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バレンタイン特別企画②レコ
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「……とは言ったものの、私ってつくづくヘタレね……ハァ」
じょうろを片手に花壇に水をやっている後ろ姿をコソコソ校舎の陰から眺めながら、私は溜め息を吐く。
誰に一番最初にチョコを渡すか。考え抜いた末、一番先に名前があがったのがレコ・カッセルである。
「いや、これは戦略的賢い選択なのよ。誰だって、立ちはだかる壁があったら、一番高い壁を最後にするものよ。レコ君が一番安全だもの」
よしっ、とひとり頷いて、校舎の陰から飛び出す。
「レコ君!」
「カレンさん!?」
柔らかそうな藍色の髪が振り返る。ここ半年、レコの身長は少しだけ伸びて、すらっとした背筋が目につくようになっていた。大人になる前の、線の細さがまだ残っているけれど、それもまた魅力的に写る。
「どうしたんですか?」
ちょっと目を丸くした表情は、変わらず純粋無垢そうな彼のまま。朝から教室のある校舎に入らずここまでやってきた来た私に驚いたみたい。
「おはよう。……あの、実は渡したいものがあって……」
藍色のリボンにくるまれた小さな箱をおずおずと差し出す。
ああ、恥ずかしい! いざとなると、面と向かって渡すのが、こんなに恥ずかしいだなんて! だって、生まれてこのかた、恋人同士がするような甘いチョコの受け渡しなんてしたことがないもの。
会った途端渡しちゃったけど、これじゃ、何の色気もないわね。相手をドキドキさせるなんて、私にはやっぱり百年早かったみたい。
「これって……もしかして――」
レコの目が驚きで丸くなる。
「うん……ショコラブデーのチョコよ。貰ってくれる?」
レコがじょうろを地面に置いて、こっちに近寄ってくる。
大事なものを受け取るように、両手で包むように受け取った。
「……うれしい。女の子からチョコ貰うなんて、初めてだ。……それも、カレンさんからだなんて」
見上げれば、レコの頬が赤く染まっている。
色白のレコがそうすると、寒さのせいで余計肌の白さが際立って、初々しい。なんだか、目もきらきらと潤んでいるような気がする。
ぐはっ。朝から目がやられるわ。純粋無垢な青年だからできるとんだ破壊力ね。
やばい、なんか、心臓がドキドキしてきたわ。
内心いっぱいいっぱいになっていると、レコが急に向きを変えて花壇のほうに歩み寄っていく。
きょろきょろと辺りを見下ろしたあと、一輪の白い花を手折った。
そうして再び私のもとにやってくると、繊細な手付きで花を私の耳に挿した。
「お礼です」
頬を染めて柔らかく微笑んだあと、慌てて付け足すように言う。
「もちろん、後日ちゃんとしたお返しはします。でも、今嬉しすぎて、カレンさんにも何かあげたいって思ったんです」
突然のことで反応できずにいる私。呆然と見上げる私を見て、何やら勘違いしたのか、レコの肩がだんだんと下がっていく。
「……でも、お礼なら、もっとちゃんとしたものが良かったですよね……。こんなことしか、思いつかないなんて、僕……」
「ううん! 充分嬉しいっ! ありがとう!」
私は慌てて首を振った。
嘘や誤魔化しではなく、本当に心からそう思った。レコが大切に育てている花を私にくれたんだもの。嬉しくないわけない。
私の様子を見て、レコもほっと息を吐いて、はにかんだような笑顔になる。
「良かったです。その花、カレンさんにきっと似合うだろうなと思ってたんです。僕が冬の花で、一番好きな花」
――『一番好きな花』。
その言葉が、遠回しに、私のことを一番好きって聞こえるのは私の自信過剰かしら。
でも、意識しだしたら、途端に恥ずかしくなって、顔が熱くなってくる。
「あ、ありがとう」
もじもじして、レコのほうをちらりと見たら、レコの顔もつられて赤くなっているのが見えた。それを見た私の顔も更に熱が溜まっていく。
「……」
「……」
お互い赤面したまま、沈黙が続くこと暫し。
それから予鈴がなるまでずっと、他愛ない話をしながらもお互いの顔を見ては赤面しかえすレコと私が繰り返されたのだった。
###################################
ずっとレコの髪の色は表記していませんでしたが、これを機に瞳の色と同じ藍色にしました。
カレンとレコはお互い恋愛初心者なので、婚約して半年経った今でも、付き合いたてのカップルみたいな感じです。
しかし、女の子の耳に花を差すなんて、そんなキザな芸当を無意識でやってのけるとは、さすが乙ゲーの攻略対象者といったところですΣ(゜Д゜)
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じょうろを片手に花壇に水をやっている後ろ姿をコソコソ校舎の陰から眺めながら、私は溜め息を吐く。
誰に一番最初にチョコを渡すか。考え抜いた末、一番先に名前があがったのがレコ・カッセルである。
「いや、これは戦略的賢い選択なのよ。誰だって、立ちはだかる壁があったら、一番高い壁を最後にするものよ。レコ君が一番安全だもの」
よしっ、とひとり頷いて、校舎の陰から飛び出す。
「レコ君!」
「カレンさん!?」
柔らかそうな藍色の髪が振り返る。ここ半年、レコの身長は少しだけ伸びて、すらっとした背筋が目につくようになっていた。大人になる前の、線の細さがまだ残っているけれど、それもまた魅力的に写る。
「どうしたんですか?」
ちょっと目を丸くした表情は、変わらず純粋無垢そうな彼のまま。朝から教室のある校舎に入らずここまでやってきた来た私に驚いたみたい。
「おはよう。……あの、実は渡したいものがあって……」
藍色のリボンにくるまれた小さな箱をおずおずと差し出す。
ああ、恥ずかしい! いざとなると、面と向かって渡すのが、こんなに恥ずかしいだなんて! だって、生まれてこのかた、恋人同士がするような甘いチョコの受け渡しなんてしたことがないもの。
会った途端渡しちゃったけど、これじゃ、何の色気もないわね。相手をドキドキさせるなんて、私にはやっぱり百年早かったみたい。
「これって……もしかして――」
レコの目が驚きで丸くなる。
「うん……ショコラブデーのチョコよ。貰ってくれる?」
レコがじょうろを地面に置いて、こっちに近寄ってくる。
大事なものを受け取るように、両手で包むように受け取った。
「……うれしい。女の子からチョコ貰うなんて、初めてだ。……それも、カレンさんからだなんて」
見上げれば、レコの頬が赤く染まっている。
色白のレコがそうすると、寒さのせいで余計肌の白さが際立って、初々しい。なんだか、目もきらきらと潤んでいるような気がする。
ぐはっ。朝から目がやられるわ。純粋無垢な青年だからできるとんだ破壊力ね。
やばい、なんか、心臓がドキドキしてきたわ。
内心いっぱいいっぱいになっていると、レコが急に向きを変えて花壇のほうに歩み寄っていく。
きょろきょろと辺りを見下ろしたあと、一輪の白い花を手折った。
そうして再び私のもとにやってくると、繊細な手付きで花を私の耳に挿した。
「お礼です」
頬を染めて柔らかく微笑んだあと、慌てて付け足すように言う。
「もちろん、後日ちゃんとしたお返しはします。でも、今嬉しすぎて、カレンさんにも何かあげたいって思ったんです」
突然のことで反応できずにいる私。呆然と見上げる私を見て、何やら勘違いしたのか、レコの肩がだんだんと下がっていく。
「……でも、お礼なら、もっとちゃんとしたものが良かったですよね……。こんなことしか、思いつかないなんて、僕……」
「ううん! 充分嬉しいっ! ありがとう!」
私は慌てて首を振った。
嘘や誤魔化しではなく、本当に心からそう思った。レコが大切に育てている花を私にくれたんだもの。嬉しくないわけない。
私の様子を見て、レコもほっと息を吐いて、はにかんだような笑顔になる。
「良かったです。その花、カレンさんにきっと似合うだろうなと思ってたんです。僕が冬の花で、一番好きな花」
――『一番好きな花』。
その言葉が、遠回しに、私のことを一番好きって聞こえるのは私の自信過剰かしら。
でも、意識しだしたら、途端に恥ずかしくなって、顔が熱くなってくる。
「あ、ありがとう」
もじもじして、レコのほうをちらりと見たら、レコの顔もつられて赤くなっているのが見えた。それを見た私の顔も更に熱が溜まっていく。
「……」
「……」
お互い赤面したまま、沈黙が続くこと暫し。
それから予鈴がなるまでずっと、他愛ない話をしながらもお互いの顔を見ては赤面しかえすレコと私が繰り返されたのだった。
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ずっとレコの髪の色は表記していませんでしたが、これを機に瞳の色と同じ藍色にしました。
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