とんでもない侯爵に嫁がされた女流作家の伯爵令嬢

ヴァンドール

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5話

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 次の日の朝、私に付いてくれることになったリサは、十九歳になった私よりも二つ年下の十七歳だという。
 こちらの侯爵邸に来てから二年が経ち、最初はマリアさんに付いていたという。
 しかし、あまりにも横暴な態度に我慢できず言い返したら、すぐに外され、解雇を言い渡されたが、メイド長が侯爵様に執り成してくれたという。
 何だか嫌な予感しかしない。
 出来る限り関わらないようにしなければと強く思った。
 そんな考え事をしていたら、リサがじっと私の顔を見つめている。
 咄嗟に顔を触り、眼鏡をかけ忘れていることに気づき、慌てて眼鏡をかけ直した。

「奥様ってとっても瞳が綺麗だったんですね」

 そう言われ、私は焦ってしまった。

「どうしてそんなにお綺麗なのに前髪で隠されているのですか?」

 思わずリサに口止めをした。

「このことは見なかったことにして、二人だけの秘密よ」
 
 すると全てを察したように頷いた。

「お任せください」
 
 にっこりとした笑顔で言われてしまった。

 そして、応接セットのテーブルの上に朝食を並べながら言い難そうに口にした。

「旦那様が、奥様の朝食はこちらに運ぶようにと仰いました」

 私はリサに微笑んだ。
 
「気を使わなくていいのよ。
 全て分かっていることだし、正直この方が気楽でいいのよ」
 
 するとリサは納得した顔をした。

「それもそうですね」
 
 二人して思わず吹き出してしまった。そして、リサは何事もなかったように一礼した。

「では失礼します」
 
 ほっとした私は、朝から品数の多い食事に舌鼓を打ったのだった。

 その後、私は持ってきた数少ないドレスの中から普段使い用のドレスに着替え、出版社へ行こうとし、階段を降りると旦那様と出くわしてしまった。すると旦那様は怒り口調で話しかけてきた。

「何処へ行こうと構わないが、その眼鏡と髪型は何とかならんのか」

「申し訳ありません、これがないと目が見えないもので」

 私は平然と言い返し、その場を後にした。

 そして、侯爵家の馬車で出版社の近くまで送ってもらい、帰りは一人で帰るからと御者には引き取ってもらった。

 出版社に着くと、担当編集者のソラさんとエマ先生の親友のラミナさん、二人がいたので、今日までのことを全て話した。すると二人共、大笑いが止まらない。

「この事はエマに伝えておくわね」

 ラミナさんはまだ笑っている。

 そして、暫くしてから、これからについて話し始めた。 

 私の処女作は順調に売り上げを伸ばしているという。
 それを聞き少し安心したが、問題は次回作だ、初めての作品が順調だと、読者の次回作への期待感が増す、そのプレッシャーに飲み込まれないように次の作品について自分なりに考えを巡らせていた。

 するとラミナさんが、今度の作品の内容について、初めての時とは少し視点を変えて、今、巷で流行っている貴族の恋愛事情について書いたら、当たるのではないかと言ってきたので、実は私も同じ事を考えていたと話した。

 そしてその情報収集の為、今度エマ先生を誘って、王宮で行われる陛下の生誕祭へ出席したらどうかという話しになった。

 エマ先生は私の父の友人のルイノール子爵の奥様だったが、元々は伯爵家のご出身で、お姉様は侯爵家へと嫁いだが、私の父と同じ当時の流行病である黒死病でその姉とご両親をほぼ同時期に亡くされたという。 
 若くしてそんな不幸に見舞われた先生は誰にでもお優しい。だからこそ人望の厚いエマ先生は当然お顔も広い。なので生誕祭へはエマ先生とご一緒させてもらうことになった。

『さあ、色々な方を紹介していただき、新しい作品の参考にするわよ!』
 思わず、気合いが入ってしまった。

 そして後日、エマ先生のお屋敷で陛下の生誕祭へ出席する為の支度を整えてもらい、久しぶりに眼鏡を外し、髪型も前髪を上げ後ろ髪はハーフアップにしてもらった。

 完成した私を見た先生は、とても満足そうに微笑まれた。

「全くの別人だわ、とっても素敵よ。でもこれでは目立ちすぎてしまうわね」

 そう言って、苦笑してらした。
 
 そしてエマ先生のご子息と一緒に、いざ王宮へと向かった。
 因みにご子息の奥様は妊娠中なので今回の出席は見送られた。
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