あの日、北京の街角で

ゆまは なお

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エピローグ

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 約一ヶ月後、北京事務所で孝弘と祐樹は再会した。
「高橋さん、お疲れさまです。東京は暑かったでしょう」
「ええ、でもこっちも結構暑いんですね」
「夜になれば、湿度がないから涼しくなりますけどね」
 事務所内にはほかのスタッフもいて、二人は他人行儀なあいさつを交わした。

 電話やメールでほぼ毎日やり取りはしていたが、顔を合わせるのはやはり違う。うれしくて心臓がことこと踊り出すような気がする。
 正面から目が合うと孝弘の目が切なげに細められて、祐樹の気持ちをかき乱した。
「準備室、こちらです」
 小さな会議室が大連プロジェクトの準備室として使われているらしい。

 そこに入ってドアを閉めた途端、祐樹は孝弘にぎゅっと抱きしめられていた。
 祐樹の背中をドアに押しつけて、言葉を交わす間もなく、唇が重なった。あっという間に息まで奪われるような口づけになり、祐樹はくらくらとめまいがした。
 短いけれど深く激しいキスを解いて、祐樹は力が入らない口調でささやいた。

「孝弘、ここじゃダメだよ」
「ごめん、ちょっと我慢できなくて」
「ううん、おれもうれしかったけど」
「もう一回、キスだけさせて」
 過去の「キスだけ」を思い出して、祐樹は顔をしかめてみせた。
「孝弘の「キスだけ」は信用できないからなあ」
「あ、ひょっとして期待されてる? じゃあ頑張らないと」
「期待してないし、頑張らなくていいし」
「え、頑張らなくていいんだ? 祐樹が頑張ってくれる?」
 軽口に祐樹は顔を真っ赤にした。

 久しぶりに会えてうれしいのに、そんなふうにからかわれて心臓がどきどきする。
「孝弘、いじわるだ」
「うん、ごめん。あんまりかわいいし、うれしくてテンション上がってつい」
 孝弘があまく微笑んで、ごめんなと祐樹の髪をなでる。

 触りたがりは相変わらずのようだ。
 その手に安心する。触れられて気持ちが落ち着いていく。ここにいていいのだ。自分の居場所はここにある。孝弘のそばに。
「あとは、夜、二人だけになってから、な?」
 見つめる目線に思いが込められている。

 うれしい。大好き。会いたかった。
 なにひとつ隠さないで差し出してくれる気持ちをうれしく思った。
「ん、期待してる」
 にっこり笑って祐樹がちゅっと孝弘の頬にキスをした。 
 そのやわらかな王子さまのような笑顔に、孝弘はおうと応えてにやりと笑った。


 完




 最後までお読みいただき、ありがとうございました。
 この後、番外編の短編2本を載せますので、そちらもぜひご覧くださいm(__)m
 感想頂けたらとても嬉しいです(*^^*)

 続編「あの日、北京の街角で2 東京・香港編」もぜひご覧ください。
 両想いになってから孝弘が先に北京に出発するまでの約1ヵ月のお話です。
 この本編30章からエピローグまでの間にあたります。
 つき合い始めのカップルならではのらぶらぶいちゃいちゃストーリーwww
 どうぞよろしくお願いいたしますm(__)m



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