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3章:How about tea?
6話:幸せの続き
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ほんのりと外が明るくなったのを感じて、エリオットは目を覚ました。体を包む暖かさを感じる。心地よくて、いつまでも甘えていたい。
けれど徐々に覚醒すると、「あれ?」と思う。一体誰がいるのだろうか?
すると不意に「くすくす」と笑う声がとても近くから聞こえた。
「寝ぼけてるの、エリオット?」
「オスカル!」
驚いてパニックになって起き上がると、腰に違和感を感じた。そして部屋も。見回した部屋は、エリオットの部屋ではなかった。
「本当に寝ぼけてるんだね。もしかして、朝弱い?」
「え?」
「もしかして、覚えてないの?」
少し悲しそうに青い瞳が細められる。こんな顔をされることが悲しくてマジマジとみている。そのうちに記憶が戻って、途端に顔が真っ赤になった。
「思い出してもらえた?」
「あの、えっと! ……はい」
恥ずかしい事まで思い出した。最後は記憶がないけれど、なんだかとんでもないことを口走っていたように思う。
オスカルが楽しそうに笑う。とても幸せそうに。その顔を見ていると自然と笑みが浮かんできて、エリオットも穏やかに笑った。
「おはよう。よかった、後悔なさそうで」
「おはようございます。後悔なんてしませんよ」
沢山驚いた。戸惑いもあった。けれど、後悔なんてあるはずがない。胸の奥が温かい。今もこんなに幸せな気持ちになる。
オスカルが嬉しそうに笑って、一つ伸びをする。そして、妙に照れたような顔をした。
「なんか、変な感じ。おはようなんて、言ったことないからな」
「え? でも、こういうことは経験ありますよね?」
昨夜の事を思い出しても、手慣れているように思えた。経験がないなんて事はないはずだ。疑問に思って問うと、なんだか歯切れ悪く彼は言い訳をした。
「あるけれど、終わったらさっさと退散だもん」
「どうして?」
「だって、なんて言うの? 恋人にするつもりないんだし、朝まで居てどんな顔で何を言えばいいか。昨日の感想とか? 興ざめでしょ」
そういうものなんだろうか。なんだか寂しい気持ちにさせられる。
手が伸びて、頬に触れる。近づいた唇が掠めるように唇を奪う。甘く蕩けるような笑みが、とても近くで見ている。
「でも、エリオットは別。朝も夜も一緒にいたい。いいものだね、おはようとかおやすみって真っ先に言うのも」
「え?」
「だって、幸せでしょ? 『おやすみ』は一晩を過ごす約束で、『おはよう』は一日で一番最初の挨拶だもん。大事な人がそれだけ、側に居るってことだよ」
この上もない笑顔で言われる事が、ほんの少し恥ずかしい。けれど、嬉しくもある。だから真っ赤になりながら、エリオットは頷いた。
◆◇◆
年末パーティーから二日。相変わらず風邪の隊員が増えている。けれど、それに弱音を吐いてもいられない。エリオットは精力的な日々を送っていた。
忙しい時間を過ごしていると、昼を少し前に突然と城に呼ばれた。近衛府の隊員に案内された部屋を開けると、中にはオスカルと、パーティーの日に来た女性が待っていた。
「え?」
「こんにちは、お医者様。その節はお世話になりました」
深々と頭を下げた彼女に慌てて「いえ!」と言って頭を下げる。その様子を見て、オスカルが可笑しそうに笑った。
「もう、二人とも面白いな。まぁ、座りなよ」
応接間のソファーに腰を下ろしたエリオットの前に彼女が座る。そして改めて丁寧に頭を下げた。
「申し遅れました。私、フィオナ・ジェークスと申します」
「エリオット・ラーシャです。足の具合はその後どうですか?」
「おかげさまで、痛みもありませんでしたわ」
可笑しそうにフィオナ嬢は笑い、エリオットはほっとする。
「本当に、お医者様はお仕事熱心なのですね」
「あぁ、いいえ」
なんだか慣れなくて照れてしまう。けれど、彼女の家名はどこかで聞いたことがある。疑問に思って首を傾げていると、隣のオスカルが察してくれたのか、答えを放り込んでくれた。
「今の内務大臣のご息女だよ」
「え? えぇ!」
驚いて声を上げると、フィオナ嬢が可笑しそうに笑う。
「そうとは知らず、とんだ無礼を」
「無礼だなんてとんでもない」
「あの、ところでなぜ私を?」
普通、騎士団の人間は城の者とは関わらない。関わりを持つのは近衛府だけだ。なのに、わざわざ近衛府を使って呼び出すなんて。
彼女は穏やかに笑う。そしてエリオットの前に箱を置いた。
「どうしても、直接お礼を言いたくて。それで、父上にもお願いして無理を言いました。よろしければこれを。教えていただいたお店のものですわ」
「そんな、当然のことをしたまででお礼だなんて」
変に気を使わせてしまっただろうか。申し訳なくなって慌ててしまう。けれど彼女はコロコロと笑う。とても楽しそうに。
「実は翌日、あの時の方が謝りにいらっしゃいましたの」
「あの時のって……」
つまり、乱暴を働いた男だろうか。
「話してみたら、とても腰の低い真面目な方でしたわ。とても上がってしまって、気を紛らわせるのにお酒を飲み過ぎてしまったそうです。本当はグラス一杯でも酔ってしまうほど弱いそうですわ」
「そうですか」
でもそれは、酒乱の気があるってことだろう。ストレスでもあるのだろうか。
「お酒を控えるということですわ。悪い人ではないようですので」
「そうでしたか」
「貴方にも謝りに行くと言っていましたが、私が代わりに。私もお礼を言いたかったので」
そこまで言うと、不意にノックの音がする。初老の男性が畏まって入ってきて、彼女に「そろそろお時間です」と伝えた。
立ち上がった彼女は改めて礼をする。そしてとても真剣な目でエリオットとオスカルを見た。
「ご苦労も多く、危険なお仕事だと思いますが、どうかご自愛ください。皆様が息災であることを、心から願います」
「有り難うございます」
エリオットも一礼し、彼女は手を振って出て行った。それを見送り、ドッとソファーに腰を下ろす。少し緊張してしまった。
ふと、彼女の置いて行った箱に目がとまった。手を伸ばして開けてみると、個包装になったクッキーが数種類入っていた。
「彼女に乱暴しようとした男は、内務大臣補佐の息子だったんだよ」
「え?」
隣に腰を下ろしたオスカルが、可笑しそうに笑って言う。けれど事態はそんなに愉快なものじゃない。つまり、上司の娘を襲おうとしたわけだ。当然父親の立場に響くだろう。
「まぁ、当然大臣は怒ったんだけどね。彼女が相手の男と話して、父親を取りなしたらしい。酒の席での事で、大事にはならなかったのだからと。可愛い娘の取りなしに、大臣も従ったわけ」
「では、咎はなしと?」
「そういうこと。まぁ、酒を控える旨の誓約書は書いたみたいだけれどね」
聡明そうな女性だったが、慈悲深くもあるのだろう。何より、騎士団の人間にあのような言葉をかけてくれる人は少ない。慣れない感じで、少し戸惑う。
「驚いた?」
「まぁ。なんだか、慣れなくて。こんな風に言ってくれる人もいないので」
「君に気があるのかな」
なんだかとても子供っぽい声で言うオスカルに驚いて見る。面白くない顔をしている彼を見ると、ちょっと可笑しくて笑った。焼きもちを焼いているのだと分かる様子が、嬉しいようなムズムズした気持ちにさせてくれる。
もらったクッキーを手にする。エリオットは柔らかく笑った。
「今夜、私の部屋にきませんか?」
「え?」
「せっかく、クッキーを貰いましたから。一緒に、お茶でもどうですか?」
微笑んで言うと、オスカルの青い瞳がほんの僅か丸く開く。そして次には柔らかな笑顔が浮かんだ。
「勿論、お邪魔するよ」
甘く甘く笑う彼を見て、エリオットもこの上なく嬉しそうに笑う。これからも続く二人の時間を、感じる事ができて。
けれど徐々に覚醒すると、「あれ?」と思う。一体誰がいるのだろうか?
すると不意に「くすくす」と笑う声がとても近くから聞こえた。
「寝ぼけてるの、エリオット?」
「オスカル!」
驚いてパニックになって起き上がると、腰に違和感を感じた。そして部屋も。見回した部屋は、エリオットの部屋ではなかった。
「本当に寝ぼけてるんだね。もしかして、朝弱い?」
「え?」
「もしかして、覚えてないの?」
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「思い出してもらえた?」
「あの、えっと! ……はい」
恥ずかしい事まで思い出した。最後は記憶がないけれど、なんだかとんでもないことを口走っていたように思う。
オスカルが楽しそうに笑う。とても幸せそうに。その顔を見ていると自然と笑みが浮かんできて、エリオットも穏やかに笑った。
「おはよう。よかった、後悔なさそうで」
「おはようございます。後悔なんてしませんよ」
沢山驚いた。戸惑いもあった。けれど、後悔なんてあるはずがない。胸の奥が温かい。今もこんなに幸せな気持ちになる。
オスカルが嬉しそうに笑って、一つ伸びをする。そして、妙に照れたような顔をした。
「なんか、変な感じ。おはようなんて、言ったことないからな」
「え? でも、こういうことは経験ありますよね?」
昨夜の事を思い出しても、手慣れているように思えた。経験がないなんて事はないはずだ。疑問に思って問うと、なんだか歯切れ悪く彼は言い訳をした。
「あるけれど、終わったらさっさと退散だもん」
「どうして?」
「だって、なんて言うの? 恋人にするつもりないんだし、朝まで居てどんな顔で何を言えばいいか。昨日の感想とか? 興ざめでしょ」
そういうものなんだろうか。なんだか寂しい気持ちにさせられる。
手が伸びて、頬に触れる。近づいた唇が掠めるように唇を奪う。甘く蕩けるような笑みが、とても近くで見ている。
「でも、エリオットは別。朝も夜も一緒にいたい。いいものだね、おはようとかおやすみって真っ先に言うのも」
「え?」
「だって、幸せでしょ? 『おやすみ』は一晩を過ごす約束で、『おはよう』は一日で一番最初の挨拶だもん。大事な人がそれだけ、側に居るってことだよ」
この上もない笑顔で言われる事が、ほんの少し恥ずかしい。けれど、嬉しくもある。だから真っ赤になりながら、エリオットは頷いた。
◆◇◆
年末パーティーから二日。相変わらず風邪の隊員が増えている。けれど、それに弱音を吐いてもいられない。エリオットは精力的な日々を送っていた。
忙しい時間を過ごしていると、昼を少し前に突然と城に呼ばれた。近衛府の隊員に案内された部屋を開けると、中にはオスカルと、パーティーの日に来た女性が待っていた。
「え?」
「こんにちは、お医者様。その節はお世話になりました」
深々と頭を下げた彼女に慌てて「いえ!」と言って頭を下げる。その様子を見て、オスカルが可笑しそうに笑った。
「もう、二人とも面白いな。まぁ、座りなよ」
応接間のソファーに腰を下ろしたエリオットの前に彼女が座る。そして改めて丁寧に頭を下げた。
「申し遅れました。私、フィオナ・ジェークスと申します」
「エリオット・ラーシャです。足の具合はその後どうですか?」
「おかげさまで、痛みもありませんでしたわ」
可笑しそうにフィオナ嬢は笑い、エリオットはほっとする。
「本当に、お医者様はお仕事熱心なのですね」
「あぁ、いいえ」
なんだか慣れなくて照れてしまう。けれど、彼女の家名はどこかで聞いたことがある。疑問に思って首を傾げていると、隣のオスカルが察してくれたのか、答えを放り込んでくれた。
「今の内務大臣のご息女だよ」
「え? えぇ!」
驚いて声を上げると、フィオナ嬢が可笑しそうに笑う。
「そうとは知らず、とんだ無礼を」
「無礼だなんてとんでもない」
「あの、ところでなぜ私を?」
普通、騎士団の人間は城の者とは関わらない。関わりを持つのは近衛府だけだ。なのに、わざわざ近衛府を使って呼び出すなんて。
彼女は穏やかに笑う。そしてエリオットの前に箱を置いた。
「どうしても、直接お礼を言いたくて。それで、父上にもお願いして無理を言いました。よろしければこれを。教えていただいたお店のものですわ」
「そんな、当然のことをしたまででお礼だなんて」
変に気を使わせてしまっただろうか。申し訳なくなって慌ててしまう。けれど彼女はコロコロと笑う。とても楽しそうに。
「実は翌日、あの時の方が謝りにいらっしゃいましたの」
「あの時のって……」
つまり、乱暴を働いた男だろうか。
「話してみたら、とても腰の低い真面目な方でしたわ。とても上がってしまって、気を紛らわせるのにお酒を飲み過ぎてしまったそうです。本当はグラス一杯でも酔ってしまうほど弱いそうですわ」
「そうですか」
でもそれは、酒乱の気があるってことだろう。ストレスでもあるのだろうか。
「お酒を控えるということですわ。悪い人ではないようですので」
「そうでしたか」
「貴方にも謝りに行くと言っていましたが、私が代わりに。私もお礼を言いたかったので」
そこまで言うと、不意にノックの音がする。初老の男性が畏まって入ってきて、彼女に「そろそろお時間です」と伝えた。
立ち上がった彼女は改めて礼をする。そしてとても真剣な目でエリオットとオスカルを見た。
「ご苦労も多く、危険なお仕事だと思いますが、どうかご自愛ください。皆様が息災であることを、心から願います」
「有り難うございます」
エリオットも一礼し、彼女は手を振って出て行った。それを見送り、ドッとソファーに腰を下ろす。少し緊張してしまった。
ふと、彼女の置いて行った箱に目がとまった。手を伸ばして開けてみると、個包装になったクッキーが数種類入っていた。
「彼女に乱暴しようとした男は、内務大臣補佐の息子だったんだよ」
「え?」
隣に腰を下ろしたオスカルが、可笑しそうに笑って言う。けれど事態はそんなに愉快なものじゃない。つまり、上司の娘を襲おうとしたわけだ。当然父親の立場に響くだろう。
「まぁ、当然大臣は怒ったんだけどね。彼女が相手の男と話して、父親を取りなしたらしい。酒の席での事で、大事にはならなかったのだからと。可愛い娘の取りなしに、大臣も従ったわけ」
「では、咎はなしと?」
「そういうこと。まぁ、酒を控える旨の誓約書は書いたみたいだけれどね」
聡明そうな女性だったが、慈悲深くもあるのだろう。何より、騎士団の人間にあのような言葉をかけてくれる人は少ない。慣れない感じで、少し戸惑う。
「驚いた?」
「まぁ。なんだか、慣れなくて。こんな風に言ってくれる人もいないので」
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なんだかとても子供っぽい声で言うオスカルに驚いて見る。面白くない顔をしている彼を見ると、ちょっと可笑しくて笑った。焼きもちを焼いているのだと分かる様子が、嬉しいようなムズムズした気持ちにさせてくれる。
もらったクッキーを手にする。エリオットは柔らかく笑った。
「今夜、私の部屋にきませんか?」
「え?」
「せっかく、クッキーを貰いましたから。一緒に、お茶でもどうですか?」
微笑んで言うと、オスカルの青い瞳がほんの僅か丸く開く。そして次には柔らかな笑顔が浮かんだ。
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