お気楽公爵家の次男に転生したので、適当なことを言っていたら英雄扱いされてしまった。

イコ

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第二話

孫自慢大会じゃ!!!

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《sideフェル》

 とうとうこの時が来たぞ!!! ワシにもついに後継者ができた。

 それはこれまで後継者を決めきれんかったワシにも問題があるが、そのおかげでとびきりの後継者を見つけることに成功したんじゃ。

 夜の学園都市は、昼間の喧騒が嘘のように静まり返り、街の隅々まで灯るランタンの明かりが静かに揺れている。この時間帯は最も落ち着く時間じゃ。

 人の目が少なくなり、人の本音が曝け出される。世界は夜にこそワシらは輝き始める。

 今夜は特別だ。毎年恒例の「顔役たちの集い」の日。

 各国の裏社会のボスたちが一堂に会し、自らが後継者と目する若者を連れてくる。学園都市で行われるフェスティバルの裏で、この集まりは密かに続いてきた。

 名目は親睦会だが、実態は「孫自慢大会」じゃ。

 どこのボスが、いかに優れた後継者を育てているかを競い合う場でもある。

 私もこの集いに参加するようになって長い。だが、毎年のことながら、私は自慢する「孫」がいなかった。

 おかげでいつも、他のボスたちの自慢話を聞かされるだけだ。

「あの坊主は将来、国を動かす器だ」
「うちの若いのは抗争で百人を屠った猛者だ」

 そんな話を横で聞かされるたび、ワシの中には小さな劣等感が募った。

 もちろん、ワシは裏社会の中でもそれなりに名の知れた存在じゃ。じゃが、後継者となる若者がいなかったことは、心のどこかで引け目を感じていた。

 だからこそ、今年は違う。

 私は「フライ・エルトール」という孫を見つけた。

 若いがギャブラーとしての度胸と、抜け目なく、どこか掴みどころのない性格。しかも、学園都市の公爵家を感じさせない余裕と、堂々とした態度。

 何よりも、あの少年には不思議なカリスマ性がある。見た目は呆然しておるが、人を惹きつけ、どんな場でも一歩も引かない強さを持っておる。

 何よりも赤龍王の娘をあしらう実力まで兼ね備えておるのは、予想外じゃった。

「今年こそ、自慢できるぞ!」

 ワシは集いの会場に向かう道すがら、胸を高鳴らせていた。これまで何度も屈辱を味わってきたこの場で、ついにワシも孫自慢を披露する番が回ってきたのじゃ。

 会場に着くと、そこにはいつもの顔ぶれが揃っておった。

 鬼人族で地下闘技場の総元締めであり、奴自身もかなりの強さを誇る禿頭に傷が走るオルバス。

 冷たい目つきに闇の武器商人と呼ばれるドワーフのトーマス。

 そして不敵な笑みを浮かべるエルフの妖怪ババア、ラジャなど。

 各国を牛耳る大物たちが、豪華な席に座って談笑しておる。

 その後ろには、彼らの「孫」たちが控えていた。戦闘の傷跡が体に刻まれた者、魔力を纏った気高い者、どれも一目で只者ではないと分かる。

「おお、フェルか。遅かったな。今年も相変わらず“孫なし”か?」

 オルバスの野太い声が響く。奴は毎年、ワシを冷やかしてくる。じゃが、今年のワシはニヤリと笑い返しながら、後ろに控えているフライを指差した。

 フフフ、今年は違うぞ。見てみろ、この坊主を」

 ワシが言うと、全員の視線がフライに集まった。フライは物怖じすることなく、軽く頭を下げただけで、堂々と立っている。

「ほう、フェルが本当に孫を連れてきたか」
「学園都市の坊主か? 大したことなさそうだが?」
「いや、ただの小僧じゃないか?」

 口々に値踏みする声が上がる。ワシは心の中で笑った。こいつらはまだフライの本当の力を知らない。

 集いが始まると、各ボスたちは自らの後継者を披露し始めた。それぞれが若者の武勇や才知を誇り、話に花を咲かせている。

 その中でワシは静かにフライを見つめていた。話が進むにつれ、他のボスたちもフライに興味を持ち始めたようだった。

「坊主、名前はなんだ?」

 グラントがフライに問いかける。フライは淡々と答えた。

「フライ・エルトールです」
「おいおい、まさか貴族の坊ちゃんを連れてきたのか?」

 トーマスが嫌味を込めて笑う。私は肩をすくめた。

「貴族だろうが何だろうが、才能がある奴を見つけたら育てる。それがワシの流儀じゃ」

 その言葉に、周囲のボスたちがどっと笑い声を上げた。

 宴が進むにつれ、フライの存在感は徐々に増していった。

 フライはどんな話題にも怯むことなく、さらりとした受け答えを見せ、時折ユーモアを交えて場を和ませた。これには私も驚いた。

「坊主、お前、なかなかやるじゃないかい」

 ラジャが感心したように言うと、フライはにっこり笑って返した。

「お褒めいただき光栄です。でも、僕なんてまだまだですよ」

 謙虚な態度だが、その目には確固たる自信が宿っている。それがまた、彼を魅力的にしていた。

 やがて、話題はメムとシーバに移った。

「おいフェル、その夢魔族と精霊族の娘、なかなかの美人じゃねえか」

 グラントが目を輝かせて言うと、他のボスたちも興味津々といった様子で二人を見つめた。

「だが、彼女たちはフライの大切な奴隷だ」

 ワシが釘を刺すと、ボスたちはすぐに笑い声を上げた。

 そこからのフライの大立ち回りは、見事の一言じゃった。オルバスを膝をつかせ、他の孫たちを圧倒して見せた。

 ワシはここまで心躍る場面に出会ったことはないぞ。フライ・エルトール! こやつはワシの想像を超えていきおる!

 上座に座ったフライは、特に動じることなく、メムとシーバを優しく見つめて言った。

「お二人とも、今日は僕と一緒に来てくれてありがとう。君たちがいるだけで、僕はどんな場でも心強いよ」

 その言葉に、メムとシーバの頬が赤く染める。

 ワシは胸を張り、心の中で叫んでいた。

「どうじゃ、この孫はワシの誇りじゃ!」

 フライが予想以上の活躍を見せるたびに、私の顔には自然と笑みが浮かぶ。今まで屈辱を味わい続けた集いだったが、今年は違う。私はこの瞬間を待ち望んでいたのだ。

 宴が終わるころ、他のボスたちは口々にフライの名前を挙げて称賛していた。

「フェル、お前、いい後継者を手に入れたな」
「こりゃ、来年はもっと楽しみになるぜ」
「坊主、また来いよ」

 私はフライを連れて帰る道すがら、彼に言った。

「よくやった、フライ。ワシはお前が誇らしい」

 フライは肩をすくめて答えた。

「別に、普通にしていただけだよ。フェル爺さんの友達は豪快だね」

 その言葉に、私は心から笑った。これほど頼もしい「孫」は他にはいないだろうと確信して。こやつの将来が今から楽しみで仕方ないのぅ。
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