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外伝2 せんせいとすみちゃんと結婚式 2.せんせいの憂うつ
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今日、みどりの結婚披露宴に出席することを、すみちゃんにはずいぶん前から伝えていた。それなのに昨日の夜、すみちゃんがふらりと私の家にやってきたのだ。
もしかしたら披露宴のことを忘れているかも……と思ったら案の定、完全に忘れていた。
すみちゃんが会いに来てくれるのはうれしいし、いつ来てくれても問題はない。けれど、自分が休みだからってなかなか眠らせてもらえないのはちょっと困る。
情熱的なのはうれしいし、そういうところも好きなのだけど、やっぱり時と場合というものがあると思う。
そのせいで今日は少し寝不足気味だし、化粧のノリも悪いような気がする。
なにより家を出るまで随分と駄々をこねられてしまったのが困った。
私だって喜んで披露宴に出席するわけではないのだ。
お祝儀を払ったうえにスピーチまでやらされるなんて、それこそ苦行みたいなものだともう。
かつてフラれた相手の披露宴に出るよりも、すみちゃんとのんびりイチャイチャしていた方がずっと楽しいに決まっている。
少しは私の気持ちも理解してほしい。
どうにも最近のすみちゃんは、すっかり年上として振る舞うことを放棄しているような感じがする。
もちろんそんなすみちゃんも好きだし、かわいいと思う。けれどたまには大人でかっこいいすみちゃんも見てみたい。
特に今日みたいな日には、私が行きたくないと駄々をこねて、すみちゃんが大人の余裕で諭す……みたいな感じでもいい気がする。
そう考えてしまうのは贅沢なのだろうか。
そんなことを考えながらフウと大きく息をついたとき、待ち合わせをしてた久美子と美咲が現れた。
「どうしたの? 大きなため息なんかついて」
あいさつよりも早く美咲が聞いた。美咲の服装はシックだが華がある。いかにも仕事ができるイイ女という雰囲気だ。
「あー、ちょっと家を出るときに駄々をこねられて」
私はポロっと本音をこぼしてしまった。
大学を卒業してから会う機会はほとんどないが、顔を見るとあの頃の気持ちに戻るから不思議だ。
「何? もしかして彼氏? 一緒に住んでるの?」
横からすごい勢いで食い付いてきたのは久美子だ。久美子は女子の可愛さをてんこ盛りにしました、といった衣装に身を包んでいる。気合いの入り具合をその衣装からひしひしと感じた。
仕事を辞めてバイト暮らしの久美子は、素敵な旦那さんを見つけることに情熱を燃やしているらしい。おそらく今日の披露宴を一番楽しみにしているのが久美子だろう。
そういえば私が同性を好きになることを知っているのはみどりだけだ。どうしても隠したいというわけではないが、敢えて明かす必要もないと思っている。
「一緒には住んではいないよ。昨日急に部屋に来たから」
「あー、だから、お肌ツヤツヤなのか」
久美子はそう言うと、ニヤニヤしながら私の頬をツンツンとつついた。
「いやいや、そんなことないでしょう」
顔が熱くなるのを感じながら、私は久美子の手を逃れてそっぽを向いた。
もしも私の相手が女性だと知ったら、久美子や美咲はどんな顔をするのだろうか。
別に変わらないような気もするけれど、実際にどうなるかは明かしてみなければわからない。
全ての人に理解してもらいたいとは思わないし、友だちだからすべてを包み隠さず伝えなければいけないとも思ってはいない。
久美子のことも美咲のこともよく知っているし、信用をしていないわけでもない。それでも友情を賭けてすみちゃんのことを伝える勇気は今の私にはまだなかった。
幸いなことに、すみちゃんのお姉さんや私の家族は、私たちのことを受け入れてくれている。今はこれで十分だ。
だけどやっぱり心のどこかで友だちに打ち明けられないことに心苦しさを感じる。何より私の自慢のすみちゃんを隠していることが悲しいと感じた。
だからいつか、その時期が来たら久美子と美咲にもすみちゃんのことをきちんと紹介しよう。
もしかしたら披露宴のことを忘れているかも……と思ったら案の定、完全に忘れていた。
すみちゃんが会いに来てくれるのはうれしいし、いつ来てくれても問題はない。けれど、自分が休みだからってなかなか眠らせてもらえないのはちょっと困る。
情熱的なのはうれしいし、そういうところも好きなのだけど、やっぱり時と場合というものがあると思う。
そのせいで今日は少し寝不足気味だし、化粧のノリも悪いような気がする。
なにより家を出るまで随分と駄々をこねられてしまったのが困った。
私だって喜んで披露宴に出席するわけではないのだ。
お祝儀を払ったうえにスピーチまでやらされるなんて、それこそ苦行みたいなものだともう。
かつてフラれた相手の披露宴に出るよりも、すみちゃんとのんびりイチャイチャしていた方がずっと楽しいに決まっている。
少しは私の気持ちも理解してほしい。
どうにも最近のすみちゃんは、すっかり年上として振る舞うことを放棄しているような感じがする。
もちろんそんなすみちゃんも好きだし、かわいいと思う。けれどたまには大人でかっこいいすみちゃんも見てみたい。
特に今日みたいな日には、私が行きたくないと駄々をこねて、すみちゃんが大人の余裕で諭す……みたいな感じでもいい気がする。
そう考えてしまうのは贅沢なのだろうか。
そんなことを考えながらフウと大きく息をついたとき、待ち合わせをしてた久美子と美咲が現れた。
「どうしたの? 大きなため息なんかついて」
あいさつよりも早く美咲が聞いた。美咲の服装はシックだが華がある。いかにも仕事ができるイイ女という雰囲気だ。
「あー、ちょっと家を出るときに駄々をこねられて」
私はポロっと本音をこぼしてしまった。
大学を卒業してから会う機会はほとんどないが、顔を見るとあの頃の気持ちに戻るから不思議だ。
「何? もしかして彼氏? 一緒に住んでるの?」
横からすごい勢いで食い付いてきたのは久美子だ。久美子は女子の可愛さをてんこ盛りにしました、といった衣装に身を包んでいる。気合いの入り具合をその衣装からひしひしと感じた。
仕事を辞めてバイト暮らしの久美子は、素敵な旦那さんを見つけることに情熱を燃やしているらしい。おそらく今日の披露宴を一番楽しみにしているのが久美子だろう。
そういえば私が同性を好きになることを知っているのはみどりだけだ。どうしても隠したいというわけではないが、敢えて明かす必要もないと思っている。
「一緒には住んではいないよ。昨日急に部屋に来たから」
「あー、だから、お肌ツヤツヤなのか」
久美子はそう言うと、ニヤニヤしながら私の頬をツンツンとつついた。
「いやいや、そんなことないでしょう」
顔が熱くなるのを感じながら、私は久美子の手を逃れてそっぽを向いた。
もしも私の相手が女性だと知ったら、久美子や美咲はどんな顔をするのだろうか。
別に変わらないような気もするけれど、実際にどうなるかは明かしてみなければわからない。
全ての人に理解してもらいたいとは思わないし、友だちだからすべてを包み隠さず伝えなければいけないとも思ってはいない。
久美子のことも美咲のこともよく知っているし、信用をしていないわけでもない。それでも友情を賭けてすみちゃんのことを伝える勇気は今の私にはまだなかった。
幸いなことに、すみちゃんのお姉さんや私の家族は、私たちのことを受け入れてくれている。今はこれで十分だ。
だけどやっぱり心のどこかで友だちに打ち明けられないことに心苦しさを感じる。何より私の自慢のすみちゃんを隠していることが悲しいと感じた。
だからいつか、その時期が来たら久美子と美咲にもすみちゃんのことをきちんと紹介しよう。
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