完結 殿下、婚姻前から愛人ですか? 

ヴァンドール

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18話

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 ついに関税引き上げの日から一月が経った。

 やはり思った通り、街には(安かろう悪かろう)の商品や食品ばかりが目につく。

 人々が本当に欲しい物は高くて手が出ない。
 やはり国力を上げる為には、より良い品質の物を作る技術、そして品種改良をするなどの知恵と努力それらを身につけ、学ぶしかないのだと皆が気づいてくれると良いのだが。
 せめてルナ嬢が創立した学校で学ぶ生徒達が、いつか技術革新をもたらしてくれるよう期待しよう。

 国王と大臣は、他国がこんなに高い値ではどうせ売れないだろうと、輸出量を今までの半分以下に抑えているから、いくら税率を倍にしても寧ろ前より税が減ってしまい、焦っている。
 その上、他国も我が国に対し報復関税として税の引き上げをしてきた。
 我々の他国への根回しが功を奏しているようだ。

 輸入品の値段はどんどん上がって庶民にはとても手が出ない。生活していくにも事欠く状況だ。
 民衆の怒りが日に日に増していく、そしていよいよ民衆達が騒ぎ出した。

 今更、関税引き上げの撤廃を他国に伝達したくとも、国王と大臣は他国に対し一切の伝手を持たない、かと言って民衆に宣言したとしても、時既に遅しといったところだ。

 国王と大臣、そして公妾のメアリーはついに城に篭ったまま、民衆が怖くて表に出られない。
 いつ暴動が起こっても不思議ではない状況だ。

 宰相のデイビスは城で働いている者達に暫くの間、城から非難するよう指示を出した。
 国王は城の周囲を近衛兵達に囲ませ、自分達を守るよう命令をした。
 しかしこの頃には近衛兵達の士気は下がっていた。
 三大公爵達は前もって近衛兵の曹長に根回しをして、もし暴動が起きても民衆を傷つけないよう指示を出していた。

 そしてそれからさらに半月後、ついに民衆の怒りが頂点に達した。
 国王を裁く権限が存在しないこの時代、民衆は反乱を起こす以外、手立てがなかった。
 民衆が一勢に城の中まで雪崩れ込み、三人は城の外へと引きずり出され、そしてついに落城した。
 王政は崩壊したのだ。
 それは余りにも呆気ない幕切れだった。

 王政崩壊後は、議会制による民主政治が行われ、その立役者となった宰相のデイビスが代表として選ばれた。
 国王と大臣、そして公妾のメアリーはダンベル塔に幽閉された後国家反逆罪とされ、死刑判決が下された。
 大臣達は国民の税を自分達の勢力拡大の為に一部の貴族達にばら撒き、そして余った税を自分達の遊興費に当てていたことも判明した。
 メアリーに関しては死刑判決が妥当か判断が分かれたが最終的には国王を唆(そそのか)した張本人とされ、死罪は妥当とされた。

 実は国王とメアリーの間には二歳になる息子がいたが、公妾になる為、形だけ大臣の妻だったメアリーはその子を大臣に預け、今は大臣の子として育っている。その件は当時ルナ嬢の耳に入れたくないデイビスが秘密裏に動いていた。
 一部の者達からは、その子供が将来的に王の血筋の者として祭り上げられるのを危惧して処刑すべきとの声が上がったが、今回のことで事実を知ったルナ嬢は表向きは死刑を執行したことにして、デイビスと共に国王の姉であるバーミヤン王国の王妃ベネッセにその子を託し、密かに匿(かくま)った。
 ベネッセは信頼のおける裕福な商人に頼み、その子を養子にしてもらった。この事は関係した者達皆が墓まで持って行くこととなった。

 その後三人は、民衆の前で斬首の刑に処されたが、皮肉にもその執行人が、かつてメアリーが国王と出会う前に付き合っていた男であった為、執行の直前メアリーはその男に縋って命乞いをした。
 男は流石に自らの手で執行することが出来ず、後ろに控えていた部下である息子に執行を代わってもらったという。

 この時ルナは、いくら形だけとはいっても、元夫の死を目の前で見ることは耐えがたかったのか、その場には現れなかった。
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