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25① ー相談ー
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「今日はお誘いいただきありがとうございます」
「先に連絡をくれたのはあなたよ。いらしてくれてありがとう」
デュパール公爵夫人に招かれて、フィオナはお茶会にやってきた。
きっかけはフィオナから。手紙を出し、お話しできないかと連絡をした。本来ならばこちらが招待すべきなのだが、良かったら屋敷に来ないかと夫人から誘いを受けたのだ。
「あなたにこのお菓子を出すのはどうかと思ったのだけれど、とてもおいしくて、他ではこれ以上のお菓子は作れないから、こちらをお出しするわ」
テーブルに出されたのはいくつかの焼き菓子やケーキだったが、見覚えのあるものばかりだ。最近事業として店舗に出したものである。
デュパール公爵夫人はこれらを売っている店がフィオナの店だと知っているようだ。
名前は出していないのだが、どこで知ったのだろう。
「屋敷に引き入れようとしたら断られたのよ。バラチア公爵夫人がオーナーをしている店だからと。いつの間にかそんな事業を行っていたのね。名を出してはいなかったようだけれど」
「趣味で行っているだけですので。クラウディオに迷惑は掛けられないと申しますか……」
お金の使い道を誤魔化すための店などと口にできない。既に浪費してクラウディオに迷惑を掛けているので大声でも言えない。
フィオナは軽く笑ってごまかしたが、デュパール公爵夫人は、とてもおいしくて、すぐにオーナーを呼ぶように言ったのよ? と少し興奮するように前のめりになった。
「バラチア公爵も喜んでいるのではないの? あの店が気になっている人も多いのよ。うちのシェフも研究しているわ。どうやったらこんなにふわふわになるのかって」
フィオナの屋敷では簡単なおやつとしてよく出てくる定番のものなのだが、柔らかい生地で口溶けが良いと好んで食べているらしく、それを口に運ぶ。
ゲストに対しての褒め言葉がうますぎる。自分を嫌っていた相手にそんな優しく対応するなど、羨ましいほど柔軟な性格だ。
(セレスティーヌも彼女と仲良くなれれば良かったのに)
そう思いながら、ぎゅっと手のひらを握る。
セレスティーヌがどうなったのか調べるには、デュパール公爵夫人の力が必要だった。
今日の使命は、魔法使いの紹介を得ることだ。
しかし、どうやってその魔法使いの話を切り出そうかと考えていると、外でなにかが動く気配がした。
「お外に、なにか……」
「ああ、見たことはない? 魔獣なのよ」
「あれが、魔獣なんですか!?」
フィオナは立ち上がって見そうになった。窓から見えるのは焦茶色の木に登っているなにかで、犬のような立った耳と長いしっぽを持った生き物だ。枝にたどり着くとこちらに振り向いたが、目が大きく犬にも猫にも見えない顔をしていた。狐と猿を混ぜたような感じがする。
「人見知りをするくせに見知らぬ人がいると気になるのよ。近付くと引っ掻くのだけれど、襲っては来ないから安心して。臆病な魔獣なの」
「クラウディオから聞いていましたが、本当に飼っているんですね。初めて見ました」
「人に害を及ぼす魔獣を見付けるために卵から育てて飼い慣らすのよ。でもあの子は討伐の間夫に慣れすぎて離れなくなってしまって、それで引き取ったの」
「旦那様も魔法が使えるんですね」
「公爵家は皆学んでいるわね。討伐出立は見に行ったのでしょう? バラチア公爵に釘付けだった女性は多かったわ」
やはり皆知っている話か。フィオナは笑って誤魔化す。
クラウディオはフィオナが討伐について知らなかったことを変に思っただろうか。セレスティーヌならばクラウディオの予定くらいしっかりチェックしているだろうに。
「公爵家の者は皆魔法が使えるってことは、エルネスト様も学んでいるんですか?」
丁度良い話が出たので、エルネストに話題を逸らす。フィオナの言葉にデュパール公爵夫人は当然と頷いた。
「もちろんよ。彼は剣を使わないから、なおさら学んでいたと思うわ」
「怪我をして、剣を持てないんですよね?」
「子供の頃、遊んでいて水路に落ちたのよ。目を離したと夫人はサルヴェール公爵にひどく叱られて」
その場にいたのか、デュパール公爵夫人は眉を下げる。
王宮に集まっていた時、子供たちが一緒に遊んでいた。その時にエルネストが水路に落ち、大怪我をしたそうだ。
「魔獣の討伐は権利を持つ者は必ず行くのよ。エルネスト様は剣が持てなかったから後方に追いやられて、それがとてもサルヴェール公爵の気に触ったのね。初めての討伐だったというのに、公爵は激怒して出立前に帰られてしまって、エルネスト様が気の毒だったわ」
クラウディオは先陣で堂々とした佇まいだったが、それに比べて自分の息子は、とサルヴェール公爵は怒髪天を衝かんばかりに激怒したそうだ。
その騒ぎで周囲は騒然とし、しかも出立を見送ることなく公爵は帰宅した。
初めての討伐では緊張で魔法が使えない可能性もあり、剣が使えないと危険が増えるそうだ。そのため、クラウディオたちより少し後ろに配備されたのだが、それが気に食わなかったのである。
エルネストは初めての討伐で、父親に恥だとされたのだ。
「先に連絡をくれたのはあなたよ。いらしてくれてありがとう」
デュパール公爵夫人に招かれて、フィオナはお茶会にやってきた。
きっかけはフィオナから。手紙を出し、お話しできないかと連絡をした。本来ならばこちらが招待すべきなのだが、良かったら屋敷に来ないかと夫人から誘いを受けたのだ。
「あなたにこのお菓子を出すのはどうかと思ったのだけれど、とてもおいしくて、他ではこれ以上のお菓子は作れないから、こちらをお出しするわ」
テーブルに出されたのはいくつかの焼き菓子やケーキだったが、見覚えのあるものばかりだ。最近事業として店舗に出したものである。
デュパール公爵夫人はこれらを売っている店がフィオナの店だと知っているようだ。
名前は出していないのだが、どこで知ったのだろう。
「屋敷に引き入れようとしたら断られたのよ。バラチア公爵夫人がオーナーをしている店だからと。いつの間にかそんな事業を行っていたのね。名を出してはいなかったようだけれど」
「趣味で行っているだけですので。クラウディオに迷惑は掛けられないと申しますか……」
お金の使い道を誤魔化すための店などと口にできない。既に浪費してクラウディオに迷惑を掛けているので大声でも言えない。
フィオナは軽く笑ってごまかしたが、デュパール公爵夫人は、とてもおいしくて、すぐにオーナーを呼ぶように言ったのよ? と少し興奮するように前のめりになった。
「バラチア公爵も喜んでいるのではないの? あの店が気になっている人も多いのよ。うちのシェフも研究しているわ。どうやったらこんなにふわふわになるのかって」
フィオナの屋敷では簡単なおやつとしてよく出てくる定番のものなのだが、柔らかい生地で口溶けが良いと好んで食べているらしく、それを口に運ぶ。
ゲストに対しての褒め言葉がうますぎる。自分を嫌っていた相手にそんな優しく対応するなど、羨ましいほど柔軟な性格だ。
(セレスティーヌも彼女と仲良くなれれば良かったのに)
そう思いながら、ぎゅっと手のひらを握る。
セレスティーヌがどうなったのか調べるには、デュパール公爵夫人の力が必要だった。
今日の使命は、魔法使いの紹介を得ることだ。
しかし、どうやってその魔法使いの話を切り出そうかと考えていると、外でなにかが動く気配がした。
「お外に、なにか……」
「ああ、見たことはない? 魔獣なのよ」
「あれが、魔獣なんですか!?」
フィオナは立ち上がって見そうになった。窓から見えるのは焦茶色の木に登っているなにかで、犬のような立った耳と長いしっぽを持った生き物だ。枝にたどり着くとこちらに振り向いたが、目が大きく犬にも猫にも見えない顔をしていた。狐と猿を混ぜたような感じがする。
「人見知りをするくせに見知らぬ人がいると気になるのよ。近付くと引っ掻くのだけれど、襲っては来ないから安心して。臆病な魔獣なの」
「クラウディオから聞いていましたが、本当に飼っているんですね。初めて見ました」
「人に害を及ぼす魔獣を見付けるために卵から育てて飼い慣らすのよ。でもあの子は討伐の間夫に慣れすぎて離れなくなってしまって、それで引き取ったの」
「旦那様も魔法が使えるんですね」
「公爵家は皆学んでいるわね。討伐出立は見に行ったのでしょう? バラチア公爵に釘付けだった女性は多かったわ」
やはり皆知っている話か。フィオナは笑って誤魔化す。
クラウディオはフィオナが討伐について知らなかったことを変に思っただろうか。セレスティーヌならばクラウディオの予定くらいしっかりチェックしているだろうに。
「公爵家の者は皆魔法が使えるってことは、エルネスト様も学んでいるんですか?」
丁度良い話が出たので、エルネストに話題を逸らす。フィオナの言葉にデュパール公爵夫人は当然と頷いた。
「もちろんよ。彼は剣を使わないから、なおさら学んでいたと思うわ」
「怪我をして、剣を持てないんですよね?」
「子供の頃、遊んでいて水路に落ちたのよ。目を離したと夫人はサルヴェール公爵にひどく叱られて」
その場にいたのか、デュパール公爵夫人は眉を下げる。
王宮に集まっていた時、子供たちが一緒に遊んでいた。その時にエルネストが水路に落ち、大怪我をしたそうだ。
「魔獣の討伐は権利を持つ者は必ず行くのよ。エルネスト様は剣が持てなかったから後方に追いやられて、それがとてもサルヴェール公爵の気に触ったのね。初めての討伐だったというのに、公爵は激怒して出立前に帰られてしまって、エルネスト様が気の毒だったわ」
クラウディオは先陣で堂々とした佇まいだったが、それに比べて自分の息子は、とサルヴェール公爵は怒髪天を衝かんばかりに激怒したそうだ。
その騒ぎで周囲は騒然とし、しかも出立を見送ることなく公爵は帰宅した。
初めての討伐では緊張で魔法が使えない可能性もあり、剣が使えないと危険が増えるそうだ。そのため、クラウディオたちより少し後ろに配備されたのだが、それが気に食わなかったのである。
エルネストは初めての討伐で、父親に恥だとされたのだ。
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