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第二話
世界の広さを俺は知る。
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《side バクザン》
俺の名前はバクザン。
鬼人族の中でも強者として、これまで数多の戦場を渡り歩いてきた。
俺たち鬼人族は、誇り高き血を引く。
刀と呼ばれる東方特有の武器と武術を使って戦いを行う。
生まれつき持っていた桁外れの力で、同胞からも「将来は鬼神の名を継ぐだろう」と期待されてきた。
獣人や竜人が変化の能力を持つのに対して、鬼人族は鬼神への進化がなされると言われている。
戦いに明け暮れる日々。力こそが正義であり、力を持つ者が尊敬され、弱き者が淘汰される。それが鬼人族の掟だ。
そして俺もまた、その掟を信じ、疑うことなく己の力を誇って生きてきた。
いつかは最強の鬼人として、鬼神に進化を継いで、最強の名を継ぐ。
「バクザン、そろそろ顔役の集まりに参加する時だ。貴様を連れていくが良いな?」
「オルバス様、ありがとうございます」
先代の鬼神である祖父にそう言われたとき、俺は少しばかりの高揚感を覚えていた。
顔役の集まり。
それは、各種族の実力者や裏社会の権力者たちが一堂に会する特別な場だ。そこに若き俺が出席することは、鬼人族の未来を担う存在として認められた証でもある。
「分かった。俺の力を見せつけてやる」
そう返事をした俺には、自信しかなかった。
鬼人族最強と呼ばれる俺の力を見れば、誰もが俺を称賛し、恐れを抱くだろう。そんな期待を胸に秘めて、学園都市の地下にある集会場へ向かった。
国を出て西方にある帝国に行くだけで、俺にとっては興奮する出来事だった。
♢
到着した帝国は、鬼人族の街よりも遥かに発展しており、王国から乗った列車は、物凄いスピードだった。
まだまだ発展途上ではあるが、鬼人族に取り入れたい技術が溢れていた。
学園都市と言われる街について、地下に続く階段を降りる。
広い空間に各種族の顔役たちが集まっていた。そこには人間、エルフ、ドワーフ、獣人族といった多種多様な顔ぶれが揃っており、俺を出迎える視線が集まる。
「おお、バクザンか。鬼人族の若き猛者がやって来たな」
ドワーフのトーマスの声が響く。彼は俺の存在を知っていてくれたようで、満足そうに頷いてくれた。
俺は胸を張り、自信に満ちた態度でその場を見渡す。
だが、その自信は次第に揺らぎ始めた。
各種族の顔役たちは、見ただけでただ者ではないと分かるような威圧感を放っていた。しかも、その中には俺よりも若く、それでいて堂々とした態度を崩さない者も大勢いた。
だが、どれだけ堂々としていようと俺こそが最強だ。
「……意外とやるな、他の連中も」
俺は心の中でそう呟いた。自分だけが特別ではない。この場に集う者たちは、皆それぞれの種族や組織で特別な存在だということを思い知らされた。
そんな中、俺の視線が一人の人間に向いた。華奢な体格に、穏やかな雰囲気をまとったガキだ。
二人の美しい女を連れていたが、その態度はどこか控えめで、俺のように周囲に威圧感を与えるわけでもなかった。
覇気の感じられない人種を、俺は見下していた。
「……あいつ、何者だ?」
俺がその青年を見つめていると、オルバスがニヤリと笑って答えた。
「あれはフライ・エルトールだ。それにしても夢魔族は鬼人族の一種、奴隷にしておるのを見せびらかしてくるとは喧嘩を売っておるな」
オルバスの言葉通り、フライはその場にいた顔役たちの視線を一身に集めた。
そして、夢魔族の少女を譲れといったオルバスを始めとする顔役を断ったので、俺は奴に襲いかかった。
だが、その瞬間、俺は自分の意識が吹き飛んで、次に目覚めると身動きが取れないまま、不思議な光景を見ることになった。
フライ・エルトールは中央に座して、その場にいる者たち全員に頭を下げさせていたのだ。
「何だ、この力……?」
俺は目を疑った。
華奢な体つきからは想像もつかない圧倒的な魔力。
しかもそれは、ただの暴力ではなく、的確な魔法の使い方によるものだった。奴はその場にいた全員を黙らせ、上座に腰を下ろすと、どこか楽しげに笑みを浮かべていた。
「……頭が高い」
戦慄だった。自分よりも圧倒的な強者に見下ろされる。
心が震えるのを感じた。
これまで鬼人族こそが最強だと自負してきた。だが、俺が初めて感じた敗北感は心酔するのに十分なほどに圧倒的だった。
フライ・エルトールという男に俺は惚れた。
力だけではない、何か別の魅力を持っている。
俺はフライを兄貴分と認める。会合が終わり、俺はフライの元に歩み寄った。
「フライ……いや、兄貴!」
兄貴は少し驚いた表情を見せたが、すぐに柔らかな笑顔を浮かべた。
「兄貴? いやいや、僕はそんな器じゃないよ。君みたいに力強い人がいると、僕も安心できるな」
「いや、俺はあんたを兄貴と呼びたいんだ。俺はこれまで、力こそが全てだと思って生きてきた。だが、兄貴を見て分かった。力だけじゃない、本当に強いってのは、覚悟を持った者だってことを……!」
言葉を紡ぐうちに、俺の中にあった誇りが崩れ去り、代わりにフライの兄貴に対して敬愛だった。
「兄貴、俺を弟分にしてくれ! これからは兄貴と共に戦い、兄貴の力になりたい!」
そう言うと、フライの兄貴は少し困ったように笑った。
「僕は平凡な道楽貴族だよ。そんな大層な存在じゃない。でも、君がそう言ってくれるなら、これからも仲良くしてくれると嬉しいな」
その言葉に、俺は思わず拳を握り締めた。
「フライの兄貴、感謝するぜ。俺ももっと強くなってみせる。だから、兄貴の背中を守らせてくれ!」
こうして俺は、鬼人族としての誇りを新たな形で持ち直し、フライの兄貴に従う道を選んだ。
俺はこの日、世界の広さを知り、真の強さとは何かを学んだ。
フライ兄貴と共に生きることで、俺自身も変わっていけるはずだ。兄貴と共に歩む未来に向けて、俺は力を蓄え、再びこの広い世界に挑む決意を新たにする。
「兄貴に挑むのに、鬼神なんて余裕でならねぇとな。それでも追いつけねぇ。待っていてください。兄貴!」
俺は自分が低い目標を持っていたんだと実感した。
俺の名前はバクザン。
鬼人族の中でも強者として、これまで数多の戦場を渡り歩いてきた。
俺たち鬼人族は、誇り高き血を引く。
刀と呼ばれる東方特有の武器と武術を使って戦いを行う。
生まれつき持っていた桁外れの力で、同胞からも「将来は鬼神の名を継ぐだろう」と期待されてきた。
獣人や竜人が変化の能力を持つのに対して、鬼人族は鬼神への進化がなされると言われている。
戦いに明け暮れる日々。力こそが正義であり、力を持つ者が尊敬され、弱き者が淘汰される。それが鬼人族の掟だ。
そして俺もまた、その掟を信じ、疑うことなく己の力を誇って生きてきた。
いつかは最強の鬼人として、鬼神に進化を継いで、最強の名を継ぐ。
「バクザン、そろそろ顔役の集まりに参加する時だ。貴様を連れていくが良いな?」
「オルバス様、ありがとうございます」
先代の鬼神である祖父にそう言われたとき、俺は少しばかりの高揚感を覚えていた。
顔役の集まり。
それは、各種族の実力者や裏社会の権力者たちが一堂に会する特別な場だ。そこに若き俺が出席することは、鬼人族の未来を担う存在として認められた証でもある。
「分かった。俺の力を見せつけてやる」
そう返事をした俺には、自信しかなかった。
鬼人族最強と呼ばれる俺の力を見れば、誰もが俺を称賛し、恐れを抱くだろう。そんな期待を胸に秘めて、学園都市の地下にある集会場へ向かった。
国を出て西方にある帝国に行くだけで、俺にとっては興奮する出来事だった。
♢
到着した帝国は、鬼人族の街よりも遥かに発展しており、王国から乗った列車は、物凄いスピードだった。
まだまだ発展途上ではあるが、鬼人族に取り入れたい技術が溢れていた。
学園都市と言われる街について、地下に続く階段を降りる。
広い空間に各種族の顔役たちが集まっていた。そこには人間、エルフ、ドワーフ、獣人族といった多種多様な顔ぶれが揃っており、俺を出迎える視線が集まる。
「おお、バクザンか。鬼人族の若き猛者がやって来たな」
ドワーフのトーマスの声が響く。彼は俺の存在を知っていてくれたようで、満足そうに頷いてくれた。
俺は胸を張り、自信に満ちた態度でその場を見渡す。
だが、その自信は次第に揺らぎ始めた。
各種族の顔役たちは、見ただけでただ者ではないと分かるような威圧感を放っていた。しかも、その中には俺よりも若く、それでいて堂々とした態度を崩さない者も大勢いた。
だが、どれだけ堂々としていようと俺こそが最強だ。
「……意外とやるな、他の連中も」
俺は心の中でそう呟いた。自分だけが特別ではない。この場に集う者たちは、皆それぞれの種族や組織で特別な存在だということを思い知らされた。
そんな中、俺の視線が一人の人間に向いた。華奢な体格に、穏やかな雰囲気をまとったガキだ。
二人の美しい女を連れていたが、その態度はどこか控えめで、俺のように周囲に威圧感を与えるわけでもなかった。
覇気の感じられない人種を、俺は見下していた。
「……あいつ、何者だ?」
俺がその青年を見つめていると、オルバスがニヤリと笑って答えた。
「あれはフライ・エルトールだ。それにしても夢魔族は鬼人族の一種、奴隷にしておるのを見せびらかしてくるとは喧嘩を売っておるな」
オルバスの言葉通り、フライはその場にいた顔役たちの視線を一身に集めた。
そして、夢魔族の少女を譲れといったオルバスを始めとする顔役を断ったので、俺は奴に襲いかかった。
だが、その瞬間、俺は自分の意識が吹き飛んで、次に目覚めると身動きが取れないまま、不思議な光景を見ることになった。
フライ・エルトールは中央に座して、その場にいる者たち全員に頭を下げさせていたのだ。
「何だ、この力……?」
俺は目を疑った。
華奢な体つきからは想像もつかない圧倒的な魔力。
しかもそれは、ただの暴力ではなく、的確な魔法の使い方によるものだった。奴はその場にいた全員を黙らせ、上座に腰を下ろすと、どこか楽しげに笑みを浮かべていた。
「……頭が高い」
戦慄だった。自分よりも圧倒的な強者に見下ろされる。
心が震えるのを感じた。
これまで鬼人族こそが最強だと自負してきた。だが、俺が初めて感じた敗北感は心酔するのに十分なほどに圧倒的だった。
フライ・エルトールという男に俺は惚れた。
力だけではない、何か別の魅力を持っている。
俺はフライを兄貴分と認める。会合が終わり、俺はフライの元に歩み寄った。
「フライ……いや、兄貴!」
兄貴は少し驚いた表情を見せたが、すぐに柔らかな笑顔を浮かべた。
「兄貴? いやいや、僕はそんな器じゃないよ。君みたいに力強い人がいると、僕も安心できるな」
「いや、俺はあんたを兄貴と呼びたいんだ。俺はこれまで、力こそが全てだと思って生きてきた。だが、兄貴を見て分かった。力だけじゃない、本当に強いってのは、覚悟を持った者だってことを……!」
言葉を紡ぐうちに、俺の中にあった誇りが崩れ去り、代わりにフライの兄貴に対して敬愛だった。
「兄貴、俺を弟分にしてくれ! これからは兄貴と共に戦い、兄貴の力になりたい!」
そう言うと、フライの兄貴は少し困ったように笑った。
「僕は平凡な道楽貴族だよ。そんな大層な存在じゃない。でも、君がそう言ってくれるなら、これからも仲良くしてくれると嬉しいな」
その言葉に、俺は思わず拳を握り締めた。
「フライの兄貴、感謝するぜ。俺ももっと強くなってみせる。だから、兄貴の背中を守らせてくれ!」
こうして俺は、鬼人族としての誇りを新たな形で持ち直し、フライの兄貴に従う道を選んだ。
俺はこの日、世界の広さを知り、真の強さとは何かを学んだ。
フライ兄貴と共に生きることで、俺自身も変わっていけるはずだ。兄貴と共に歩む未来に向けて、俺は力を蓄え、再びこの広い世界に挑む決意を新たにする。
「兄貴に挑むのに、鬼神なんて余裕でならねぇとな。それでも追いつけねぇ。待っていてください。兄貴!」
俺は自分が低い目標を持っていたんだと実感した。
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