聖女の力を隠して塩対応していたら追放されたので冒険者になろうと思います

登龍乃月

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 無事に解呪の儀も終わり、晴れやかになった古民家の中、私はバルトと一緒にリーシャが出してくれたお菓子を食べながら縁側でのんびりとお茶をしていた。

「い~い天気ですねぇじいさんや」
「そうじゃのうばあさんや……って誰がじいさんか!」
「まぁまぁ、会話のノリっていうやつですよ。ここいいですね、呪いがないだけでこんなにも趣が出るなんて」
「言われてみりゃそうだなぁ。いい感じに日が当たって、周りも静かだし。ちょっと変わった建物だけどな」
「ワッフル建築でしたっけ?」
「なんだその美味しそうな建築物は。ワフウだよワフウ。シンワ国の建築様式ってリーシャが言ってたろ」
「あぁそうでしたね。ワフウワフウウフウフ」
「言葉遊びしてる場合か」
「いいんですよ! のんびりする時はのんびりする! これが人生まったりシャッキリ生きる長年の秘訣です!」
「ばば臭い事言ってんなぁ。まだ十八だろ」
「誰がババァですかっ!」

 言い合いの隙にひょいぱく。
 お皿に残っていた最後の茶菓子を口の中に放り込む。

「あってめっ! 狙ってたのに!」
「へっへーん」
「まぁまぁ、まだありますから」
「リーシャさん」

 両手でお盆を持って笑うリーシャは私の隣に腰を下ろし、追加のお菓子を皿に乗せてくれた。
 すかさず一つ口に放り込む。
 甘すぎず濃厚すぎず、あっさりとした口当たりの不思議な食べ心地。

「これ、プリシラが作ってくれたんです」
「ほえー女子力高いですねぇ。私がやったら黒こげになりそう」
「頑張れよビショップ」
「うわ、絶対馬鹿にしてますよねバルトさん。馬鹿にされても仕方ないですがっ!」
「悔しかったらこれくらい作れるようになるこったな」
「出来たとしてもバルトさんにはあげませんよーだ!」
「んだとこのやろう!」
「やんのかぁ!」
「あははは! 仲がいいんだね二人とも」

 私とバルトが茶番をしているとリーシャがコロコロと笑った。
 
「そういえばリーシャさんの職業ってソーサラーですよね?」
「ううん、まだメイガス。C級だから」
「めいがす」
「あぁ、メイガスってのは魔術職の一番下だ。メイガスの上がウィザード、んで一番上がソーサラーだよ」
「なるほど」
「? フィリアさんはビショップなんだよね? ランク別職知らないの?」
「あーあの、私さっき冒険者になったばっかりで」
「ええええ!?」
「ええええ!?」

 いきなり大声を出されてびっくり、摘んだ茶菓子を落としてしまった。
 なになに!?

「もっとベテランなのかと思ってたよ! 凄いなぁランクは?」
「A級でした!」
「わぁ、凄い! 才能なのかな」
「どうでしょう。私は元々法国にいてそちらで色々と勉強してましたので」
「そっか。でも凄いな。私なんて一年冒険者やってるけど今だにC止まりだもん。才能ないのかなぁ」

 リーシャがお盆を胸に抱きながらシュンとしている。
 うわあざとかわいい。
 これ目の下のクマがなかったらそこらへんの男ぽんぽん釣れそう。
 
 でも大丈夫、塩フィリアは眠っている。

「無いと思いますよ?」
「えっ」
「おいおいそこはそんな事ないですよ、とかあるだろ」
「え、いやだって無いものは無いんですから煽てるより事実を伝えたほうがいいのでは?」
「だからって……」
「待ってください。私は魔法の才能がないと言っただけです。冒険者自体を否定しているわけじゃないです」
「……そうなの?」

 リーシャさん! だめ!
 うるうるした瞳を私に向けないで!
 あぁ、起きる! 塩フィリアが目を覚ますううう!
 ゴッ。
 
「……お前何してんだ」
「いえ別にお気になさらず」

 片目を開けた塩フィリアを再び眠らせるべく自分のおでこを膝にぶつける。
 おでこも膝もジンジンするけど大丈夫。
 いたくない。

「それよりも、プリシラさんは冒険者ですか?」
「ううん。プリシラはお貴族様のメイドをしているの。昔から仲良しだったから今でも一緒に住んでるだけ」
「そうですか。ではプリシラさんはメイドを辞める事をお勧めしますよ」
「どうして?」
「まず今回の一件で分かりましたけど、お二人は呪いに対して抵抗を見せていました。無自覚でしょうけどね」
「抵抗……かぁ」
「はい」

 追加の茶菓子をもぐつきながら、私はずびしとリーシャのお胸を指差す。

「恐らくはメイガスとして鍛錬を積んだリーシャさんの方が抵抗力が強かったのでしょうね。普通あんな呪いの中で生活してたら四日どころか二日で発狂して死にますよ」
「うへぇ……こわ」

 バルトは自分の身に置き換えてみたのか、心底怖そうな顔をしてる。

「つまり、あなた方二人に天から与えられた才能はヒーラー職、プリースト、ビショップ、ドルイドなど法力を扱うご職業です」
「えっ……そうなの?」
「へぇーいいじゃねぇか。今はヒーラー不足だからな。才能あんならさくっと上に行けるんじゃねぇの?」
「私が……ヒーラー」

 お盆をまたきゅっと抱きしめて手元を見るリーシャ。
 いつまでお盆もってるのかなこの子。

「はい。なのでプリシラさんはメイドを、リーシャさんはメイガスをさっさとやめて法術の道に進みましょう! いざ神の身元へ!」
「身元に逝ったら死んでるわあほう」
「あれぺろ」
「ふざけてないでちゃんと話してやれよ」
「私は至って大真面目ですよ? 晩ご飯に海鮮を食べるかお肉を食べるか悩むくらいには大真面目です」
「あぁ、はいはい」
「なんですかその適当なあしらい方は! ちなみに今日の晩ご飯は海鮮にすると決まっています、ごちそうさまですバルトさん」
「海鮮食うのはいいがしれっと俺にたかるな。俺だってあんま余裕ないんだから」
「ええーー! バルトさんさっき報酬もらってたじゃないですかあ!」
「それとこれとは別なの!」

 やいのやいのとしているが、私は至って本当に冗談抜きで真面目だ。
 あいにく素がこういうキャラだから大体不真面目にみられがちだけど。
 見られがちだけど!
 
「あれ? リーシャさん?」

 気付けばリーシャはぽろぽろと涙を流しており、視線はどこか違う世界を見ていた。

「あはは、ごめんね。私才能無いってずっと思ってて自信持てなかったんだけど、フィリアさんがそこまで淡々と言ってくれると逆に自信出てきた」
「それはよかったです!」

 そして最後の茶菓子をお口にぽい。
 ごちそうさまでした。

「リーシャ、みなさん」
「プリシラ! 平気なの!?」

 背後の扉が開き、おぼつかない足取りでプリシラが姿を見せた。


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