私のための小説

桜月猫

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19話

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 ハイキング合宿2日目。
 朝食を食べ終わり、広場に集まった生徒達に先生が言ったことは以下の通りだ。

・今からハイキングをする。
・目指すのは山の中腹にある広場。
・行動は班で行うこと。
・道から反れると遭難する恐れがあるから道から反れないこと。
・勝手な行動はしないこと。
・ゴミは捨てないこと。

「作者。なんだよこれは」

 なにって先生の言ったことを箇条書きにしただけだけど?

「普通に先生に喋らせればいいことだろ?なんでいちいち箇条書きにする必要がある?」

 そもそもなんでハイキングしなくちゃいけないんだよ。ただただ歩くだけを書いたってつまんないだろ。

「お前が決めたんだろが!」

 つまんないから勝手に歩いててね。俺は別のところに行くから。じゃあね。

「おい!ちょ!」


          ◇


『はぁ~』

 夢と舞は教室でため息を吐いていた。

「公兄がいないから元気ないのはわかるが、朝からため息ばかりだとこちらも気が滅入るんだけど?」

 翔はクラスを代表して2人に言った。

「わかっていても止めることができないのですわ」
「自然と出てきちゃうんだよね~」

 2人ともわかってはいるのだけど、止められない現状に苦笑していた。

「明日には帰ってくるんだから頑張れよ。帰ってきた時に元気に出迎えるんだろ?」
「そうですわね」
「こんな姿お兄ちゃんには見せられないね!」

 復活した2人の姿にホッとするクラスメート達。

「相変わらずブラコンだな」

 ガキ大将がやって来たことに翔はわかりやすくイヤな顔をし、クラスの空気もイヤなものに変わった。

「その顔はなんだ、翔」
「ジャマだからどっか行ってくれねーか?」
「お前がどこかに行けばいい話だろ?」

 2人が睨みあっている間に夢が入りこんだ。

「わたくし達がブラコンでなにが悪いのかしら?」
「恥ずかしくねーのかって話だよ。俺達はもう中3なんだぜ?」

 ガキ大将は夢をあざ笑っているが、夢は冷たい瞳でガキ大将を見返した。

「なぜ恥ずかしがらなければいけないのかがわかりませんわ。それに、それをあなたから指摘されないといけないのかもわかりませんわね」
「家族を好きでいるのは普通のことだよね?」

 2人の返事にガキ大将はイラッとした。

「家族だからってお前達の依存っぷりは異常なんだよ!それにあんな男より俺みたいな男と付き合っているほうがよっぽど有意義だぜ!」

 つまり、好きだから付き合ってくださいと遠回しに言っているわけだね。

「作者!うるせーんだよ!」

 真実を言い当てられたからって私にあたらないでくれるかな?

「真実じゃねーよ!」
「ふっ。例え真実だったとしても、あなたと付き合うなんて選択肢は私の中にはないわね」

 逆にガキ大将をあざ笑う夢。その隣では舞がなに言ってるの?とばかりに首を傾げていた。

「俺みたいないい男をフルなんて男を見る目がねーな」
「あなたがいい男ですって?笑えますわね」
「なんだと!」
「あなたがいい男なら、世の中のほとんどの男がいい男になりますわね」
「てめぇー!」
「あらあら。自分から言い出したくせに逆ギレをするのですか?」
「ぐっ!」

 言葉をつまらせるガキ大将に夢は笑顔で言いはなった。

「おとといきやがれですわ」
「覚えてろよ!」

 ガキ大将はあきらかに小物のセリフを残して去っていった。

「夢。ムダに挑発するなよ。逆ギレして手を出してくるヤツだっているんだからな」
「あら。わたくしが簡単にやられるとでも思いまして?」
「そうは思わないけど」
「だったら大丈夫ではなくて。それに、女性に理不尽に手を出す最低な男性なんてこちらから願い下げですわ」

 ため息を吐いた翔は頭を掻いた。


          ◇


 さて、ハイキングはどうなってるかしら?

 広場を出発して1時間。公達はようやく半分を歩き終えたところだった。

「蛍大丈夫か?」
「うん。まだ平気だよ」

 全体のペースがそれほど早くないので蛍はまだまだ余裕だった。

「作者!ホントに放置しやがったな!」

 だから、つまんないんだって。それとも山崩れとか起こして劇的な内容にでもする?

「それは止めてくれ」

 でしょ。なら公達は頑張って歩いていてね。私はまた別の場所に行ってるから。


          ◇


「今頃は1年生たちはハイキングの真っ最中かな~」

 お昼休みの生徒会室には夏に秋に廻、さらにもう1人少女がいた。

「あのハイキングはゴウモンデス」

 蒼髪に銀目の少女はイギリス人のハルだ。

「なんだかんだ言いながら1番楽しんでいたヤツがなに言ってやがる」
「ハイキングでもどんどん先に行っちゃうから追いかけるこっちはしんどかったんだからね」

 2人の言葉にハルはてへっ!と頭に拳をあてながら片目をつぶり、舌を出した。

「カワイイ表情でごまかそうとするな」
「カワイイデスカ?」

 カワイイと言われて嬉しそうに微笑むハル。その姿に廻はため息を吐いた。

「でも、疲れたのは確かデス」
「ペース配分考えずに歩いていたら疲れるのは当たり前だよ」

 去年の夏達のハイキングでは、ハルがペースを考えずにどんどん先に行ってしまうので、普通なら片道2時間のところを1時間ちょっとで歩ききってしまったのだ。

「楽しそうでいいわね~」

 1人3年の秋は寂しそうにしていた。

「去年一緒に行ってたらそんなこと言えないですよ」
「そんなになの?」
「ご飯の調理の時もハルが暴走して、普通に作ればいいのに『ものは試しデス』とか言っていろんな調味料と食材の組み合わせを試したせいで、ゲテモノ料理が必ず1品は出てきてましたからね」
「あれは軽い拷問だったな」

 思い出した廻はぶるっ!と体を震わした。

「その言い方はヒドイデス。あれはわき上がる探求心といきすぎたチャレンジャー精神からきたものデスのに」
「そのいきすぎたチャレンジャー精神が最悪の結果を生み出したんだけどね」
「ああいうのは1人の時にやってくれ」

 2人は苦笑しながらハルを見た。

「そんなこと言わないでクダサイ」

 ハルは夏に抱きついた。

「ハルだってマズイマズイ言ってたでしょ」
「あれはホントにマズかったデス」

 ハルは眉間にシワをよせた。

「そんなにヒドかったのね」
「今度あーちゃんにも作ってアゲマスヨ?」
「遠慮しとくわね」
「どうしてデスカ?」
「マズイとわかってるものを食べたいとは思わないでしょ?」
「確かにそうデスネ」

 ハルが頷いたので秋はホッとしていた。


          ◇


 さて、公達はどうしてるかな?

 昼食を食べ終えた公達は山を下っていた。

「いい景色だったね~」

 牡丹は広場から見えた景色に興奮したいた。

「そ、そうですね」

 由椰も少し感動していて、いつもより声が大きかった。

「我にとっては普段から見る普通の光景だな」
「はいはい」

 中二の発言に慣れてきた公はあっさりと聞き流した。

「あと、作者。どうせまたどこかに行くんだろ」

 いくぞ。

「だったらいちいち帰ってこなくていいぞ。どうせおもしろくないとか言うんだからな」

 でも、公が主人公なんだからたまには帰ってこないと。

「そんなこと言ったら13話では俺は1度も出てねーぞ」

 あ~。13話は部活の話だったから仕方ないだろ。入りたい部活や同好会がない公が悪い。

「部活や同好会に入るかどうかは俺の勝手だろうが」

 だったら文句を言わないでほしいな。

「ぐっ」

 公を黙らすことができたので、俺はニヤニヤする。

「もういい。さっさとどっか行け」

 そう言われると行きたくなくなるんだよな。というわけで、ふっふっふ。

「まっ!」


          *


 他の生徒や先生はいなくなり、残ったメンバーは公・桜・暁・楓・蛍・牡丹・由椰・中二・庵・朧月・蛙・雪・蘭・光・彩の15人。

「これはどういうことなの?」

 桜は事情を知っていそうな公を見た。

「作者に聞け。あいつがまた無茶苦茶しやがったんだよ」

 みんなにはモンスターを倒しながら戻ってもらうからね。武器は貸し出すから好きなの選んでね。

 様々な武器を15人の周りに出現させる。

 さぁ選んでね。

「やっぱりやらないといけないの~?」
「だろうな」

 早くに諦めた公達はそれぞれ武器を選んだ。
 盾と剣を選んだ公と朧月と蛙。二刀を選んだ雪と桜。槍を選んだ楓と暁と牡丹。大剣を選んだ中二と庵。弓を選んだ蛍と由椰と蘭と光と彩。

 武器選んだし、説明するからちゃんと聞いてね。HPはみんな100だから。HPは無くなると光になって消えさるけどホントに死ぬわけじゃないから安心していいよ。それに、モンスターは弱いから無双ゲームだと思ってもらえればいいから。一様HPを10回復する回復薬を1人5本ずつあげるから計画的に使ってね。それじゃあ頑張って~。

『はぁ~』

 庵と中二以外がため息を吐いていると、前の道からモンスターの大軍が迫ってきた。そのモンスターの大軍を見た公達の反応は3種類。
 テンション高くモンスターの大軍に突っ込んでいく庵と中二。怯える由椰と蘭と光。さらにため息を吐く公達。

「突っ込んでいったバカ2人は放置するとして、蛍、後ろから指示してくれるか?」
「僕でいいのかい?」
「あぁ」
「お願いね」
「任せた」
「頼むよ~」

 みんなからの信頼の言葉に蛍は笑顔で頷いた。

「それじゃあ盾を持っている公と朧月と蛙を先頭に楓と暁と牡丹は盾の隙間から槍で攻撃、雪と桜は遊撃で。でも前に行きすぎないでね。弓を持ってる僕達は奥のモンスターを狙っていこう」

 蛍の指示に従って公達は隊列を組んで進みだした。
 先に突っ込んでいったバカ2人はかなりの数のモンスターを倒しながら進んでいたので、公達の方に流れてくるモンスターは少なく、楽ができていた。

「ヒャッハー!」
「我の前にひれ伏せ!」

 バカ2人がテンション高く叫ぶ声を聞きながら公達は呆れていた。

「バカ2人はこの状況を楽しんでるな」
「さすがバカね」
「僕達が楽できるからいいんだけどね~」
「でも、気を抜きすぎるのはダメだからね」

 蛍の言葉に公達は気を引き締めなおした。

【公。後ろから来るわよ!】

 シジュウカラの突然の警告に公はすぐに反応して後ろに走りだし、森から飛び出してきて光に迫っていた狼の1撃を盾で受け止めた。

「ひっ!」

 後ろから聞こえてきた光の声と同時に背中に引っ付かれる感覚。とりあえず公は目の前の狼を倒す。一瞬振り返った公は背中に引っ付いている光を確認すると、森からさらに出てくるモンスター達を盾で受け止めたり剣で斬ったりして対応する。
 その間に朧月と楓がやって来て狼の対応を始めた。

「蛙達はすぐに庵達のところまで行って一気に前を切り開いて道を作って!公と朧月と楓は後ろからくるモンスターを牽制しながら後退!由椰と蘭は弓で前の援護をお願い!彩は僕と一緒に後ろの援護!」

 蛍の指示に従って、みんなすぐに行動を始めた。しかし、前よりモンスターの数が少ないとはいえ、後退しながらの対応なので少し押されぎみだった。

「ヤバいかもな………」

 公が冷や汗をかいていると、

「助太刀いたします」

 その言葉とともに萌衣が両手剣でモンスターに斬りかかった。

「萌衣さん!?」

 予想外の乱入者に戸惑いながらも公達もモンスターを倒していく。

「どうして萌衣さんがここに!?」
「作者に連れてこられました」
「あいつ!」

 作者への怒りを抱きながらも、萌衣が戦闘に参加したことによって後退もスムーズになったと公は感じていた。
 後退がスムーズになったことで無事に広場に到着でき、モンスターも武器も消えさった。


          ☆


「光。もう終わったから大丈夫だぞ」

 公が声をかけると、光は公を見上げると顔を赤くしてすぐに離れて蛍の陰に隠れてしまった。その姿に苦笑した公は萌衣を見た。

「助けていただいてありがとうございます」
「いえ。助けて頂いたご恩を返しただけですのでお礼は不要です」

 萌衣は笑顔でそう言った。

「では、これで貸し借りはなしですね」
「……………………」

 なぜか萌衣の返事はなく、ジーと公を見ていた。どうすればいいかわからない公はとりあえず疑問に思ったことを聞いてみた。

「体調は大丈夫なんですか?」
「……………………」

 やっぱり無言の萌衣に公は首を傾げるしか出来なかった。
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