とんでもない侯爵に嫁がされた女流作家の伯爵令嬢

ヴァンドール

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80話

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 その後、帰国されたオリビア様からお手紙が届いた。

 そこには全てが順調に進んでいると書かれていた。
 それを読んだ私は『まずは一安心だわ』と喜び『後でルイス様にも報告しなければ』と思いながら私室で書きかけのシリーズものの小説を書いていると、リリアーナ様がおいでですと声がかかった。

 部屋へ迎えると、彼女はラナウド伯爵のことを色々と聞いてきた。
 流石にこれほどあからさまなのだから私もリリアーナ様のお気持ちは理解した。

「アンリ様の従兄ということはお父様かお母様のご兄弟の息子さんということですのよね」

 と問われたが、そこは上手くかわした。
 それよりも厄介なのは、リリアーナ様がもう一度会いたいということだった。だけど私からリリアーナ様の話しをするのはラナウド伯爵に失礼だと思い、まずはエマ先生に相談することにした。

 そしてエマ先生のお屋敷へと行き、リリアーナ様のことを伝えてから頼みごとをした。

「私は来週からルイス様と公務のため南の国へと行きますので、往復を考えると半月ほど留守にしてしまいます。もしリリアーナ様が尋ねて来られたら宜しくお願いします」
 
 実は私たちの結婚式には南の国の国王、つまりはルイス様の伯父様がいらっしゃる予定だったが、急遽、国王の息子である王子が出席することになった。
 理由を聞くと、ご病気で倒れられたということだったので、ルイス様はとても心配をされていた。
 伯父様といえば、ルイス様のお母様が亡くなられてからずっと気にかけていただいているお方だった。
 今回の訪問は隣国との親善が目的となってはいるが、本当はルイス様が伯父様のお見舞いをしたいとの意向も働いていた。

 こうして私は留守の間のリリアーナ様のことをエマ先生にお願いをして王宮へと戻った。

 そして私とルイス様が南の国へと向かう日の朝、リリアーナ様に伝えた。

「何か相談事があればエマ先生にお願いしてありますので訪ねてください」

 そして私たちは旅立った。

 この旅はルイス様との初めての遠出となった。それなのにシリーズものの執筆を急がなくてはいけなかったため、寝不足のまま出発することになってしまい、馬車の中では早々に眠ってしまい申し訳ないことをしてしまった。
 それでもルイス様は怒るどころか気遣ってくださり、そのまま寝かせてくれた。

 途中、休憩を取りながらの旅だったが、その間も寝ている私を起こさないようにしてくれた。
 そして片道五日間をかけて、ようやく南の国へと着いた。

 ルイス様は挨拶もそこそこに伯父様のいる部屋への案内を優先してもらい、久しぶりとなる再会を果たした。

 伯父様はとても喜んでくださった。
 周囲の話しではずっとベッドで横になったままだったのに、今は起き上がり、ルイス様と手を握り合っていた。そしてルイス様は私を呼び寄せ、紹介をしてくださった。

「伯父上、彼女が私の妻となったアンリです」

 私はルイス様の隣りで会釈した。

「お初にお目にかかります。アンリと申します。お身体お辛くありませんか?」

 すると伯父様でもある国王様は私の手を握りしめた。

「よく来てくれた。ありがとう、ルイスのことを宜しく頼む」 

(心の底からルイス様のことを心配しているのが伝わる)

 そしてこれ以上はお身体に障ると思い、一旦、二人共退出をした。

 王子はお医者様によると、暑さで体調を崩したところ、お食事を取れなくなり、衰弱してしまったという。
 確かにこちらの国は私たちの住んでいる国と比べたらかなり暑く感じた。

 その夜は王子が歓迎パーティを開こうとしてくれたが、ルイス様は国王がお元気になられるまではと辞退なさった。それでもルイス様がいらしてからは、少しお食事も摂れるようになり、顔色も私たちが着いた時よりはだいぶ良い気がした。

 こうして短い滞在ではあったものの、体調が回復に向かっているようで安心したルイス様は王子に挨拶を済ませ、最後に伯父様の元へ行き、国に戻ることを伝えた。 

 伯父様は次に会う時までに元気になると約束され、会えて嬉しかったと仰ってくれた。

 こうして私たちは帰路に就くこととなった。

 まさかこんなに短期間に思いもしないな事が起こっているとも知らずに。

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