他意もなく零された疑問に、ユーダレウスはほとんど飲み込みかけていた茶を喉に詰まらせた。むせる師の背をティニの小さな手がさする。
パーシーからしてみれば、ただの世間話のつもりだろうが、その「おとぎ話の伝説の魔術師」本人としては、決まりが悪いことこの上ない。
「……まあ、そんなところだ」
おとぎ話になる程の年月を生きているだなんて、会ったばかりの人間に言ったところで信じてはもらえないだろう。冗談だと思って笑ってくれればいいが、まかり間違えば、おかしな思い込みをしている人間だと思われかねない。
適当に誤魔化したユーダレウスは、素知らぬ顔で口元をぬぐった。
しかし、それを許さない者が一人いた。
その者は、曇天色の髪をひょこんと揺らし、ユーダレウスの肩に手をついて後ろから身を乗り出す。
「ちがいます、師匠はほんとむぐ」
ユーダレウスはティニの口を片手でぱっと塞いだ。
流れるように、腰の鞄から平たい箱を取り出し、蓋を開く。何をするのかと言いたげなその小さな口に、箱から出した砂糖漬けの干したアンズをひとつ放り込んだ。目を輝かせたティニは、もぐもぐと口を動かすのに夢中になり、大人しくなった。
何事もなかったかのように、ユーダレウスはパーシー達にも砂糖漬けのアンズの箱を回す。商人らしく、パーシーがこの辺りでは珍しい品の入手先に興味を持ち、上手い具合に「伝説の魔術師」の話題は流れていった。
ティニの隣に座ったヒューゴが、アンズをつまみながらユーダレウスの袖を引く。
「なあなあ、ユーダレウス、もっかい魔術見たい!」
「こらヒューゴ、わがままを言うんじゃない。もう充分に見せていただいただろう」
顔を顰めて窘めるパーシーに、ヒューゴは唇を尖らせる。
「たしかにすごかったけどさー、もっと派手なのがいい!」
「ヒューゴ!」
気弱な父親の雷など意にも介していない様子で、ヒューゴはひょいとアンズをもう一つつまんで口に入れた。父の威厳を示せなかったとパーシーががっくりと肩を落とす。
「……まあ、そのうちな」
ユーダレウスが苦笑いで肩を竦めたその時。
すぐ側でゲコゲコという鳴き声が聞こえた。
近くにカエルがいるような湿った草むらはない。どこから聞こえるのかと、大人たちがきょろきょろと辺りを探し始める。
しまったという顔をしたヒューゴが、うかつにもティニを見た。その視線の先を追うと、ティニが肩にかけている鞄にたどり着いた。
師の鋭い視線を浴びたティニは、背中に鞄を隠し、顔を逸らす。
――どうりで、鞄をおろそうとしないわけだ。
ユーダレウスは深くため息をつくと、ティニの手を掴んで、自分の前に引き寄せる。俯いた顔を正面から覗き込むと、ティニは後ろに回した鞄を自分の背にぎゅっと押し付けた。
「……ティニ」
「何もいないです。カエルなんか入れてません」
わかりやすくしらばっくれるティニの頬を、ユーダレウスは指先で緩くつまむ。青い瞳は鮮やかさを消し、後ろめたさに濁っていた。視線はうろうろとして、決してこちらの目を見ようとしない。
ユーダレウスはただでさえ鋭い眼差しをさらに鋭くして、改めて弟子を見た。うっかり視線を合わせてしまったティニの細い肩がびくりと跳ねる。
「そのままだと、死ぬぞ。そいつ」
弟子の胸に軽く指を突きつけ、静かに「いいのか?」と問うと、ティニは大きな目を、こぼれんばかりに見開いた。人形じみた顔が、少し、人らしく見えた。
「……だめです」
「じゃあ、わかるだろう」
ティニは前に回した鞄をそっと抱き締めた。どこか、助けを求めるようにも聞こえるゲコゲコという声に、しょんぼりと眉を下げると、近くの湿った草むらに駆けて行った。
おそらく、カエルを鞄に囲う入れ知恵をしたのはヒューゴなのだろう。どこか責任を感じた様子で、ヒューゴはティニに付き添うように後を追った。
草むらの上で逆さになった鞄の中から、毒々しい紫色のカエルが跳び出した。大きな石にちょこんと降り立つと、本当に外かを確かめているように、きょろきょろと辺りを見る。
「……とじこめて、ごめんなさい」
「おれも、捕まえてごめん」
小さな謝罪の声が聞こえたのか、カエルは一度こちらを見上げて「ゲコ」と鳴くと、振り返ることもなく、元気にどこかへ飛び跳ねていった。
後ろから見守っていたユーダレウスは、しょげ切った子供たちの頭にポンと手を乗せた。そのまま、それぞれの髪をかき混ぜるようにわしわしと撫でる。
「……カエルは許してやるとさ。もう行くぞ。ガキは寝る時間だ」
子供たちが余りにも気落ちしているので、思わず出まかせを言ったユーダレウスだが、その効果は絶大だった。
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「すげぇ! それも魔術?!」
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