とんでもない侯爵に嫁がされた女流作家の伯爵令嬢

ヴァンドール

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2話

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 私は、出版社へ行くための時間を作るべく、継母に与えられた仕事を毎日手際よくこなし、その日が来るのをずっと待ちわびていた。

 そして、ついにその好機が訪れた。
 その日はちょうど、継母と異母弟が同じ伯爵家の知り合いの屋敷へ、午後からのお茶会に招かれていることを使用人が話しているのを偶然耳にした。
 幸い、使用人達は私の味方なので事情を話し、夕方までには戻ると告げて、出版社へと向かった。
 途中、辻馬車に乗り、迷いながらも目的地へと辿り着くことができ、受付でラミナさんという方への取り次ぎを頼んだ。そして、現れたラミナさんという方は、とても若々しくいかにも仕事のできる女性という印象だった。その方から声をかけて頂いた。

「もしかして貴方が、アンリさんかしら?」
 
「はい、私がエマ先生から紹介を受けたアンリといいます」
 
「エマは私の親友なのよ。だからって訳ではなく、貴方の作品はとても興味を惹かれるものだったわ」
 
「あ、ありがとうございます」

 私は緊張しながらお礼を言った。

 その後、色々な話をしながら、出版に向けての細かな手直しや契約についての話があり、後日正式な契約をすることとなった。

 これでやっと待ちに待った出版に漕ぎ着けると心の底から安堵した。
 そして、最後にラミナさんはエマ先生のことを口にされた。

「もし時間があるなら帰りにエマの所に顔を出してあげて。この時間だったら居るはずよ。貴方のこと、とっても心配していたのよ」

 そう言って、去って行かれた。

 まだ夕方には早かったので、私はエマ先生のお宅へ伺うことにした。

 もともとエマ先生は、亡くなった私の父の友人、ルイノール子爵の奥様だったそうだ。
 しかし、父よりも先に病気で亡くなられたとのこと。
 その後、子爵家は後見人をつけたご子息が継がれ、その頃、たまたまお時間があったエマ先生に、父が私の家庭教師をお願いしたということだった。

 私は先触れもなしに伺うのは失礼かとは思ったのだが、今の私の状況を知っておられる先生ならきっと大丈夫だと思い、ご子息家族と住んでいらっしゃるお屋敷を訪問した。

 そして、お屋敷に着くと執事の方が取り次いで下さり、応接室で待っているとエマ先生が笑顔で迎えてくださった。

「やっと来てくれたのね、ずっと待っていたのよ」
 
「突然で申し訳ありません。先生にまたお会いできて、とっても嬉しいです」
 
「何を言ってるの、私の方こそ嬉しいわ。でも随分と痩せてしまったのね。それに手もこんなに荒れて」

 私をしみじみと見た先生は、涙ぐまれてしまった。
 そして、私は先生がいなくなってからのことを全て話した。

 それでも書くことが好きだから何とか頑張れていると話し、ラミナさんを紹介して下さったことへのお礼を言った。

 すると先生は、私宛てに何度も手紙を書いたが返事がこないので心配になり、私のいる屋敷に何度か足を運んだが、その度に不在だと言われたそうだ。
 その際に、使用人が何か言おうとしたが、その都度、継母が出てきて何も聞けなかったということだ。しかし、最後に訪ねた時、継母に気づかれないように手紙を託すことができたという。

 エマ先生は私に、屋敷を出て一人暮らしをしてはどうかと提案して下さり、そのための資金も用意して下さると言われたが、私はそこまで頼ることは憚られた。だから私はしっかりとした言葉で先生に答えた。

「小説家として一本立ちできる自信がつくまでは、このまま頑張ってみます」と。
 
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