お気楽公爵家の次男に転生したので、適当なことを言っていたら英雄扱いされてしまった。

イコ

文字の大きさ
94 / 153
第三章

それぞれの動き 3

しおりを挟む
《side アクアリス・ネプティーナ》

 湖の青い水面が朝日を受けて輝き、静かに波を揺らしていた。

 湖の周辺には川がいくつも流れ込み、湿度の高い空気が広がっている。この場所は、ブルー・シーの本拠地として理想的な環境ね。

「ここが私たちの拠点……悪くないわ」

 水が豊富な場所で戦うことは、自分たちの特性を最大限に活かせる。特に川の流れを利用して敵の動きを制御し、戦局を有利に進めることができるのは、我々にとって戦術が行いやすい。

「アクアリス様、全員配置につきました」

 私の側近である戦士が報告に来る。私はゆっくりと頷き、彼らに向き直る。

「ありがとう。それじゃあ、作戦を確認しましょう。川の流れを使って敵を誘い込み、分断していくわ。陸に出る場合も、周囲の水源を絶対に見失わないで。ただ、こちらから積極的に動くのではなく、誘い込みなさい」
「了解しました!」

 仲間たちは力強く頷き、戦場に向けて動きを見せる。

 彼らの装備は水中戦を前提にしており、私が指揮を執ればその力を十分に発揮できる。

「それにしても……クラウン・バトルロワイヤルね」

 私は湖の向こうを眺めながら、この戦いには多種多様な思惑が交錯している。参加することは、国からの要請がなければ出たくなどはない。

「決着がつくときには、誰か一人の英雄じゃない。手を取り合って、自然と共に生きる道を選べたいものね」

 人間や獣人、その他の種族とどのように共存するべきか。それを探るために、私はこの戦いに挑んでいる。

「アクアリス様、北の川岸に魔物の気配があります!」

 仲間の報告を聞き、私は静かに息を整える。

「わかったわ。全員、持ち場を守りつつ慎重に動いて。彼らの動きをよく観察して」

 私の指示に従い、部下たちは速やかに配置についた。水の流れを利用した防御と攻撃の準備が整い、アクアリスのチームは一丸となって敵を迎え撃つ構えを見せた。



《side エスカルーデ》

 洞窟の中はひんやりと冷たく、わずかに湿った空気が漂っていた。我は洞窟の最奥部に腰を下ろし、じっと考えを巡らせていた。

「ふむ……この場所は悪くないな」

 洞窟は竜人族にとって理想的な防衛拠点だった。

 入り口は狭く、侵入者を迎え撃つのに最適な形状をしている。さらに内部は複雑な構造になっており、敵が迷い込めば逃げ道を失うだろう。

「エスカルーデ、我々は好きにやらせてもらうぞ」
「うむ。好きにせよ。食料や建物は好きに使うがいい。洞窟周辺は好きに使えばいい」
「ああ、侵入者が来ればすぐに気づくだろう」

 竜人は各々が強いために群れぬ。彼らもまた我と同じく孤高の戦士たちであり、個々の実力は申し分ない。

「そうだ、東側にある森林地帯に大規模な魔物の群れがいるそうだ。おそらく近隣のチームにも脅威になるだろう。排除するか?」

 我は顎に手を当て、少し考え込む。魔物が近くにいるのなら、他のチームもそれに対処するのに手一杯になるだろう。

「ふん……好きに狩りをしたい者に任せる。我々は、好きに動いたとしても問題はあるまい?」
「違いない」

 我々には戦略も戦術も必要ない。強者である我々はただ迎え打てばそれで勝てるのだ。

「当面は自由にしていればいい。敵が来れば叩き潰す。無闇に動く必要もあるまい」
「承知しました!」

 竜人族たちは迅速に配置につき、洞窟内外が静かになる。その様子を見ながら、我は静かに息を吐いた。

「クラウン・バトルロワイヤル……くだらない遊びだとは思うが、我々に挑む者が現れるなら面白い」

 我の目には、挑戦者が現れてくれる楽しみに向けて闘志が宿っている。

 竜人族の名を背負う以上、ここで中途半端な結果を出すわけにはいかない。勝つことだけが我らの誇りを守る手段だった。

「俺たちは孤高の戦士だ。他の種族とつるむつもりはない。ただ、自分たちの力を証明するのみ。それだけだ」

 我らにとって、それ以上の理由は必要なかった。

「さぁ、始めようか。この洞窟に足を踏み入れる愚か者がいれば、我々がどれほど恐ろしい存在かを教えてやる」

 その声には冷たい確信が込められていた。我とその部下たちは、洞窟という天然の要塞を最大限に活用しながら、迫り来る敵を迎え撃つ準備を整えていた。



《side 平民学生同盟セレナーデ》

 どうして!!!

「どうして!!! 私が一番に、今日のために全てを用意してきたのに!?」

 私は今日のアピールを考えて魔法の戦闘準備していたの!!!

「私の就職活動どうしてくれるのよ!?!!」

 メガネをかけて、三つ編みを結び直した私は、涙を浮かべて膝から崩れ落ちた。

 リーダーを務めて、一番にアピールできる席を手に入れたというのに、アピールできないじゃない!!

「許さない! 許さないわ! 平民のくせに私を倒した、ノクスも。公女セシリアも!!! 恵まれた環境を持った奴らは全員滅んでしまえ!!!」

 私はこのクラウン・バトルロワイアルのことを許さない!

 いつか恵まれた者たちに復讐してやる!!!

「あっ、君が平民同盟のリーダーだね」
「えっ?」

 そんな私に一人のイケメンが声をかけてくれた。

「はい?」
「僕の名前はフライ・エルトールだ。帝国の貴族なんだけど、今回は、君たちに奇襲をかけてすまないね。だけど、君たちの戦いは君の指揮の元で素晴らしかったよ。それじゃお疲れ様」

 …………………………………好き。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

転生先は上位貴族で土属性のスキルを手に入れ雑魚扱いだったものの職業は最強だった英雄異世界転生譚

熊虎屋
ファンタジー
現世で一度死んでしまったバスケットボール最強中学生の主人公「神崎 凪」は異世界転生をして上位貴族となったが魔法が土属性というハズレ属性に。 しかし職業は最強!? 自分なりの生活を楽しもうとするがいつの間にか世界の英雄に!? ハズレ属性と最強の職業で英雄となった異世界転生譚。

無能扱いされ会社を辞めさせられ、モフモフがさみしさで命の危機に陥るが懸命なナデナデ配信によりバズる~色々あって心と音速の壁を突破するまで~

ぐうのすけ
ファンタジー
大岩翔(オオイワ カケル・20才)は部長の悪知恵により会社を辞めて家に帰った。 玄関を開けるとモフモフ用座布団の上にペットが座って待っているのだが様子がおかしい。 「きゅう、痩せたか?それに元気もない」 ペットをさみしくさせていたと反省したカケルはペットを頭に乗せて大穴(ダンジョン)へと走った。 だが、大穴に向かう途中で小麦粉の大袋を担いだJKとぶつかりそうになる。 「パンを咥えて遅刻遅刻~ではなく原材料を担ぐJKだと!」 この奇妙な出会いによりカケルはヒロイン達と心を通わせ、心に抱えた闇を超え、心と音速の壁を突破する。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

転生したら遊び人だったが遊ばず修行をしていたら何故か最強の遊び人になっていた

ぐうのすけ
ファンタジー
カクヨムで先行投稿中。 遊戯遊太(25)は会社帰りにふらっとゲームセンターに入った。昔遊んだユーフォーキャッチャーを見つめながらつぶやく。 「遊んで暮らしたい」その瞬間に頭に声が響き時間が止まる。 「異世界転生に興味はありますか?」 こうして遊太は異世界転生を選択する。 異世界に転生すると最弱と言われるジョブ、遊び人に転生していた。 「最弱なんだから努力は必要だよな!」 こうして雄太は修行を開始するのだが……

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

処理中です...