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7① ーアロイスー
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「アロイス、どこかな~。あれ~、いないなあ」
庭園の一角で、フィオナはお尻を出して隠れているアロイスの近くを通りすぎる。
くすくすと笑う声は幼いもので、アロイスはじっとしていられないと別の場所に移動しようと走り出した。
「見付けた。アロイス!」
「きゃっきゃっ。やーなの!」
舌足らずな話し方が愛らしい。逃げようとするのを捕まえて、フィオナはアロイスの汗を拭いてやった。
「セレスティーヌ様には驚かされます。アロイス坊ちゃんがこんなに大人しくなるなんて」
アロイスの乳母は嬉しそうに安堵の息を吐いた。今まで余程苦労していたのだろう。後ろでメイドたちがうんうん頷いている。
午前中、クラウディオがアロイスを食事に招いたが、アロイスはクラウディオと対面した瞬間大きく泣き喚いたそうだ。
(人見知りの激しいお子様をなめすぎでしょう)
元気いっぱいの本泣きは、耳をつんざく高音とボリュームだ。母親がノイローゼになる程だと知っていただろうに。
クラウディオは同席を諦めて食事を部屋で行うよう勧めたらしいが、大泣きを始めたアロイスが泣き止むことはなかった。
そして、助けを求めにセレスティーヌの元へ乳母がやってきたのだ。
セレスティーヌは姉と顔が似ているのかもしれない。アロイスはフィオナに会うとやっと泣くのをやめた。
そんなこともあり、フィオナはアロイスを連れて庭園に来たわけである。
フィオナが髪の毛をなでるとアロイスは楽しそうに笑顔を向け、再び茂みに走っていく。
アロイスは黒髪黒目をしていた。こちらでは珍しいのかアロイス以外見たことがない。だからだろうか、アロイスを見ていると懐かしさを感じた。フィオナの髪の毛も真っ黒だったからだ。
セレスティーヌの体になってまだ何日も経っていないのに、ブルイエ家にいたことがずっと昔のことのように思えた。
(子供たちはどうしているかしら。次は本を持っていくと約束していたのに)
フィオナの体力がなさすぎて一緒に走って遊ぶような真似はできなかったが、人形遊びをしたり本を読んだりすることはできた。
体調の良い時くらいしか行くことはできなかったが、フィオナ以外お菓子などの食べ物を持っていく者はブルイエ家にはいない。それをみんな喜んでくれていた。
両親や妹がどうしているか、それはあまり考えていない。三人はフィオナを良く思っていなかったからだ。
血が繋がっていても仲が良いわけではない。体が弱く、金持ちの貴族の元に嫁がせることもできない娘。両親はフィオナの未来は短いものだと考えていた。
(それに比べれば、ここはとても居心地がいい。セレスティーヌは、私が望んだ体なのかもしれない)
衣食住には困らない。自由にできるお金がある。やりたいこともやれる環境。結婚などできると思っていなかったので子供を産むことも考えられなかったが、セレスティーヌの姉の子の面倒は見られる。
セレスティーヌもクラウディオにこだわらなければ自分を大切にできただろうに。
セレスティーヌはどうしてそこまで思い詰めたのだろうか。
誰かに好かれたいという気持ちは良く分からなかった。フィオナにはその経験がないからだ。
そもそもセレスティーヌはどこに行ってしまったのだろう。フィオナの体と入れ替わりでもしたのだろうか。公爵家で奥様として生活していたセレスティーヌがフィオナの体で目覚めたら、悲鳴を上げるに違いない。
セレスティーヌが口にした薬の出どころはまだ分からなかった。メイドのリディでは調べるのに障害があるようだ。クラウディオに調べてもらえればなにか分かるかもしれないが、今の所彼に真実を話すつもりはリディにはないようだった。セレスティーヌが怪しげな薬をあおったからだろう。
なにか他にヒントがあればいいのだが。
「アロイス坊ちゃん~、どこですか~」
メイドたちがアロイスを探している。二歳児とはいえ意外に足は早い。庭園は低木や茂みもあるので、そこに隠れられたら見付けるのは難しい。二歳児から目を離すのは危険だ。
しかし、寂しがりやで、ずっと隠れていられない。時折顔を覗かせて、お尻を出して頭だけ隠した。
(可愛いわ~。心が和む。茂みからお尻と足が出てるのよ)
「アロイスはどこかしら~」
フィオナの声にアロイスが茂みの奥へと入っていく。セレスティーヌが茂みの中に顔を突っ込めばメイドたちが驚いてしまうので、それは行わないように追わなければならない。あくまで優雅に、大人しく、である。
体が軽いためどこでも走られそうな気はするが、セレスティーヌが全速力で走るわけにはいかないため、フィオナは走らず、しかし早歩きでアロイスの跡を追った。
「みーつけた!」
言いながら生垣の後ろに隠れたアロイスを追おうとすると、ぼすん、とフィオナはなにかに鼻とおでこを打ち付けた。
固いベッドに飛び込んだみたいだ。フィオナの目の前は真っ黒になり、なににぶつかったかと見上げれば、口をぐっと閉じたクラウディオの顔が間近にあった。
庭園の一角で、フィオナはお尻を出して隠れているアロイスの近くを通りすぎる。
くすくすと笑う声は幼いもので、アロイスはじっとしていられないと別の場所に移動しようと走り出した。
「見付けた。アロイス!」
「きゃっきゃっ。やーなの!」
舌足らずな話し方が愛らしい。逃げようとするのを捕まえて、フィオナはアロイスの汗を拭いてやった。
「セレスティーヌ様には驚かされます。アロイス坊ちゃんがこんなに大人しくなるなんて」
アロイスの乳母は嬉しそうに安堵の息を吐いた。今まで余程苦労していたのだろう。後ろでメイドたちがうんうん頷いている。
午前中、クラウディオがアロイスを食事に招いたが、アロイスはクラウディオと対面した瞬間大きく泣き喚いたそうだ。
(人見知りの激しいお子様をなめすぎでしょう)
元気いっぱいの本泣きは、耳をつんざく高音とボリュームだ。母親がノイローゼになる程だと知っていただろうに。
クラウディオは同席を諦めて食事を部屋で行うよう勧めたらしいが、大泣きを始めたアロイスが泣き止むことはなかった。
そして、助けを求めにセレスティーヌの元へ乳母がやってきたのだ。
セレスティーヌは姉と顔が似ているのかもしれない。アロイスはフィオナに会うとやっと泣くのをやめた。
そんなこともあり、フィオナはアロイスを連れて庭園に来たわけである。
フィオナが髪の毛をなでるとアロイスは楽しそうに笑顔を向け、再び茂みに走っていく。
アロイスは黒髪黒目をしていた。こちらでは珍しいのかアロイス以外見たことがない。だからだろうか、アロイスを見ていると懐かしさを感じた。フィオナの髪の毛も真っ黒だったからだ。
セレスティーヌの体になってまだ何日も経っていないのに、ブルイエ家にいたことがずっと昔のことのように思えた。
(子供たちはどうしているかしら。次は本を持っていくと約束していたのに)
フィオナの体力がなさすぎて一緒に走って遊ぶような真似はできなかったが、人形遊びをしたり本を読んだりすることはできた。
体調の良い時くらいしか行くことはできなかったが、フィオナ以外お菓子などの食べ物を持っていく者はブルイエ家にはいない。それをみんな喜んでくれていた。
両親や妹がどうしているか、それはあまり考えていない。三人はフィオナを良く思っていなかったからだ。
血が繋がっていても仲が良いわけではない。体が弱く、金持ちの貴族の元に嫁がせることもできない娘。両親はフィオナの未来は短いものだと考えていた。
(それに比べれば、ここはとても居心地がいい。セレスティーヌは、私が望んだ体なのかもしれない)
衣食住には困らない。自由にできるお金がある。やりたいこともやれる環境。結婚などできると思っていなかったので子供を産むことも考えられなかったが、セレスティーヌの姉の子の面倒は見られる。
セレスティーヌもクラウディオにこだわらなければ自分を大切にできただろうに。
セレスティーヌはどうしてそこまで思い詰めたのだろうか。
誰かに好かれたいという気持ちは良く分からなかった。フィオナにはその経験がないからだ。
そもそもセレスティーヌはどこに行ってしまったのだろう。フィオナの体と入れ替わりでもしたのだろうか。公爵家で奥様として生活していたセレスティーヌがフィオナの体で目覚めたら、悲鳴を上げるに違いない。
セレスティーヌが口にした薬の出どころはまだ分からなかった。メイドのリディでは調べるのに障害があるようだ。クラウディオに調べてもらえればなにか分かるかもしれないが、今の所彼に真実を話すつもりはリディにはないようだった。セレスティーヌが怪しげな薬をあおったからだろう。
なにか他にヒントがあればいいのだが。
「アロイス坊ちゃん~、どこですか~」
メイドたちがアロイスを探している。二歳児とはいえ意外に足は早い。庭園は低木や茂みもあるので、そこに隠れられたら見付けるのは難しい。二歳児から目を離すのは危険だ。
しかし、寂しがりやで、ずっと隠れていられない。時折顔を覗かせて、お尻を出して頭だけ隠した。
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体が軽いためどこでも走られそうな気はするが、セレスティーヌが全速力で走るわけにはいかないため、フィオナは走らず、しかし早歩きでアロイスの跡を追った。
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