恋愛騎士物語1~孤独な騎士の婚活日誌~

凪瀬夜霧

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14章:蜜月の夜

3話:蜜月

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 宿の食事はとても満足だった。温泉の水を使ったパンや、蒸気で蒸した魚と野菜の料理も堪能した。
 そうしてたっぷりとリラックスしたランバートは、お酒も飲んでご機嫌に三人掛けソファーに寝転ぶ。腕や足をうんと伸ばして仰向けに倒れてニコニコとしていると、ギシリとソファーが軋み、黒が映り込む。

「んっ」

 ランバートの腰の辺りに座ったファウストが覆うように唇を奪う。甘やかすようなものでも、柔らかなものでもない。この先を促すような疼く口づけだ。深く口腔を暴かれ、舌の根元や歯の裏側も掠められる。切ない気持ちが押し寄せて、同時に重く痺れさせられる。
 唇が離れても余韻が消えない。それどころか欲しくなっている。トロンと見上げていると、ファウストの唇は左の首筋や鎖骨の辺りを刺激し、大きな手は浴衣の前合わせからスルリと中に滑り込んで平らな腹や胸を探ってくる。

「ふぅ……ぁ」

 体が勝手に跳ね上がるように気持ちがいい。腰の辺りから広がっていく落ち着かない感覚が徐々に染めていく。

「ファウスト」

 欲しい……

 随分と淫らかもしれない。でも、あのキス一つでもうそこにしか頭がいかない。分かっている、この人もそういうつもりだと。随分焦らしたのだし。
 けれど体はあっさりと解放された。ギラギラとした飢えた獣みたいに黒い瞳が光っている。でも、辛そうにすがめて背を向けるのだ。

「風呂はいいのか?」
「今日はもういいよ。ふやけるほど入ったから」
「そうか」

 少し距離を置こうとしている。そんな感じを背中に感じる。ソファーから降りたランバートはその背にピッタリと耳を当てた。強く感じる鼓動や、熱い肌の感触は浴衣の薄布を通して伝わってくる。この期に及んで、まだ我慢している。

「いいよ、このままで」
「ランバート」
「一応、体力トレーニング強化してきたし……それに、辛そうにされるのも何か違うと思っている。何に気兼ねする事もない。だから、好きにしていいから」

 自分の心臓の音もうるさくなる。でも数日かけて覚悟してきた。この人と本当に抱き合うっていうのは、どんなんだろうか。あの目を見ると少し竦むけれど、気持ちがいいことだけは確信している。キスひとつで浮き立つほどに心地よいのだ。
 ゆっくりとこちらを向いたファウストの、困ったような赤い顔。頬に触れた手の熱さが伝わってくる。

「少し、散歩でもしようかと思ったんだが」
「いいよ、気にしないで」
「優しくしたいとは思っているんだぞ」
「似合わないでしょ。何よりその目、食い殺す勢いだし」
「……本当に、食い殺す勢いだ。よしと言われたらこんなにも我慢ができないとは思わなかった。滅茶苦茶に犯してしまいそうで、怖いんだ」

 本当に困ったような濡れた瞳。綺麗だと思えるから少し笑えた。見上げて、手を添えて、唇を奪う。不意を突かれたように目を見開いた人は、とても切ない表情をする。

「そのまま欲しい。多少ボロボロになってもいいから、全部俺にしてほしい。ファウストの全部を求めるのは、俺には難しいのか?」

 思うままを言葉に乗せて、胸元に顔を埋める。少し甘いような彼の匂いがしている。
 強く腰を抱かれ、折られそうな勢いで顎を上向かせられ、立ったまま覆い被さるような荒っぽいキスが降る。絡める舌の熱さに頭の中がぼんやりした。飲み込めない唾液が口の端を伝って落ちていく。それでも貪るようなキスは終わりを見せない。酸欠になりそうで背中を叩いてもほんの少しの間しかくれない。立っていられなくなるまで貪った人は、そのまま軽々とランバートをお姫様抱っこして大きなベッドに放り投げた。
 キングサイズのベッドが大きく軋む。見上げた黒い瞳の濡れた迫力には息が止まる。逃げたいほどの危機感に体が正直な反応を示して足がシーツを蹴ったけれど、それより早く逞しい腕が腰を捕らえて引き倒した。

「逃げるな」

 耳元で柔らかく、でも熱く囁きかける声に余裕がない。そのまま、耳殻は彼の口の中だ。弱い刺激はそれでも熱を含む体には響く。小さく吐息がこぼれていく。
 腰を捕らえているのとは別の手が浴衣の前を割って内ももの付け根に触れてくる。薄い肌が正直に反応して、ほんの少し割られる。撫でられる方の足が徐々に上がって、秘部を晒そうとしている。

「ちょ、待って」

 いきなり突っ込もうってのかこの人は!

 それは流石に性急すぎる。ファウストのそこは体格に見合う大きさと太さがある。花見の時に触れたそれは多少尻込みするかんじだった。それを、こんなにいきなり。

「ファウスト、待て!」

 頼むからもう少し穏やかにしてもらいたい。もう少し順番を追って!

 噛みつくように首筋を強く吸われて、ビクンと体が仰け反る。痛いような気持ちよさが走って行く。周囲はまだ明るくて……明るくて?

「ファウスト、お願いだから明かりだけでも落として! 部屋の」
「いい」
「よ……」

 よくない!

 ランバートの抵抗は成功した。下からどうにか蹴り落としたのだ。重い体をどかし、その間に上半身を起こしてはだけた浴衣の前を握り合わせて息をつくと、落とされた方は若干殺気だっていた。

「お前……足縛るぞ」
「やれるもんならやってみろ! 二度と部屋に行かないからな!」

 若干、涙目だった。

「受け入れるっていうのは本当にいい。ってか、今何時だと思ってるんだよ。まだ八時だぞ。こんだけ時間あれば何回だって付き合うんだからがっつかないでくれ! 俺だって本気で付き合う相手との最初の夜くらいあれこれ踏んで欲しい手順ってのはあるんだよ! 雑多に抱かれて有耶無耶になっていくのは嫌なんだ! しかもいきなり股開かせないでくれよ! 正直いきなりすぎて怖い!」

 優しくしたいと言った前言はどこに行ったんだ。ランバートはとにかく息を整えるので一杯だ。

「まず、明かり落として戸締まりの確認したい。それと、荷物から必要な物持ってきたい。バスタオルとか、先に準備したい」
「面倒だ。後でいい」
「火がついたら後もくそもなくそのまま寝るだろ! そのくらいの事させろ!」

 本当にこの人、綺麗な顔して中身が完全に男だ。

 ファウストに玄関の施錠とカーテンを閉めてもらっている。その間に、ランバートは必要そうなものをベッドの側に置いた。水の入った桶、バスタオルは多めに。荷物の中からローションも持ってきて置いた。初物ではないし、多少無理はきくだろうが、それとこれとは違う。使う物を使わないと本当に悲惨なことになる。男の体は女性とは違い、勝手に濡れてくれるわけじゃない。多少はそのようになるだろうが、圧倒的に潤いが足りないのだから補わなければ。
 そうしている間にファウストが戻ってきて、寝室とリビングを隔てる引き戸を閉じた。隔離された寝室には枕元の柔らかなランプの明かりが一つのみだ。

「準備がいいな」

 腰に手を当てて息をついたファウストは少しだけ落ち着いたらしい。それに多少安堵する。

「先にやらないと面倒になるだろ」
「ローションまで持ってきたのか?」
「必要だから」

 ちゃんとそのつもりで来た。だからこれは、真っ先にいれた。
 少し恥ずかしくて耳が熱い。その背中をくるむように、ファウストが抱きとめてくる。

「少し落ち着いた。今のうちに、お前の希望を聞いておく」

 低い声に色はある。求められる気持ちを感じている。これだけで恥ずかしくなる。

「そんな、面倒な事じゃない。普通の手順を踏んでほしい。いきなり突っ込んで訳わかんなくなるなんて荒っぽい事しないでくれればいい」
「分かった」
「後、使うものは使ってくれ。多少は平気だけど、ファウストのは大きいだろ」
「あぁ、そうだな。心得た」

 腕の中で体を反転して、仕切り直すようにキスをする。するりと受け入れてくれるそこは余裕のなさはなくて、柔らかく穏やかに誘い込んでくる。絡めて、吸われて、それで背が甘く痺れる。

「んぅ……」

 離れた体を抱きとめて、ファウストは今度は丁寧にランバートをベッドに下ろした。覆い被さる体は熱い。するりと前合わせから滑り込む手は、探るように体を撫でている。

「この服、脱がせやすくていい」
「んっ、そうかも」

 ファウストの浴衣の首元から、ランバートも手を差し入れる。しっとりと汗をかく肌に触れると、困った様な笑みが浮かぶ。

「煽ると後悔するぞ。せっかく少し頭が冷えたんだ」
「そんなに我慢してたのか?」
「してないと思ったか?」

 細く見つめる瞳が笑う。啄むようなキスは甘やかされるようでくすぐったい。でも、肌を探る手の動きは徐々にはっきりしたものになる。脇腹、臍の辺り、首筋、腕の付け根。そして、期待に硬くなりはじめる胸の飾りを掠める。

「っ」

 腰の辺りが痺れてしまう。明確に気持ちがいい。硬い指先が掠めるだけで簡単に火がつく。
 啄んでいた唇が首筋に触れ、筋を流れるように鎖骨へと移る。濡れたその感触に沸き起こるようにゾワリと粟立つ。そして驚くのだ。こんなにも気持ちいいなんて、初めてだ。

「お前、唇でされるのが好きなんだろ?」

 ニヤリと笑った唇は、そのまま更に下へと下がっていく。胸の突起には触れず、臍の辺りを舐められてビクンと腰が浮いた。

「ふぁ!」

 背骨の辺りがジクジクとする。重く痺れるのだ。今まで、こんな部分が感じるなんて知らなかった。思わず引いた腰を掴まれる。そのまま背中がファウストの腕一つ分突き出したようにされて、腹や脇、臍の辺りを入念に唇と舌で刺激されていく。

「やっ、ちょ……んぁ!」

 ザワザワと走る刺激に声が出てしまう。体を捻って湧き上がるものを逃がそうとしているけれど、それ以上に気持ちがいい。

「随分気持ちよさそうだが、もたないぞ」

 低く言われるが、そんなの分かっている。でも、体がコントロールできない。いつも上手く熱を逃がしている。どんな相手とでも、どんなプレイでも平気なのに今はまったくだめだ。

「んぅ!」

 カリッと、胸に噛みついたその痛みが響く。それでも、痛みの奥に疼く。明らかに感じ方がおかしい。薬を使ったわけじゃないのに追い詰められる。でも、体はまだ序の口だ。実際、下肢はまだ余裕がある。

 ファウストだからか?

 ふと思うそれは、ほぼ確信だ。快楽だけを受け取っていたのとは違う。心から求め、求められているからこその感じ方があるのかもしれない。肉体的なものではないから、こんなにも。

「ふぅ」

 宥めるようにキスが落ちる。夢中でそれに応じて、吸い付いてしまう。黒い髪に手を差し込んで、濡れた瞳で見上げた。

「平気か?」
「はぁ……」
「どうした?」
「気持ちよくて」

 どれほど呆けた顔をしているだろう。思えば恥ずかしいが、力が入らない。今も触れている体が熱を持っていく。
 心配そうにするファウストの頬にふれ、肩から背中へと腕を伸ばす。抱きしめると安心する。

「ファウストが触れているからだと、思うけれど。何一つ、逃げられなくて」

 やはり少し恥ずかしい。まだ、衣服の前を乱しただけだ。まぁ、割開かれた合わせなどグチャグチャで、胸も下肢も大いにはだけてはいるのだが。そこに帯だけが未だつなぎ止めているなんて、少し滑稽だ。

「遊びではないし、性欲処理でもないからな」

 嬉しそうな黒い瞳がとても満足そうに笑う。頭を撫でられて、額に唇が触れる。なんだか、色々と納得した。
 大人のまねごとで得られたのは、所詮はそんなところだったのだ。本当に余裕のないほどに愛しい人と重ねる体とは、違ったのだ。今こうして抱き合っているのは欲求不満だからじゃない。体の隅々、心にまでこの人を刻みつけるような行為だからだ。

「ファウスト、余裕そうだ」

 目の前の人は落ち着いているように見える。ランバートがこれだけ乱れているのに涼しい顔をしている。
 けれど次にはふにゃりとその表情が苦しげに歪む。黒い瞳を覗き込むと、熱に濡れて見える。

「そう、見えるか?」
「見える」
「これでも必死だ。今すぐねじ込みたいのを我慢しているんだ」

 苦しそうに言われる言葉が本当なのは直ぐに分かった。ファウストが少し体をずらして、ランバートの内ももに擦るように自身を当てたから。硬く立ち上がり、僅かに濡れているだろうそれが、内ももをぬるりと汚した。
 ゾワッと沸き起こるのは、恐怖ではなく快楽だ。知らず、奥が熱を発して快楽をまき散らす。怖いと感じていたはずなのに、今はそうは感じない。

「物欲しそうな目で見るな。お前、あまり俺の理性に期待するなよ。こんなものは外付けだ。取っ払ったら」

 言いかける唇に吸い付くようにキスをする。強く引き込み、たっぷりと唾液を絡めていく。下肢が痺れるように疼いて仕方がない。触れてもいないそこが疼くのだ。どうにも、頭の芯が蕩けきる方が早い。体よりも気持ちが先に陥落だ。
 ファウストも応じるように絡めてくれる。頭をしっかりと抱え込まれ、喉の奥までねじ込むような荒っぽいものに変わる。飲み込み切れない二人分の唾液は顎を伝い落ちた。それでも、貪るようにその行為を止められない。
 唇で互いを繋げたまま、ファウストの手が煩わしそうに帯を引き抜いた。薄く瞳をあけてみれば、自身の帯も抜き取っている。腹の周りが楽になったが、次には熱く硬い手がその気になった息子を包み、最初から遠慮もなく扱き上げた。

「んんぅ! ふぅ!」

 焼き付くようだ。背が勝手に弓なりになる。彼の頭を抱いていた指に力が入って、握り込んでしまう。それでも唇は塞がれたまま、下肢に伸びた手もそのまま無遠慮に速度を上げる。

「んぅ! ふっ……あぁ!」

 気持ちよくて達してしまいそうになると、途端に手が緩くなる。イカせてもらえない事が辛いのだが、この人はその気はないようだ。

「悪い、ダメだ」

 熱っぽく言われ、ランバートも頷く。ランバートだって、これ以上綺麗な交わりなんて望んでいなかった。

 衣服を剥ぎ取られ、ファウストも脱ぎ捨てて抱き合う。抱え上げるように片膝を担がれたまま、ランバートは後ろを解されていく。最初にお願いしたとおり、ファウストはたっぷりとローションを絡めてそこに塗り込んでくれた。おかげで、それほどの抵抗もなく指を飲み込む。ヌプッと入り込む節のある指が、躊躇いもなく根元まで押し込まれた。

「はぁっ」

 ブルッと震えがくる。腰骨にかなりくる。後ろはこの快楽を知っていて、最初からそのように受け取る。違和感はあるが痛みのないその行為をすんなりと受け止め、それどころか既に緩く締め付けている。

「熱いな……もう少し解すか」
「んぅ、はぁぁ」

 甘い声を残して息を吐くと、グプッと二本目の指が中に滑り込んでバラバラに内壁を叩く。中の感触を確かめるように押されながら広げられていく。
 前に、風呂場で他の男の物を掻き出された事があった。あの時にも思ったが、ファウストは上手い。ちゃんと反応を見て動くし、平気だと判断すれば躊躇いがない。抜き差しを繰り返す指も、適度に角度が違って掠めていく。本当に薄く、撫でるようにいい部分に触れていくのだ。

「はっ、もうっ」

 正直しんどい。感じすぎてて何をしても逃げ場がない。

「まだだ」
「んんっ!」

 三本目が、心持ちゆっくりと入り込む。多少抵抗はあっただろう。引き延ばされる僅かな痛みがある。節の立つ指を捻るように入れると、その一本が初めて明確にいい部分を叩いた。

「あぁ!」

 ビリッと背を伝って脳を焼くような強い刺激に悲鳴が上がる。強くシーツを握り、襲ったものに抵抗した。
 ファウストの手が咄嗟に前に伸びて、ランバートのものを握る。強く根元を握られ行き場のない熱が下肢に溜まって行くのがわかる。出さないままイカされた、そういう痛みにも似た快楽だ。

「危なかった」
「っ」

 危なかったのではなくて、アウトだ。

 なぜかほっとしたように、ファウストは後ろを解す。慎重にいい部分に触れないようにしている。ローションまで追加され、本当にグチャグチャに解された。

「いいか」
「はぁ……っ!」

 指が引き抜かれ、質量を失った入り口が寂しげにしている。だが、直ぐに宛がわれたものを感じた。

「ひっ! んぅぅぅぅぅ!」

 引き裂くような痛みを伴って入り込むものは、焼いた杭のように熱い。下腹に感じる圧迫感と息苦しさ、一気に押し通った太い部分を飲み込んだ入り口が一杯に広げられている。薄くピンと張り詰めたようなそこは、動くには未だ耐えられないようだった。
 悲鳴を飲み込むようにファウストの唇が塞いでくる。彼の舌を噛まないようにするのが精一杯で、酸欠で一瞬ふらりとする。思い切り足を広げられ、恥ずかしい形で押し入られた部分が、一気に全て飲み込んでいく。その間、ファウストはずっと口を塞いでいた。

「くっ……少し緩めろ」

 ぽたりと額から汗が落ちてくる。思わずひっかいた背にも、大量の汗が浮かんでいる。黒い瞳は辛そうに、だが嬉しそうにしている。

「それにしても、一気に入ったな」

 ほんの少し腰を揺すられるだけで悲鳴があがった。一杯に広げられた部分がまだ慣れていない。小さな刺激で裂けてしまいそうだ。

「ゆっくり息をしろ。慣れるまでは待つから」

 あやすように頭を撫で、額にキスをし、首筋に触れ、腹を撫でる。宥めるようなその行為に、徐々に強ばりが解けていく。みっちりと埋め尽くす圧迫感が、少しだけ緩まった。
 余裕ができたことを悟ると、この人は早い。緩く僅かに腰を引かれ、奥へと押し込まれる。押されるように声が漏れてしまう。硬く長いそれが分け入って押し入ると、いい部分も全部を擦り上げていく。
 最初は様子を見るように緩い動きだったものが、徐々に深く遠慮がなくなる。腰を掴まれ、ギリギリまで引き抜かれた後で最奥まで突き込まれると嬌声が上がった。息ができているのかさえ分からないほどの刺激にずっと朦朧としている。それでも気持ちの良さだけは憎たらしいほどに体が伝えてきた。
 グズグズに蕩けた息子はずっと、ファウストの手の中にある。イキそうになると的確に、根元を戒められている。その度に何度も出せないから、重苦しく痛くすら感じる痺れや疼きが腰骨に響き渡っている。
 覗き込むファウストの表情は、獲物を得たようにいい笑みだ。ゾクゾクするような濡れた黒い瞳が見つめている。本当に、貪るような交わりだ。そしてこれを受け入れて、気持ちいいと感じている自分もいる。
 期待したものとは大分ずれている。まぁ、この人の飢えた獣のような目を見る限り期待する方がバカだったが。それでも今は構わない。激しく求められている事に変わりはなくて、愛し合っている事にも変わりがなくて、こうして二人で交わり合っているのだから。

「んっ! もっ……ダメだ!」

 これ以上は本当に焼き切れる。クラクラするような刺激の強さに涙が出る。
 噛みつく様なキスをされながら、ファウストは深く苦しいほどに膝を抱え込み最奥を容赦なく突き入れた。戒めを解かれたものがファウストの硬い腹筋に擦られて際限なく溢している。

「ふぅ! うっ、ふぅぅ! んっっ、んんぅ!」

 目の前がチカチカして、重苦しくあった熱が一気に吐き出される。途端、受け入れた肉襞が搾り取るように動くのを感じる。絡められていた舌を思い切り吸い上げてしまうその中で、短くファウストも呻いたように思う。じわりと吐き出される熱を全て受け止めた。
 もう、少しだって動けない。抱え上げられた股関節が悲鳴を上げているし、擦り上げられて熟れた内壁が違和感を訴えている。切れてはいないが、入り口も一杯だ。何より体が弛緩して言う事をきかない。
 徐々に絶頂の余韻が冷めてきて、吸い付くようなキスからチュッチュッという軽いものになっていく。至近距離で見つめる黒い瞳には、まだ熱があった。

「……ダメだ、悪い」
「え?」

 何がと問うよりも前に、ファウストがランバートの体を反転させる。勿論、繋がったままだ。だからこそ感じてしまう。まだ中に入り込んでいるそれが、硬さと熱を取り戻していることに。

「えっ」

 まさか……だろ?

 いいたいが、腰を持ち上げられて尻だけを突き上げられる状態にされると疑いようがない。背にかかる重みが増して、ズルリと質量のあるそれが内壁を擦り上げていく。刺激される場所が変わって、今度は恥骨の辺りに響くのだが、こうなるともうランバートはお手上げた。
 グチャグチャになりながらされるがままに抱き込まれたランバートは、精も根も尽き果ててもまだ終われなかった。
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