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「……はぁ。どうして私が、婚約破棄された翌日に正装してお茶を飲んでいなくてはならないんですの?」
ラブリーは、目の前に並べられた色とりどりのマカロンを恨めしそうに見つめていました。
場所は公爵邸の豪華な応接間。
しかし、主人のように上座に居座っているのは、元婚約者のクロード王子です。
「何を言うんだ、ラブリー。君の第二の人生は、一刻の猶予もないほど輝かしいものであるべきだ。さあ、背筋を伸ばして。最初の候補者が来るよ」
クロードはまるで、有能な秘書か、あるいは過保護すぎる親のような顔をしています。
その隣では、ミリーが「面接官」と書かれた札を首から下げて待機していました。
「ミリー様、その札は何ですの……?」
「形から入るタイプなんですの、私。さあラブリー様、シャキッとしてください。あ、来ましたわ!」
扉が開くと、カチャカチャと軽快な鎧の音を響かせて、一人の青年が入ってきました。
燃えるような赤髪に、快活な笑みを浮かべた美丈夫。
近衛騎士団長の息子であり、ラブリーの幼馴染でもあるレオ・アルベルトです。
「失礼するよ。……よぉ、ラブリー。昨夜の生クリーム事件、街中の噂になってるぜ? お前らしいっていうか、なんつーか……」
「レオ! あなたまで冷やかしに来たんですの!?」
ラブリーが立ち上がろうとすると、すかさずクロードが制止しました。
「座るんだ、ラブリー。レオ、君を呼んだのは他でもない。君は以前から、ラブリーに対して並々ならぬ執着……失礼、関心を持っていたね?」
「……まぁ、そうっすね。こいつが殿下と婚約した時は、正直、枕を濡らした夜もありましたよ」
レオは照れくさそうに鼻の頭を掻きました。
その言葉に、ラブリーの頬がわずかに赤らみます。
「な、何を言っていますの! 私たちは泥遊びをしていた仲ではありませんか!」
「泥遊びの最中に『将来、私が悪女になったらあなたが成敗してね』なんて約束しただろ? 俺はあの時から、お前の騎士になるって決めてたんだよ」
「……あら。意外と情熱的ですわね、レオ様」
ミリーがメモ帳に『ポイント高め:純愛系騎士』と書き込みます。
しかし、ここで納得がいかない顔をしたのがクロードでした。
「待て、レオ。君の熱意は認めるが、ラブリーを守るには今の剣技では甘い。昨日の訓練、私に三回も面を打たれただろう?」
「そりゃ、殿下が化け物染みた強さだからですよ! 普通の騎士相手なら負けませんって!」
「ラブリーを任せる男は、私以上の強さでなくては困る。……ラブリー、どう思う? 彼は合格かい?」
クロードが、なぜか「自分が振った相手」を品定めするような、非常に複雑な目で見つめてきます。
「殿下、そもそも合格も何も、私はまだ誰とも結婚する気はありませんわ! 私は自由を謳歌したいのです!」
「自由、か。いい言葉だぜ、ラブリー。だったら、俺と一緒に国境まで馬を走らせないか? 城の堅苦しい生活なんて忘れてさ」
レオがテーブル越しにラブリーの手を取ろうとしました。
その瞬間、クロードが素早い動きで二人の間にティーポットを置きました。
「おっと、お茶のおかわりが必要かな? ……レオ君、話を進める前に、まずは私と手合わせをしようか。君が私に一太刀でも浴びせられたら、ラブリーとの『初デート』を許可しよう」
「……殿下、それじゃ一生デートできないじゃないですか」
レオが呆れたように肩をすくめます。
ラブリーもまた、殿下の過干渉に頭を抱えました。
「殿下、あなたは私の再婚相手を探してくれるのではなかったのですか? 邪魔をしてどうしますの!」
「邪魔なんてしていないよ。私はただ、君を愛しすぎるあまり、並大抵の男では満足できないだけなんだ。元婚約者として、君には世界で一番の幸せを掴んでほしい。……そう、私を忘れてしまうくらいのね」
「(……だったら、あなたが一番の邪魔者ですわよ!)」
ラブリーは心の底から叫びたくなりました。
婚約破棄をすれば、殿下からの「重い愛」から解放されると思っていたのに。
蓋を開けてみれば、彼は「選定委員」という名の、より強力なストーカーへと進化しただけでした。
「ラブリー様、レオ様はキープということでよろしいかしら? 筋肉質で顔もいいですし、何よりラブリー様の扱いに慣れていそうですわ」
「ミリー様、勝手にキープしないでくださいまし!」
「さあ、次は文官の候補が控えているよ。レオ、君は一旦、練兵場で素振り千回だ。話はそれからだ」
「ちっ……。覚えてろよ殿下。ラブリー、また後でな!」
レオは不敵な笑みを残して去っていきました。
嵐のような第一回お見合いが終わり、ラブリーは椅子に深く沈み込みました。
「……自由……自由って、どこにあるのかしら……」
「大丈夫だよ、ラブリー。君の未来は、私が責任を持って『検閲』するからね」
クロードの爽やかな笑顔が、今のラブリーには、どんな悪役の台詞よりも恐ろしく聞こえるのでした。
ラブリーは、目の前に並べられた色とりどりのマカロンを恨めしそうに見つめていました。
場所は公爵邸の豪華な応接間。
しかし、主人のように上座に居座っているのは、元婚約者のクロード王子です。
「何を言うんだ、ラブリー。君の第二の人生は、一刻の猶予もないほど輝かしいものであるべきだ。さあ、背筋を伸ばして。最初の候補者が来るよ」
クロードはまるで、有能な秘書か、あるいは過保護すぎる親のような顔をしています。
その隣では、ミリーが「面接官」と書かれた札を首から下げて待機していました。
「ミリー様、その札は何ですの……?」
「形から入るタイプなんですの、私。さあラブリー様、シャキッとしてください。あ、来ましたわ!」
扉が開くと、カチャカチャと軽快な鎧の音を響かせて、一人の青年が入ってきました。
燃えるような赤髪に、快活な笑みを浮かべた美丈夫。
近衛騎士団長の息子であり、ラブリーの幼馴染でもあるレオ・アルベルトです。
「失礼するよ。……よぉ、ラブリー。昨夜の生クリーム事件、街中の噂になってるぜ? お前らしいっていうか、なんつーか……」
「レオ! あなたまで冷やかしに来たんですの!?」
ラブリーが立ち上がろうとすると、すかさずクロードが制止しました。
「座るんだ、ラブリー。レオ、君を呼んだのは他でもない。君は以前から、ラブリーに対して並々ならぬ執着……失礼、関心を持っていたね?」
「……まぁ、そうっすね。こいつが殿下と婚約した時は、正直、枕を濡らした夜もありましたよ」
レオは照れくさそうに鼻の頭を掻きました。
その言葉に、ラブリーの頬がわずかに赤らみます。
「な、何を言っていますの! 私たちは泥遊びをしていた仲ではありませんか!」
「泥遊びの最中に『将来、私が悪女になったらあなたが成敗してね』なんて約束しただろ? 俺はあの時から、お前の騎士になるって決めてたんだよ」
「……あら。意外と情熱的ですわね、レオ様」
ミリーがメモ帳に『ポイント高め:純愛系騎士』と書き込みます。
しかし、ここで納得がいかない顔をしたのがクロードでした。
「待て、レオ。君の熱意は認めるが、ラブリーを守るには今の剣技では甘い。昨日の訓練、私に三回も面を打たれただろう?」
「そりゃ、殿下が化け物染みた強さだからですよ! 普通の騎士相手なら負けませんって!」
「ラブリーを任せる男は、私以上の強さでなくては困る。……ラブリー、どう思う? 彼は合格かい?」
クロードが、なぜか「自分が振った相手」を品定めするような、非常に複雑な目で見つめてきます。
「殿下、そもそも合格も何も、私はまだ誰とも結婚する気はありませんわ! 私は自由を謳歌したいのです!」
「自由、か。いい言葉だぜ、ラブリー。だったら、俺と一緒に国境まで馬を走らせないか? 城の堅苦しい生活なんて忘れてさ」
レオがテーブル越しにラブリーの手を取ろうとしました。
その瞬間、クロードが素早い動きで二人の間にティーポットを置きました。
「おっと、お茶のおかわりが必要かな? ……レオ君、話を進める前に、まずは私と手合わせをしようか。君が私に一太刀でも浴びせられたら、ラブリーとの『初デート』を許可しよう」
「……殿下、それじゃ一生デートできないじゃないですか」
レオが呆れたように肩をすくめます。
ラブリーもまた、殿下の過干渉に頭を抱えました。
「殿下、あなたは私の再婚相手を探してくれるのではなかったのですか? 邪魔をしてどうしますの!」
「邪魔なんてしていないよ。私はただ、君を愛しすぎるあまり、並大抵の男では満足できないだけなんだ。元婚約者として、君には世界で一番の幸せを掴んでほしい。……そう、私を忘れてしまうくらいのね」
「(……だったら、あなたが一番の邪魔者ですわよ!)」
ラブリーは心の底から叫びたくなりました。
婚約破棄をすれば、殿下からの「重い愛」から解放されると思っていたのに。
蓋を開けてみれば、彼は「選定委員」という名の、より強力なストーカーへと進化しただけでした。
「ラブリー様、レオ様はキープということでよろしいかしら? 筋肉質で顔もいいですし、何よりラブリー様の扱いに慣れていそうですわ」
「ミリー様、勝手にキープしないでくださいまし!」
「さあ、次は文官の候補が控えているよ。レオ、君は一旦、練兵場で素振り千回だ。話はそれからだ」
「ちっ……。覚えてろよ殿下。ラブリー、また後でな!」
レオは不敵な笑みを残して去っていきました。
嵐のような第一回お見合いが終わり、ラブリーは椅子に深く沈み込みました。
「……自由……自由って、どこにあるのかしら……」
「大丈夫だよ、ラブリー。君の未来は、私が責任を持って『検閲』するからね」
クロードの爽やかな笑顔が、今のラブリーには、どんな悪役の台詞よりも恐ろしく聞こえるのでした。
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