レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。

玉ねぎサーモン

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第五章 最後の決戦

第273話 茶番

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「…これが今まで俺がやってきたことだ…。
 俺は安心して住める世界を作りたい。
 実際に、人間同士の争いを止め、それまでの世界より平和になったはずだ。
 それを…なぜ邪魔する?」

「…この世界のどこが安心して暮らせると言うんですか?
 確かに人間同士の争いは減ったと思います。
 でも、僕の国はあなたに滅ぼされた。
 魔族の侵攻で命を落としている人たちがいる。
 大事な人を失う悲しみは…あなたによって生まれ続けているじゃないですか。」

「全ての争いをなくすことはできん。
 最小限の犠牲は必要なのだ。」

「…それはそうかもしれません。
 争いを完全になくすことは…不可能に…近いのかも…。
 でも、あなた自身がその犠牲者だったんですよね?
 それが嫌で世界を変えようと思ったんですよね?
 ”みんなが安心して暮らせる世界” を作りたい、その気持ちがあったからご老人があなたに【パンドラ】を託したのでは?」

「……?
 何を言っているんだ?
 俺が実現したかったのは、”俺が安心して暮らせる世界” だぞ?」

「……話を聞いていてそんな気がしていましたが…!
 じゃあ!
 他の人はどうでもいいと!?」

「どうでもいいとは言わん。
 だから人間同士の争いを止めてやっただろう?
 それに、俺の安心のためには、他の人間も必要だ。
 俺がなぜ支配という手段を取らなかったかわかるか?」

「…それは…ずっと疑問でした。
 強大な力を持ちながら、なぜ支配しないのか…。」

「敵対は安心を生まないからだよ。
 俺は自分の欲望を満たしてきた。
 最初は、生きるために最低限必要な安全を求めた。
 それが満たされると、社会の中での自分の居場所を探した。
 軍に入れたが、誰にも認めてもらえなかった。
 認めてもらうために、出世し、魔王を使って皇帝になった。
 そこで自分が何をしたいのか改めて考えたんだ。
 それは、やはり安心だった。
 支配は反発心を生む。
 そうなると、俺の命を狙おうとする輩がいつか出てくる。
 いかに力を持っていても、それでは安心できん。
 敵も味方も自分がコントロールし、世界中の人間から感謝される。
 誰も彼もが俺を褒め称える。
 そして”俺が安心して暮らせる世界” がやっと実現したんだ。

 ……それを脅かす存在が現れるまではな…!」

「…僕の恩人がこんな言葉を言ってくれました。

 『力を持っても、自分だけのために使うな。
  いくら権力や富を手に入れても、自分のためだけに生きている者には手にいれられないものがある。』

 と…。」

「説教か?
 皇帝だった俺に手に入れられないものなどなかったぞ?」

「いいえ。
 それは『心から信じられる、笑い合える人との繋がり』です。」

「はぁ?」

「『いくら偉くなっても、苦労を分かち合えたり、喜びを共にできる人がいない人生は貧しい』、そう教えてもらいました。
 今のあなたはまさにそうじゃないですか?
 自分のためだけに生きて、本当に信じられる相手はいない。
 だから、自分の欲望のために簡単に他人を犠牲にできるんです。」

「…お前も育ての親に殺されかけたんだろう?
 心から信じていた両親に。
 人間などそんなものだ。」

「…そうですね…。」

「ほら見ろ。
 綺麗事をほざくんじゃない。」

ロックはゆっくり自分の仲間を見回した。

「それでも、人は繋がれる。
 自分が人のために動けば、信じられる繋がりはできるんです。
 人のために動けない人には、いつまで待っても繋がりはできませんよ。
 あなたも自分のためじゃなく、みんなの安心のために考えて行動していたら、きっとそんな相手ができたはずだし、できます。」

今まで出会った人たちとの繋がり、今そばにいる仲間たちがいるからこそ自信を持って言えるロック。

その繋がりが自分を追い詰めている現状があるため、皇帝も言葉に詰まる。

しばらくの沈黙の後、再び皇帝が口を開いた。

「じゃあ、お前はどうやってみんなが安心して暮らせる世界にするつもりだ?」

「…わかりません。」

「ふざけるな!
 偉そうなことばっかり言いやがって!
 口先だけなら誰でもなんとでも言えるんだ!
 実際にこれだけ世界を導いて変えることがどれだけの偉業かわかるか!?
 理由はどうあれ、結果を出している者が一番偉いんだ!」

「…僕1人じゃどうすればいいかわかりません。
 でも、僕には仲間がいます。
 みんなでどうすればいいか考え続けて、行動し続ける。
 それが大事なことだと思います。」

「ふ…。
 現実味の伴わない理想論だな。
 人は権力を持てば変わる。
 争いは無くならんよ…。
 そして、俺はまだ諦めていない。」

「どうするつもりですか?」

「なぜこんな茶番に付き合ったと思う?」

「…茶番?」

「理由もなく、こんなベラベラと話すわけがないだろう?」

「今更何をしようというんです?
 確かにあなたの力は脅威ですが、今の僕なら対処できる。
 抵抗するなら、容赦しませんよ。」

「確かに八方塞がりだ。
 俺の作り上げてきたものはお前らに壊された。
 元通りにすることはもう諦めざるを得ない…。」

「……?」

「できれば全世界から賢帝と讃えられる今の状況を守りたかった。
 だがここまできてしまえば…それはもう無理だ。

 気が進まないが…、力で支配するしか…ない!!」


皇帝が叫ぶと同時に、魔王の手から眩い光が溢れ出てた。
 

「え!?
 あ、あれは…!
 まずい!!」

【神速】で魔王に近づこうとするロック。

しかし、魔王の周りを魔族たちが固め、移動する隙がなかった。

溢れた光が魔王の体に吸い込まれていく。

「涅槃珠!?
 隠し持っていたの!?」

隠し持っていたなら、今まで使わなかったのはおかしい。

その疑問を解消する間も無く、魔王から圧倒的な威力の魔法が放たれる。


「みんな!!」


ロックが【神速】でティナやミラの場所へ移動し、【守護神の加護】の効果を共有する。

そしてその他のメンバーを分裂体でガードした。

魔王の魔法を受けた分裂体は一撃で消滅。

しかし、被害者は出さずに済んだ。


「このための時間稼ぎか!
 しょうがない…!
 魔族ごと…」

【神の恩寵】でMPを回復していたロックは、【全能の権化】も掛け直している。

取り囲んでいる魔族ごと魔王を倒すことは造作もないことだった。

ただ、皇帝の動きには気をつけなければいけない。

「…!?
 皇帝は!?」

魔法が放たれていた間に、皇帝がいなくなっていた。


どこに行ったのか?


その疑問は、最悪の展開とともに解けたのだった。
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