目覚めたら公爵夫人でしたが夫に冷遇されているようです

MIRICO

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15① ー練習ー

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 パーティにはエルネストも来るかもしれない。そこで話せるチャンスを逃さない方がいいだろう。両親よりもそちらの方が重要度が高い。

 そんな下心もあって思い直し、別行動がいいと提案したのだが、どうにもクラウディオの表情は晴れやかに見えなかった。

「去年の王族のパーティって、なにかあったんでしょうか?」
「去年は、旦那様と踊ることができなかったようです。セレスティーヌ様は帰ってきてからひどく気落ちされて、目も当てられませんでした」

「王の前でダンスって言いながら、踊らなかったんですか??」
「まだ婚約ということもあったからでしょうか。今回は結婚していますし、前回のこともあるから、……かもしれません」

 リディは首を傾げる。婚約中だった前回はダンスを踊らなかったため、そこそこの罪悪感を抱えているということだろうか。

「それで、今年はドレスを購入すればいいようなことを言ってきたわけですね」
「それだけのようには思えませんが……。どちらかというと、最近旦那様はセレスティーヌ様の性格が変わったため、少し気になっているように思えます」
「人が違うと疑っているんでしょうか!?」

 人が入れ替わるような魔法があるとしたら、クラウディオが疑ってもおかしくない。フィオナは血の気が引くのを感じたが、リディは、そういう意味ではないのですが、と言葉を濁す。

「でもおかしいと思っているのは間違いないですよね。はあ、やっぱり、パーティは断った方が良かったでしょうか。会う人が増えるたびに不思議に思う人が増えるでしょうし。それに、ご両親もいらっしゃるのなら……。セレスティーヌさんのご両親はどんな方なんでしょう?」
「それは……。フィオナ様はあまり良い印象は持たないと思われます。セレスティーヌ様には甘いように見えますが、セレスティーヌ様を使って公爵家との繋がりを作った策略家の面の方が強いでしょう」

 リディは元々セレスティーヌの家で働いており、そのまま公爵家に来たため、セレスティーヌの両親に詳しい。
 借金を作らせて娘を嫁がせたのも、自分たちの地位を上げるためなのだ。

 聞いたことのある話に、フィオナはため息をつきそうになった。

(どこの親も同じなのね……)

 セレスティーヌにとっては幸運だったかもしれないが、クラウディオにとってはどうだろう。それについてセレスティーヌはなにも考えなかったのだろうか。

「どちらにしても、両親に会うのならば対策を練らないとですね。受け答えに気を付けなければですし、あとはダンスか……」

 練習ってどうすれば良いのか。フィオナはリディを見上げた。執事のモーリスに先生を紹介してもらうしかありません。との言葉に、がくりと肩を下ろした。




 執事のモーリスに先生を頼んだのだが、なぜこうなったのか。

 フィオナはクラウディオの手に触れながら眉根を寄せそうになる。

「いつっ!」
「すみません!」

 寄せる前にクラウディオの足を踏み付けて、フィオナはすぐに足を引いた。
 これでクラウディオの足を踏んだのは何回目だろうか。あまり数えたくないので、無心で踊るしかない。

 モーリスに先生を頼んだところ、練習の日になって部屋に現れたのはなぜかクラウディオだった。その時のフィオナの顔をクラウディオは見ただろうに。

 どうして彼がこんなダンスの練習などを引き受けたのか、謎だ。

「体が離れて、腰が引けてしまっています。体勢が悪いと見目が悪くなりますから、背筋をしっかり伸ばしてください」
「分かりました」

 そう言って踊って何度目だろうか。再びクラウディオ足を踏みそうになって、つい足元を見る。

(ダンスなんて踊るの、久し振りだもの。やっぱり断れば良かったわ)

「いたっ!」
「すみません!!」

 今度は思い切り足を踏み付けたので、クラウディオが痛みに顔を歪めた。さすがに痛いだろうに。モーリスが休憩を提案してくれたので、少し休むことにした。

「おばたまー」

 リディがお茶を持ってくると、後ろからアロイスがやってくる。一瞬クラウディオを見てびくりとしたが、見えないようにフィオナに抱きついてきた。

「アロイス。どうしたの。ご本は読んでもらった?」
「申し訳ありません。本を読んでもセレスティーヌ様のところへ行くとおっしゃって」

 どうやらもう泣き喚いたようだ。目尻が赤く擦った跡がある。

「ご本を読んでほしいの? じゃあ、お部屋で読みましょうか」
「だ、ダンスは、どうされるのですか!?」
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