❲完結❳乙女ゲームの世界に憑依しました! ~死ぬ運命の悪女はゲーム開始前から逆ハールートに突入しました~

四つ葉菫

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25.お昼休み

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お昼休みに入ったので、お喋りに興じるクラスメイトをあとにして、私は早速食堂に移動する。
食い意地が張ってると思われようが、気にしない。
私にはお昼を食べたあと、やることがあるのだ。
それは学園中を探索することだ。
『きらレイ』の舞台だった学園。名シーンやスチルを数多く生み出した場所である。言わば聖地。イベントが起こった場所と実際の場所を比べて確かめに行きたいのは、ファンの性である。というか、ボッチの私にはそれくらいしか学園を楽しむことができない。
私は食堂に行くと、C級ランチを頼む。
食堂はまだガラガラだった。テラス席もあったけど、私は隅っこのほうに座った。
食事を乗せたトレーを持って席に着いたところで、食堂の入り口が騒がしくなる。
ミレイア集団のお出ましだった。
取り巻きを何人も引き連れて、我が物顔で食堂を闊歩していく。

「A級ランチをお願い」

居丈高に従業員に告げる。
この学園のランチ、実はランク付けされている。一番上がA級ランチ、次がB級ランチ、一番下がC級ランチである。
貴族のなかにも当然、家計の差はあるわけで、それが当然ランチに影響する。
食事内容で、家計がわかってしまうなんて、なんて恐ろしい!
流石、貴族の学校だわ!と、漫画の白目になっちゃうところだけど、実際馬鹿馬鹿しい。
ドロノア家もA級ランチを出せる財力があるとお父様はおっしゃっていたけど、こちとら節約が第二の服のごとく張り付いている身。
お父様とお兄様が苦労して稼ぎ出したお金をたかが学生の昼食に余分に出す必要はない。
それに毎日、フランス料理のフルコースなみの食事なんて取れるわけない。まあ、お金持ちのボンボンは少しずつ食べてあとは残しちゃうんだろうけど、そんなのもったいなさすぎる!
だから私はお父様とお兄様に「C級ランチで大丈夫です!」と言い張った。何故だか心配している表情をなんとか押しのけて。
それに毎日、美味しい料理をドロノア家で口にしている。これ以上、舌を肥えさせないで。
といっても、目の前に置かれた料理は充分美味しそう。C級でも充分量はあるわね。
今日は、ふわとろ卵を乗せたオムライス仕立て。トマトソースとチーズとミンチ肉の柔らか煮を加えた美味しそうなライス。ビーフコンソメの冷製と朝採れ野菜のサラダ。パイ生地にカスタードを詰めたダリオール。充分すぎる質と量。既に学生が食べる域脱してない?
これほどのレベルの食事をしていたヒロインに対し、カレンが『あなたにはその豚の餌のような食事がお似合いよ、おーほっほほ』と自慢気にA級ランチを見せびらかして去っていった記憶が昨日のことのように思い出せる。
なんて非常識なカレン。
だけど、ヒロインも途中からA級ランチに変えることができる。それは特待生になることだ。勉強のコマンドを実施して、ある程度知力のポイントが貯める必要があるけど、この方法なら財力関係なしにA級ランチにできるのである。
ちなみに、A級ランチに変わると何がいいかというと、ストレスが下がるのと、体力が上がるといういい点がある。
私が食事を楽しんでいると、トレーを持ったミレイアと目が合った。
ミレイアは私の制服をじろじろ見たあと、テーブルに置かれた料理を見て、ふっと鼻で笑った。
なに!?
私は目を丸くした。
見ると、同じクラスのくすくす女子もいて、ミレイアに耳打ちすると、こちらを見て一緒にくすりと笑う。
なんなの、あれ!? すっごく感じ悪いんですけど。
私は腹が立って、掻き込むように食事を口にすると、早々とその場をあとにした。


予鈴がなって教室に戻ると、空気がざわついていた。特に女子たちがきゃあきゃあと騒いでいる。

「何かあったの?」

私は席について、エーリックに尋ねる。

「ああ、さっきフェレール家の跡取りがこのクラスに来てたんだよ」

「え!?」

私の驚きを見て、エーリックが尋ねる。

「知ってる? ユーリウス・フェレール?」

「え、ええ。知ってるわ」

「やっぱり。そうだよね、なんだか有名人みたいだし。イリアス・ペルトサークと一緒で。あ、そういえば、ペルトサーク家の長男も昨日、放課後こっちに来てたんだよ」

「そ、そうなんだ」

「ふたりとも、誰かを探しているみたいだったけど、見当たらなかったのか、すぐ行っちゃったけどね」

イリアスは私を探しに来たんだろうけど、ユーリウスもそうかしら?
なら、あとで会いに行ったほうがいいかしら。

「来たときの女の子たちの騒ぎ、すごかったよ。きゃあきゃあ騒いで。あのふたりはちょっとした見世物だよね」

「あら、エーリックだって負けてないんじゃない?」

「そんなことないよ」

「謙遜しちゃって。いっつも女の子に囲まれているくせに」

「それって、やきもち?」

エーリックが自分の体で周りを遮断するように、腕で頭を支え、上半身をこちらに向ける。
綺麗な唇が薄い弧を作っている。
なに、その顔!? 無邪気なキャラのはずなのに、たまに見せるその雄っぽいオーラはなんなんですかね。
色気パワーを直に食らった私は、慌てて顔を反らす。顔、ほってってないわよね?

「……違うわ」

「なんだ、残念。たくさんの子に騒がれるよりも、カレンにやきもち焼かれる方が、断然嬉しいんだけどな」

「もう! エーリックったら。そんなにからかわないで」

私が怒って頬を膨らませると、エーリックがこちらを覗き込むようだった姿勢を解いた。

「ごめん、ごめん」

もとの明るいエーリックに戻ったことに私はほっとする。そのとき、廊下にガブリエラが渡っていくのが見えて、どきりとする。
まさか、また見に来たの? いいえ、考えすぎよ。一年はみんな同じ階だし。廊下を通るなんて、よくあること。私は無理矢理自分を納得させたのだった。

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