お気楽公爵家の次男に転生したので、適当なことを言っていたら英雄扱いされてしまった。

イコ

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第二話

暴力と武力って使いようだよね。

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《side ノクス》

 学園都市に来てから、毎日が新鮮だった。

 広大な敷地に、異種族たちが行き交い、それぞれが自分の目標に向かって努力を重ねている。

 貴族もいれば平民もいる。強い者も弱い者もいる。

 しかし、平民出身の俺にとって、この場所は平等なようでそうではなかった。

 貴族たちの集う華やかな社交場には近寄ることすらできず、彼らが見下すような視線を向けてくることも珍しくない。

 だが、それでも俺はここに来たことを後悔していない。

 俺は「自分の力」を証明するために、学園都市に来たのだから。

 《グラディエーター・アリーナ》

 それは、そんな俺にとって絶好の機会だった。

 学園都市全体を巻き込むこの競技で、俺は自分の剣術と努力が通用するのか、試してみたかった。

 初戦、相手は筋骨隆々の獣人だった。

 彼は身体能力に絶対の自信を持ち、俺を一瞬でねじ伏せるつもりだったのだろう。

 だが、俺は速さで勝負した。

 相手の動きの癖を見抜き、わずかな隙を突いて剣を振るう。何度か相手の攻撃をかわし、反撃を加えた結果、獣人の剣を弾き飛ばし、勝利を収めた。

「勝者、ノクス!」

 審判の声が響くと、観客席からは少しばかりの拍手が聞こえた。

 しかし、俺にとってその拍手は何よりも大きく聞こえた。戦いの中でなら俺は胸を張っていられる。あまり頭が良い方ではない。だけど、自由を求める気持ちは変わらない。


 二戦目の相手は、魔法使いだった。

 派手な呪文を使う魔法使いを相手。遠距離から俺を攻撃してくるのに対して、どうやって距離を詰めるのか。

 魔法使いの相手は初めてではなかったが、やはり剣士にとっては不利な相手だと思う。だけど、それを承知で受けた戦いだから、乗り越えたい。

 何よりも、俺は負けるつもりはない。

「足元がお留守だぞ!」

 障害物を使って、魔法を避けながら、なんとか距離を詰めた。

 魔法使いは、魔力量に限りがあるから、無駄に魔法を打たせれば、隙が狙える。

 障害物と、魔法の消費によって、接近戦に持ち込むことができたので、剣を振るって、魔法を放つ触媒を破壊することで勝利を手にした。

「勝者、ノクス!」

 この試合の後、俺の名前は少しずつ観客たちの間で話題になり始めた。

 無敗で二勝した者が俺を含めて数名だけ、そこに自分の名前があることが誇らしい。

 そして迎えた三戦目、相手は三年次のレオポルド・シュトラウス先輩。

 彼は貴族出身の正統派剣士で、過去の大会で決勝まで進んだ実績を持つ強者だった。

 対して俺は平民出身の無名剣士。誰もがレオポルド先輩の勝利を疑わなかった。

 だが、俺はこの戦いにすべてを賭ける覚悟で挑んだ。負けても失う物はない。元々無名の俺にとって覚悟することは簡単だった。

 試合が始まると、彼の剣筋は圧倒的だった。鋭く、力強く、隙がない。

 正面からぶつかると、確実に負ける。

 俺は間合いを調整し、彼の動きをじっくり観察することに集中した。

 そして、彼の剣の振り方にある一瞬の「癖」を見つけた。

 右手で振り下ろす瞬間、わずかに左足に重心がかかる。その瞬間が、彼の防御が手薄になるタイミングだった。

 俺はその一瞬を狙った。

「これで終わりだ!」

 レオポルドが勝利を確信して剣を振り下ろす瞬間、俺は全力で横へ飛び、彼の懐に入り込む。

 そして、剣を一閃。

 彼の剣は地面に突き刺さり、俺の剣は彼の喉元で止まった。

「勝者、ノクス!」

 審判の声が響き渡ると、会場は一瞬の静寂に包まれた後、大きな歓声が上がった。

 俺は剣を収め、深く息を吐いた。

「……やった、俺は勝った」

 三戦を無敗で勝利した俺は決勝に進むことができる。胸いっぱいに誇らしい気持ちと、不意に自由戦線の仲間たちが今も働いていることに、罪悪感が生まれる。

 だけど、俺が目立つことで、陽動になるかもしれない。

 バカで考えられない頭だが、目立つことで、俺に少しでも観客が目を向けてくれて、勝利を信じていなかった観客たちの心に、驚きを与えれば少しは変わるかもしれない。

 腕を上げれば、拍手を送る者も増えた。だが、その中で俺は一人、静かに拳を握りしめた。


 その夜、俺は寮の自室で静かに過ごしていた。

 ベッドに横たわりながら、今日の試合のことを思い返す。

 リベルタス・オルビスに入ったことを後悔したことはない。

 自由を愛する心は俺の中にも存在する。その手段の一つとして暴力を用いる。それが必要なことであり、俺にはそれしかできないとも思えた。

 俺にとって大切な者たちを守るために、戦いを通じて、平民でも貴族に負けないことを証明したい。

 暴力という言い方ではなく、努力と才能で自分の価値を示したい。

「まだ終わりじゃない。決勝戦でも勝って、自分の力を証明してやる」

 そう心に誓いながら、俺は目を閉じた。

 グラディエーター・アリーナはまだ終わらない。次は、もっと強い相手が待っているだろう。決勝戦は強いやつしか出てこない。

 だけど、俺はもう怖くない。自分の剣を信じて、この戦いを最後まで戦い抜くつもりだ。

「俺は、誰にも負けない」

 剣の手入れを行って眠りについた。
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