【完結】あたしはあたしです

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あたしにはなにもない

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物心ついたときには、あたしは、道にいた。暗くて汚くて臭いとこ。
食べる物はない。もちろん、お店から買うこともできない。だってみんなが持ってる丸い何かをあたしは持ってない。
いい匂いがするお店に近寄ったら、怖いおじさんに追い払われた。
「次来たら殺す」
そう言われてしまった。
服はどんどん小さくなるけど、替えが捨てられてるのを運良く拾わないかぎり、あたしがあたしだって意識したときに着ていた服しかない。
いくつかなんてわからないけど、他の道にいる子と比べたら、かなり小さいと思う。
食べ物は捨てられてるのから、取り合うのだけど、勝てたことがない。
だから、あたしはガリガリだ。
いつもお腹が空いてるし、自分からは強烈な臭いがするし、最悪だ。

その日、なんとなくあたしはそろそろ死ぬな、と思った。
死ぬってわからないけど、道にいた何人かが急に動かなくなって、どこかに連れて行かれるのは何回か見た。連れて行くおじさんたちはとてもこわくて、あんな人たちに連れて行かれる最後は嫌だなとは思う。
でも、食べ物もなくて、もちろん雨の日はびしょびしょで、あたしが生きていける感じはまったくしない。そろそろじゃないかな。
なんて思っていたら、
「フェリシア!」
大きな声で話しかけられたのかな?
振り向いたら、なんだかピカピカ光った男の人が、涙を流していた。
「やっと見つかった。すまない、フェリシア。こんなところにいたなんて。ずっと探していたんだよ」
あやしい男の人だ。
噂に聞く誘拐犯、ってやつかな?
「フェリシア、覚えてなくて当たり前だが、お前は2歳の時に誘拐されたんだ。我がミルナルド公爵家から」

あたしは、あやしいピカピカおじさんと、おじさんのお家に行くことになった。
最初は首を振ったのだけど
「美味しいご飯がたくさんあるよ」
と言われて、殺される前にたくさん食べさせてくれるならいいかと思ったの。
馬車っていうのにも初めて乗った。
大きな馬がこわかったし、何かに乗るのは初めてで、とてもこわかった。
震えていたら、ピカピカおじさんは、あたしの手を握り、
「もうこわいことは何もないよ」
って優しく笑ったんだ。
優しくされたのは初めてで、とてもびっくりした。
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