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4章:いつかの約束
4話:祝いの花
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翌日にはすっかり落ち着いていた。まだ熱はあったけれど高い状態は脱した。一気に快方へと向かったことに、エリオットが驚いたくらいだった。
「騎兵府の者は回復が早いけれど、貴方は特別ですね。熱が引いてきたら一気に回復し始めるなんて」
「昔からこうなんです」
多分、明日にはもっと状態がいいはずだ。ランバートはニッコリ笑ってエリオットに礼を言った。
「騎兵府の体力訓練は殺人的だからな。体力だけはある」
「自分でも殺人的だと思っているのでしたら、少し加減してください」
私服姿で寛ぐファウストが笑いながら言うが、笑い事じゃない。最初は本当に筋肉痛で体がきしんだくらいだ。
「これを乗り越えられなくてどうして戦場に出られる。数ヶ月、場合によっては年単位で敵地に出る事になるんだぞ。体力と気力がなければやっていけない」
溜息をつきながら言われる事に、ランバートも苦笑するしかなかった。
「でも、流石にパーティーはダメだね。今しっかり治さないと、また熱が出ても辛いし」
今夜は年末。今日の零時を過ぎると新年だ。毎年この日は騎士団に残った者でパーティーがあるらしい。勿論自由参加なのだが、賑やかだと聞いていた。
「まぁ、仕方がないな」
「ファウスト様は参加してきてください。俺はもう大丈夫なので」
なんだかこのままここに居残りそうなファウストに声をかけると、途端に眉根を寄せられた。やっぱり、行かないつもりだったのか。
「一人で残して行くわけにいかないだろ」
「大人しく寝ていますので、お気遣いなく。それに、貴方からの言葉がないと場が盛り上がりませんよ」
そう言うと、ファウストは眉根を寄せながらも考えこんでしまった。
その夜、ランバートは無事にファウストを追い出した。渋ったけれど、最終的には折れてくれた。
一人明かりを消した部屋にいる。夕方から雪が降り始めて、少し寒くなっていた。
「はぁ……」
やっぱり少し手持ち無沙汰だ。頭痛もおさまったのだから、本くらいお願いすればよかった。やることがないし、眠気もこない。
ベッドの上でゴロゴロと転がりながらぼんやりしていると、不意に扉が開いた。視線を向けると月光の差す中に黒い人影が立っていた。
「ファウスト様?」
中に入ってきた麗人は、そのままランバートの側に来て額に手を当てる。少し冷たい手が心地よかった。
「熱は引いているな。体調は?」
「大丈夫です。あの、パーティーは」
ランバートの問いには答えてくれないまま、ファウストはクローゼットから暖かそうなコートを出してランバートに投げかける。首元に毛皮の襟がついた、とても温かいものだ。
「冷えるから着ておけ」
そう言いながら自分も暖かな上着を着込んだファウストが手を差し伸べてくる。それを取ったランバートは、疑問のままにベッドから出た。
部屋の外はやっぱり肌寒い。コートの前を握ると、肩に手が回った。
「冷えるな」
「あの、どこへ?」
「すぐそこだ」
そう言って連れられてきたのは、三階にある共有テラスだった。
そこにある椅子に腰を下ろして外を見る。月が見えるのに、雪は降っている。その景色を見ているランバートの隣で、ファウストは時計を確認していた。
「そろそろだな」
「あの、なにが」
問いかけるその頬を、不意の明かりが照らす。見上げた空に、色とりどりの大きな花が咲いた。
「花火?」
「年が明けたんだ」
城から打ち上げられるいくつもの花火が、新年を祝う。見上げるファウストの顔も花火と同じ色に照らされている。
「明けまして、おめでとうございます」
「あぁ、おめでとう」
「今年も沢山ご迷惑おかけすると思いますが、よろしくお願いします」
「ほどほどにしてくれよ」
苦笑の混じる声と表情がそんな事を言って、少しだけ肩を引き寄せられる。少し冷えた体に、ファウストの熱がとても心地よかった。
「騎兵府の者は回復が早いけれど、貴方は特別ですね。熱が引いてきたら一気に回復し始めるなんて」
「昔からこうなんです」
多分、明日にはもっと状態がいいはずだ。ランバートはニッコリ笑ってエリオットに礼を言った。
「騎兵府の体力訓練は殺人的だからな。体力だけはある」
「自分でも殺人的だと思っているのでしたら、少し加減してください」
私服姿で寛ぐファウストが笑いながら言うが、笑い事じゃない。最初は本当に筋肉痛で体がきしんだくらいだ。
「これを乗り越えられなくてどうして戦場に出られる。数ヶ月、場合によっては年単位で敵地に出る事になるんだぞ。体力と気力がなければやっていけない」
溜息をつきながら言われる事に、ランバートも苦笑するしかなかった。
「でも、流石にパーティーはダメだね。今しっかり治さないと、また熱が出ても辛いし」
今夜は年末。今日の零時を過ぎると新年だ。毎年この日は騎士団に残った者でパーティーがあるらしい。勿論自由参加なのだが、賑やかだと聞いていた。
「まぁ、仕方がないな」
「ファウスト様は参加してきてください。俺はもう大丈夫なので」
なんだかこのままここに居残りそうなファウストに声をかけると、途端に眉根を寄せられた。やっぱり、行かないつもりだったのか。
「一人で残して行くわけにいかないだろ」
「大人しく寝ていますので、お気遣いなく。それに、貴方からの言葉がないと場が盛り上がりませんよ」
そう言うと、ファウストは眉根を寄せながらも考えこんでしまった。
その夜、ランバートは無事にファウストを追い出した。渋ったけれど、最終的には折れてくれた。
一人明かりを消した部屋にいる。夕方から雪が降り始めて、少し寒くなっていた。
「はぁ……」
やっぱり少し手持ち無沙汰だ。頭痛もおさまったのだから、本くらいお願いすればよかった。やることがないし、眠気もこない。
ベッドの上でゴロゴロと転がりながらぼんやりしていると、不意に扉が開いた。視線を向けると月光の差す中に黒い人影が立っていた。
「ファウスト様?」
中に入ってきた麗人は、そのままランバートの側に来て額に手を当てる。少し冷たい手が心地よかった。
「熱は引いているな。体調は?」
「大丈夫です。あの、パーティーは」
ランバートの問いには答えてくれないまま、ファウストはクローゼットから暖かそうなコートを出してランバートに投げかける。首元に毛皮の襟がついた、とても温かいものだ。
「冷えるから着ておけ」
そう言いながら自分も暖かな上着を着込んだファウストが手を差し伸べてくる。それを取ったランバートは、疑問のままにベッドから出た。
部屋の外はやっぱり肌寒い。コートの前を握ると、肩に手が回った。
「冷えるな」
「あの、どこへ?」
「すぐそこだ」
そう言って連れられてきたのは、三階にある共有テラスだった。
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