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第13話 再召集と、最強の随行者たち
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──屋敷の中庭。
午後の光が木漏れ日となって差し込む中、旅支度をするラルを中心に、空気がどこかざわついていた。
「……一人で行くつもりだったんだ?」
エリス=グレイアがラルの後ろからそっと声をかける。
穏やかな声だが、どこか拗ねた響きが混じっていた。
ラルはその言葉に振り返ることなく、わずかに肩をすくめた。
「まさか、ね?」
ミアが膨れっ面で腕を組む。
「お一人でなど、行かせるわけがございませんでしょう? 当然、わたくしたちも同行いたしますわ」
セリナは優雅に微笑みつつ、手元の武装用トランクをそっと揺らす。
「軍の呼び出しなど……最初から怪しい意図が透けて見えておりましたし。わたくしから見て、これは――予防策ですの」
リーナは淡々とした声で続けた。
「記録上、私たちが同行すれば“失踪”の確率はゼロです。……それが最適解です」
ラルはため息をつき、やや弱々しく問いかける。
「……お前ら、俺の話、ちゃんと聞いてたか?」
エリスがにっこりと微笑んだまま、少しだけ顔を近づける。
「だって、ラルくん。前に私を置いていったこと、忘れてないから」
「そのときは……私、すごく怖かったんだよ?
ラルくんがいなくなったら、私、どうしたらいいのか分からなくて」
目に涙をためそうになりながら、でも言葉はどこか可愛らしく狂気を孕んでいる。
「次に一人で行こうとしたら……許さないから。
腕が折れても、足がへし折れても、絶対に連れて帰るんだから」
ラルは苦笑しながらも、どこか胸が締め付けられる気配を感じた。
「だからね、ラルくん。これからは絶対、一緒なんだから」
エリスはラルの袖をそっと絡めながら、愛おしそうに微笑んだ。
「そ、そーだよ! ラルのそばにいれば、何があっても安心だし、ううん、安心“させられる”のは私だけだから!」
ミアが焦ったように食い気味で言う。
「そもそも、最初の召集だってラルさま宛てに届くよう、わたくしたちが“調整”して差し上げたのですもの」
セリナがさらりと、しかし軽く爆弾を投下するように言った。
「手紙を“見逃した”のは、私です。……数ある接触の中で、唯一リスクの低い方法でしたので」
リーナの発言に、ラルの眉がピクリと動いた。
「お前ら……わざと?」
「だって、ずっとウザかったもんね~、軍の連中。門の外でぐるぐるしてるのも、屋敷の周りで“気配”出してるのも」
ミアが悪戯っぽく笑う。
「しかもさ~、私たちに触れようとした監視兵、1日で全員“いなくなった”ってさ。おかしいよね~?」
「いえ、“姿を見せるのをやめた”だけです。……報復などしておりませんよ。まだ」
リーナがさらりと言って、荷物をラルのそばに置く。
「だから今回のは、『正面からこちらが対応する』という意味で、最も平和的な選択ですわ」
セリナが紅茶のカップを優雅に掲げながら言う。
「無視し続けるより、正面から乗り込んで、“立場を明確に”した方が、今後の静寂を得やすいと判断しましたの」
「立場って……なんだよ」
「決まってるじゃん」
ミアが、ラルの隣にぴたりと立ち、上目遣いに言う。
「ラルの隣にいるのは、私たちだけって。そうハッキリさせとけば、二度と余計な虫が湧かないでしょ?」
「そうだね。あと、今のラルくんに無理やり“復帰”させようなんて、ちょっと“おかしな人たち”だと思うよ?」
エリスがにっこり笑いながら、軽く指を鳴らすと、背後から自動で動く荷車がスッと彼女のもとに滑り込んでくる。
中には、常人なら持ち運べないほどの武器と物資。
それはまるで、“最前線への遠征”のような重装備だった。
「……お前ら、本気で行く気か?」
「ええ。ラルさまの“安全”を確保するためには、現地での調査が不可欠ですもの」
「指揮系統、周辺配置、帰還予定経路──すべて確認済みです。即時撤退も可能です」
「そもそも、私たちを戦場に戻したいっていうなら、ちゃんと“覚悟”してもらわなきゃね?」
「ふふ。……ラルくんが一番かわいいのは、“守られてる時”なんだから」
「……オレは、ただ静かに暮らしたいだけなんだがな……」
そう呟くラルの背後で、ヒロインたちは揃って荷物を担ぎ、隊列を組む。
その様子は、かつての戦場そのものだった。
ただ一つ違うのは──
“守るもの”が国家ではなく、ラル=クローディアただ一人になっていたということ。
──こうして、屋敷を発った彼らは、ふたたび王都へと向かう。
その歩みは、まるで嵐の到来を予告するかのように、静かで、確実だった。
午後の光が木漏れ日となって差し込む中、旅支度をするラルを中心に、空気がどこかざわついていた。
「……一人で行くつもりだったんだ?」
エリス=グレイアがラルの後ろからそっと声をかける。
穏やかな声だが、どこか拗ねた響きが混じっていた。
ラルはその言葉に振り返ることなく、わずかに肩をすくめた。
「まさか、ね?」
ミアが膨れっ面で腕を組む。
「お一人でなど、行かせるわけがございませんでしょう? 当然、わたくしたちも同行いたしますわ」
セリナは優雅に微笑みつつ、手元の武装用トランクをそっと揺らす。
「軍の呼び出しなど……最初から怪しい意図が透けて見えておりましたし。わたくしから見て、これは――予防策ですの」
リーナは淡々とした声で続けた。
「記録上、私たちが同行すれば“失踪”の確率はゼロです。……それが最適解です」
ラルはため息をつき、やや弱々しく問いかける。
「……お前ら、俺の話、ちゃんと聞いてたか?」
エリスがにっこりと微笑んだまま、少しだけ顔を近づける。
「だって、ラルくん。前に私を置いていったこと、忘れてないから」
「そのときは……私、すごく怖かったんだよ?
ラルくんがいなくなったら、私、どうしたらいいのか分からなくて」
目に涙をためそうになりながら、でも言葉はどこか可愛らしく狂気を孕んでいる。
「次に一人で行こうとしたら……許さないから。
腕が折れても、足がへし折れても、絶対に連れて帰るんだから」
ラルは苦笑しながらも、どこか胸が締め付けられる気配を感じた。
「だからね、ラルくん。これからは絶対、一緒なんだから」
エリスはラルの袖をそっと絡めながら、愛おしそうに微笑んだ。
「そ、そーだよ! ラルのそばにいれば、何があっても安心だし、ううん、安心“させられる”のは私だけだから!」
ミアが焦ったように食い気味で言う。
「そもそも、最初の召集だってラルさま宛てに届くよう、わたくしたちが“調整”して差し上げたのですもの」
セリナがさらりと、しかし軽く爆弾を投下するように言った。
「手紙を“見逃した”のは、私です。……数ある接触の中で、唯一リスクの低い方法でしたので」
リーナの発言に、ラルの眉がピクリと動いた。
「お前ら……わざと?」
「だって、ずっとウザかったもんね~、軍の連中。門の外でぐるぐるしてるのも、屋敷の周りで“気配”出してるのも」
ミアが悪戯っぽく笑う。
「しかもさ~、私たちに触れようとした監視兵、1日で全員“いなくなった”ってさ。おかしいよね~?」
「いえ、“姿を見せるのをやめた”だけです。……報復などしておりませんよ。まだ」
リーナがさらりと言って、荷物をラルのそばに置く。
「だから今回のは、『正面からこちらが対応する』という意味で、最も平和的な選択ですわ」
セリナが紅茶のカップを優雅に掲げながら言う。
「無視し続けるより、正面から乗り込んで、“立場を明確に”した方が、今後の静寂を得やすいと判断しましたの」
「立場って……なんだよ」
「決まってるじゃん」
ミアが、ラルの隣にぴたりと立ち、上目遣いに言う。
「ラルの隣にいるのは、私たちだけって。そうハッキリさせとけば、二度と余計な虫が湧かないでしょ?」
「そうだね。あと、今のラルくんに無理やり“復帰”させようなんて、ちょっと“おかしな人たち”だと思うよ?」
エリスがにっこり笑いながら、軽く指を鳴らすと、背後から自動で動く荷車がスッと彼女のもとに滑り込んでくる。
中には、常人なら持ち運べないほどの武器と物資。
それはまるで、“最前線への遠征”のような重装備だった。
「……お前ら、本気で行く気か?」
「ええ。ラルさまの“安全”を確保するためには、現地での調査が不可欠ですもの」
「指揮系統、周辺配置、帰還予定経路──すべて確認済みです。即時撤退も可能です」
「そもそも、私たちを戦場に戻したいっていうなら、ちゃんと“覚悟”してもらわなきゃね?」
「ふふ。……ラルくんが一番かわいいのは、“守られてる時”なんだから」
「……オレは、ただ静かに暮らしたいだけなんだがな……」
そう呟くラルの背後で、ヒロインたちは揃って荷物を担ぎ、隊列を組む。
その様子は、かつての戦場そのものだった。
ただ一つ違うのは──
“守るもの”が国家ではなく、ラル=クローディアただ一人になっていたということ。
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