82 / 153
第三章
王は孤独である
しおりを挟む
《side ブライド・スレイヤー・ハーケンス》
王は孤独である。
生まれながらに、対等と呼べる相手はおらず、我は能力も優れていた。
それは本来対等になり得た兄弟姉妹たちすらも相手にしなくて良いほどに高かった。
幼い頃から、我はその現実を嫌というほど実感することになる。
剣を交えれば、すぐに強くなり、魔法を覚えれば人以上の多い魔力と強力な魔法を放つ放つことができた。
もしも、世界が誰よりも優れた者を王とするならば、誰よりも孤独な者がその王冠を戴く。
周囲にいるのは臣下と敵ばかり。
私の父は、帝国の支配者だった。
そして、その背中を見て育った私は、王とはどうあるべきかを知った。
笑顔を見せている者の半数以上が、内心では剣を突き立てようとしている。
褒め称える者たちは、贈り物に毒を忍ばせ、王に成り代わろうとしている。
だが、誰にも負けずに生き続け、王座に座り続ける存在でなければならない。
だからこそ、我は他者を信じない。他者を理解しない。他者と相入れない。
能力を測り、価値を見極め、駒として使う。
それだけが我にとっての生きる道だった。
だが、奇妙なことだ。
私は、自分と対等に渡り合える「敵」を求めている。
――敵。
それは、王にとっては不必要な存在であり、同時に必要不可欠な存在に思えた。孤高の王であればあるほど、強敵がいなければその価値は輝かない。
帝国第二王子という肩書き。
それは、兄の影に隠れながらも、王に成る能力を与えられた我だからこそだ。
次期皇帝候補として、いずれ、我は己の価値を示す時が来るであろう。
その時には、あらゆる手段を用意いる。
だが、そのために我は世界を知らなければならない。
強いだけでは理解できないこともある。
それをフライ・エルトールを見て理解した。
奴はどこか不思議な存在だった。我を唯一友と呼び、威圧を与えようと、殺気を飛ばそうと、動じない強者だ。
不気味な存在ではあるが、奴は敵ではない。
奴を見ていると何故か安心する。バカな話だ。誰かを見て安心する自分がいるなど。
だからこそ、我の人生に必要なのは「敵」だ。
敵がいなければ、競い高めることはできない。己を磨き、他者を下し、駒を動かすだけの存在では、王としての価値は高まらない。
ただ生きているだけなど、意味はない。
だから、我は求める。
我に挑む者を。我の好敵手を。我に剣を向ける者を。
その者が我を打ち倒すために現れたなら、我はそれを喜んで受け入れよう。その者を喰らって、我はさらに高みへ上がる。
もっと我を強くするために、戦う相手が必要なのだ。
学園都市で開催されるフェスティバル。
それは、私にとっての舞台装置に過ぎない。
ここに集う優秀な生徒たち。才能を持ちながらも目立たない者、潜在能力を秘めた者、そして力を誇示する者。
我はその全てを見定め、その中から「敵」を選び出す。
敵とは、我に勝つ可能性を持つ者だ。
我を打ち倒すかもしれない者。だが、それ以上に、我を楽しませてくれる存在でなければならない。
この帝国、いや、この大陸全土を見渡しても、我の敵となり得る者は数えるほどしかいない。
だが――
「アイス・ディフェ・ミンティ……」
奴はあった時から反発して、合わない存在だった。
あの男は病弱で、決して我に勝てるような武力を持たない。それなのに知力と魔力で我に対抗していく。
気に入らないやつだ。
何よりも、生まれながらに王太子として、恵まれ継ぐ権利を持っていることも気に入らない。
奴の目の奥に宿るものは野心だ。
我の目は欺けない。奴のような者こそが、真に争うべき相手であり、我の好敵手になりえる存在となる可能性を秘めている。
だが、奴になりきれていない。
あの男には仲間がいる。家族がいる。部下がいる。奴の存在は、我とは真逆だ。
王は孤独である。
仲間に囲まれた者は弱みを持っている。
だが、不思議なことだ。
奴は真逆にいるはずなのに、まるで我と同じ孤独を持っているようにも感じるのだ。
同族嫌悪、そんな言葉が浮かんでくるが、そんなことがあるのだろうか? 我の敵となるならば、奴しかいない。
夜空を見上げる。
星々の煌めきは、遠く離れた私には届かない。
だが、それでいい。王に光は不要だ。
私は影の中で、己の王道を歩む。それが私の役目であり、宿命なのだから。
「ブライド様、ここにおられたのですか?」
「アイク。どうした?」
「《グランド・ユナイト・フェスティバル》の三週目になり、イベントが変わります。ブライド様が言われていたゲームではないでしょうか?」
「クラウン・バトルロイヤルか」
学園内で作られた派閥同士の争いを、フェスティバルの中で試してみる価値はありそうだ。
「いくぞ。アイク」
「はっ!」
「エドガーの準備はできているのか?」
「はい」
「ならば良い」
すでに準備はできているのだ。あとは我が用意した仕掛けに対して、アイス・ディフェ・ミルディ。お前はどう対処する?
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
あとがき
どうも作者のイコです。
第三章開始です。
王は孤独である。
生まれながらに、対等と呼べる相手はおらず、我は能力も優れていた。
それは本来対等になり得た兄弟姉妹たちすらも相手にしなくて良いほどに高かった。
幼い頃から、我はその現実を嫌というほど実感することになる。
剣を交えれば、すぐに強くなり、魔法を覚えれば人以上の多い魔力と強力な魔法を放つ放つことができた。
もしも、世界が誰よりも優れた者を王とするならば、誰よりも孤独な者がその王冠を戴く。
周囲にいるのは臣下と敵ばかり。
私の父は、帝国の支配者だった。
そして、その背中を見て育った私は、王とはどうあるべきかを知った。
笑顔を見せている者の半数以上が、内心では剣を突き立てようとしている。
褒め称える者たちは、贈り物に毒を忍ばせ、王に成り代わろうとしている。
だが、誰にも負けずに生き続け、王座に座り続ける存在でなければならない。
だからこそ、我は他者を信じない。他者を理解しない。他者と相入れない。
能力を測り、価値を見極め、駒として使う。
それだけが我にとっての生きる道だった。
だが、奇妙なことだ。
私は、自分と対等に渡り合える「敵」を求めている。
――敵。
それは、王にとっては不必要な存在であり、同時に必要不可欠な存在に思えた。孤高の王であればあるほど、強敵がいなければその価値は輝かない。
帝国第二王子という肩書き。
それは、兄の影に隠れながらも、王に成る能力を与えられた我だからこそだ。
次期皇帝候補として、いずれ、我は己の価値を示す時が来るであろう。
その時には、あらゆる手段を用意いる。
だが、そのために我は世界を知らなければならない。
強いだけでは理解できないこともある。
それをフライ・エルトールを見て理解した。
奴はどこか不思議な存在だった。我を唯一友と呼び、威圧を与えようと、殺気を飛ばそうと、動じない強者だ。
不気味な存在ではあるが、奴は敵ではない。
奴を見ていると何故か安心する。バカな話だ。誰かを見て安心する自分がいるなど。
だからこそ、我の人生に必要なのは「敵」だ。
敵がいなければ、競い高めることはできない。己を磨き、他者を下し、駒を動かすだけの存在では、王としての価値は高まらない。
ただ生きているだけなど、意味はない。
だから、我は求める。
我に挑む者を。我の好敵手を。我に剣を向ける者を。
その者が我を打ち倒すために現れたなら、我はそれを喜んで受け入れよう。その者を喰らって、我はさらに高みへ上がる。
もっと我を強くするために、戦う相手が必要なのだ。
学園都市で開催されるフェスティバル。
それは、私にとっての舞台装置に過ぎない。
ここに集う優秀な生徒たち。才能を持ちながらも目立たない者、潜在能力を秘めた者、そして力を誇示する者。
我はその全てを見定め、その中から「敵」を選び出す。
敵とは、我に勝つ可能性を持つ者だ。
我を打ち倒すかもしれない者。だが、それ以上に、我を楽しませてくれる存在でなければならない。
この帝国、いや、この大陸全土を見渡しても、我の敵となり得る者は数えるほどしかいない。
だが――
「アイス・ディフェ・ミンティ……」
奴はあった時から反発して、合わない存在だった。
あの男は病弱で、決して我に勝てるような武力を持たない。それなのに知力と魔力で我に対抗していく。
気に入らないやつだ。
何よりも、生まれながらに王太子として、恵まれ継ぐ権利を持っていることも気に入らない。
奴の目の奥に宿るものは野心だ。
我の目は欺けない。奴のような者こそが、真に争うべき相手であり、我の好敵手になりえる存在となる可能性を秘めている。
だが、奴になりきれていない。
あの男には仲間がいる。家族がいる。部下がいる。奴の存在は、我とは真逆だ。
王は孤独である。
仲間に囲まれた者は弱みを持っている。
だが、不思議なことだ。
奴は真逆にいるはずなのに、まるで我と同じ孤独を持っているようにも感じるのだ。
同族嫌悪、そんな言葉が浮かんでくるが、そんなことがあるのだろうか? 我の敵となるならば、奴しかいない。
夜空を見上げる。
星々の煌めきは、遠く離れた私には届かない。
だが、それでいい。王に光は不要だ。
私は影の中で、己の王道を歩む。それが私の役目であり、宿命なのだから。
「ブライド様、ここにおられたのですか?」
「アイク。どうした?」
「《グランド・ユナイト・フェスティバル》の三週目になり、イベントが変わります。ブライド様が言われていたゲームではないでしょうか?」
「クラウン・バトルロイヤルか」
学園内で作られた派閥同士の争いを、フェスティバルの中で試してみる価値はありそうだ。
「いくぞ。アイク」
「はっ!」
「エドガーの準備はできているのか?」
「はい」
「ならば良い」
すでに準備はできているのだ。あとは我が用意した仕掛けに対して、アイス・ディフェ・ミルディ。お前はどう対処する?
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
あとがき
どうも作者のイコです。
第三章開始です。
113
あなたにおすすめの小説
転生先は上位貴族で土属性のスキルを手に入れ雑魚扱いだったものの職業は最強だった英雄異世界転生譚
熊虎屋
ファンタジー
現世で一度死んでしまったバスケットボール最強中学生の主人公「神崎 凪」は異世界転生をして上位貴族となったが魔法が土属性というハズレ属性に。
しかし職業は最強!?
自分なりの生活を楽しもうとするがいつの間にか世界の英雄に!?
ハズレ属性と最強の職業で英雄となった異世界転生譚。
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?
木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。
追放される理由はよく分からなかった。
彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。
結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。
しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。
たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。
ケイトは彼らを失いたくなかった。
勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。
しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。
「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」
これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。
チートスキルより女神様に告白したら、僕のステータスは最弱Fランクだけど、女神様の無限の祝福で最強になりました
Gaku
ファンタジー
平凡なフリーター、佐藤悠樹。その人生は、ソシャゲのガチャに夢中になった末の、あまりにも情けない感電死で幕を閉じた。……はずだった! 死後の世界で彼を待っていたのは、絶世の美女、女神ソフィア。「どんなチート能力でも与えましょう」という甘い誘惑に、彼が願ったのは、たった一つ。「貴方と一緒に、旅がしたい!」。これは、最強の能力の代わりに、女神様本人をパートナーに選んだ男の、前代未聞の異世界冒険譚である!
主人公ユウキに、剣や魔法の才能はない。ステータスは、どこをどう見ても一般人以下。だが、彼には、誰にも負けない最強の力があった。それは、女神ソフィアが側にいるだけで、あらゆる奇跡が彼の味方をする『女神の祝福』という名の究極チート! 彼の原動力はただ一つ、ソフィアへの一途すぎる愛。そんな彼の真っ直ぐな想いに、最初は呆れ、戸惑っていたソフィアも、次第に心を動かされていく。完璧で、常に品行方正だった女神が、初めて見せるヤキモチ、戸惑い、そして恋する乙女の顔。二人の甘く、もどかしい関係性の変化から、目が離せない!
旅の仲間になるのは、いずれも大陸屈指の実力者、そして、揃いも揃って絶世の美女たち。しかし、彼女たちは全員、致命的な欠点を抱えていた! 方向音痴すぎて地図が読めない女剣士、肝心なところで必ず魔法が暴発する天才魔導士、女神への信仰が熱心すぎて根本的にズレているクルセイダー、優しすぎてアンデッドをパワーアップさせてしまう神官僧侶……。凄腕なのに、全員がどこかポンコツ! 彼女たちが集まれば、簡単なスライム退治も、国を揺るがす大騒動へと発展する。息つく暇もないドタバタ劇が、あなたを爆笑の渦に巻き込む!
基本は腹を抱えて笑えるコメディだが、物語は時に、世界の運命を賭けた、手に汗握るシリアスな戦いへと突入する。絶体絶命の状況の中、試されるのは仲間たちとの絆。そして、主人公が示すのは、愛する人を、仲間を守りたいという想いこそが、どんなチート能力にも勝る「最強の力」であるという、熱い魂の輝きだ。笑いと涙、その緩急が、物語をさらに深く、感動的に彩っていく。
王道の異世界転生、ハーレム、そして最高のドタバタコメディが、ここにある。最強の力は、一途な愛! 個性豊かすぎる仲間たちと共に、あなたも、最高に賑やかで、心温まる異世界を旅してみませんか? 笑って、泣けて、最後には必ず幸せな気持ちになれることを、お約束します。
無能と追放された俺の【システム解析】スキル、実は神々すら知らない世界のバグを修正できる唯一のチートでした
夏見ナイ
ファンタジー
ブラック企業SEの相馬海斗は、勇者として異世界に召喚された。だが、授かったのは地味な【システム解析】スキル。役立たずと罵られ、無一文でパーティーから追放されてしまう。
死の淵で覚醒したその能力は、世界の法則(システム)の欠陥(バグ)を読み解き、修正(デバッグ)できる唯一無二の神技だった!
呪われたエルフを救い、不遇な獣人剣士の才能を開花させ、心強い仲間と成り上がるカイト。そんな彼の元に、今さら「戻ってこい」と元パーティーが現れるが――。
「もう手遅れだ」
これは、理不尽に追放された男が、神の領域の力で全てを覆す、痛快無双の逆転譚!
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。
異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める
自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。
その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。
異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。
定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる