あの日、北京の街角で

ゆまは なお

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第15章-2

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「縦割り行事の多い学校だったから、学年が離れてても一緒になることがあって知り合った。といっても彼は当時、生徒会長で学年首席の有名人で、入学したばっかりのおれが近づけるような人じゃなかったけど、なにかと声かけてくれて助けてくれた」
「助けてくれた?」
「うん。中1のとき、まだ背も低くて顔も女の子みたいで、男子校の中ではいじりたい感じだったんだろうね。物がなくなったりとか、からかわれたりとかけっこうあったんだ」

 入学当時の祐樹はクラスでいちばん小さくて女の子よりかわいいと評判だった。
 祐樹自身はそんなことは言われ慣れていて、いちいち反応したりはしなかったのだが、それをからかうクラスメイトがいたのだ。
 いじめというほど深刻ではないが、からかいよりちょっと行き過ぎた感じだった。
 祐樹は兄三人の家庭に育って、かわいい容姿に反して気が強かった。そしてそういうことに正面から反発したから、だんだんエスカレートしていったのだ。

「おれの学校は6月に体育祭があって、その練習の縦割りクラスで初めて話した。面倒見のいい人だったから、体操服とか上靴とかリコーダーとか探してるおれに気づいて一緒に探してくれたんだ。その後におれの教室まで来て、こいつ、俺のおきにだから手を出すなよってみんなの前で宣言して、守ってくれたんだ」
「それってつまり、彼がそのときから高橋さんを好きだったってこと?」

「ううん、そうじゃなくて、たんに小さい子がいじめられてるのがかわいそうだから、かばってくれたって話。高2なんて中1のおれからしたら、すごい大人に見えてたし、生徒会長なんてもう雲の上の人って感じで関わりたくないって感じだったな」

 当時、祐樹はお気に入り宣言されて有難いというよりも面倒くさいと感じていて、正直あまり近寄りたくないと思ったくらいだ。
 それをはっきり態度に出してもいた。
 けれども彼は、ちょくちょく祐樹の顔を見に中等部にやってきて、すこし立ち話をして帰っていくという距離を卒業まで崩さなかった。
 そして結果的にはそのおかげで、いじめはなくなった。

 中3になってからは急に背が伸び、顔立ちも体格も成長して、きれいではあっても女子には見えなくなった。そういう変化もあり、高等部に上がるころには王子様みたいと周辺の女子高生に騒がれるようになっていた。
 しかし体格は成長しても精神的にはまだ幼くて、祐樹は女子に告白されてもすこしもときめかなかった。それでも、押しの強い年上の女子と勢いで付き合ったことがあった。

「高1のとき、おれの彼女と彼とその彼女の4人で遊びにいったことがある。その帰り道、彼と二人になったとき言われた。お前、ほんとは男のほうが好きなんじゃないのって」
 祐樹は体の成長が遅くて、自分の性指向を考えたのは高校生になってからだった。
 初めての彼女ができて、その子とつき合っているうちに周りが言うようなドキドキもときめきも感じないことに気がついたのだ。

「彼女と手をつないでデートして、嫌じゃないしふつうに楽しいけど、それは彼女が思う楽しいとはぜんぜん意味が違ってて。その子がうれしそうに笑ってると、なんだか騙してるみたいで苦しかった」
 それを彼は見抜いたのだという。
 祐樹自身、うすうす違和感を感じていたから指摘されてどきっとした。
 もしかしたら男しか好きになれないのかもしれない、でも女子とも付き合えるしセックスもしている。だけど欲望なんてまるで感じないし、セックスしてても楽しくもない。

「自分でも自分の気持ちがわからなくて、その時期すごく混乱してた。彼にそう言われて、もしかしたらそうなのかもって、すごく腑に落ちたというか納得した感じがあった」
 それでも男が好きだと認めるのは怖かった。
 どうしていいかわからず、告白してくれた女子と次々付き合った。ほんの短い期間付き合って、やっぱり本気になれずに別れることを繰り返した。

「高2の冬、はじめて彼とセックスした。彼はどっちもいける人で、なんていうかな、どっちかわからないなら試してみようかってかんじで、全部教えてもらった」
 じぶんが男のほうが好きなのか、男しか好きになれないのか。
 それを確かめたかった。
 もしそうだとしたら、実際に男とセックスできるのかを知りたかった。
 でも知りたい気持ちと同じくらい、男とセックスするのは怖かった。
 
 そんな時、彼が試してみようかと誘ったのだ。いや、じぶんが言わせたようなものだと祐樹は自覚していた。彼は祐樹のこころの声を読み取ることに長けていたから。

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