恋愛騎士物語1~孤独な騎士の婚活日誌~

凪瀬夜霧

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5章:親愛をこめて

4話:恋人達のお茶会

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「うわぁ、降ってきたね」

 暖かな店内から外を眺めていたオスカルが、嫌な顔をしてそう言った。寒いのが苦手な彼の誘いで夜の街に繰り出したエリオットは、前に約束したティーセットを買いに来た。オスカルの部屋に置く用で、二人だけのセットだった。

「お茶がはいりましたよ」

 エリオットは穏やかな声でオスカルを呼ぶ。
 ここは贔屓にしているティーセットの店なのだが、茶葉も扱っていて二階ではお茶も飲める。辿り着いてあれこれと悩んでいる内にちらほらと雪が降り始め、「今は外に出たくない」とごねたオスカルを連れて二階に上がった。
 椅子に腰を落ち着けてお茶を飲んだオスカルが、嬉しそうに笑う。多分、茶葉が分かったのだ。

「オレンジペコー」
「正解です。お好きですか?」
「あまり飲まないんだけど、いけるかな。今日のお菓子はマフィンだね」

 夕食がまだだったから、少しお腹に溜まる物をお願いした。プレーンと、チョコチップのマフィンが二つずつ並んでいる。一口大にちぎって口に放り込むオスカルが、気に入ったのが満足そうな顔をしていた。

「これを頂いたら、宿舎に戻りましょうか」
「えー、食事したい」
「だって、これ以上雪が降ったらまた冷え込みが強くなりますよ」

 エリオットは寒さに強いのだが、オスカルは極端に嫌う。暖かなファー襟のコートに、手袋をつけてくるくらいだ。そして簡素なコート姿のエリオットを見て「寒くないの?」と驚いていた。
 考え込んだオスカルは、それでも譲らない事にしたらしい。ブスッとしながらも首を横に振る。

「今日は食事くらいしたい。二人で過ごすリマの日なんだよ? 恋人らしい時間にしたい」
「分かりました。では、風邪など引かないように十分に暖まってからにしましょう」

 穏やかに、そして幸せに笑うエリオットは目の前の恋人が可愛く見える。表情を隠さないオスカルは子供のような顔を見せる。拗ねたり、いじけたり、嬉しそうだったり。とても感情が豊かに見えた。

「あー、でも帰るのもありかも」
「え?」

 何か考えていた様子のオスカルの口元が、ニッと笑みを作る。こういうときは大抵ろくな事を考えていない。警戒したエリオットの手を、オスカルはやんわりと握った。

「寒いから、早く帰って君に暖めて貰うのもいいなって」
「明日も仕事です。そういうことは翌日が休みの日にしたいって、お願いしたはずです」

 恋人の可愛いお願いをぴしゃりとはねつけたエリオットを一瞥して、オスカルは「けち」と拗ねた顔をする。そんな顔を見ていると途端に可笑しくなって、エリオットはクスクスと笑った。そして、今日だけはほんの少し甘い顔をしてもいいかもしれない。なんてほだされるのだ。
 恋人になって一ヶ月と少し。二人の幸福な時間は、いつもお茶の香りと共にある。
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