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番外編:オリヴァーシリーズ
9話:オリヴァーの欲情
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アレックスとの関係は良好なものと言えた。後日改めて彼の家に招かれ、一緒に住んでいるという妹のサフィールとその婚約者にも、まるで家族の一員のように紹介されて受け入れられた。サフィールもその婚約者もアレックスの性癖をよく理解して受け入れているようだった。
彼の屋敷の鍵も貰った。「いつでも訪ねてきてもらいたい」と言われている。
食事は平日も、デートは安息日に。共に過ごす時間はあまりにも甘く緩やかで、本当に大切にされているのだと疑いもしないほどだ。
そう、たった一点を除いて。
騎士団のラウンジは誰もが利用する。酒を持ち込み語らう。オリヴァーは隣にウェインを座らせたままそこで酒を楽しんでいる。周囲は……多少遠巻きにしていた。
「それにしても、本当に良かったね。彼優しいんだ」
「えぇ、とても」
優しすぎるだろう。
「そっか。オリヴァーも元気になって安心したよ」
「ふふっ、そうですか?」
元気ですよ、とても。そう、苛立つほどに。
「明日、安息日だよね? どこかに出かけるの?」
「まぁ、そのようなものです」
優しすぎる彼に、恋人を一ヶ月も放置し続けるとどうなるか思い知らせにね。
オリヴァーは立ち上がる。髪をかき上げ、ふわりと笑う。それに、ウェイン以外の隊員はポーッと熱を上げるのがわかる。そうだ、これなのだ。自分の色気は枯れたのかと疑ったが、どうやらそうでもない。他の者には通じている。
「それでは、私はこれで。よい安息日を」
「うん、また仕事でね」
元気に送り出され、微笑みかける。この同僚にもこの笑みは通じないが、彼自身に色気というものを感じられないからだろうと認識する。
廊下を出て、そのまま宿舎を出ようとしたら他の三人にも会った。これからラウンジなのだろう。
「うぉ! お前、それで町歩くのやめろ。男引っかけに行くのかよ」
出会い頭にグリフィスが驚く。その頬が僅かに赤らむのを、オリヴァーは妖艶に笑う。
「どうしたの? 上手くいっているのに、怒ってるの?」
「そんな事はございませんよ。とても幸せに、大切にされております」
大切にされすぎて既に切ない。この体には何の魅力も感じていないのかと思えてならない。分かっている、語った過去を気にしてくれるのだと。なんとも優しいじゃないか。くそ食らえです。
「騎士団のサキュバスが復活している。辿り着く前に引きずり込まれるぞ」
「いい度胸です。やれるならどうぞ、食らってみるが良いのです。淫魔に手を出し身を滅ぼしたいというアホがまだこの騎士団にいるのなら、滅んでしまえばよいのです」
にっこりと満面の笑みを浮かべたオリヴァーに、三人の同僚は身を引いた。その中を通り抜け、オリヴァーは夜の町へと向かっていった。
◆◇◆
アレックスに手紙を送ると、今日の二十一時と返信があった。その時間に彼の家を訪ねると、既にシャワーを浴びた後の彼が出迎えてくれた。
「ようこそ、オリヴァー殿」
「お招き有り難うございます、アレックス殿」
にっこりと笑い、礼をする。騎士団にいるときには決して出さない色香を抑えはしなかった。未だどんな男でも引き寄せられるように側にくる、そんなものを振りまくようにしているのだ。
なのに目の前の男の涼しい顔。いっそ腹が立ってくる。
「食事は済まされたか」
「えぇ」
「では、酒でも楽しもう」
彼の家は小さな屋敷だが、使用人などは雇っていない。必要な時に必要な人を入れて維持をしているだけで、普段の事は自分でしているのだと言う。
私室へと向かい、柔らかな照明の明かりに照らされながらお酒を頂く。アルコールに僅かに肌が上気するというのに、彼はまったく欲しはしない。
彼は本当に愛しているのだろうか。こんなに色香を出して誘うように視線を向けているのに、欲情してくれないのだろうか。
徐々に苛立ちが募る。欲しいと思って何度か視線を絡めもしたが、その全てが通用しなかった。徐々に自分に自信がなくなり、試しに反応のいいグリフィスで実験をしたのだがあの男は完全に反応した。ただ、理性まで獣ではない友人は「止めろ! お前のは冗談にならん!」と言って逃げていった。
ならば、求められていないのだろう。そう思えばなんとも虚しく、体が寂しく火照る。
「オリヴァー殿?」
疑問そうな様子で首を傾げられる。オリヴァーは立ち上がり、その膝に乗って頬を包んだ。
「私に魅力はないのでしょうか?」
「え?」
「貴方を見て、貴方を思ってこの体はこんなにも熱を孕むのに、貴方は涼しいまま。この身は貴方を欲情させるには足りませんか?」
思わず問いかけてしまう。見上げる濃紺の瞳は一瞬驚き、次に真剣になる。覗き込むその奥に、確かに炎が見えた気がした。それは初めての男の顔だ。
「欲しいのです、私は。遠慮しているのも、気遣いも嬉しく思います。ですがこの身は所詮淫乱です。大事にされすぎても焦がれてしまうのです。触れて貰えない事に焦りを感じるのです。触れて、煽り立てて暴くように抱かれたいのです。そうさせるには、私はまだ足りないのでしょうか」
「そんな事はない。オリヴァー殿はいつも魅力的だ」
「では、良いですか?」
熱くなる体を感じている。触れる肌はなんて逞しい。胸に手を置き、奪うように口づけた。拒まれる事もなく、激しく受け入れてくれる事に安堵すると同時に煽られていく自身を隠せない。
「外泊届を出して参りました。今宵、求められる為にここに参りました。どうか、触れてください。思うままに、お願いいたします」
頬にうっとりと指を滑らせ、微笑みかけて頼み込めば、アレックスは動揺もなく真っ直ぐに頷いてくれた。
彼の屋敷の鍵も貰った。「いつでも訪ねてきてもらいたい」と言われている。
食事は平日も、デートは安息日に。共に過ごす時間はあまりにも甘く緩やかで、本当に大切にされているのだと疑いもしないほどだ。
そう、たった一点を除いて。
騎士団のラウンジは誰もが利用する。酒を持ち込み語らう。オリヴァーは隣にウェインを座らせたままそこで酒を楽しんでいる。周囲は……多少遠巻きにしていた。
「それにしても、本当に良かったね。彼優しいんだ」
「えぇ、とても」
優しすぎるだろう。
「そっか。オリヴァーも元気になって安心したよ」
「ふふっ、そうですか?」
元気ですよ、とても。そう、苛立つほどに。
「明日、安息日だよね? どこかに出かけるの?」
「まぁ、そのようなものです」
優しすぎる彼に、恋人を一ヶ月も放置し続けるとどうなるか思い知らせにね。
オリヴァーは立ち上がる。髪をかき上げ、ふわりと笑う。それに、ウェイン以外の隊員はポーッと熱を上げるのがわかる。そうだ、これなのだ。自分の色気は枯れたのかと疑ったが、どうやらそうでもない。他の者には通じている。
「それでは、私はこれで。よい安息日を」
「うん、また仕事でね」
元気に送り出され、微笑みかける。この同僚にもこの笑みは通じないが、彼自身に色気というものを感じられないからだろうと認識する。
廊下を出て、そのまま宿舎を出ようとしたら他の三人にも会った。これからラウンジなのだろう。
「うぉ! お前、それで町歩くのやめろ。男引っかけに行くのかよ」
出会い頭にグリフィスが驚く。その頬が僅かに赤らむのを、オリヴァーは妖艶に笑う。
「どうしたの? 上手くいっているのに、怒ってるの?」
「そんな事はございませんよ。とても幸せに、大切にされております」
大切にされすぎて既に切ない。この体には何の魅力も感じていないのかと思えてならない。分かっている、語った過去を気にしてくれるのだと。なんとも優しいじゃないか。くそ食らえです。
「騎士団のサキュバスが復活している。辿り着く前に引きずり込まれるぞ」
「いい度胸です。やれるならどうぞ、食らってみるが良いのです。淫魔に手を出し身を滅ぼしたいというアホがまだこの騎士団にいるのなら、滅んでしまえばよいのです」
にっこりと満面の笑みを浮かべたオリヴァーに、三人の同僚は身を引いた。その中を通り抜け、オリヴァーは夜の町へと向かっていった。
◆◇◆
アレックスに手紙を送ると、今日の二十一時と返信があった。その時間に彼の家を訪ねると、既にシャワーを浴びた後の彼が出迎えてくれた。
「ようこそ、オリヴァー殿」
「お招き有り難うございます、アレックス殿」
にっこりと笑い、礼をする。騎士団にいるときには決して出さない色香を抑えはしなかった。未だどんな男でも引き寄せられるように側にくる、そんなものを振りまくようにしているのだ。
なのに目の前の男の涼しい顔。いっそ腹が立ってくる。
「食事は済まされたか」
「えぇ」
「では、酒でも楽しもう」
彼の家は小さな屋敷だが、使用人などは雇っていない。必要な時に必要な人を入れて維持をしているだけで、普段の事は自分でしているのだと言う。
私室へと向かい、柔らかな照明の明かりに照らされながらお酒を頂く。アルコールに僅かに肌が上気するというのに、彼はまったく欲しはしない。
彼は本当に愛しているのだろうか。こんなに色香を出して誘うように視線を向けているのに、欲情してくれないのだろうか。
徐々に苛立ちが募る。欲しいと思って何度か視線を絡めもしたが、その全てが通用しなかった。徐々に自分に自信がなくなり、試しに反応のいいグリフィスで実験をしたのだがあの男は完全に反応した。ただ、理性まで獣ではない友人は「止めろ! お前のは冗談にならん!」と言って逃げていった。
ならば、求められていないのだろう。そう思えばなんとも虚しく、体が寂しく火照る。
「オリヴァー殿?」
疑問そうな様子で首を傾げられる。オリヴァーは立ち上がり、その膝に乗って頬を包んだ。
「私に魅力はないのでしょうか?」
「え?」
「貴方を見て、貴方を思ってこの体はこんなにも熱を孕むのに、貴方は涼しいまま。この身は貴方を欲情させるには足りませんか?」
思わず問いかけてしまう。見上げる濃紺の瞳は一瞬驚き、次に真剣になる。覗き込むその奥に、確かに炎が見えた気がした。それは初めての男の顔だ。
「欲しいのです、私は。遠慮しているのも、気遣いも嬉しく思います。ですがこの身は所詮淫乱です。大事にされすぎても焦がれてしまうのです。触れて貰えない事に焦りを感じるのです。触れて、煽り立てて暴くように抱かれたいのです。そうさせるには、私はまだ足りないのでしょうか」
「そんな事はない。オリヴァー殿はいつも魅力的だ」
「では、良いですか?」
熱くなる体を感じている。触れる肌はなんて逞しい。胸に手を置き、奪うように口づけた。拒まれる事もなく、激しく受け入れてくれる事に安堵すると同時に煽られていく自身を隠せない。
「外泊届を出して参りました。今宵、求められる為にここに参りました。どうか、触れてください。思うままに、お願いいたします」
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