私のための小説

桜月猫

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59話

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 昼休みも終わって後半戦が始まりました。
 しかし、午前のうちに4割以上の生徒が失格になり、鬼も68人に増えました。
 そんな中、夏は鬼から逃げています。その隣には廻が並走しているのですが、鬼の狙いは夏ただ1人です。

「秋先輩!なんで私ばかり狙うんですか!?」

 そうです。鬼は秋なのです。

「なっちゃんは私が失格にする!」

 そんな気合いの言葉とともに秋は夏にボールを投げつけましたが、夏はギリギリで避けました。

「なっちゃん!なんで避けるのよ!」
「そりゃ避けますよ!」

 2人の言い争いを聞きながら廻は笑っていました。

「ちょっと廻!笑ってないで助けてよ!」
「あはは」

 しかし、廻は笑ってるだけで助けようとしません。そんな廻を夏が睨んでいると、また秋がボールを投げつけましたが、夏は避けました。

「もう!」

 廻は助けてくれないし、秋は諦めてくれないので夏は頬を膨らませながら逃げ続けます。
 すると、前方に壱を発見した。

「壱先輩!」

 夏の声に振り向いた壱の背後に夏は隠れた。

「えっ?夏?」

 戸惑う壱はボールを持って迫ってくる秋を見て、慌てて構えました。

「壱、退きなさい」
「壱先輩守ってください」

 2人の間に挟まれた頭を悩ませた壱は廻を見ました。

「どういうことだ?」
「いつも通りですよ」

 笑いながら答えた廻の答えに、壱は納得した。

「それで、俺はどうすればいいんだ?」
「どいて」
「守ってください」

 2人の真逆の要望に壱は頭を掻きながらため息を吐きました。

「こうなったら」

 秋は壱めがけてボールを投げつけましたが、壱はわかっていたかのように簡単に受け止めました。

「やっぱりそうくるよな」
「なっ!壱!あなたどちらの味方なのよ!」

 驚きながら秋は壱に文句を言います。

「逃げてる側なんだから夏の味方に決まってるだろ」
「壱先輩」

 夏は感動したように壱の背中を見つめましたが、その頭に何かが当たり地面に落ちました。

「えっ?」

 戸惑いながら地面を見た夏が見たのは地面を転がるボールでした。
 それから壱を見上げると、壱はニヤニヤしながら夏を見ていました。

「あー!壱!」

 秋が叫びます。

「夏をからかうことに対しては秋の味方だな」
「だったらボールを返しなさいよ」
「いいだろ」
「よくないわよ」
「そうですね。よくないですよね」

 その声に壱が振り返ると、ボールを持ってプルプル震えている夏がいました。

「あ~。夏も当然2年の上位50人に入ってるよな」

 壱は夏から距離を取りました。

「い~ち~せ~ん~ぱ~い~!」
「あーと。廻は………」

 壱が廻の姿を探すも、すでに廻の姿はなかった。

「よし」

 壱は逃走を選択しようとしましたが、逃げ道を秋が塞ぎました。

「い~ち~せ~ん~ぱ~い~!」
「覚悟を決めたほうがいいわよ」

 夏と秋に挟まれた壱はふ~と息を吐きました。

「そうだな」

 壱は2人を警戒しながら少しずつ窓際に移動を始めました。

「逃がさないわよ」

 窓から逃げることを警戒した秋が廻に向けてボールを投げつけますが、壱はボールを受け止めました。
 その瞬間を狙って夏がボールを投げると、壱は先に受け止めていた秋のボールを投げてぶつけることで阻止した。

「あっ」

 壱がボールを投げたことにより、秋か直立不動で停止しました。

「夏ストップ」

 壱が手で夏を制止すると、夏はボールを投げる態勢のまま止まりました。

「なんですか?」

 夏は壱を睨み付けました。

「俺は逃げないと約束するから秋に仕返ししないか?」

 壱は視線を秋に向けました。夏も秋を見ると、秋は潤んだ目で夏を見ながらふるふると首を振りました。
 その姿を見た夏は、秋に1度ボールをぶつけました。
 ボールをぶつけられて秋が頬を膨らませたので、夏は秋の頬を引っ張ったり潰したりして遊びました。

「夏。そろそろ秋が動けるようになるから移動するぞ」
「わかりました」

 壱と夏は走って秋のもとを離れました。それから15秒程経って動けるようになった秋は2人の逃げた方向を睨み付けました。

「2人とも許さないわよ」

 不気味な笑みを浮かべながら秋は2人の逃げた方向へと走り出しました。


          ◇


 桜は食堂にいる集団の中にいた。
 そして今、その集団の前には中二が立っていた。

「ここにいる諸君!我がここにいる限り、諸君が失格になって特別教室に行くことはない!だから安心するがいい!」

 中二の言葉に誰もがポカンとしていて、中二のことを知っている桜はため息を吐きました。

「ふっふっふ。我がいる安心感と感動から言葉が出ないのか」

 勝手なことを言っている中二に桜は呆れはてていました。

「えっと………君は?」

 戸惑いながらも少女が問いかけます。

「我は中二。最強の1年よ」

 中二の言葉に少女はポカンとしました。
 さすがにこれ以上放置するのはダメだと思った桜は中二のもとに言って中二の頭を殴りました。

「痛いぞ、桜」
「あんたが変なこと言ってるからよ」

 桜は中二の襟を掴んで引っ張ると壁際にやって来ました。

「なにをする」
「あんたね。ここには2年や3年の先輩達もいるのよ」
「だからこそ、我がいることを示して安心させるのが最善であろう」

 中二の言葉に桜は呆れながらまた殴りました。

「あんたがいることを示したところで安心することなんてないわよ」
「なぜた!1年最強の存在である我がいれば誰もが安心するであろう!」

 中二はそれを確信しているのか、堂々と言い切りました。

「公や朧月や庵や蛙とかに負けるくせになに言ってるのよ」

 それを言われると何も言えなくなる中二は黙りこみました。
 それを見て、桜はため息を吐きました。

「わかったら静かにおとなしくしてなさい」

 桜が最後に中二の頭を叩くと、中二は椅子に座りました。
 中二がおとなしくなったことでようやく落ち着くことが出来た桜は椅子に座って一息吐きました。
 しかし、その落ち着いた時間も長くは続きませんでした。

「みーつけた」

 食堂にマスターがやって来ました。

「くそっ!」「女子達は早く逃げろ!」

 男子の言葉で女子達が食堂から逃げ出しました。
 そんな中、中二はマスターの前に立ちはだかりました。その後ろには困った表情を浮かべている桜。

「君も逃げるんだ」

 男子は逃げるように桜に言ったが、桜は「大丈夫です」と言った。

「おや。中二と桜なんて珍しい組み合わせだね」
「ふっ。我といることが1番安全なんだから当然だろ?」
「はいはい。バカなこと言ってなさい。私だって一緒にいたくているわけじゃないわよ」

 ため息を吐いた桜を見たマスターは「アハハ」と笑いました。

「それじゃあ、始めようか」

 マスターは軽く肩を回しました。それに対し、中二はボールを受け止めるために構えました。

「さぁ、来い。我が成敗してやろう」
「じゃあいくぞ」

 マスターが投げたボールは中二の顔面に当たりました。

「グハッ」

 一瞬のけ反って戻ってきた中二はマスターを睨みました。

「作者!貴様!」
「すまんすまん。手が滑った」
「ふっ。我の威圧で手が滑ったか。それに、顔面セーフのルールは適応されているから我を失格にすることは出来てはいないぞ」

 なので、マスターは再度ボールを投げるも、また中二の顔面に当たりました。

「グハッ」

 中二はマスターを睨みました。

「貴様!」

 そんな中二を見て笑っているマスターはボールを放りあげて中二の後ろにいる桜にボールを渡しました。
 ボールを受けた桜は中二の後頭部めがけてボールを投げつけました。

「グヘッ」

 桜はさらにもう1度投げつけました。

「グハッ」

 倒れた中二を見た桜はボールをマスターに返しました。

「ありがとね、作者」
「どういたしまして」
「皆さん。ここは中二に任せて逃げましょう」

 マスターにお礼を言った桜は男子達を連れて逃げ出しました。
 残された中二はプルプル震えながら立ち上がりました。そんな中二へマスターはニヤリと微笑みかけました。
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