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本編
パッチーナ攻防戦 18
しおりを挟む間の前の男が戦闘態勢に入り、キャスに好戦的な目を向ける。が、それに対しキャスはふふふと上品に笑うと戦闘終了を告げた。
「何言って……………は??」
男は自身の視線がキャスより低い位置にあることに気づく。
「ふふっ。私、意外とあなた嫌いじゃないかもしれないわ。なんたって顔がいいし。だけど、レディーの扱いがまるでなってないことは欠点ね。レディーには腰を低くして接するものよ?」
「いや、これ腰を低くするとかのレベルじゃなくね?地面に縫い付いてね?どうなってんだ?」
「あなたにはそれくらいの低さがお似合いかと思って。この部屋に入った時から私はある魔法を発動させていたのよ。開始早々に戦闘に入っていたらかなり手こずった相手だったことでしょうけどね?」
「あはははっ!マジか!なんか部屋の中がモヤモヤっとお前で包まれていくような感じはしていたけど、気にしてなかったら地面とこんにちはするハメになっちまったぜ!」
「…いや、しっかり魔法が発動していたことに気づいているじゃない。気づいてなかったのかと思っていたのに、気づいていたなら少しは気にしなさいよ。」
呆れたとキャスは男をみる。
「地面と仲良しでお前を見上げるのも悪くないが、俺はもっと近くでお前さんが俺を見上げてくれる方がいいかな……ふん!!!」
「なっ!!」
地面に縫い付けたはずの魔法の糸が引きちぎられるようにして外れていき、男は立ち上がるとキャスの目の前へ瞬時に移動しキャスを見下ろす。
「いや~思ったよりしっかり拘束されたわ。それにしても、その驚いた顔もなかなか良いな!うん、惚れたぜ!やっぱ俺の女になれよ。」
男がキャスの顔に触れようとした瞬間…
「お断りよっ!」
「うおっ!?」
キャスは簡易詠唱を唱えると目の前の男を宙で新たに拘束した。
「えぇ?マジかよ!?まだ続きがあんのかよ!?」
「私の得意魔法は魔法糸を使った拘束なの。あなたは今、私のマリオネットよ。全身に絡めた魔法糸はそう簡単には解けやしないわ。宙に拘束したことで先ほどみたいに力技で糸をぶち切るなんて難しいでしょう?」
「………ぃ」
「あら、何も言えない?私のマリオネットだなんて屈辱かしら?」
「…すごく良い!!」
「そう、すごく良い………え?良い??」
「つまり俺は今、あんたのマリオネットで、あんたの物なんだろ?惚れた女に捕まり支配されてるってのも悪くねぇな。」
「なっ!!!」
キャスは顔を赤くし、男を見る。
「私は今、あなたと敵対関係にあるって分かってるの!?」
「敵対関係か。もう俺に戦う気はないさ。そりゃあ、あんたとは本気で戦ってみたいけどよ、惚れた女に手を出すほど腐っちゃいねぇさ。俺の負けでいい。というかあんたがこの部屋に入って来たときから俺は惚れてたのかもな?とっくに戦意なんてないに等しかったしな。という事で、俺の負けだ負け!敵対関係じゃなく、これからは恋愛関係で宜しく頼むわ。」
「ばっっっかじゃないの!?」
「おう、バカで結構!さぁ、降ろしてくれよ。俺の負けなんだしさ?」
「あなたが攻撃しないとは限らないわ。」
「しないしない。俺、あんたの味方!つまり、あんたの味方は俺の味方!それにさ、そろそろこの街かは脱出しないとやばいんだよな。俺の勘が時間がないって訴えてるんだわ。」
「時間がないってさっきも言ってたわね。なんなの?」
「街を覆う壁?を発動して、上空からズバーンって魔法を発動する?みたいなことらしいぞ?俺は魔法には詳しくないからそこら辺は知らん!逃げ場がなくなるから、これが発動する前に撤収するかヤヤが用意した秘密の抜け道を使うかしか選択肢はなくてな。前者の発動前に撤収するってのはどうやら難しそうだし、後者の抜け道は距離があるから厳しい。」
「説明下手くそね。でも、、、、、、とりあえず緊急事態なのは分かったわ!!すぐここから移動するわよ!解放するけど、下手な真似しないことね!いい?」
「このまま放置されて死ぬのはごめんだしな!」
キャスは目の前の男の拘束を解き、自身の率いる救出隊と合流するべく扉に手をかけた。
「…あの変態連れて来てくれるかしら?私、触りたくないのよね。」
「えーあの変態は置いて行った方が世の為だと思うけどなー。」
「連・れ・て・き・て」
「はいはいっと!」
男は変態を軽々と持ち上げるとキャスと共に歩き出す。
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