恋愛騎士物語1~孤独な騎士の婚活日誌~

凪瀬夜霧

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6章:朋友

おまけ3:寮生活の男の悩み

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 ゼロス達と親しくなったことで、ランバートはラウンジに顔を出す事が多くなった。酒を飲んである程度騒いでもいいこの場所は、色んな人間が多い。
 だがこの日は少し事情が違う。ランバートは第五師団のドゥーガルドにほぼ無理矢理腕を引かれ、なぜか第五師団の一年目グループの中に入れられたのだ。

「えっと……なに?」
「ランバート、お前に一つ質問がある」

 重々しく言うのは第五師団のシュテルという青年だ。昇級試験の二日目に戦った青年で、第五師団の中では比較的細く整った顔立ちをしている。

「ランバート、お前も男だから分かる話だと思う。だから聞こう。ズバリ、一発やりたくなった時はどうしてる!」
「……は?」

 息巻いて言うことか、これか。
 あきれ顔をしていると、側にいるレイバンがニヤニヤ笑っている。腕を引いて「まぁ、座れ」という仕草で招かれ仕方なく座ったランバートは、なぜこんな話をしているのかを聞きたかった。

「時々酒飲んでるとさ、こんな話になるんだよね」
「男たるものそんな日もある! でも悲しい寮生活じゃ、そう気軽な問題でもないだろう? そこで、何がベストな解決策かを模索しているわけだ」

 随分と大仰な言い回しをするドゥーガルドだが、ようは猥談だ。しかもなんだ、ベストな解決策って。

「先輩に聞いたけれど、これといった解決策が出てこなかった。大抵は安息日の前日に実家なり店なりに行って、適度に抜く。もしくは同室者にそれとなくにおわせて退室してもらう。そんなありきたりな方法だ」
「いや、いいんじゃないのか、それで」

 正直、ほかの解決策があるのか聞きたい。というか、こいつらは何を期待してここにいるんだ。
 シュテルが熱く拳を握り、魂を燃やすような瞳を向ける。だから、この話題でなぜそんなに熱くなるんだこいつら。

「いいや、よくない! もっとこう……スリリングかつ画期的な方法があるはずだ!」
「アホだから聞き流していいよ、ランバート。所詮は詮無きことだし」

 レイバンの呆れ顔に苦笑を返す。するとふと、何かを思いだしたように言葉を切り、レイバンが自主的に話し出した。

「三年目の先輩に聞いた話なんだけどさ。やっぱ、こういう話題で盛り上がったらしいんだ。そこで、風呂の時間に浴室で一発大会をすることにしたらしい」

 随分恐ろしい事を考えたと、ランバートの笑みが引きつる。なんだその、集団大会。正直遭遇したいような、見た瞬間にいたたまれない気持ちになって逃げそうなだ。
 だがシュテルは興味津々という様子で身を乗り出す。これに悪乗りするのがレイバンという奴だ。ニンマリと笑うと、期待通りに続きを話し出した。

「で、翌日の風呂の時間、第五師団が最後ってのもあって勇士が集まって集団オナニー大会になったんだけど、妙にムラムラした気持ちになってきた」
「うんうん」
「気づけば近くの奴とキスをしながら抜きあいを始めたり、中には本番に突入する奴も出てきたらしい」
「ほう」
「場の雰囲気に飲まれるって凄いらしくてさ。もう興奮が興奮を呼んで、気づけば全員でえらい盛りまくって」
「それで!」
「出てこないのを心配して見に来た大将に見られて、大目玉くらったって」
「何だよそれ!」

 食い入るように聞いていたギャラリーが、どっと声を上げる。ランバートは溜息だ。まぁ、状況の異様さと妙な興奮というのは理解できるが。

「あれはヤバイ! と、先輩から真剣な目で諭された」
「でも、面白そうではあるよな」

 乗り気な声も一部で出る。止めておくに超したことはないというのに。

「でもよぉ、この面々でそんな事をすると、最終的に体格のいい奴が有利だぞ」
「……!!」

 シュテルが気づき、他のメンバーも気づく。当然と言えば当然の流れだろう。第五師団は面白いくらいに体格差の開きがある。ドゥーガルドみたいに体が大きくいかにもな野獣系か、レイバンやシュテルのように体格普通の綺麗系か。純粋に力でいえば、野獣系に勝てる要素なんてない。

「確実にお前ら、はめられる側だよな」
「……この話、なしな」
「……おう」

 青い顔をした綺麗系の面々が、一気にテンションを落とした。まぁ、萎えただろう。

「やっぱさ、同室の人にそれとなくお願いするか、いない隙にやるしかないのか」
「恋人がいれば一緒に出かけてその分イチャつくって手があるけどな」

 恋人がいたってそこは切ないだろう。なんせどう頑張ったってどちらも二人部屋だ。しかもそう毎回出かけるなんてこともできない。中には青姦という強者の話も聞くが、普通にノーマルな人間には難しい選択肢だ。

「あっ、相手に気づかれないようにこっそり抜くスリルってのはちょっとドキドキするかも!」

 何を思ったかシュテルはそんな事を言い出す。そしてなぜかそれに乗っかる第五師団。こいつら、どれだけ飢えてるんだ。

「それ、少し変態プレイだよね」
「なんだよレイバン。お前、この話題になるといつもドライだよな。ないのかよ、妙にやりたくなる日」
「あるけど俺、同室の先輩と早々に契約結んだから」
「契約?」

 ランバートが疑問になって問いかける。なんか、嫌な予感がした。
 レイバンはニヤリと笑う。そして、「何だろうね」と濁したまま立ち上がり、ランバートの腕を引いた。

「んじゃ、俺は部屋に戻る。ランバートもこんなのに付き合ってないで、寝なよ」
「じゃあ、俺も行くわ」

 これ幸いと逃げるようにその場を後にする背中に、第五師団のブーイングが聞こえた気がした。

 レイバンはカラカラと愉快そうに笑っている。その隣で、ランバートは苦笑していた。

「お前、なんかやばいことしてないよな」
「ん?」

 機嫌のいい猫のような瞳が愉快そうに細められる。眼鏡の奥で、楽しげに瞳がキラキラと光った。

「どんな契約したんだよ」
「あぁ、あれね。先輩も俺も独り身だから、相手が欲しくなったらやろうって話。勿論、恋人が出来れば後腐れなく止める。そういう契約」
「やっぱり、その手の契約か」

 溜息が出るが、なんとなく想像出来た事だ。

「ランバートは?」
「ん?」
「同室、ラウル先輩だろ? 先輩に言って、出てもらうのか?」

 レイバンはラウルの恋人がシウスである事を知っている。だからこそ、疑問に思ったのだろう。
 苦笑して、首を横に振る。そしてこっそりと対処法を教えた。

「どうしようもない時には、熱が冷めるまで外を散歩したり、素振りしてるんだよ」
「何その健全すぎる方法!」
「元々そんなに性欲の強い方じゃないから、それである程度冷める。それでもダメな時は誤魔化して寝る」
「健全なようで不健康だな。健康な男児たるもの、時々は楽しまないと不感症になるよ」
「大きなお世話だ」

 そんな話をして、笑う。その後はお互い後腐れもなく分かれて、それで終わってしまった。
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