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第二話
パトロンになりました
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アイリーンさんが言った通り、次の日にトアは戸惑いながらやってきた。
屋敷の大きさに圧倒されているようだったが、来てしまったものは仕方ない。エリザベートとトアの相性は正直よくない。
何事も完璧を求め、常に高みを目指そうとするエリザベート。
一つのことに集中してしまうと周りが見えなくなり、色々と無頓着なトア。
あまりこの二人を交わらせたくはないと思っていたんだが、アイリーンさんが、男爵家にトアを置いておくことができないと判断したなら仕方ないよね。
「やぁ、トア。よくきたね」
「フライ様! ここはフライ様のお屋敷なのですか?」
「ああ、ここは僕の家、エルトール家が所有する屋敷なんだ」
「そうだったのですね。昨夜、男爵様の家に帰ると、男爵様が今日からこちらでお世話になりなさいと仰せになりました。どなたのお家か不安だったのです」
制服姿に、それほど物が入っていなさそうな鞄を持ったトアの姿は引っ越しをする人間の者ではない。
「トアさん、よくいらっしゃいました。私はフライ様と家同士でお付き合いをさせていただいております。アイリーン・ユーハイムです」
「ユーハイム様。初めまして、トアと申します」
「そう、緊張しなくてもいいのよ」
アイリーンさんは昨夜の不思議な雰囲気とは違って、今日は落ち着いた令嬢だった。昨夜の妖艶で恍惚とした彼女は私も圧倒されてしまうほどだった。
「なんですの。この身なりを整えていない平民は?」
明らかに悪役令嬢風の物言いをするエリザベート。彼女は、基本的にとても良い人だ。ただ、とても世話好きで、ちゃんとしていない者を見ると無性にイライラしてしまう。
「わっ、私はトアと申します。平民で身なりに気を使う余裕が」
「言い訳はいりません! ここはエルトール様のお屋敷です。奴隷の身分でも、平民の身分でも、身なりはきちんとしていただきます。まずはそのボサボサの髪をどうにかしましょう。フライ様、彼女のことはわたくしが行っても構いませんね?」
「ああ、任せるよ。屋敷に来た以上は、トアの世話をエリザベート、アイリーンさん二人に頼むよ。用意ができたら応接間に案内してあげて」
「かしこまりました」
エリザベートはそのままトアを連れていってしまう。
残された僕とアイリーンさんは、顔を見合わせて笑ってしまった。
「エリザベートは相変わらず素直ではないね」
「そうですわね。私が病弱で、あの子に貴族令嬢としての教育が強く成されたことで、責任感が芽生えたのだと思います」
「ああ、全てはトアを心配して、身の回りの世話をしてあげたいって、素直に言えたなら人からもっと好かれるのにね」
エリザベートは素直になれないところがとても魅力的に映る。エリック兄上がそんなエリザベートの良さに気づいているのかわからないが、そんなところを愛してあげてほしい。
「改めて、フライ様。今後はトアさんのお世話は私たちユーハイム家が後盾をさせていただきます」
「そうか。なら、彼女には研究をさせてあげるための環境を整えてあげてくれかな?」
「研究ですか?」
「ああ、彼女は生まれながらにあまり魔力が多くない。だが、それを補うためにとても勉学が好きで、勉学に励むあまりに魔道具の製作が得意なんだ」
「なるほど! フライ様の深いお考え感服致しました!!!」
「えっ?」
アイリーンさんに何故か感服されてしまった。私は小説の知識を少しだけ話しただけだ。何に感心するところがあったのだろう?
「フライ様の先見の明、私は気づかないでお手を煩わせたこと、本当に申し訳ありません。今度こそ、彼女のために研究所を用意して、フライ様の見据える将来を裏切らないように、トアさんを支えていきますわ」
私はそこまで深く考えていないよ。トアを味方につけたら、気球とか、飛行船とか、将来的に空を飛ぶ方法を生み出してくれるので、楽しみだなぁ~って思っただけなんだよ。
「えっと、うん。よろしく頼むね」
「ふふ、そろそろエリザベートがトアさんの用意をして戻ってきますわ。我々も応接間に向かいましょう」
「ああ」
トアの一件からアイリーンさんのことが少しわかったような気がするな。彼女は自然に私の腕をとって胸へと押し当てる。なかなかにしたたかな女性なんだね。悪い気はしないけど。
「お待たせしましたわ!」
応接間でアイリーンさんとお茶を飲んでいると、エリザベートが扉をノックして入ってきた。その顔は自信に満ち溢れていて、少し興奮気味だ。
「おかえり、エリザベート」
「ただいま戻りました、フライ様。それではトアさんいらして」
「はっ、はい!」
エリザベートに言われて入ってきたのは、見違えるような姿をしたトアだった。
いつもブラウンの髪をボサボサにして整えることもなく、ビン底のような目元が隠れるか、歪んで見えてしまうメガネをしていた。
だが、髪は綺麗にショートボブで切り揃えられて、メガネも外されていた。制服姿は変わらないが見違えるような美少女がそこにいた。
「髪質的に切ってしまう方が整えやすかったので、トアさんの承諾を得て切りそろましたわ。メガネも度が合っていなかったので、医師とメガネ職人を呼びました。普段はピント合わせるメガネを着用して、どうしても細かい部分を見たい時用の片眼鏡を用意しました」
エリザベートが説明する間に、トアは戸惑いながら、用意された物を取り出して装着する。片眼鏡姿のトアは可愛らしく。本当に見違えてしまう。
「うん。とても綺麗になったね。さすがはエリザベートだ」
「お褒めに預かり光栄です。ですが、トアさんの素材が良いのですわ」
「そっ、そんなことは、エリザベート様。ありがとうございます」
「お礼は全てフライ様に言うといいですわ。全てはフライ様がご指示されたことを、我々がお手伝いしているだけです」
エリザベートは、やっぱり貴族の令嬢だね。最後は私のような男性を立ててくれる。出るところは前に出るが、控える時は控えてくれる。本当に素晴らしい女性だと思う。
戸惑いながら、トアが私を見ました。
「あっ、あの! フライ様。本当にありがとうございます! このご恩は必ず返します!」
「ああ、そうしてくれていいよ。実はアイリーンさんと話していたんだけど、君用の研究室も用意するつもりだ。僕はパトロンとして、君を支持する。頑張ってね」
喜びを通り越して、理解が追いつかない人間は、固まるんだね。トアはフリーズして、動かなくなった。
「ほら、トアさん。フライ様に言うことがあるのではなくて?」
「あっはい! フライ様、本当にありがとうございます! この身、この体、一生をフライ様に捧げます! どうかご寵愛ください!
「あなたは何を言っているの! ご寵愛をいただいてどうするのですか?!」
「あわわわわ、そういう意味では!」
トアの言葉にエリザベートは目くじらを立てて、怒鳴っている。
だけど、そんな二人のやりとりもなんだか面白く見えてしまう。また一人、賑やかなメンバーが増えてしまったね。
屋敷の大きさに圧倒されているようだったが、来てしまったものは仕方ない。エリザベートとトアの相性は正直よくない。
何事も完璧を求め、常に高みを目指そうとするエリザベート。
一つのことに集中してしまうと周りが見えなくなり、色々と無頓着なトア。
あまりこの二人を交わらせたくはないと思っていたんだが、アイリーンさんが、男爵家にトアを置いておくことができないと判断したなら仕方ないよね。
「やぁ、トア。よくきたね」
「フライ様! ここはフライ様のお屋敷なのですか?」
「ああ、ここは僕の家、エルトール家が所有する屋敷なんだ」
「そうだったのですね。昨夜、男爵様の家に帰ると、男爵様が今日からこちらでお世話になりなさいと仰せになりました。どなたのお家か不安だったのです」
制服姿に、それほど物が入っていなさそうな鞄を持ったトアの姿は引っ越しをする人間の者ではない。
「トアさん、よくいらっしゃいました。私はフライ様と家同士でお付き合いをさせていただいております。アイリーン・ユーハイムです」
「ユーハイム様。初めまして、トアと申します」
「そう、緊張しなくてもいいのよ」
アイリーンさんは昨夜の不思議な雰囲気とは違って、今日は落ち着いた令嬢だった。昨夜の妖艶で恍惚とした彼女は私も圧倒されてしまうほどだった。
「なんですの。この身なりを整えていない平民は?」
明らかに悪役令嬢風の物言いをするエリザベート。彼女は、基本的にとても良い人だ。ただ、とても世話好きで、ちゃんとしていない者を見ると無性にイライラしてしまう。
「わっ、私はトアと申します。平民で身なりに気を使う余裕が」
「言い訳はいりません! ここはエルトール様のお屋敷です。奴隷の身分でも、平民の身分でも、身なりはきちんとしていただきます。まずはそのボサボサの髪をどうにかしましょう。フライ様、彼女のことはわたくしが行っても構いませんね?」
「ああ、任せるよ。屋敷に来た以上は、トアの世話をエリザベート、アイリーンさん二人に頼むよ。用意ができたら応接間に案内してあげて」
「かしこまりました」
エリザベートはそのままトアを連れていってしまう。
残された僕とアイリーンさんは、顔を見合わせて笑ってしまった。
「エリザベートは相変わらず素直ではないね」
「そうですわね。私が病弱で、あの子に貴族令嬢としての教育が強く成されたことで、責任感が芽生えたのだと思います」
「ああ、全てはトアを心配して、身の回りの世話をしてあげたいって、素直に言えたなら人からもっと好かれるのにね」
エリザベートは素直になれないところがとても魅力的に映る。エリック兄上がそんなエリザベートの良さに気づいているのかわからないが、そんなところを愛してあげてほしい。
「改めて、フライ様。今後はトアさんのお世話は私たちユーハイム家が後盾をさせていただきます」
「そうか。なら、彼女には研究をさせてあげるための環境を整えてあげてくれかな?」
「研究ですか?」
「ああ、彼女は生まれながらにあまり魔力が多くない。だが、それを補うためにとても勉学が好きで、勉学に励むあまりに魔道具の製作が得意なんだ」
「なるほど! フライ様の深いお考え感服致しました!!!」
「えっ?」
アイリーンさんに何故か感服されてしまった。私は小説の知識を少しだけ話しただけだ。何に感心するところがあったのだろう?
「フライ様の先見の明、私は気づかないでお手を煩わせたこと、本当に申し訳ありません。今度こそ、彼女のために研究所を用意して、フライ様の見据える将来を裏切らないように、トアさんを支えていきますわ」
私はそこまで深く考えていないよ。トアを味方につけたら、気球とか、飛行船とか、将来的に空を飛ぶ方法を生み出してくれるので、楽しみだなぁ~って思っただけなんだよ。
「えっと、うん。よろしく頼むね」
「ふふ、そろそろエリザベートがトアさんの用意をして戻ってきますわ。我々も応接間に向かいましょう」
「ああ」
トアの一件からアイリーンさんのことが少しわかったような気がするな。彼女は自然に私の腕をとって胸へと押し当てる。なかなかにしたたかな女性なんだね。悪い気はしないけど。
「お待たせしましたわ!」
応接間でアイリーンさんとお茶を飲んでいると、エリザベートが扉をノックして入ってきた。その顔は自信に満ち溢れていて、少し興奮気味だ。
「おかえり、エリザベート」
「ただいま戻りました、フライ様。それではトアさんいらして」
「はっ、はい!」
エリザベートに言われて入ってきたのは、見違えるような姿をしたトアだった。
いつもブラウンの髪をボサボサにして整えることもなく、ビン底のような目元が隠れるか、歪んで見えてしまうメガネをしていた。
だが、髪は綺麗にショートボブで切り揃えられて、メガネも外されていた。制服姿は変わらないが見違えるような美少女がそこにいた。
「髪質的に切ってしまう方が整えやすかったので、トアさんの承諾を得て切りそろましたわ。メガネも度が合っていなかったので、医師とメガネ職人を呼びました。普段はピント合わせるメガネを着用して、どうしても細かい部分を見たい時用の片眼鏡を用意しました」
エリザベートが説明する間に、トアは戸惑いながら、用意された物を取り出して装着する。片眼鏡姿のトアは可愛らしく。本当に見違えてしまう。
「うん。とても綺麗になったね。さすがはエリザベートだ」
「お褒めに預かり光栄です。ですが、トアさんの素材が良いのですわ」
「そっ、そんなことは、エリザベート様。ありがとうございます」
「お礼は全てフライ様に言うといいですわ。全てはフライ様がご指示されたことを、我々がお手伝いしているだけです」
エリザベートは、やっぱり貴族の令嬢だね。最後は私のような男性を立ててくれる。出るところは前に出るが、控える時は控えてくれる。本当に素晴らしい女性だと思う。
戸惑いながら、トアが私を見ました。
「あっ、あの! フライ様。本当にありがとうございます! このご恩は必ず返します!」
「ああ、そうしてくれていいよ。実はアイリーンさんと話していたんだけど、君用の研究室も用意するつもりだ。僕はパトロンとして、君を支持する。頑張ってね」
喜びを通り越して、理解が追いつかない人間は、固まるんだね。トアはフリーズして、動かなくなった。
「ほら、トアさん。フライ様に言うことがあるのではなくて?」
「あっはい! フライ様、本当にありがとうございます! この身、この体、一生をフライ様に捧げます! どうかご寵愛ください!
「あなたは何を言っているの! ご寵愛をいただいてどうするのですか?!」
「あわわわわ、そういう意味では!」
トアの言葉にエリザベートは目くじらを立てて、怒鳴っている。
だけど、そんな二人のやりとりもなんだか面白く見えてしまう。また一人、賑やかなメンバーが増えてしまったね。
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