目覚めたら公爵夫人でしたが夫に冷遇されているようです

MIRICO

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41② ー疑いー

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 ノエルは立ち尽くしたままのクラウディオをソファーに促して、自分もソファーに座る。
 またしばらく眠っていないのか、疲労が見える顔をしながらクラウディオを食い入るように見つめた。

「どこがおかしいんです?」
「……話し方、考え方、態度、表情、知識。メイドたちに敬語を使うこともある」

 それはメイドでもモーリスでも変わらない。時折出る、セレスティーヌの敬語。本人は無意識で気付いていないが、周囲はふと気付くことがあった。リディは気にしていなかったかもしれない。リディは彼女が敬語を使うことを知っているからだ。

「他にもあるでしょう。彼女は魔法が使えますよ」

 ノエルはそれも知っていると、クラウディオに据えた瞳を向ける。無言で返すと、ため息をついた。

「ご存知だったようですね」
「魔法は習ったことなどないはずだ。だが……」
「夢を見てできるようになったそうですよ」
「夢?」
「あなたは被害者のようなので、これから調査に協力が必要ですからお伝えしますけれど……」

 前置きをして、ノエルはクラウディオを見据える。

「奥方は亡くなった可能性があります」

 ノエルの言葉に、クラウディオは一瞬耳を疑った。

「そして、今の彼女は別人である可能性が高い。そのうちあなたにも話を聞くつもりでした。どこかおかしなところがないか。……随分とあるようなので、おそらく間違いないでしょう」

 頭が追いつかない。理解しがたい。
 混乱しすぎて頭が痛くなってくるほどだ。
 クラウディオは頭を抑えて何度も瞬きする。聞き間違えてなどいないが、もう一度言ってほしいと聞き返した。

「あなたの奥方の体に、他の人間が入り込んでいます。奥方の魂はその体から離れ、今の彼女が奥方となって動いている。方法は、これも可能性が高いとしか言いようがありませんが、古の魔法陣を使ったために起こったのでしょう」

 ノエルは古き大国の時代に作られた魔法陣をセレスティーヌが使い、それによって他人の魂を呼び寄せ、体に入り込んだのではないかと説いた。

「禁書になっている魔法陣を使用したことで奥方は体を奪われた。おそらくそこで奥方は亡くなっていると思われます」

 セレスティーヌが死んだ。そして、その体を、今のセレスティーヌが奪ったとノエルは言う。

 クラウディオは呆然と聞いていた。そんな話は聞いたことがない。魔法でも別人になどなれないのに、そんなことが本当に可能なのか、聞いていても理解ができないでいた。

 しかし、理由がどうであれ、セレスティーヌがいなくなり、別の人間がセレスティーヌのフリをしているということが、思った以上に心の中にストンと簡単に入り込んで、クラウディオを納得させていた。

「彼女自身、なぜあなたの奥方の体に入り込んだのか、調べているようなので、彼女も被害者と言うべきかもしれません」
「……どういう意味だ?」

「魔法陣がなんなのか、調べていたんです。なにをするためのものなのか。どんな効果があるのか。彼女が奥方の体を乗っ取ったのならば、調べなくとも分かっていることです」

 けれど、彼女は調べていた。どうして自分がセレスティーヌの体に入り込んだか、分からなかったから。

「彼女は、どうしてセレスティーヌになったんだ……?」
「そればかりは……。彼女に話を聞くしかないですね。別人だとは口にできないため、独自に調べていたんでしょう」
「知っていたのはリディだけか……」

 だからリディはセレスティーヌをフィオナと呼んだのだ。

「今、なんと言いました?」

 顔を覆っていると、ノエルがなにか反応した。なんのことかと思ったが、名前を呟いていたらしい。

「フィオナ・ブルイエのことですか?」
「————、誰なんだ、それは!?」
「大国の王弟と魔獣を封じた封印を守る、フォン・ブルイエの子孫です。そうか。そうなるのか!」
「私にも分かるように説明しろ!」

 ノエルはぶつぶつとなにかを言っているが、一人で納得している。クラウディオが癇癪を起こしそうになると、ノエルは全て理解したかのように晴れやかな顔をした。

「大国時代の果ての土地に、今はオリシスという国があります。そこに大国時代の王弟が魔獣と共に封印されていました。絵本の話はご存知でしょう? 実際起きた話です」
「セレスティーヌは、彼女は、絵本や大国時代の歴史を調べていた……」
「その封印の地を守っている家の長女です。フィオナ・ブルイエは、亡くなったそうですが」
「亡くなった……?」

 ノエルは大国時代に起きた話を語り始めた。
 絵本の真実。王弟の無実。
 王弟が封印した土地を、今でも守るブルイエ家。
 その封印が、何百年も経て、解かれてしまった。

「封印が解けた時に巻き込まれたのか、フィオナ・ブルイエは死亡していました。調べたので間違いないですよ。メイドが奥方をフィオナと呼んでいたのならば、そういうことですね」

 なにがそういうことなのか。
 クラウディオは混乱した頭でノエルの言葉を聞いていた。

 セレスティーヌも死んで、フィオナ・ブルイエも死んで、そういうことだと、ノエルはすっきりしたように一人で頷いている。

「フィオナ・ブルイエ。その人が、今のセレスティーヌ・バラチアです」
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