レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。

玉ねぎサーモン

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第三章 魔王の真実

第108話 魔族の置き土産

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数百体ものモンスターたちとの戦いにより、ロックたちは大幅にレベルアップした。

なんとパーティ全員が一気にAランクになった。

ミラはレベルだけでなく、スキルもグレードアップ。

ロックも【分裂】スキルを手に入れた。

魔族の分裂体が消え、1体になった時に念の為奪っておいたのだ。


「きゃ~~~!!
 ブレスレットがシルバーに~~~!!
 わたしたちA級冒険者になっちゃったよ!!」

「一気にレベルが上がったわね。」

「まああんだけ倒せばね…。
 他のみんなもかなり上がったんじゃないかな?」

「いや~、そんなに上がっだのはおめえらぐれえだべ。
 Bランクになるど同じレベルの敵なら60匹以上倒さねばなんね。
 パーティで倒しだらその何倍もな。
 レベル差の大きい敵は経験値がでけえが、ダメージ与えられだ奴すらほとんどいねえだろ。」


ロックと【全能力50%UP】を使ったティナはレベルが上のモンスターをたくさん倒し、彼らにバフをかけてたミラは莫大な経験値を得た。

しかし、それは特殊なケースなのだ。

事実、レベルが57だったゴルドはレベルが1つ上がっただけ。

ただ、ロックたちもここからはなかなかレベルが上がらなくなる。

A級モンスターでもレベル差はそこまでなくなり、S級モンスターと戦う機会は少ないからだ。

S級冒険者になることができるのは、世界でも本当にごく一握りの冒険者だけなのだ。


「アメリアさん、大丈夫ですか?」

MPを吸われて急に動けなくなったアメリアにティナが声を掛ける。

「ええ。
 私の【精霊魔法】は特殊でね。
 MPが無くなったり、精霊が攻撃を受けて消えてしまうとしばらく動けなくなっちゃうの。」

「回復しようか!?」

ミラが声を掛ける。

すぐタメ口になるのはミラの特徴だ。

「大丈夫よ、ありがとう。
 これはHPを回復しても治らないから。」

「【精霊魔法】ってすごいね!
 ユニークスキルなの?」

「違うわ。
 ★4のスキルよ。
 すごいけど強くなるまでに時間がかかるから大変よ~。」

「ミラ!
 すみません、スキルは人に簡単に話すようなことじゃないのに…。」

「構わないわよ。
 この街を救ってくれた恩人たちですもの。
 それに、私のスキルはほとんどの人が知ってるしね。」

パチンとウインクをするアメリア。

綺麗な顔立ちだが、リアクションが古い。

「安心して?
 こっちが教えたからってあなたのスキルを詮索したりはしないわ。」


そう言ってアメリアは【精霊魔法】について教えてくれた。


このスキルが覚醒した冒険者は1体の精霊と契約をする。

どんな精霊になるかはその人の素質や相性による。

シルフィードは4大精霊のうちの1体で、風を操る精霊。

信頼度によりどれだけ精霊の力を引き出せるかが変わってくる。

自分のレベルや熟練度とは別で信頼関係を築かないといけないため、成長するのに時間がかかる。

信頼度が低すぎると、契約を切られてしまうこともあるんだとか。

そうすると、2度と【精霊魔法】は使えない。

召喚する時にMPが必要で、特殊な技を使ってもらうときは追加でMPが必要らしい。


「シルフィードはもっとすごい風の魔法も使えるんだけど、人間のMPや魔力で全てを引き出すのは無理ね。」

「S級冒険者のアメリアさんでも無理なんですか?
 精霊ってすごいんですね。」

「君なら引き出せるかもね。
 普通の冒険者じゃないよね?」

アメリアはロックにそう問いかけた。

「そんなことないですよ。
 ユニークスキルは持ってますけど…。」

「そういえば、魔族がスキル5つ持ちか?って言ってたわね。」

「はい。
 確かに僕は5つ持ちです。」

「本当だったんだ!?
 5つ持ちなんて初めて会ったわ~。」


パンパン!


「よし!
 色々話したいことはあるだろうが、一旦街に戻ろう!
 お前らのおかげで犠牲者を出さずに街を守りきれた!
 帰って宴だ~!!」

「モンスターの解体とかどうするんですか?」

「今回出番がなかったC級冒険者たちにやってもらう。
 そうすれば分け前を少しはやれるしな!」

「よし!
 帰りましょ~!」


こうして戦いは終わり、冒険者たちは街へ戻った。


素材の売却額は総額で約3億ゴルとなったそうだ。

配分については冒険者たちの総意で、ロックのパーティに半分を、との申し出があった。

それだけロックたちの存在は大きかったのだ。


しかし、ロックたちはそんなに受け取れないと辞退した。

なかなか交渉が進まないところで、アメリアがこんな提案をしてきた。

「ところで、こんなの落ちてたんだ~。
 これを受け取ってもらったら?」

アメリアは直径5cmほどの妖しくほのかに光る珠を差し出した。

「アメリア?
 これはどこに?」

ギルマスが尋ねる。

「魔族が倒れた後、コロコロ転がってきたわよ。」

「その時に言わんか!
 …一体それはなんだ?」

「魔族を倒した前例ってほとんどないからね。
 騒動になると思って隠しといたの。」

「全く…。
 これがなんなのかわからんが…、もし欲しいなら受け取る権利がお前たちにはある。
 本当はまずいが、言わなきゃわからんだろう。」

(もしかしたら武器の素材になるかも?
 イシュメルさんに聞いたらわかるかな。)

「いいのですか?
 もしいただけるなら…、いただきたいです。」

「もちろんだ。
 ただ、ここでもらったことは内緒にしといてくれよ?」

ギルマスが悪戯っぽい顔で笑う。

「はい!
 ありがとうございます!!」


その夜、ダートの至る所で宴が開かれた。

費用はモンスターの素材売却益から出されたらしい。

モンスター襲来の後にこうやって宴が開かれたのは世界でも初めてのこと。

なぜなら、今までは必ず人的被害・物的被害を被っていたからだ。

初めてのA級魔族の襲来、そして被害を出さずに守り切ったこと。

ダートの冒険者たちは奇跡に酔いしれた。

そして、ロックたちへの感謝や活躍の様子を口々に言い合っていた。

会う人会う人に声をかけられ熱いお礼の言葉をかけられるので、ロックたちは困ってしまったくらいだ。



こうして、ロックたちにとって初の魔族との戦いの1日が終わった。
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