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魔女の集まるところ
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朝日を浴びながらハイド先生の家を出て、スラムまがいのあの場所へと向かう。
透けるくらい青い空と清々しい空気は、まさに良き風向きを告げる風見鶏と同等のものだろう。
誰にも見向きもされないで通りを歩く。
ノーマン医師の家へと着いた僕は、「まるで泥棒のようだけれど別に物を盗りたいわけじゃないから……」と自分に言い訳をして、彼らの家の中へと侵入した。
薄暗い家の中は昨日と同じでなんの変哲もない。机の上は片付けられていて、その中央には花瓶が置かれていた。
……おそらくこの花瓶は、机に染み着いた奥方の血を隠すためのもの。
花瓶の下にあったものを思いだし、少しだけ肌が粟立つ。
ノーマン医師もよく彼女を世間から隠せるものだ。
食卓に飾られた花瓶を見ながら昨夜の事を考えていると、寝室の方から奥方が出てきた。
「あなた? あなた? もう出掛けたしまったの?」
ノーマン医師を探す奥方。
家の中をうろうろと彷徨って、ノーマン医師がいないと知ると、彼女は大きく溜め息をついた。
「もう……あの人ったら……」
小さくぼやきながら、奥方は部屋の中を軽く掃除し、出掛ける支度を始める。
少しのお金と小さな籠を持つと、彼女は外へと出た。
僕はその後を追いかける。
奥方は市場の方へと向かい、軒を連ねる店をゆっくりと見回る。
布と糸……後は食べ物か。
生活に必要な物を選んで買っていくようだ。
何もおかしな動きはなく、これが彼女の生活であると思わせる穏やかさがある。
そんなゆったりとした時間に、あくびが出そうになりながら奥方の買い物の様子を見ていると、一つのお店で奥方が呼び止められた。
「おぉ、ジョアンナ。最近調子はどうだい」
「いつも通りですよ。そちらは?」
なんてことのない世間話。
町に住むならよくある光景だ。
だけどこの店は……。
「うちはねぇ……微妙なもんさ。最近ナントカのミルクとかいって、牛乳に毒が混じっているらしくてさ、チーズもバターも売れゆきが怪しいよ」
「まぁ……そうなんですか」
奥方が口元に手をやり、少しだけ驚いた顔をする。
店はチーズやバターといった乳製品を売っているようで、この毒入りミルクの騒ぎの煽りを直に受けて辟易しているみたいだ。
こればっかりは事件が解決するまで辛抱してもらうしかない。
一応、僕はこの町の商人を取りまとめている立場の一人でもあるので、商人たちの不平不満はきちんと把握しておかないと。
二人の会話に耳をそばだてていると、店主が興味深いことを口にする。
「そういえば、聞いた話。ジョアンナの家も、今回の件を受けて困っているようだったよ」
「そうだったの? お兄様、この間チーズを届けに来てくれた時は何も言っていなかったのに」
「そりゃあんた。嫁いだ妹に気苦労をかけまいとする思いやりだよ」
なるほどね。
ノーマン医師の奥方の実家は酪農家なのか。
酪農家と商人にはラ・ヴォワサンのミルクについて話が行き渡っているはずだけど……これは……。
「きな臭いにも程があるだろう……」
こんなもの、『ラ・ヴォワサンのマザーズミルク』の出所はノーマン医師と言ってるのと同じじゃないか?
いやでも、奥方の実家が酪農家ならば初期の段階で取り調べが入っているはずだ。
もし彼女の実家が荷担しているとして、それをすり抜けているということか?
あぁ、もう、なんだこれ。
目の前に答えがあるというのに、考えれば考えるほどに違うかもしれないという思いばかりが広がっていく。
確証はない。
証拠もない。
なんだこの堂々巡りな事件は。
「犯人は分かっているのに……その手段が分からない」
ハイド先生もおそらく奥方の実家が酪農家であることはすぐに突き止めるはずだ。
でも今必要なのはハイド先生がフローラを殺すという確証。
そのために使う毒薬が『ラ・ヴォワサンのマザーズミルク』であるという証明。
そしてその毒薬がどのように作られ、出回っているのかという事実。
一つずつ解決していけば分かるはずなのに、それが難しい。
歩きだした奥方の背中を追いかける。
全てがうまく行けば良いというのに、何かが噛み合わない……。
この歯痒さを、誰か共有してほしい。
「……とりあえず今日のうちは奥方を見張るだけだ。彼女の実家の事も先生に任せて……」
任せて……
「……いや」
任せて、いいのか?
奥方を追う足が止まる。
ハイド先生はよくやっている。
見ることしかできない僕の代わりに色々とやってくれている。
黒ミサの情報も持ち帰ってきてくれた。
僕はノーマン医師の奥方について、あるかどうかも分からない黒ミサの招待状を見つける。
それも必要だけど。
ハイド先生だって身体は一つだ。
彼に頼りきってばかりじゃいられない。
「……夜にでも聞いてみよう」
奥方の実家の場所を。
僕に出きることがあれば何でもする。
拳を握り、僕は奥方を改めて追いかけた。
そして追いかけた先で。
「あ……!」
奥方のバスケットに、誰かが何かを入れるのを見た。
僕はその人間の顔を見ようとするけれど、人込みに紛れてしまって見つけることはできなくなった。
だけど大事なのは奥方のバスケットに入ったものだ。
あれは。
「黒い封筒……!」
黒ミサの招待状だ。
夜半、闇に紛れてノーマン医師の奥方の後ろをついていく。
貴婦人の持つ藤籠と、質素なドレスにハーブの模様の刺繍が入ったのエプロン。
黒い封筒に書かれていたのは、黒ミサが今夜決行されるということ、黒ミサの参加条件は藤籠とハーブの刺繍をしたエプロンをすること、それから場所。
ノーマン医師の奥方は手紙を持ち帰ることなく、路地でこっそり読むと、そのまま別の人間に渡していた。
ああやって魔女達は黒ミサの手紙を回しているのだろう。
この情報を持ち帰ってハイド先生に話したところ、こっそり忍び込める僕が黒ミサで情報を収集することになった。
ハイド先生もなんとか忍び込むとはいっていたけど……新参者が簡単に入り込める場所でもないから期待はするなと言われている。
だからこそ、幽霊である僕がこういうのに適しているんだろうけどね。
黒ミサの会場は、とある民家の地下にあるようだ。
温かい火の灯る家は、ホームパーティでもするかのように賑やかで、最初奥方は誰かの誕生日パーティにでも招待されたのかと思った。
だけどそれはカモフラージュ。
招待されたうちの何人かはするりと奥の部屋に行き、地下に続く階段をおりる。
そこが、魔女の儀式の会場だ。
魔女達は藤籠に入っていた黒いローブを身に纏い、祭壇のようなものに肉の塊や果物を供え、青白い火を蝋燭に灯す。
そして来たものから順にひざまずき、祭壇へと祈り始める。
教会で神に懺悔する者のように、一心不乱に祈りを捧げる。
その不思議な光景の中、ノーマン医師の奥方も他の魔女に紛れて祈りを捧げた。
悪魔に対して、何をそんなに熱心に祈るのか。
気が狂うほど、どうしてフローラを憎むのか。
僕はそれを静かに見守っていた。
やがて魔女の出入りがなくなり、青白く燃える蝋燭が尽きる頃、魔女の一人が祭壇の前に出た。
「祈りなさい。あなたの望みを。懺悔なさい。我らが悪魔に。我らの声は朽ちぬもの。祈り、懺悔すれば、いつか魂が共鳴し、我らの望みを叶えるでしょう」
静かに、それでも声が透き通るように耳に染み込んでいく。
祭壇前の魔女に心酔しているのか、所々恍惚な表情で祭壇を見つめる人もいる。
「……これじゃ、ただの悪質宗教集団だな」
「そうよねぇ。伝統をはき違えているわ。こんなの、正しい魔女の姿とは言えない」
「正しい魔女の姿?」
「そう。魔女は草木の声を聞き、動物の目や耳を借り、未来を見通す者。悪魔なんてものに魂を売らない」
「へぇ、そうなんだ……って、は?」
ぼそりと吐いた言葉に応えが返って来た。
驚いてそちらに顔を向ければ、黒いローブを纏う魔女。
彼女は白い人差し指を一本口元に当てる。
「幽霊のぼうや。ここにいると悪魔にされてしまうわ。長居をしないで行きましょうよ」
だ、誰!?
というか僕が見えてるのか!?
「……あなたは、誰です。僕が見えるのですか」
僕を見つけた魔女はゆらりとローブを揺らす。
「私はカトリーヌ・モン・ヴォワサン。幽霊のぼうや、こちらに来なさいな」
え。
「……ヴォワサン?」
「えぇ、そうよ」
ちょっと待って。
もしかして、もしかしなくても。
僕のこの隣にいる人は。
「ラ・ヴォワサン!?」
「あら、私って有名人?」
ローブの奥で、目の前の魔女は楽しそうに笑う気配がした。
透けるくらい青い空と清々しい空気は、まさに良き風向きを告げる風見鶏と同等のものだろう。
誰にも見向きもされないで通りを歩く。
ノーマン医師の家へと着いた僕は、「まるで泥棒のようだけれど別に物を盗りたいわけじゃないから……」と自分に言い訳をして、彼らの家の中へと侵入した。
薄暗い家の中は昨日と同じでなんの変哲もない。机の上は片付けられていて、その中央には花瓶が置かれていた。
……おそらくこの花瓶は、机に染み着いた奥方の血を隠すためのもの。
花瓶の下にあったものを思いだし、少しだけ肌が粟立つ。
ノーマン医師もよく彼女を世間から隠せるものだ。
食卓に飾られた花瓶を見ながら昨夜の事を考えていると、寝室の方から奥方が出てきた。
「あなた? あなた? もう出掛けたしまったの?」
ノーマン医師を探す奥方。
家の中をうろうろと彷徨って、ノーマン医師がいないと知ると、彼女は大きく溜め息をついた。
「もう……あの人ったら……」
小さくぼやきながら、奥方は部屋の中を軽く掃除し、出掛ける支度を始める。
少しのお金と小さな籠を持つと、彼女は外へと出た。
僕はその後を追いかける。
奥方は市場の方へと向かい、軒を連ねる店をゆっくりと見回る。
布と糸……後は食べ物か。
生活に必要な物を選んで買っていくようだ。
何もおかしな動きはなく、これが彼女の生活であると思わせる穏やかさがある。
そんなゆったりとした時間に、あくびが出そうになりながら奥方の買い物の様子を見ていると、一つのお店で奥方が呼び止められた。
「おぉ、ジョアンナ。最近調子はどうだい」
「いつも通りですよ。そちらは?」
なんてことのない世間話。
町に住むならよくある光景だ。
だけどこの店は……。
「うちはねぇ……微妙なもんさ。最近ナントカのミルクとかいって、牛乳に毒が混じっているらしくてさ、チーズもバターも売れゆきが怪しいよ」
「まぁ……そうなんですか」
奥方が口元に手をやり、少しだけ驚いた顔をする。
店はチーズやバターといった乳製品を売っているようで、この毒入りミルクの騒ぎの煽りを直に受けて辟易しているみたいだ。
こればっかりは事件が解決するまで辛抱してもらうしかない。
一応、僕はこの町の商人を取りまとめている立場の一人でもあるので、商人たちの不平不満はきちんと把握しておかないと。
二人の会話に耳をそばだてていると、店主が興味深いことを口にする。
「そういえば、聞いた話。ジョアンナの家も、今回の件を受けて困っているようだったよ」
「そうだったの? お兄様、この間チーズを届けに来てくれた時は何も言っていなかったのに」
「そりゃあんた。嫁いだ妹に気苦労をかけまいとする思いやりだよ」
なるほどね。
ノーマン医師の奥方の実家は酪農家なのか。
酪農家と商人にはラ・ヴォワサンのミルクについて話が行き渡っているはずだけど……これは……。
「きな臭いにも程があるだろう……」
こんなもの、『ラ・ヴォワサンのマザーズミルク』の出所はノーマン医師と言ってるのと同じじゃないか?
いやでも、奥方の実家が酪農家ならば初期の段階で取り調べが入っているはずだ。
もし彼女の実家が荷担しているとして、それをすり抜けているということか?
あぁ、もう、なんだこれ。
目の前に答えがあるというのに、考えれば考えるほどに違うかもしれないという思いばかりが広がっていく。
確証はない。
証拠もない。
なんだこの堂々巡りな事件は。
「犯人は分かっているのに……その手段が分からない」
ハイド先生もおそらく奥方の実家が酪農家であることはすぐに突き止めるはずだ。
でも今必要なのはハイド先生がフローラを殺すという確証。
そのために使う毒薬が『ラ・ヴォワサンのマザーズミルク』であるという証明。
そしてその毒薬がどのように作られ、出回っているのかという事実。
一つずつ解決していけば分かるはずなのに、それが難しい。
歩きだした奥方の背中を追いかける。
全てがうまく行けば良いというのに、何かが噛み合わない……。
この歯痒さを、誰か共有してほしい。
「……とりあえず今日のうちは奥方を見張るだけだ。彼女の実家の事も先生に任せて……」
任せて……
「……いや」
任せて、いいのか?
奥方を追う足が止まる。
ハイド先生はよくやっている。
見ることしかできない僕の代わりに色々とやってくれている。
黒ミサの情報も持ち帰ってきてくれた。
僕はノーマン医師の奥方について、あるかどうかも分からない黒ミサの招待状を見つける。
それも必要だけど。
ハイド先生だって身体は一つだ。
彼に頼りきってばかりじゃいられない。
「……夜にでも聞いてみよう」
奥方の実家の場所を。
僕に出きることがあれば何でもする。
拳を握り、僕は奥方を改めて追いかけた。
そして追いかけた先で。
「あ……!」
奥方のバスケットに、誰かが何かを入れるのを見た。
僕はその人間の顔を見ようとするけれど、人込みに紛れてしまって見つけることはできなくなった。
だけど大事なのは奥方のバスケットに入ったものだ。
あれは。
「黒い封筒……!」
黒ミサの招待状だ。
夜半、闇に紛れてノーマン医師の奥方の後ろをついていく。
貴婦人の持つ藤籠と、質素なドレスにハーブの模様の刺繍が入ったのエプロン。
黒い封筒に書かれていたのは、黒ミサが今夜決行されるということ、黒ミサの参加条件は藤籠とハーブの刺繍をしたエプロンをすること、それから場所。
ノーマン医師の奥方は手紙を持ち帰ることなく、路地でこっそり読むと、そのまま別の人間に渡していた。
ああやって魔女達は黒ミサの手紙を回しているのだろう。
この情報を持ち帰ってハイド先生に話したところ、こっそり忍び込める僕が黒ミサで情報を収集することになった。
ハイド先生もなんとか忍び込むとはいっていたけど……新参者が簡単に入り込める場所でもないから期待はするなと言われている。
だからこそ、幽霊である僕がこういうのに適しているんだろうけどね。
黒ミサの会場は、とある民家の地下にあるようだ。
温かい火の灯る家は、ホームパーティでもするかのように賑やかで、最初奥方は誰かの誕生日パーティにでも招待されたのかと思った。
だけどそれはカモフラージュ。
招待されたうちの何人かはするりと奥の部屋に行き、地下に続く階段をおりる。
そこが、魔女の儀式の会場だ。
魔女達は藤籠に入っていた黒いローブを身に纏い、祭壇のようなものに肉の塊や果物を供え、青白い火を蝋燭に灯す。
そして来たものから順にひざまずき、祭壇へと祈り始める。
教会で神に懺悔する者のように、一心不乱に祈りを捧げる。
その不思議な光景の中、ノーマン医師の奥方も他の魔女に紛れて祈りを捧げた。
悪魔に対して、何をそんなに熱心に祈るのか。
気が狂うほど、どうしてフローラを憎むのか。
僕はそれを静かに見守っていた。
やがて魔女の出入りがなくなり、青白く燃える蝋燭が尽きる頃、魔女の一人が祭壇の前に出た。
「祈りなさい。あなたの望みを。懺悔なさい。我らが悪魔に。我らの声は朽ちぬもの。祈り、懺悔すれば、いつか魂が共鳴し、我らの望みを叶えるでしょう」
静かに、それでも声が透き通るように耳に染み込んでいく。
祭壇前の魔女に心酔しているのか、所々恍惚な表情で祭壇を見つめる人もいる。
「……これじゃ、ただの悪質宗教集団だな」
「そうよねぇ。伝統をはき違えているわ。こんなの、正しい魔女の姿とは言えない」
「正しい魔女の姿?」
「そう。魔女は草木の声を聞き、動物の目や耳を借り、未来を見通す者。悪魔なんてものに魂を売らない」
「へぇ、そうなんだ……って、は?」
ぼそりと吐いた言葉に応えが返って来た。
驚いてそちらに顔を向ければ、黒いローブを纏う魔女。
彼女は白い人差し指を一本口元に当てる。
「幽霊のぼうや。ここにいると悪魔にされてしまうわ。長居をしないで行きましょうよ」
だ、誰!?
というか僕が見えてるのか!?
「……あなたは、誰です。僕が見えるのですか」
僕を見つけた魔女はゆらりとローブを揺らす。
「私はカトリーヌ・モン・ヴォワサン。幽霊のぼうや、こちらに来なさいな」
え。
「……ヴォワサン?」
「えぇ、そうよ」
ちょっと待って。
もしかして、もしかしなくても。
僕のこの隣にいる人は。
「ラ・ヴォワサン!?」
「あら、私って有名人?」
ローブの奥で、目の前の魔女は楽しそうに笑う気配がした。
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