お気楽公爵家の次男に転生したので、適当なことを言っていたら英雄扱いされてしまった。

イコ

文字の大きさ
99 / 153
第三章

それぞれの動き 4

しおりを挟む
《side ブライド・スレイヤー・ハーケンス》

 二日目のバトルロワイアルをアイクが勝利したことで、捨て駒を手に入れた。

「貴様たちは私のために死ねることを本望に思え! 今から作戦を実行する!」

 小高い丘から、我は草原を見ていた。

 草原に響く咆哮が風に乗り、戦場に緊張をもたらす。

 ロガン王子の金色のたてがみが陽光を受けて輝き、彼の鋭い爪は捨て駒たちを次々と斬り裂いていた。だが、我が顔には冷たい微笑みが浮かんでいる。

「獅子の王よ……その誇りが疲弊に変わる様を見届けるとしよう」

 昨日の代表者戦で配下に加えた新たな兵たち、人種も様々でその力は凄まじい者もいた。

 竜人族を配下に持てたことは光栄だ。だが、彼らはもともと平民同盟や弱小派閥の一員だった者たちだ。

 実力はマチマチなのだ、それが問題ではない。信用できないだけだ。

 だからこそ、彼らの役割はただ一つ、ロガンの体力を削る捨て駒となること。

 ロガンは戦場の中心で咆哮を上げながら猛然と敵を薙ぎ払っている。その姿は獅子そのものだ。だが、その動きには徐々に疲労の影が見え始めていた。

「エドガー、次の駒を前に出せ」

 我が冷たく指示を飛ばすと、側近のエドガー・ヴァンデルガストが動く。エドガーはゴーレム製造の第一人者であり、我が軍の戦略において重要な駒だ。

「御意。粗野な獣人相手には、これで十分でしょう」

 エドガーが錆びた鉄片を空中に放り投げる。それが瞬時に組み上がり、巨大なゴーレムへと姿を変える。ゴーレムはゆっくりとした動きで前進を始め、地面を揺るがせる。

「ふん、そんな鉄の塊で俺を止められると思うのか!」

 ロガンが咆哮を上げ、前方のゴーレムに突進する。その爪が鋼鉄の腕を一撃で切り裂き、ゴーレムの体が崩れ落ちる。

「思った通りだ。単純な力だけで全てを解決しようとする、愚かな獣だな」

 エドガーが冷笑を浮かべる。崩れたゴーレムの背後から、さらに三体のゴーレムが姿を現す。それらは連携して動き、ロガンの動きを封じようとする。

「くっ、しつこい奴らめ!」

 ロガンはゴーレムたちを次々と薙ぎ払うが、そのたびに疲労が蓄積されていく。動きが鈍くなり始めたロガンに、我が視線を向ける。

「アイク、準備を整えよ。ロガンの牙が鈍るのを待つ必要もないだろう」

 我が命じると、アイクが一歩前に出る。その冷徹な眼差しと構えは、これからの戦いがいかに厳しいものであるかを物語っている。

「わかりました。ここで決着をつけましょう」

 アイクが剣を抜き、静かに草原へ歩みを進める。その姿を見たロガンは、低く唸り声を上げた。

「ブライド皇子の剣か……。貴様が来るとはな! ブライドめ、俺を本気で倒しにきてやがるな!」
「いいや、ロガン王子。あなたを侮る者は誰もいません。ただ、私には任務がある。それだけです」

 アイクの冷静な声が戦場に響く。ロガンは疲れた体に鞭打ち、最後の力を振り絞ってアイクに突進する。

 その動きは、さすが獅子族の王子と呼ばれるだけあって鋭い。しかし、疲労とダメージは確実に彼の動きを鈍らせていた。

「終わりです」

 アイクが低く呟き、剣を振り下ろす。その刃がロガンの胸を深く斬り裂き、巨体が崩れ落ちた。

「ロガン王子、あなたの誇りは立派でした」

 アイクが静かに言葉を紡ぐと、戦場は一瞬の静寂に包まれた。ロガンの部下たちは動揺し、統率を失い始める。

「エドガー、掃討を任せる」

 我が言葉にエドガーが頷き、残存するゴーレムたちを指揮して獣人たちを追い詰めていく。その様子を見ながら、我は冷たく微笑んだ。

「これで一つ片付いた。草原は我のものだ。次の駒を動かす準備を始めよう」

 我が冷たい視線を次の戦場へと向ける。この勝利は通過点に過ぎない。全ては我が手中に収めるための一手にすぎないのだ。

 フライ・エルトールによって一日目、二日目と二つの派閥がローズガーデンに吸収された。

 だが、それはたいしたことじゃない。

 弱い者は淘汰される。だが、我は能力ある者から排除していこう。

 フライ・エルトールがどんな考えを持っているのか知らないが、今の戦場は奴に左右されている。

『三日を迎え、三つの派閥が吸収されました。そこで、残り五つの派閥には、さらに戦況を加速させてもらいたいと思います! そこで、クラウンともう一つ。指揮官、将軍、軍師の称号を持って参加している派閥には、敗者復活戦も兼ねて、今まで敗退した人間から欲しい人材を自分の陣営に参加させられる権利を与えます』

 運営のうるさい処置に、面倒さを感じる。だが、これによって欲しい人材が手に入るならいいだろう。

「エドガー! 指揮官、将軍、軍師は誰がして居そうだ?」
「はっ! 考えられる派閥は、ローズガーデン、銀の旗、竜人族の三派閥だと考えられます。ローズガーデンでは、フライ・エルドール。銀の旗はアイス王子の懐刀、竜人族は誰かはわかりません」

 エドガーの言葉に我は進軍する相手を決めた。

「竜人を撃つぞ!」
「「はっ!!」」

 強い相手に挑み、知ることが出来れば、この戦いが終わった後に気になる者たちには声をかけてもいいだろう。

「いくぞ!」

 黒いマントを翻して、我は草原を進む。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

転生先は上位貴族で土属性のスキルを手に入れ雑魚扱いだったものの職業は最強だった英雄異世界転生譚

熊虎屋
ファンタジー
現世で一度死んでしまったバスケットボール最強中学生の主人公「神崎 凪」は異世界転生をして上位貴族となったが魔法が土属性というハズレ属性に。 しかし職業は最強!? 自分なりの生活を楽しもうとするがいつの間にか世界の英雄に!? ハズレ属性と最強の職業で英雄となった異世界転生譚。

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

転生したら遊び人だったが遊ばず修行をしていたら何故か最強の遊び人になっていた

ぐうのすけ
ファンタジー
カクヨムで先行投稿中。 遊戯遊太(25)は会社帰りにふらっとゲームセンターに入った。昔遊んだユーフォーキャッチャーを見つめながらつぶやく。 「遊んで暮らしたい」その瞬間に頭に声が響き時間が止まる。 「異世界転生に興味はありますか?」 こうして遊太は異世界転生を選択する。 異世界に転生すると最弱と言われるジョブ、遊び人に転生していた。 「最弱なんだから努力は必要だよな!」 こうして雄太は修行を開始するのだが……

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

異世界でただ美しく! 男女比1対5の世界で美形になる事を望んだ俺は戦力外で追い出されましたので自由に生きます!

石のやっさん
ファンタジー
主人公、理人は異世界召喚で異世界ルミナスにクラスごと召喚された。 クラスの人間が、優秀なジョブやスキルを持つなか、理人は『侍』という他に比べてかなり落ちるジョブだった為、魔族討伐メンバーから外され…追い出される事に! だが、これは仕方が無い事だった…彼は戦う事よりも「美しくなる事」を望んでしまったからだ。 だが、ルミナスは男女比1対5の世界なので…まぁ色々起きます。 ※私の書く男女比物が読みたい…そのリクエストに応えてみましたが、中編で終わる可能性は高いです。

処理中です...